殺意の設計 矢部警部補 |
---|
作家 | 西村京太郎 |
---|---|
出版日 | 1976年08月 |
平均点 | 6.00点 |
書評数 | 4人 |
No.4 | 6点 | 斎藤警部 | |
(2024/11/26 22:04登録) 「酒も女も忘れて、追いかけられるような事件に、ぶつかってみたい。 そのチャンスを、貴方が、持って来てくれたんです」 京太郎風あっさり味のボワロー&ナルスジャック。 登場人物表には7名で足る。 (すみません、いい加減なこと言いました。 それと、出来れば8名か9名にしたい) タイトルにそぐわず、建築設計士や工業デザイナーではなく、画家二人が中央に登場するフレンチスタイルのサスペンス。 浮気性でもない夫の画家がモデルの女と軽い戯れ。 これに憤った妻は旧い知人の独身男(やはり画家)に相談を持ち掛け、やがて緩い構造の四角関係が出来上がる。 このあたりはきれいなロマンス小説のように描かれる。 そこへ来て、四人のうち三人が集まった所で、うち二人が服毒死。 うち一人は結構 「意外な被害者」 で、その後のストーリーのうねりに大いに期待を持たせる。 二人の死は●●●●か謀殺か、がポイントとなる。 仮に或る人物による謀殺とした場合、その動機が大いなる謎の壁として立ちはだかる。 「推測は、あくまで、カード遊戯だ。 殺人事件は、ゲームじゃないのだから、カードで解決はできない」 冒頭から或るトリックへの伏線が仕込まれていたのには、ずっと後になって驚いた。 小味な隠し場所トリック、薬屋での誤●トリックも良い。 小説の大枠構成には読ませる工夫あり。 画家(達)ならではの心理の機微トリックも効いた。 何より、最後の最後までストーリーを絞りに絞り出した挙句、短い最終章でようやっと暴露された 『動機』 を包み隠す、強大にして強靭な '消極的' ミスディレクション。 しかも絞り出されたのは “それ” だけじゃない。 スリル溢れる見せ場もあった。 最後の数文が、沁みまくる。。。。 「でも、見あきたら、返して下さいね」 人並由真さんの仰る > ここはひとつ連城の「花葬シリーズ」レベルのスゴイのが来ればいいな、と期待した これですよ。 めっちゃ期待させるんですよねえ。。 |
No.3 | 6点 | まさむね | |
(2024/06/27 22:22登録) 前半は夫の浮気に疑念を持つ妻の視点。心理サスペンスの側面もあって、西村作品としては新鮮な印象も受けます。一転、後半は刑事の視点で、これはいかにも西村先生らしい展開。 こういった構成も含め、面白く読ませてはいただいたのですが、犯人としては、あまりにも都合の良い手法というか、結構なリスクを負う手法を採っているのではないかという違和感は残りました。特に、井の頭公園、かな。 |
No.2 | 6点 | パメル | |
(2020/05/04 09:25登録) 前半は麻里子の視点、後半は矢部警部補の視点で展開していくが、前半の浮気に悩む人妻のストーリーが絶妙な効果をあげている。後半にはいると、それまでの出来事が別の解釈により、鮮やかに反転し驚かされる。 大きなトリックはありませんが、死の瞬間の些細な矛盾点、妻の肖像画に関するトリッキーな仕掛け、毒薬の購入の小技など、地味で渋いトリックを次から次へと繰り出してくる手際の巧さはさすが。 叙述上のある仕掛けもありますが、これは察しやすいと思う。なお肖像画に関する真相には、その時のある人物の心情を察して泣ける。 |
No.1 | 6点 | 人並由真 | |
(2019/07/08 03:04登録) (ネタバレなし) 世評の高い31歳の新鋭画家・田島幸平。その妻で27歳の麻里子は、匿名の密告状を契機に、夫が20歳の美人モデル・桑原ユミと浮気している秘密を知った。親族がいない麻里子は、仙台在住の旅館の若主人・井関一彦を手紙で東京に呼び出し、苦しい胸の内を打ち明ける。井関は幸平の親友で、かつては東京で同じように画家を志した身であり、そして麻里子と幸平と三角関係にあった。麻里子の訴えを聞いた井関は幸平とも対面し、良い結果を求めて尽力するが、やがてある夜、田島家の中で突然の死が……。 作者の(比較的)初期長編。 途中で、いかにも、これ見よがしっぽい仕掛けが覗くので、この時期の西村作品はこんなレベルで読者を引っかけようとしていたのか? と一瞬興が醒めた。しかしそのまま読み進めると、作者はしっかりと物語のその奥まで読み手に晒し、そんな上でさらに謎解きミステリとしての興味を煽ってくる。 安易にプロの作家を舐めてはいけないと、少し反省。 とはいえ事実上、物語の中盤には、犯人は絞られてしまうのでフーダニットとしてはそこで崩壊。あとに残る最大の興味は、動機の謎のホワイダニットとなる。 それでこちら読者としてもミステリファンの欲目があるので、ここはひとつ連城の「花葬シリーズ」レベルのスゴイのが来ればいいな、と期待したが、残念ながら結末は意外に地味な感じであった。 ただし容疑者が中盤で狭まった分、探偵役である警視庁の矢部警部補(十津川シリーズや左文字シリーズにも客演する、作者の地味な? レギュラーキャラクター)と犯人役の対決の構図は際立ったけれど。 それでも犯罪計画の組み立てを暴いていく流れは全体的に丁寧で、その辺は好感。物語の後半、脇役として登場して矢部警部補を支援する雑誌ライター(記者)・伊集院晋吉の妙に人間臭いキャラクターも、ちょっと印象に残る。 西村作品の初期の単発ものには結構面白いものがあるので期待したのだが、これはそこまでの思いには応えてくれなかったものの、それなりには楽しめた一冊であった。佳作。 |