パメルさんの登録情報 | |
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平均点:6.13点 | 書評数:623件 |
No.223 | 6点 | 暗色コメディ 連城三紀彦 |
(2018/10/10 01:25登録) 叙情性豊かな美しい文体で、読者を虜にする作者の長編デビュー作で、真実と狂気が混然とした幻想的な世界を見事に描いている。(とにかく読者を惑わせてやろうという思いがひしひしと伝わってくる) 男女4人の奇妙な4つのエピソードが、それぞれの視点で語られ、真実なのか妄想なのかと混沌とした雰囲気の中、不安を募らせる心理描写も丁寧で好印象。 やがて、4つのエピソードが1つの物語に収束していく過程も巧み。 ただ、合理的な結末にするために偶然の要素を多く取り入れている点は不満。 |
No.222 | 7点 | ずうのめ人形 澤村伊智 |
(2018/09/30 01:17登録) 不審死を遂げたオカルト雑誌ライターが遺した原稿。この原稿を読んだ人が、次々と呪い殺されてしまう。都市伝説をめぐる怪異に巻き込まれながらも、それに挑む登場人物の葛藤を描いたタイムリミットホラーサスペンス。 じわじわと迫りくる恐怖を味わえるホラーとしても素晴らしい出来だと思うが、ホワイダニットに対する疑問や驚きのどんでん返しなど、本格もの好きな方にも楽しめる要素もある。 少し気になる部分もありますが、リーダビリティも高く幅広い層の方が楽しめる上質なエンタメ小説といえるでしょう。 |
No.221 | 5点 | 麦酒の家の冒険 西澤保彦 |
(2018/09/19 01:15登録) ドライブの途中、ガス欠に見舞われ迷い込んで辿り着いた山荘。 その山荘に勝手にあがり込み、さらに冷蔵庫にあるビールをこれまた勝手に飲みながら、この家の奇妙な点を仮説や推論を重ね推理合戦するという不謹慎かつ滅茶苦茶な設定で楽しめる。 最初のうちは良かったが、殺人事件が起きているわけではないし、何の物的証拠も無い単なる推論の域を出ないわけだから途中で飽きてくる。さすがに冗長に感じた。(短編で十分) ユーモアある発想で推論が展開され、作風からして奇想天外な結末を期待してしまうが、最後に明かされる真相には面白味がなくがっかりさせられた。 エビスビールを飲みながら読んでください。 |
No.220 | 6点 | 白い兎が逃げる 有栖川有栖 |
(2018/09/09 01:19登録) 4編からなる中短編集。 アリバイ崩し、ダイイングメッセージの謎、思いも寄らない意外な動機とバラエティに富んだ作品集で嬉しい。 表題作の「白い兎が逃げる」は追う側と追われる側がいつの間にか入れ替わる展開。鉄道絡みですが、時刻表トリックが苦手な方でもマニアック過ぎないので楽しめると思います。全体的には特筆すべき作品は無いが、ハズレも無いといった印象。 余談ですが「白い兎が逃げる」はP・T企画がプロデュースし、観客参加型ミステリ(ゲーム形式のミステリ演劇イベント)が開催されるそうです。(2018年9/28~9/30大阪 浄土宗慶典院にて)。 |
No.219 | 8点 | 鬼畜の家 深木章子 |
(2018/08/30 01:23登録) 第30回ばらのまち福山ミステリー文学新人賞受賞作。デビュー作とは思えない程、完成度は高い。新人とはいえ60歳を超えていますが・・・。「弁護士を定年退職したから執筆でもしようか」なんてそんな感じで上手くいくなんて羨ましい。 異常としか思えない家族の人間像がモノローグ、インタビュー形式で語られ露になっていく。とにかく読み進めば進むほど、おぞましい気持ちになっていく。 人物構成や悪行の数々、そしてある人物の死を不可解さを提示しながらストーリーは進み惹きつけられる要素は多い。 分類としてはイヤミスになると思うので万人向けではないが、リーダビリティが高く展開は二転三転し楽しませてくれるし、最後に明かされる真相には騙された快感が残ると思います |
No.218 | 5点 | 離島ツアー殺人事件 辻真先 |
(2018/08/19 01:22登録) のちに「紺碧は殺しの色」と改題された作品。 神の聖域を守ろうとする村民たちと、レジャー事業で一儲けしようと土地買収をもくろむ商社と不動産会社。そんな折、不動産会社社長の関係者が殺される。 思わせぶりなプロローグから何気ない会話、事件直前のさりげない描写、他愛のないエピソードなど散りばめられ伏線が後半に一気に収束し意外な真犯人に導く点は好印象。 ただトリック自体は、大したことないし会話がやたらとエロい方向に脱線している点は不満。(エロ会話はちょっとくど過ぎます) |
No.217 | 6点 | 五つの時計―鮎川哲也短編傑作集〈1〉 鮎川哲也 |
(2018/08/11 09:45登録) 10編からなる短編集で、作者お得意のアリバイ崩しが多めとなっている。 「宝石」の編集長を務めていた江戸川乱歩氏が、当時新人だった作者に実績を積ませるため、立て続けに書かせた作品が中心に収録されているらしい。 「五つの時計」は巧妙な心理トリックをわずかな手掛かりから丁寧に真相に導いていく、精緻を極めたパズルが楽しめる傑作。 「薔薇荘殺人事件」は叙述トリックを絡め、伏線の回収が秀逸なフーダニットとして楽しめる作品。 「道化師の檻」は錯覚をうまく利用した密室もののお手本のような作品。 ただ全体的に登場人物に魅力が少なくストーリー展開も地味に思える。 |
No.216 | 7点 | 細い赤い糸 飛鳥高 |
(2018/08/03 16:22登録) 第15回日本探偵作家クラブ賞受賞作。 一見、何の繋がりもないと思われる4人が次々に殺される。手口は一緒で同一犯と思われるが、手掛かりは現場に残された赤い糸のみ。 なぜ、この4人が殺されなければならなかったのか?この4人には何か繋がりがあるのか?現場に残した赤い糸の犯人の意図とは?と惹きつけられる要素が多く楽しめる。 丁寧な文章と小説全体に仕掛けがあるような構成は素晴らしいし、緊迫感がある雰囲気も好み。 被害者に関わる4つのエピソードを描き、残り数ページで4つの事件をまとめあげるプロットは良く出来ている。結末は後味が悪く、好みは分かれそうですがミッシングリンクものの作品として隠れた名作だと思う。 |
No.215 | 5点 | 超・殺人事件―推理作家の苦悩 東野圭吾 |
(2018/07/25 01:25登録) ユーモアと皮肉がたっぷりの8編からなる短編集。 かなりデフォルメされているとは思いながらも、出版業界の舞台裏や推理小説作家の苦悩を垣間見たような気分になれて嬉しい。 それぞれ面白いが、「超長編小説殺人事件」は馬鹿馬鹿しさを受け入れることができれば、かなり笑えると思います。 ただ、笑いを織り交ぜながらも出版業界の窮乏に対する強い危機感と使命感を示していて違った意味で興味深い。 ミステリとしての面白さは少ないため、点数はこの程度になります。 |
No.214 | 4点 | 扉は閉ざされたまま 石持浅海 |
(2018/07/17 01:18登録) 倒叙形式の作品で冒頭数ページで、すでに犯人と殺害方法は明らかにされている。今後、どのような展開で楽しませてくれるのかと期待したのだが・・・。 このような作品の場合、フーダニット、ハウダニットに関しては犠牲にしているのだから、例えばじりじりと犯人を追い詰める様子とか、精緻なロジックで偽装工作を暴いていくとかが、面白さを左右するのだと思うが(まあ、設定上難しいと思いながらも)、手に汗握る緊迫感は伝わらないし、探偵役の推理のロジックも「普通の人ならば・・・だろう」という類ばかりで行動心理に甘さを感じる。トリックもなあ・・・。 |
No.213 | 6点 | かがみの孤城 辻村深月 |
(2018/07/09 14:07登録) 2018年本屋大賞受賞作。 ミステリ要素は多少あるが、これはファンタジーの世界。ミステリとして期待して読むと、肩透かしを食らうかもしれません。 それぞれが事情を抱え、学校にいけない少年少女たちが、謎めいた城で不思議な体験をする。会話が多くのんびりした感じで進行する点は好みでは無いし、ある真相のヒントは、会話の中にあからさまに出てきて(違和感ありすぎ)、想像できてしまうし、全くその通りだったため、がっかりした。 しかし、それだけでは終わらないのが、この作品の良いところ。残り20ページでもう一つの真相が明らかになり、涙が溢れ止まらない。(久しぶりに本を読んで泣いた) リーダビリティが高く、万人向けといえる。特に中高生には読んでいただきたい。 |
No.212 | 8点 | 北の夕鶴2/3の殺人 島田荘司 |
(2018/06/29 13:50登録) 濃い霧、鎧武者の亡霊、夜泣き石、心霊写真・・・伝説などを事件に絡ませて、胡散臭い雰囲気を漂わせながら、ストーリーは進み惹きつけられる。(雰囲気はとても好み) 事件の謎を解けば、摩訶不思議な現象の謎も解けるという構図になっている。犯人には目星がつき、フーダニットとしての楽しみは味わえないが、ハウダニットとして独創的で豪快なトリックが味わえる。(バカトリックですが)また、吉敷刑事の人間味あふれる魅力が存分に出ていて嬉しい。 建物を上から見た図から、トリックが何となく想像できたが、実際はそれを遥か上を超えていた。トリックが物理的に可能と証明できれば、9点いや10点でもいいです。 |
No.211 | 7点 | 硝子のハンマー 貴志祐介 |
(2018/06/21 01:12登録) この作者は、代表作の「黒い家」・「クリムゾンの迷宮」などホラー作家のイメージがある。しかし、この作品はガチガチの本格もの。(詳細な平面図も嬉しい) 暗証番号が必要なエレベーターに監視カメラ、非常階段はオートロック、窓は防弾ガラスと最新鋭の厳重なセキュリティーシステムの中での密室殺人。 推理すればするほど、不可能さが強まっていく。建物の構造を踏まえ、豊富な防犯知識で、ありとあらゆる仮説を立て検討されていく討論が読みどころでしょう。 前例のない斬新なトリックは素晴らしいが、専門知識が無いと推理が難しい点が残念。 |
No.210 | 5点 | 水族館の殺人 青崎有吾 |
(2018/06/10 01:08登録) 何気ない小道具や手掛かりから、消去法で徐々に犯人を絞り込んでいき、犯人を特定する丁寧な推理は読み応えあり。アリバイ崩しがメインではあるが、ロジック好きには楽しめると思います。 しかし、不満な点も多い。動機には全く納得できないし、違った方法で解決できたはず。さらに、序盤の卓球大会の描写はなんだったの?何かしら事件に絡んでくるのかと思いながら、読み進めていったが、全く関係ないなんて酷すぎる。探偵役のキャラクターも、変なノリだしどうも気に入らない。 |
No.209 | 7点 | 三毛猫ホームズの推理 赤川次郎 |
(2018/05/31 01:16登録) 数多くの作品を輩出している量産型作家でありながら、初期作品は良作が多いというのは、誰もが認めるところだと思う。 この作品も、猫が事件の手掛かりを主人公に導くなど、ユーモアの中に多くの謎を絡ませての伏線回収はお見事で、スケールの大きな独創的な密室トリックに驚かされる。 また、主人公の恋の行方や妹の不審な行動に疑心暗鬼になるなど、人間ドラマとしても読み応えがある。 世評では「マリオネットの罠」の方が評価が高いようだが、個人的にはこちらの方が好み。 |
No.208 | 8点 | 聯愁殺 西澤保彦 |
(2018/05/23 01:12登録) ミステリ作家・私立探偵・犯罪心理学者が集まる推理集団「恋謎会」が、連続無差別殺人の唯一の生き残りの梢絵をゲストに呼び推理合戦をする。 ほぼ全編に渡り、推理合戦が繰り広げられるが、飽きることは無かった。 内容的には古典的な多重解決ものですが、それだけでは終わらない。正統派と思わせておいて、最後には衝撃的などんでん返しが待っている。 大胆なミスディレクションと構図の技巧が光る作品。 再読をおすすめしたい作品のひとつで、初読時とは違った印象を持つと思います。 |
No.207 | 6点 | 十三番目の陪審員 芦辺拓 |
(2018/05/15 01:15登録) この作品は、裁判員制度が施工される十年以上前、「もし日本に陪審員制度が存在したら・・・」という発想から生まれたらしい。 弁護側と検察側の今まで経験の無い陪審員制度に四苦八苦しながら、心理的な駆け引きが繰り広げられ、惹きつけられる。 そして、結審により驚愕の真実が明らかになる。法廷ミステリでありながら、本格ミステリとしても楽しめる、一粒で二度おいしい・・・そんな作品。(古っ) |
No.206 | 6点 | 法月綸太郎の新冒険 法月綸太郎 |
(2018/05/09 01:15登録) パズル・ロジックを重きをおいた作品ばかりで、さすが短編の名手と言われているだけあって切れ味が鋭い。 その中でも一つの事件からガラリと反転する「背信の交点」と語りの仕掛けとトリックが噛み合った「身投げ女のブルース」が好み。 ただ、登場人物に魅力が欠ける点と、ストーリー自体が地味な作品が多いため、パズル好き以外にはお勧めできない。 |
No.205 | 7点 | マツリカ・マトリョシカ 相沢沙呼 |
(2018/05/02 15:11登録) シリーズものと知らず読んでしまった。前2作を読んでから読めば、さらに楽しめたと思う。 過去の密室事件と現在の密室事件の謎を高校生同士が推理合戦する学園ミステリですが、殺人が起きているわけではない。殺トルソーという変わった設定。 二転三転する多重解決ものとしての面白さに、切れ味鋭いロジックから明かされるトリックと犯人の暴き方も実に鮮やか。犯人の動機も青春してていい感じ。青春ミステリが好きな方は、十分楽しめると思います。 余談ですが、「トルソー」って聞き慣れない言葉だったので調べてみましたが、服をディスプレイするときに使う、頭・腕・脚がないマネキンみたいなものらしいです。 |
No.204 | 5点 | 火の虚像 笹沢左保 |
(2018/04/25 01:14登録) コンパクトにまとめられた長編ながら、何気ない中に伏線を張り緻密に考えられた構成は好印象。 ただ、登場人物は少ない事もありフーダニットの楽しさは味わえないし、ハウダニットにしても・・・。自殺に見せかけた2つの殺人はどのように行われたのかという謎が、被害者の心理がもたらす影響と犯人の腹づもりが噛み合いトリックが成立するのだが、この真相はかなり実現性に乏しく好みではない。最後に明かされるもう一つの真実は、ひねりが効いていて良かったと思う分残念。 |