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ミステリの祭典

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了然和尚さんの登録情報
平均点:5.53点 書評数:116件

プロフィール| 書評

No.96 7点 兄の殺人者
D・M・ディヴァイン
(2015/12/30 14:44登録)
3、4年前に他の作品を読んだときには、他視点もので馴染みにくい感じがして評価が低かったですが、本作は良かったです。巻き込まれ型主人公の一人称スタイルなので、まあ読みやすさは確実なのですが、本格としての手がかりの散らし方も良くできていました。個人的には犯人に目星がついたので、その検証(犯人であり、オリバーの相手である)を考えながら読みましたが、否定の仕方(ごまかし方)が嘘的なことが多くてやや不満で残念でした。
今後もデヴァインは続けて読もうかと思いますが、なんか本作が最高とかいう評価をちらちら見ますので、気になりますねえ。


No.95 5点 時計の中の骸骨
カーター・ディクスン
(2015/12/28 16:59登録)
カーの作品は30年くらい前にほぼ全部一回は読んでいるのですが、本書は初読。あらためて書かれた順番で読んできましたが、本作は初期の頃のスタンダードなカーの雰囲気に戻った感じですね。で、内容は平凡なので、結果としてぼちぼちな感じです。
本作は、自分には意外な犯人でした。ネタバレで書きますが、子供が犯人であるというのは、あの有名作品の専売特許かと思っていたので、カーにもあったというのが驚きでした。あとがきで書いてあったのですが、この犯人は「曲がった蝶番」の変形で(どっかでクリスティーが先にやられたと言ったとか書いてたっけ)カーとしては自慢のトリックだろうと思います。
その落下トリックですが、冷静に考えるとむこうずねの裏を殴られて前に倒れるか後ろに倒れるかが1/2のような気もしますが、痛そうなので実験する気にはなりませんね。
本作は前半の内容であれば、犯人は死刑部屋に閉じ込められたアリバイの完璧な男で、ちゃんと血の付いた剣で時間トリックもはってあり、共犯らしき女性の行為も出てきます。この燻製にしんに比べると、過去の事件はトリッキーですが現在の事件があまりにも意味不明なので、全体にまとまりがなくなってます。



No.94 4点 落差
松本清張
(2015/12/23 14:30登録)
本格ものを基準とした祭典ですので4点ですが、読み物としては6点ものです。本作では、推理要素とかは出てきませんし、傷害事件(多分起訴猶予?)が1件あるだけです。
本作の主人公の大学教授は、最低エロ爺(40代半ばだが、まあエロ爺と呼びたい)で、「わるいやつら」のボンボン医師が可愛く思えるぐらいの悪党です。いつ報いを受けて命乞いするような死に方するのかとページが進みます。
犯罪小説ではないのですが、最後に関係者一同が高知に集まってクライマックスを迎えるあたり、清張流で、結末がぼんやりというのも、いつものパターンですね。
作品の舞台は教科書検定なんですが、昭和35年頃の話です。つい先日、出版社が学校の先生の接待等でニュースになってましたが、50年以上進化なしですか。。。


No.93 3点 バートラム・ホテルにて
アガサ・クリスティー
(2015/12/22 08:21登録)
5、6年前に読んで再読。あまり面白くなかった印象があったが、再確認。その割に不思議と犯人とかそこに至る展開とかはよく覚えていたりします。(不満すぎて印象が強かったかな)
内容は「ビッグ4」なみの駄作ということでおわかりいただけるかと。ちなみに、「ビッグ4」は完走すらできなかったので、評価不能でしたので、本作は最後まで読めるだけ上かな。



No.92 6点 カリブ海の秘密
アガサ・クリスティー
(2015/12/17 12:14登録)
前半はクリスティーものあるいは翻訳物の特色として、やたらカタカナ名前が乱発し、しかも本作は登場人物紹介が関係者11名がひとくくりで「帯在客」となってたりします。比較的早く事件が起こるのが救いですが、なんかアウェー感みたいな読みにくさです。(マープルの心情?)それが、中盤からスピードアップして、ぐんぐん面白くなり300ページとは思えない充実感で終わります。この立体感を感じる構成がどこまで作者の意図なのか偶然なのか興味のあるとこです。平凡な内容にもかかわらず、比較的皆さんの評価が高いので、作者の実力なんでしょうね。


No.91 5点 人形はなぜ殺される
高木彬光
(2015/12/13 13:09登録)
完璧なアリバイがあると思われる関係者が、一つ大きな仕事の後で大食いしてるところで犯人であると見当がつきました。犯人がわかれば、「人形はなぜ殺される」の意味にたどり着くわけですね。同機も第一の犯行をからめて推測できるのですが、登場人物が被害者一家の財産所有を否定したのは、ちょっと反則ですね。
自分の推理どおりの展開で、7点ものの楽しさだったのですが、探偵が間違えてしまうという、残念な話になって、マイナス2点です。間違った推理に費やされたページは、最後の殺人において、AプランからBプランに切り替わったあたりをもう少し描いたほうが面白くなりそうですね。
第一の殺人において、精神病院にいきつくまでは、読者も犯人は推定しえない。この状況において神津先生は、データが足りないと言って全くやる気がなく、精神病院訪問で、結果的には首なし死体の首(の部品)と遭遇している。この辺りの本格推理の構成が素晴らしいですね。

最後の結婚式のシーンで、ぶち壊せと命じられた松下君は何か因縁をつけていましたが、突然花嫁にプロポーズして逃げていく(「卒業」ですな)シーンを空想してしまいました。本作の映像化の時は、ご一考を。


No.90 7点 掏替えられた顔
E・S・ガードナー
(2015/12/10 12:28登録)
ペリーメイソン12作目。ここまで続けて読んできましたが、よく言われるようにどれも平均点な感じで、外れがないです。(当たりもないと言われるけど)その中でも本作はベストに近いのではないでしょうか。
事件が見事に最後に一つにまとまっています。本格志向なので、伏線もうまくひらっています。鮮やかすぎて、引っかかりがなく印象に残らないことが欠点といえるぐらいの出来です。法廷ものとしても目撃者の視力(今では平凡だが)とか、デラの謎の失踪とか、検察側をはめて弁護側に有利な証人を探させるとか、あくまで論理で読ませてくれます。
ポケミス版ですが、入手に苦労しただけのことはありました。
(次作もポケミスですがなかなか見つからないですね)


No.89 4点 厭魅の如き憑くもの
三津田信三
(2015/12/08 16:01登録)
最後の推理の場面がダメすぎ。「一体いつまで私らは、こんな茶番に付き合わないけませんのやろうねぇ」(まったくです) 撒いたもん全部出したいのはわかるが、これではダメ。カー、クリスティーなども別解答は匂わすが、ここまで平坦に並べたら台無し。
叙述トリックも、私にはどうでもいい要素なので、評価低いです。デクスターとかと比べて、多視点の書き方下手だなと思ってましたが、トリックのためだったというのは残念。
読後感はなんとなく「すべてがFになる」(森博嗣)を思い出しました。


No.88 5点 終りなき夜に生れつく
アガサ・クリスティー
(2015/12/03 14:24登録)
<クリスティー作品ネタばれまくり>

この作品を評するにどうしてもこう書きたい
アクロイド殺し(1926 )+ ナイルに死す(1937) ー ポワロ
本作の前後においては
1965 バートラムホテルにて(マープル)
1966 第三の女(ポワロ)
1967 終わりなき夜に生まれつく
1968 親指のうずき(トミタペ)
と、年一作の時期において、あえてのノンレギュラー探偵ものでした。探偵を出すとやっぱり一人称のトリックが再利用と批判されるからでしょうか。出版当時の評価に興味があります。
アクロイドよりは物語として面白いと思いますが、ナイルに死すの方が本作よりは面白いと思います。
テレビドラマではマープルものになってました。「犯人はお前だ」はやっぱり欲しいですね。


No.87 6点 青ひげの花嫁
カーター・ディクスン
(2015/11/30 15:36登録)
まず11年前の殺人鬼と不可能犯罪が語られて、現在においてさあ、殺人鬼は誰でしょう?という趣向は、良かったし、犯人を演じる役者(終始、燻製にしん)というのもはまっていたので、7点ものだったのですが、読書後、整理してみると、そもそもの発端である殺人鬼が自伝台本を役者に送るあたりの心情とか必然性が不明で、マイナス1点でした。
 H.Mは本作でもゲーセンでクレーンゲームにパンチバッグぶつけるなど大活躍ですが、肝心の推理では、最終盤に妙な活劇を物陰でじっと見つめているだけで、イマイチでした。
 本編ではないのですが、あとがきにて翻訳者さんが、歴史上の殺人者を小辞典並みに解説されてますので、参考までに名前だけでも上げておきます。
ランドリュー、スミス(浴室の花嫁)、ドゥーガル、ソーン、ディーミング、マニング夫妻、グロスマン。なお、切り裂きジャック、クリッペン この2名は有名すぎるので省略されてます


No.86 6点 高校殺人事件
松本清張
(2015/11/29 13:45登録)
252ページ一気読みできた本でした。高校生雑誌向けということもあり文章が平易で読みやすかったということでしょうか。構成的には特に高校生向けを感じない内容でしたが、主役が高校生グループというのが対象読者へのサービスでしょうか(あまり生きてなかったが) むしろ開発されていく武蔵野の風景描写に味がありました。ま、私は関東圏ではないので実感は薄くて残念なんですが。
で、結末はいつもの清張のパターンで残念な終わり方なのですが、終盤に「萌えいとこ」が探偵役で登場しますが、これは衝撃でした。(プラス1点)
本書が好評であったのなら(多分、良くなかった?)、続編として女子高生探偵ものが連続して書かれて、推理小説の進化が50年早まったのではとかと妄想してしまいます。ちなみに女子高校生探偵たちの愛読書はクリスティーとガードナーだそうです。


No.85 6点 刺青殺人事件
高木彬光
(2015/11/28 19:56登録)
本サイトで人気の「人形」の方を読む前に、ちょっと復習で35年ぶりぐらいに再読。角川S48年版です。メインの双子に関するトリックと密室の仕組みは35年間記憶してました。犯人の相方の方と、動機周りの状況は忘れていましたが楽しめました。犯人のアリバイがしょぼすぎて、死体の密室への持ち込みという工夫まで曇らせてる感じがしました。こんな、単純なごまかしのアリバイならむしろない方がいい感じでした。構成要素はいいと思うのですが、「なんでこれがこうなる必要があるのかな」みたいな、まとまりの悪さが気になるデビュー作でした。
神津恭介もちょっと淡白に表現されている感じで物足りない登場に思えましたが、そういえばD坂の明智も本陣の金田一もこんな雰囲気でデビューしてたなと思い出しました。


No.84 7点 鏡は横にひび割れて
アガサ・クリスティー
(2015/11/25 12:43登録)
探偵は間違ってはいけないというのが私の好みですが、マープルは早々に真相の線を否定します。前にもマープル物でこのパターンがあったので、今回も怪しいなと思い、まあ楽しく読めました。マープル婆さんは、史上最高の素人探偵の称号が似合いますね。(プロにあるまじき思い込み)
本作の犯人は、上記の罠をかいくぐればすぐにわかるわけで、動機の意外さが売りです。過去の無意識の加害者と復讐というのは、いいテーマですね。
「会話中の人物の話の内容で顔色が変わったが実は肩越しに何かを見つけて驚いた」という話はよくあるのですが、これをひっくり返して「うわの空で会話中の被害者の肩越しにないにかを見て驚いたと思ったら、驚いたのは会話の方だった」 過去の作品前提ですがいい発想ですね。


No.83 7点 眠れるスフィンクス
ジョン・ディクスン・カー
(2015/11/23 12:25登録)
本作のトリックについて考えたのですが、完全犯罪ですね。服毒心中をはかり(男女は別の場所で)、しかし被害者は狂言自殺のつもりで、服毒後に助けを呼ぶつもりであったが、相手の方が、こっそり麻薬を混ぜておいたために助けを呼べずに絶命。この場合相手のアリバイは完璧ということになる。被害者の自作自演を強調すればいくらでも不可能犯罪になりそうです。(密室とかからめて)
で、カー先生は解けない謎は本格ミステリーではダメと言わんばかりに、多くの手がかりを残しながらわざわざ犯人が被害者に一撃食らわしにやってきます。この辺の古臭さがいい味ですね。
(いつものように、細かく手がかりをまいてますね)
結末について、プラス1点です。この時代の小説なら若い二人のハッピーエンドでちゃんちゃんかと思うのですが、ドリス・ロック嬢の犯人擁護の発言は真犯人より意外で、結末にある種の苦さを与えています。最近の作家さんの作品ならよくありそうなのですが、1947年の作品なのですからね。
全く、若いやつは何を考えてるのかわからん。


No.82 7点 ポンスン事件
F・W・クロフツ
(2015/11/20 16:50登録)
クロフツと松本清張は似てますね。展開がわかりやすく、スリリングで読み飽きさせないのですが、その分、謎は出尽くしてしまうので、ラストはちょっとさみしくなりやすいです。また両者とも、時代の雰囲気や旅情の描写が得意で、作品の雰囲気の醸しだし方がうまいです。本作なんかは、まるで25年物のウイスキーを飲んでいるような熟成感があり、推理小説も時代を経て、味が出る作品もあるんだなと感心しました。


No.81 8点 青銅ランプの呪
カーター・ディクスン
(2015/11/15 02:26登録)
巨匠の作品で、おそらく自分の読書人生で、二度とはない作品パターンと評価して8点。今年の新人作家の作品でしたとかで読まされてたら、迷うことなく1点。
このサイトではネタバレありですが、それでもこの結末は書くことを控えておきます。
(長編でありながら、短編的結末というのが評価を分けるでしょうね)
そもそも推理小説では思わせぶりなセリフや場面は多いものなのですが、本作は特に中途半端な雰囲気が多く、読んでいてイライラしました。それが見事にマスターズの気持ちとシンクロし、H.Mが失踪後に呑気に現れた時にマスターズが鋭利な彫刻用のナイフを掴みかけたというのは、笑えすぎました。

本作で、初めて「クイーン談話室」という本のことを知りましたので、早速、中古本で発注しました。


No.80 5点 チムニーズ館の秘密
アガサ・クリスティー
(2015/11/10 11:12登録)
本格物ではないスパイ、冒険物の系統なのですが、既読感があり軽い感じで読みやすかったです。逆に言えば、人物や構成が薄く、平凡でした。「偽りの人物とその正体を知る者の排除」というのが既読感の正体だったようですが、クリスティーでは最もよく出てくるモチーフではないでしょうか。


No.79 5点 悔恨の日
コリン・デクスター
(2015/11/05 22:49登録)
モース警部最後の登場作です。モース警部最後の事件とはタイトルされていません。なんせ「XXX最後の事件」の場合は犯人はXXXな訳ですから。 ところが、序盤よりXXX最後の事件っぽく匂わせてくれてます。 で、メインの事件の犯人は、後期の他の作品のように、『あ、それもありね。どうでもいいけど」みたいな感じで終わりますが、「XXX最後の事件」のパターンを踏まえて、作者のひとひねりが炸裂します。(アクロバチックとまでは言わないが。)
 ところで、今年の夏はサントリー山崎蒸留所に見学に行きました。それからモルトウイスキーに興味を持ち、ちょっと勉強しましたので、銘柄が多く出てくる本シリーズは楽しめました。
そして、モースの末期の水はグレンフィデックでした。この、まあありふれたシングルモルトを目にするたびにモースを思い出すことになりそうです。 


No.78 4点 死はわが隣人
コリン・デクスター
(2015/10/28 17:21登録)
モーズ作品中では最もイマイチ。特に1件目の殺人の起こる前半部分が面白くない。前作から、作品中の謎よりモースの健康が気になって読んでいたせいか、中盤の後半で入院(糖尿病なんや)したあたりからテンポが良くなり、ちょっと面白くなります。(相変わらず他人事とは思えんな)
 結局、平凡な替え玉によるアリバイトリックとか、いつもにも増してどうでもいい真犯人とかで評価は低くなりますね。ま、シリーズも残りあと1冊ですので頑張ります。


No.77 5点 カインの娘たち
コリン・デクスター
(2015/10/27 11:08登録)
ミステリーの内容よりも、モーズの病状の方が印象に残ります。年齢と生活ぶりが他人事とは思えないので。謎の構図は意外と深く、単純なトリックではないのですが、うまく生きていない気がして残念です。それにしてもデクスターの作品は(前にも書いた気がしますが) 死が頻繁に出てきます。事件による死以外に、自殺、事故死、病死など出てきて、作品を暗い雰囲気にしています。ホームズと並ぶ人気というのがよくわからないですね。テレビシリーズの影響なんでしょうか?(こちらは見たことないです)

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