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ミステリの祭典

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悔恨の日
モース主任警部シリーズ

作家 コリン・デクスター
出版日2000年10月
平均点5.50点
書評数4人

No.4 5点 レッドキング
(2021/12/09 18:13登録)
デクスター(長編)第十三作にして最終作。モース最後の事件と言うより最後の挨拶。シリーズの最初から最後まで、オックスフォード舞台に展開する「まあ普通」の殺人・行方不明事件。数名の容疑者達の「いかにも」なカット描写断片によるWhoWhyWhatパズルと、ちょっとしたアリバイトリックHow。そして毎回の様に現れる、主役モースも絡んだ中年初老男女の爛熟した性愛・・・何という首尾一貫性。それでも、最後に決めてくれた「確信的無神論者」モースのちょっといい話・・「我がムラの直なる者さに非ず。父は子の為に隠し、子は父の為に隠す。直きことその中に在り」の孔子を地で行く様な・・で、採点には少しオマケ。

    てことで、コリン・デクスター長編全13作の採点修了したので、
    私的デクスター長編ベスト3
           第一位:「死者たちの礼拝」
           第二位:「森を抜ける道」
           第三位:「キドリントンから消えた娘」

追記:おお!「The Re(MORSE)ful Day(=ふたたびモースいっぱいの日)」! すげえな、「雪」さんサンキュウ!

No.3 6点
(2019/10/02 15:32登録)
 一九九八年七月十五日、休暇中のモースは自宅にストレンジ主任警視の訪問を受けた。ストレンジは彼に、約一年前コッツウォルドのロウワー・スウィンステッドで起こった殺人事件の再捜査を命令する。
 〈チョウゲンポウ〉と名づけられたジョージ王朝風の自宅のベッドで、裸に手錠をかけられさるぐつわをかまされて横たわっているラドクリフ病院の正看護婦、イヴォンヌ・ハリスンの死体が発見された事件。発見者は夫のフランクで、妻の様子がおかしい、すぐ帰るようにとの電話を受けて自宅に急行したのだった。家じゅうの部屋にはあかあかと灯がともり、玄関は開けはなたれ、するどく青い光をはなつ盗難防止装置のベルが鳴り続けていた。
 犯人の挙がらぬまま長らく放置されていたのだが、一週間ほど前、ストレンジの自宅に捜査の再開をうながす匿名電話が二度掛かってきたというのだ。電話の内容には、新聞報道では知り得ないことがふくまれていた。
 気乗りしないモースに代わって捜査を受け持ったルイス巡査部長は、電話の指示に従い犯行当時〈チョウゲンポウ〉に不法侵入していた泥棒、ハリー・レップの追跡を試みる。模範囚として刑務所から早期釈放された彼を車で尾行するも、巧みに撒かれてしまうルイス。レップはそのままどこにも姿を現さなかった。一方モースは、廃棄物処理場の埋立て地に彼の死体が搬入される可能性があると推測する。だが、やがて捨てたばかりのごみの中から発見された男は、レップではなかった・・・
 1999年発表のモース主任警部シリーズ最終作。かなり厚めの作品ですが、登場人物たちの意外な関係を軸にしたトリックに加え、周到な伏線が張られています。ただ出来ればもう一押し欲しかったところ。「最後の事件」としての捻りは申し分無いですが。
 気が進まないと言いながら、悉くルイスの調査に先回りする主任警部。彼の怪しい動きが作品のスパイスとなり、ボリュームたっぷりながら無理なく読めます。久し振りにゴリ押しで活路を開くというか、モース以外には解決出来ないであろう事件を最後に用意してくれたのが嬉しい。タイトルも"THE RE(MORSE)FUL DAY"と洒落ています。

No.2 5点 了然和尚
(2015/11/05 22:49登録)
モース警部最後の登場作です。モース警部最後の事件とはタイトルされていません。なんせ「XXX最後の事件」の場合は犯人はXXXな訳ですから。 ところが、序盤よりXXX最後の事件っぽく匂わせてくれてます。 で、メインの事件の犯人は、後期の他の作品のように、『あ、それもありね。どうでもいいけど」みたいな感じで終わりますが、「XXX最後の事件」のパターンを踏まえて、作者のひとひねりが炸裂します。(アクロバチックとまでは言わないが。)
 ところで、今年の夏はサントリー山崎蒸留所に見学に行きました。それからモルトウイスキーに興味を持ち、ちょっと勉強しましたので、銘柄が多く出てくる本シリーズは楽しめました。
そして、モースの末期の水はグレンフィデックでした。この、まあありふれたシングルモルトを目にするたびにモースを思い出すことになりそうです。 

No.1 6点 nukkam
(2014/08/14 16:16登録)
(ネタバレなしです) 当初は前作の「死はわが隣人」(1996年)をモース主任警部シリーズ最終作とする予定だったのが読者からの抗議が殺到して書き上げられたのが1999年発表のシリ-ズ第13作の本書で、今度こそシリーズ最終作です(未発表の隠し玉作品が出てこない限り)。そういう経緯で書かれるとおまけレベル、下手をすると蛇足的な作品になってしまうのですが本書はいい意味で裏切ってくれました。これは最終作にふさわしいし、内容的にも前作より優れていると思います。シリーズ中かなりの大作となりましたが謎解きプロットはしっかりしていますし、最終作としての演出もばっちり極まっています。作中で「ウッドストック行最終バス」(1975年)のネタバレがあるので最低でもそちらは先に読了しておくことを勧めます。それからハヤカワ文庫版はシリーズ全作を同じ訳者(大庭忠男)で統一していますが、本書の翻訳時には訳者は八十歳を超えていたとか。高齢に加えて緑内障と戦いながらの達成には本当に頭が下がります。これこそプロの仕事ですね。

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