パメルさんの登録情報 | |
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平均点:6.12点 | 書評数:657件 |
No.257 | 5点 | インサート・コイン(ズ) 詠坂雄二 |
(2019/10/12 01:36登録) 懐かしのビデオゲームの世界を題材にした連作ミステリ。 第一話は、フリーライターの柵馬がゲーム雑誌の特集企画で「スーパーマリオブラザーズ」におけるキノコの移動に着目したことから始まるストーリー。山へ動くキノコを探しに行き、そこで奇妙な出来事に遭遇。その謎を柵馬にとって憧れの先輩ライターである流川が見事に解いてみせる。 第二話で扱われているのは「ぷよぷよ」。さらにインベーダー、ドラクエなど懐かしのゲームを題材にしつつ、柵馬、流川、そして作者の詠坂自身も作中に登場する。 ひたすらゲームに没頭した青春が語られるだけでなく、メタな視点を生かしたり、巧みな伏線が置かれていたりとミステリの仕掛けも見事。なにより大人になった今もなお、人生をゲームに捧げ続けている者たちのさまざまな思いがひしひしと伝わる連作集。ファミコン世代ならずとも共感を楽しめるでしょう。 これらのゲームに詳しい方は、より楽しめると思いますが、詳しくなくても、ある程度の知識があれば「日常の謎」?のミステリとして楽しめると思います。ちなみに私は、ゲーム音痴です。 |
No.256 | 4点 | 隠花の飾り 松本清張 |
(2019/09/30 01:35登録) 11編からなる短編集。三十枚という制約の中で書いたそうで、ただ三十枚でも百枚にも当てはまる内容のものをと志して書いたという意欲作。無駄を極力削ぎ落とし、内容を濃密にしようという心意気は、素晴らしいと思う。 「百円硬貨」は、プロットが引き締まり、簡潔でクールな前半の叙述と臨場感たっぷりの終盤の緻密な叙述の対比が鮮やか。 ただ、いわゆる不倫ものが多いが、作者お得意のドロドロとした愛憎劇というのは、影を潜めどうもあっさりとしている。晩年に書かれたそうだが、年を取ってそのような感性も鈍ってしまったのかなと感じた。また、全体としてアイデアも切れ味も不足という感は否めない。ミステリとしては弱いので、変わった味わいの小説として読むのが良いのかも知れない。 |
No.255 | 6点 | 死のある風景 鮎川哲也 |
(2019/09/22 01:12登録) 序盤に提示される魅力的な謎、複数のトリックが絡み合い効果を発揮している巧妙なミスディレクション、難攻不落に思える鉄壁のアリバイ、思いがけない糸口から鮮やかに崩していく推理過程など、本格ミステリとしての魅力に溢れている。3つの事件が、それぞれどのように絡むのかといったプロットの妙も加わり、ワクワクさせてくれる要素は多い。 ただ、アリバイ崩しにかなりの分量が割かれているので、冗長に感じてしまった。(仕組まれたアリバイ工作の有効性が高いので、アリバイ崩しが好きな方は、読み応えがあり楽しめると思います。)また、鬼貫警部シリーズですが、登場するのは第十二章の一章のみ、しかも真相の解説は別人が行うため、シリーズのファンにとっては物足りなさを感じるかもしれません。 |
No.254 | 6点 | むかしむかしあるところに、死体がありました。 青柳碧人 |
(2019/09/13 02:40登録) タイトルや表紙のイラストから見れば分かるように、昔話をミステリに書き換えた挑戦作で、何とも緻密に作られている。 「一寸法師」、「花咲か爺さん」、「鶴の恩返し」、「浦島太郎」、「桃太郎」と誰もが知っている昔話を、少しだけ捻りを加えただけの軽いミステリに終わらせるのではなく、本格的に仕上げているから驚く。「一寸法師の不在証明」は、殺人が行われた時に鬼の腹の中にいた一寸法師のアリバイを崩す話だし、「花咲か死者伝言」は、殺された花咲か爺さんのダイイングメッセージを犬が推理する話、「つるの倒叙がえし」は、鶴が巻き込まれた殺人事件を犯人側から書いていく倒叙スタイルで、「密室竜宮城」では浦島太郎が竜宮城で起きた密室殺人を解き明かし、「絶海の鬼ケ島」では桃太郎伝説とクリスティの「そして誰もいなくなった」を融合させているからたまらない。 昔話を徹底的に戯画化していてブラックユーモアが効いている。また、昔話ならではの小道具がトリックに使われたり、巧緻な仕掛けに意表をつく展開と楽しい作品が多い。その中でも、犯人と動機の解明が鍵となるフーダニット&ホワイダニットとして面白い「花咲か死者伝言」がベスト。 |
No.253 | 8点 | 首無の如き祟るもの 三津田信三 |
(2019/09/07 10:31登録) ここに参加させていただく以前に読んでいたのだが、大まかには覚えていたものの、細部は忘れていたので再読してみた。 女性のような顔立ちの男性、男装をした女性、そして同姓愛疑惑、それらが真実なのか?虚実なのか?そこに跡継ぎ争い問題、因習、祟りなどがホラー的な怪しい雰囲気で複雑に絡んできて、惹きつけられる。真相もどんでん返しを繰り返し、最後の最後まで分からないように工夫がされており、飽きさせないし衝撃度も高い。これぞ、本格とホラーの融合された作品といえる。 「首の無い死体」という今までのパターンに新機軸を打ち出した作例といわれており、トリックに目新しさは無いものの、緻密なプロットによって組み立てられた仕掛けは素晴らしい。事件を巡る多くの謎が、一つの事実に気付くと全てが解明するという構成も巧妙。伏線を一つ一つ確認すると考え抜かれているのがわかる。(これも再読の良さだと思う)ただ、プロットに凝りすぎてある真相に無理がある点は残念。 |
No.252 | 6点 | 黒い家 貴志祐介 |
(2019/08/30 01:10登録) 第四回ホラー小説大賞受賞作。 作者自身の生命保険会社に勤めていた時代の経験をいかしており、リアルさが際立っている。前半の保険業界に関する蘊蓄も興味深く読むことが出来ました。 ホラーといっても霊的な類は一切出てこない。生身の人間の恐ろしさと狂気を描いており、キャラクター造形も巧みで、読んでいてゾクゾクさせられる。中盤以降のスピード感あふれる展開も素晴らしく、インパクトの強いホラー作品に仕上げているといっていいと思う。 ただ、後半のある場面で、そこはまず警察に通報するのが最優先なのでは?と行動に違和感を覚えたり、警察自体もあまりにも無能なため、それまで楽しく読めていたのに、一気にトーンダウンしてしまった。 |
No.251 | 6点 | インシテミル 米澤穂信 |
(2019/08/20 01:27登録) 常識外れの高額時給につられて、正体不明の施設の地下に一週間隔離され観察されるというアルバイトに応募した12人が、次々と死んでいく中を何とか生き延びようとするストーリーで、「バトルロワイアル」に似た設定を本格で行えばこうなるのかなと思う作品。 ボーナスとペナルティーで参加者を煽るルールに、古典名作にちなんだ武器が挑発的な解説と共に配給され、一人づつ死んでいく展開で、参加者それぞれが疑心暗鬼になっていく心理状態が丁寧に描かれ惹きつけられる。 一つ一つの凶器や殺しのシチュエーションにミステリー的な趣向が凝らされている点は好印象。 もともと「機構」の観察下で進行する実験というメタフィクション的な構造がある。証拠を偽造するメタ犯人に、探偵役を煽動する犯人という「操り」構造があって真相は最後の最後まで見えてこない。 「クローズド・サークル」「操りテーマ」「叙述トリック」「語呂合わせ」を露悪的に極端化したような作品。 |
No.250 | 5点 | 鎌倉XYZの悲劇 梶龍雄 |
(2019/08/10 01:07登録) ふらりと立ち寄ったブックオフで、新書版のこの作品を発見し、思わず手に取った。裏を見ると、108円のラベルシールが貼ってある。前にも書いたけど、この作者の作品は、やたらと高い価格で取引されているらしい。スマホで確認するとヤフオクでは出品されていなかったが、アマゾンでは2905円で出品されていた。(本当にこんな価格で買う人いるのかと疑問だったが)とりあえず買うことにした。 殺されて天国に来た被害者が、自分の死の真相を探るべく、天国から遠隔操作によって下界の探偵を使って捜査するというSF的な設定。設定的にはとても好み。ただ、序盤から海外の某有名作品のネタバレがあり、あまり感心しない。ストーリーは、そこそこ面白いのだが、トリックは既読感があり成功する可能性は高いかもしれないが、ちゃちで面白みがない。フーダニットとしては、意外性があり驚かされる(少し反則気味かな?)が泡坂妻夫氏の某作品の二番煎じといえるところが残念。 |
No.249 | 4点 | びっくり館の殺人 綾辻行人 |
(2019/08/02 10:26登録) ジュブナイル作品で館シリーズ第7作。 子供向けという事もあり、文字はやたらと大きいし、行間は広いし、漢字にはすべて仮名がふってあり、逆に読みづらい。(笑)(単行本で読みました) 一人称による騙しのトリック、密室殺人、異常心理を扱ったホラーテイスト、謎解きの遊び心と作者らしさにあふれている。 ただ、この作品のメイントリックは「●●を●●と思わせる」ことですが、想像できてしまう方も多いのではないでしょうか。また、深刻な児童虐待の問題を扱っているので、子供向けとしては、とてもお薦めできない。 ラストに関しても、不気味な含みを持たせた感じで「今後どうなるのかは、読者の皆さん、それぞれ想像してみてください」的な終わり方で、賛否両論あると思うが、個人的には好みでは無い。 |
No.248 | 6点 | 遠海事件: 佐藤誠はなぜ首を切断したのか? 詠坂雄二 |
(2019/07/25 01:12登録) 副題のとおり、ホワイダニットに徹底的にこだわった作品で、ルポルタージュのように描かれている。 稀にみる殺人鬼という強烈なキャラクターに、スリリングなストーリー展開、周到な伏線に緻密なプロット、壮大なミスディレクションに最後の一行での衝撃的なサプライズとミステリとしての醍醐味を味わえる作品といえる。 個人的には行き過ぎたグロテスクな描写は苦手なのですが、生々しいところとサラリと流しているところが、バランスよく感じたため、それほど気にはならなかった。 不満に感じる点としては、多くの人間を殺したのかについては、一応の説明はあるが、詳しく語られてはいないため、佐藤誠の人物像と一致せず、すっきりしないところ。 |
No.247 | 7点 | 天使が消えていく 夏樹静子 |
(2019/07/17 10:43登録) 第15回江戸川乱歩賞、森村誠一氏の代表作「高層の死角」と最後まで争った作者のデビュー作。デビュー作とは思えない完成度で、個人的にはこちらの方が好み。 2つの視点から交互に描かれ、関係の無さそうな一連の事件が、少しずつ一つに繋がっていくところが読みどころ。家庭問題や女性が抱える社会問題を事件の背景とし、女性ならではの視点での、心理トリックも巧妙。真相には、なかなか辿り着けないストーリー展開で飽きさせないし、最後にはどんでん返しも用意されている。驚きの中に感動も与えてくれる作品。 |
No.246 | 5点 | 毒を売る女 島田荘司 |
(2019/07/08 15:28登録) 8編からなる短編集(ショートショートを含む)。 サスペンス中心の作品集だが、ホラー風味、社会派、SF、シュールなものなどバラエティーに富んでいる。ただ、面白いと思ったのは「糸ノコとジグザグ」ぐらい。深夜のラジオ放送に送られてきた謎のメッセージをリスナーと共に、解明していく。タイムリミットサスペンス要素があり、緊張感も伝わってくるし、オチも洒落ていて良い感じ。「渇いた都市」に関しては、松本清張氏が描いたならば、もっとドロドロした愛憎劇に仕上げたと思うので、その点物足りなさを感じてしまった。 これまで7作品しか読んでいない自分が言うのもなんですが、この作者の良さは魅力的な登場人物に、読者を惹きつける雰囲気とストーリーそして、誰もが思いつかないような壮大なトリックだと思っています。トリックに関しては、非現実的なトリックが多いため、あまり好みでは無いですが、雰囲気作りやストーリーの面白さには、毎回驚かされます。その点、この作品は作者の良さがあまり出ていない気がしました。やはり、島田荘司氏には本格ものを書いてほしいし、長編向きだと思いました。 |
No.245 | 7点 | 魔眼の匣の殺人 今村昌弘 |
(2019/06/26 18:50登録) いきなり余談ですが、前作の「屍人荘の殺人」映画化決定おめでとうございます。小説が面白かったら、映画も面白いとは限りませんが見てみたいなと思っています。 クローズドサークルを舞台に、本格ミステリにオカルト要素を組み込んでいる。この配合が、とても良いバランスに思える。 予言に囚われた者たちの殺人劇を解き明かしていく探偵役の剣崎。ロジックがアクロバティックすぎる気もするが、張り巡らされた伏線で一応納得。最後にひねりをきかせ、事件の奥底を掘り下げるのも良い。 前作に比べると、インパクトに欠けるしラジオドラマ的な部分もあるが、ロジックは一段と緻密を極め、本格としての味わいは濃い。フーダニットとしては、前作を上回るのではないだろうか。 ラノベ調な会話など苦手な部分はあるが、この作者は設定のアイデアが抜群に優れているので、しばらく追っていこうと思う。 |
No.244 | 5点 | 早朝始発の殺風景 青崎有吾 |
(2019/06/20 01:27登録) いわゆる日常の謎を解き明かす短編集。 始発の電車で高校生の男女が始発に乗り込む理由を探り合う表題作、女子高生3人がファミレスで学園祭用のTシャツのデザインを決めながら、ある秘密に思い至る「メロンソーダ・ファクトリー」、高校の卒業式を欠席したクラスメートの家で嘘を見抜く「三月四日、午後二時半の密室」など5編のほかに関係者たちのその後を描くエピローグがついている。 青春は「気まずさでできた密室なんだ。狭くてどこにも逃げ場のない密室」という言葉が出てくるけれど、まさに5編とも、青春の密室の中で気まずい思いを抱きながら相手が隠していることを解き明かしていく。 観察・発見・論理が緻密で、それが単にミステリとしての謎解きに終わるのではなく、人物たち(ひいては読者)の生きている世界の鼓動を改めて伝える仕掛けになっている。 優しく温かで、何とも言えない余韻があり、後味がとてもいい。 ただ、謎自体が小粒すぎてミステリとして物足りないし、青春小説としても・・・。ミステリ小説としても、青春小説としても中途半端な感じは否めない。 |
No.243 | 7点 | 天啓の殺意 中町信 |
(2019/06/11 18:12登録) TSUTAYA書店員が、本当に面白いと自信をもってオススメできる作品を、装丁やコピーを変えて展開するプロジェクト「TSUTAYA既刊発掘プロジェクト」に選ばれた作品。 推理作家の柳生から持ち込まれた犯人当てリレー小説。柳生の問題編に対し、タレント作家の尾道に解決編を書いてもらい、その後に自分の解決編を載せる。作家同士の知恵比べをしようという企画が、思わぬ方向に展開へと惹きつけられる。 二転三転する構図に、ミスリードも実に巧妙。叙述トリック小説と知っていながら、しっかり騙されてしまった。ご都合主義と思える点もあるが、ストーリー自体は、とても面白かったのでこの点数。ただ、改題する前のタイトルが「散歩する死者」だったそうですが、なぜそのタイトルだったのかは、今ひとつピンと来ない。 |
No.242 | 5点 | 沈黙のパレード 東野圭吾 |
(2019/05/30 19:44登録) ガリレオこと物理学者、湯川が難事件を解明するシリーズ9作目の長編。 不可解としか思えない死亡事件を巡り、湯川と内海刑事が議論を繰り広げながら、捜査を進め仮説を立てては崩すというところが読みどころ。 また、推理の最中に某有名推理小説のタイトルを引き合いに出すという、海外古典ファンが思わずニヤリとしてしまう場面も用意されている。 最終的に辿り着く真相は意外性があるし、トリックも実現可能に感じる点は好印象。ただし、フーダニットとして読者は推理のしようがないし、トリックも専門知識が必要、そもそも、ストーリーに魅力を感じなかった。先が気になって仕方がないという感情が、残念ながら湧き上がらなかった。前作より約6年ぶりの作品だっただけに、長く待った分、ガッカリ度も大きい。 |
No.241 | 4点 | 『アリス・ミラー城』殺人事件 北山猛邦 |
(2019/04/23 01:13登録) 孤島にある「鏡の国のアリス」をモチーフにした奇妙な城に集められた探偵たち。そこでの密室殺人に人物消失トリック。殺人事件が起きるたびに、消えていくチェスの駒とワクワクさせられる要素は多い。 クリスティの「そして誰もいなくなった」をベースにした綾辻行人氏の「十角館の殺人」をさらにベースにし、作者お得意?の物理トリックをプラスしたような作品。 この作品のメインとなるトリックは、いわゆる叙述トリックになるのだが、同種のトリックには筒井康隆氏の某有名作品の先例がある。筒井康隆氏の場合、一人称でミスリードするが、この作品は三人称で展開していく。 集団状況における人間心理に目をつけ、「木の葉を隠すなら森の中へ」という従来の本格ミステリの思考回路ならば「人間を隠すなら人間の集団の中へ」となるだろうが、作者は「人間を隠すなら●●として●●●●」と発想をずらした。このような発想だけは意外性があり評価できる。 ただし、読者に対し推理できる手掛かりが少ない点は不親切に感じるし、行動があまりにも不自然なためトリックとして成功しているとは言い難い。また動機に関しては、納得いく人はいないでしょう。 久しぶりに、読書に費やした時間を返してくれと思った作品。(3点と迷ったほど) |
No.240 | 5点 | 必然という名の偶然 西澤保彦 |
(2019/04/11 12:59登録) 腕貫探偵シリーズの舞台、櫃洗市で起こる奇妙な六つの事件を描いた連作ミステリ。本作は、腕貫探偵は登場しないので番外編の位置付けとなるのでしょう。 表題作の「必然という名の偶然」は、高校の卒業生が異様な法則に従って次々と不審な死を遂げるという、偶然の連鎖としか思えない一連の出来事に、意味のあるパターンを見出してしまう人間の性を逆手に取ったもので、謎の奇妙さはもちろんのこと、その謎を見る角度を変えることにより、予想外の真相が明かされる展開は素晴らしい。 「エスケープ・ブライダル」「エスケープ・リユニオン」の二編は、大富豪探偵・月夜見ひろゑが登場し、莫大な資金力で金に物を言わせ名探偵になるという設定の連作。元ネタである筒井康隆氏の「富豪刑事」(ドラマ版)について触れているのは楽屋落ちのギャグですが、ドラマを引き合いに出していることからもうかがえるように、お騒がせキャラを前面に押し出したユーモアミステリで腕貫探偵シリーズの本編とは、かなり雰囲気が違います。 |
No.239 | 6点 | リピート 乾くるみ |
(2019/04/03 15:37登録) タイムトラベルもののミステリ。もし過去に戻ることが出来て、人生をやり直すことが出来たら・・・。このような設定で有名なグリムウッドの「リプレイ」に、クリスティの「そして誰もいなくなった」を合わせたような作品。掟破りのクローズドサークルとして、ミッシングリンク、パラレルワールドを楽しむことが出来る。 リピーターたちが、次々と命を落としていくのは何故かという謎がSF設定を巧妙に絡ませている点と、後半の怒涛のサスペンスフルなストーリー展開は好印象。ただ、主人公たちがリピートするまでがやたら長く冗長に感じる。もう少しコンパクトにまとめれば、真相もさらに引き立ったのではないだろうか。 |
No.238 | 5点 | 鈍い球音 天藤真 |
(2019/03/26 11:08登録) 作者お得意のユーモあふれるミステリ。野球ミステリですが、野球のルールを知らなくても楽しめると思います。(知っていればさらに楽しめるという感じ) 日本シリーズ開幕直前に、プロ野球の監督が忽然と姿を消してしまう。トレードマークの髭とベレー帽だけを残して・・・。は?何このぶっ飛んだ設定は?と冒頭から引き込まれた。 失踪なのか?誘拐なのか?何か陰謀が絡んでいるのか?いろいろな憶測が飛び交うが、終盤まで明らかにされず飽きさせない。 また、男勝りの監督の娘を筆頭に、個性派ぞろいの登場人物にも魅力があふれていいる。 野球の勝負が決まると同時に事件も解決するという構成も素晴らしい。 ただ、人間消失トリックは見当がつけやすいし、動機も今ひとつ釈然としないところが残念。 |