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ミステリの祭典

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斎藤警部さんの登録情報
平均点:6.69点 書評数:1305件

プロフィール| 書評

No.285 7点 人蟻
高木彬光
(2015/09/09 01:15登録)
言うほど社会派魂は求め得ないが、先の大戦から繋がる大規模悪事を起爆剤に使った、人間達の因縁蠢く昭和サスペンスの力作。


No.284 2点 失踪当時の服装は
ヒラリー・ウォー
(2015/09/03 16:19登録)
こりゃ私にはダメでした。全く面白い所が見つからない。
地味な捜査の物語は好きですけどね、この本はなんだか、捜査の模様を物語興味度外視でつらつら並べてる文書みたいで。
私にとってはブランドの「ハイヒールの死」に通ずる上滑りの退屈感でした(作品のタイプはまるで違うけど)。
中身とはまったく別の経緯で、想い出深い本ではあるんですけどね。


No.283 3点 黄金を抱いて翔べ
高村薫
(2015/09/03 15:09登録)
琴線に触れずじまい。 所々、気を引く描写はあった。
折角の大型犯罪物語ですが、とうとう最後までわくわくしませんでした。 登場人物のキャラクターは巧みに書き分けられているし、格調高めの文体も素敵だが、それでもきっちり楽しめなかった。 
そのむかし旅先でふらっと買って読んだ本なので、それなりに良い想い出にはなっています。


No.282 7点 死火山系
水上勉
(2015/09/03 12:24登録)
山岳冒険ミステリではなく林業社会派ミステリという如何にも地味な本です。 農業や漁業と異なり戦後改革の嵐を逃れた林業界ならではの封建的因習を背景とした謀殺事件が語られます。ある登場人物への評価が最後にクルリと反転してしまうのが、本作の推理小説としての鍵でしょうか。


No.281 5点 蒼ざめた礼服
松本清張
(2015/09/01 12:13登録)
そのむかし祖父の本を借りて読みましたが、高校生の身にはちょっと地味過ぎたかな。。 いや、他の地味な作品をいくつも愉しんで読んでいたし、やはりこの作品が微妙に合わなかったのでしょう。清張では初めて「いまひとつ」と思った作品かな。延々と重苦しいムードで続く物語は今ならもう少しイケるかも知れない、という予感を込めて一点追加。そういや「海苔」のくだりがやけに印象深い。


No.280 6点 聞かなかった場所
松本清張
(2015/09/01 12:06登録)
サクサク読めちゃう本ですね、短く、軽く。 高校生の私にはずいぶん大人さんの物語でしたが、それでもあっという間に読了でした。 詳しい内容は憶えてないなあ。。 名作として人に薦める程じゃあないけど、一人でこっそり愉しむ分にはそりゃやっぱ悪くないですよ。良い意味でサスペンスドラマにぴったり。 実際何度かドラマ化されり(清張にはいつもの事だが)。 略称は「キカナカ」で決まり!


No.279 7点 十万分の一の偶然
松本清張
(2015/09/01 11:55登録)
犬がナニする話じゃないんですよ。 アマチュア向け報道写真コンクールで大賞を獲ったのは、見るも無残に生々しい東名高速の大規模玉突き事故大炎上シーン。ところが、この” 十万分の一のチャンス”を捕らえた写真が実は人命を犠牲に演出されたものだとしたら。。疑いを抱くのは当の事故で亡くなった若い女性の婚約者だった青年。そこから始まった”二重構造の”復讐劇はやはり”効果抜群の報道写真”を餌に使ったものだったが。。。。 

狂った野心を抱く芸術家達、報道の暴走を背景に、愛に生きる者の悲劇をサスペンスたっぷりに描いた社会派推理小説。 規模の大きな物理トリックも炸裂します。
鮎川哲也の「人それを情死と呼ぶ」を彷彿とさせるラストシーンも印象的。

余談ながら、極めて題名を間違えやすい作品でもありますね。「十万に一つの~」とか「百万分の一の~」とか。いっそ「ジュマイチ」とでも略せば忘れないかも。


No.278 4点 シャーロック・ホームズの事件簿
アーサー・コナン・ドイル
(2015/08/31 19:46登録)
「最後のあいさつ」までは大なり小なり愉しんで読んだ私ですが、「事件簿」となると流石にちょっと。。
(子供用に短篇集バラして再構成してる本だと個々の作品は気にならないんだけど)
「ソア橋」の仄かな抒情は捨て難いですけどね。。 「三人ガリデブ」なる珍妙な題名もアンフォゲッタブルではありますが。
でも推理小説好きなら一度は目を通して欲しい短篇集です。


No.277 6点 バトラー弁護に立つ
ジョン・ディクスン・カー
(2015/08/31 19:18登録)
今風に略すと「バトベン」でしょうか。
若かりし頃、題名と作者の奇妙な組み合わせ(?)に惹かれて手にした一冊です。
爆発的に面白いわけでなく、まったりと雰囲気に浸れると言うわけでもないけれど、何気に爽やかなムードでサクサクと進む物語は最後まで興味を離しません。やはりパトリック・バトラーさんのキャラクターが良いのか。でも不思議なことに彼こそが主役ってわけじゃあないんですよね。 そういやずっと忘れてたけどこの作品って密室モノなんですね、なんかあんまり密室って感じしません。舞台設定がジョン・ディクスンにしちゃあ全くおどろおどろしく無いせいかしら。

ネタバレ風を言うと 。。。。。 例のヒネりある空耳、「読み間違いによる聞き間違い」はやっぱ短篇でキメて欲しかったかな。 見せ方によってはもっと知的に映えるトリックの筈なのに、、惜しい!


No.276 7点 読者よ欺かるるなかれ
カーター・ディクスン
(2015/08/31 18:54登録)
今風に略すなら「ドクアザ」より「アザナカ」より「ドクナカ」がいいな。
若かりし頃、奇抜な題名に絆(ほだ)されて手に取った一冊です。
念力による遠隔殺人を公言する容疑者、という強烈な隠れ蓑を最大限に利用した物語のミスディレクションは巧みで、現場の語り手である「私」の存在や発言にも引っ張られるし確かに読者は欺かれずにいるのも難しかろう。しかし、わざわざ大上段に構えたこんな題名(原題も邦題と基本同じ意味)を付与する程の画期的欺瞞トリックを敷いた作品とはとても言えず、それ故に結末でちょっとばかり肩透かしの風が吹いた気がするんですが。。それでもかなり愉しく読めた事は確か。 舞台の雰囲気と言い、適度などたばたと言い、冒頭の謎興味に手の込んだ謎解きと言い、本格なりの人間ドラマと言い、詰まらないわけはない。 ちょっと再読してみたい、かな、どうかな。


No.275 4点 二重の悲劇
F・W・クロフツ
(2015/08/28 18:03登録)
中学の頃、母または父からもらった創元推理文庫で読んだ何冊かの中の一つ。
どう面白いのか理解出来ませんでした。。大人の倒叙ミステリの雰囲気はなんとなく味わえたが。。
今読んでもあまり面白くないと踏んで、この点数。 ごめんねフリーマン。


No.274 4点 クロイドン発12時30分
F・W・クロフツ
(2015/08/28 17:51登録)
小学生の時、いかにも意味ありげな題名に惹かれてこども向け翻訳を読んだんだけど(そんなのが図書館に置いてあったんだなあ、としみじみ思う)渋過ぎたのか馴染めず、のめり込めず。
高校生の時だったか、既に「樽」に大感動している後、大叔父からもらった古い創元推理文庫で「今なら面白いかも?」と期待して再読。いまひとつ引き込まれず。いったい何処がどう合わないのか。単にスリルに欠けるだけなのか。分からない。。


No.273 5点 毒入りチョコレート事件
アントニイ・バークリー
(2015/08/28 17:20登録)
遥かな時を飛び越えて貫井徳郎「プリズム」に見事な本歌取りを成就させた本作ですが、多重解決を突き進めながらもスリルとサスペンスが充満していたかの近作と違い、こちらは純粋にゆんわりと論理の遊びを反芻して愉しんでいる様子。 そんな中に意表を突く展開や一定の緊張有る結末(?)もありますが、ちょっと空気が緩くて私の好みにジャストフィットとは行きません。 が、それなりに興味深くは読めます。エポックメイキングな作品と思います。好きな人にはたいへん面白かろう。

短篇「偶然の審判」の方は私も凄く好き(10点相当!)なんですけどね。


No.272 7点 プリズム
貫井徳郎
(2015/08/28 14:06登録)
多重解決スピリットをサスペンス流儀で塑形、ミステリ心を唆る視点バトンタッチ四部構成!
バークリーの「毒チョコ」に湊かなえ「告白」を斜め交差させたような感覚!

ところで、いかにも事件解決の鍵を握ってそうな「美男刑事」が宙ぶらりんの存在で終わっちゃうのはどういうわけ? 後の作品で再登場するの? まさか犯人?? 彼の視点で解決まで辿り着く第五章が欲しいという意見を何処かで見かけましたが、私も賛成かな。 重要な解決のポイントは殺人犯特定の他にもいくつかあるわけで、それらがみんなオープンのまま終わっちゃうとやっぱりちょっと不満。

しかし、サスペンスと多重解決の融合に成功した新本格、という立ち位置は立派だ。


No.271 7点 分身
東野圭吾
(2015/08/27 20:59登録)
「宿命」「変身」と並べると、いい意味で軽くなっていますよね。 若い女性達が主人公、その片方はバンドのヴォーカリストという設定も相俟って、華やかな雰囲気もいっぱい。 「宿命」はもちろんの事、「変身」に較べてもわざと先読みさせる、と言うより終結を露骨に予見させてしまうような作りのお話ですが、それでも読んでいてとても愉しい。そして結末の迎え方は、決してありきたりなものではなく。。


No.270 8点 Yの悲劇
エラリイ・クイーン
(2015/08/27 20:48登録)
小学校の頃、学校の図書館で借りたジュヴナイル翻訳で初めて読みました。犯人は早い段階でピンと来てしまいましたが、それまでに味わった事の無い、なかなかにエキサイティングな読書体験でした。 ミステリ好きの大叔父に話したら嬉しそうな顔してたなあ。 今思えば、「初めて大人の推理小説を読破したぞ」と思った記念すべき本でしたね。 もちろん、この物語の背景に埋め込まれた奥深いところには気付きようも無かったわけですが。。

その後、中学に上がったばかりの頃読んだ「グリーン家殺人事件」。本作の師匠筋とされるその作品の方にすっかり心を奪われ、軍配はそちらの方に上がってしまいましたが、それでも本作は「グリーンズ」に無い空間的・時間的拡がりのイメージが豊かで、また別種の魅力を感じます。

薄暗い陰鬱な雰囲気の豪邸で繰り返される殺人劇、その根底に蠢いているはずの、外からは容易に見通せない歴史的因縁やら鬱屈した人間関係のこじれやら、そんなおぞましく呪わしいものを美味しく味わう方法、それを子供の私に教えてくれた一冊でしたね。
高校の時に創元推理文庫で再読し、理解の度合いの違いはともかく、やはり昔と同じくらいの感銘を受けたものです。

点数は「X」と同じ8点相当ですけど、こちらの方にはどうしても長々と語らせてしまう何事かが潜んでいるんだな。

しかしどうも初期の「エラリイ・クイーン」に何かしら軽いイメージが付き纏ってしまう私としては、本書は「バーナビィ・ロス代表作の一つ」と呼びたいですなぁ。 


No.269 9点 網走発遙かなり
島田荘司
(2015/08/27 20:10登録)
この連作集が描く人間ドラマの深さには唸る。 「奇想、天を動かす」終了後の長い長いアンコール・ピースと言った趣がある。 「奇想」が社会派と新本格の奇蹟の融合だとしたら、そこにサスペンスの冷風を強く吹き込ませたのが本作であろうか。 

「奇想」があれ程の人気なら、「網走発」の方ももう少しばかり愛されて欲しいなあ、と切に思います。
(短篇集としてでなく、四つのパートに分断された長篇だと思って読むのが趣深くて良いのではないかと)


No.268 10点 奇想、天を動かす
島田荘司
(2015/08/27 19:57登録)
読了直後「こりゃあ満点作だ!」と大いに感服したものであります。 私にとって島田荘司おじさんが特別の存在であるのはこの作品に出遭っていればこそ、かも。

冒頭より何やら社会の大きな問題を取り上げているようなオーラが漂うのですが、いったい「社会の何」が問題になっているのか相当読み進まないと見えて来ない、ってのがミソかも。この巧妙な作りが実に刺激的に知的興味を誘い、やがて明かされる「社会的問題」への関心もひとしお深まるというものです。

読了後、自然と「こりゃ社会派と新本格の奇蹟の完璧な融合だ!」との思いが湧きました。いや融合が完璧かどうかは分かりませんけど、完璧に面白いミステリ小説には間違いないと私には思えます。 何しろあの、規模の大小取り混ぜたバカトリックの数々(?)がごく自然な美しいものとして受け入れられたんですもの、大したマジックを掛けられたものです。 「手品が好き」の一言で全てをアリにする(全てを引っくり返すのではなく!)という大叙述トリック(?)にもやられました。   

それにしても、主人公の気の遠くなるような悲惨な過去、哀れな境遇は本当に強く記憶に留まりますね。


No.267 6点 怪しい人びと
東野圭吾
(2015/08/26 18:07登録)
何と言うか、小味な作品が揃ってますね。小味な小鯵の唐揚みたいな。 東野氏にしては露骨なユーモア(ブラックorホワイト)のガスっ気が充満気味なような。ちょっとハピネス成分入ってる話もある。
その中で「もう一度コールしてくれ」の重さは異色だな。人生の話。

ところで『怪しい人びと』なる表題(同名の作品は無い)はミスマッチでないか? ちょっとふざけた雰囲気なのは合ってるけど、殊更に『怪しい』ってほど裏のある怪しさを感じる人は出て来ませんでしたよ。 いや冒頭作「寝ていた女」(佐野洋の短篇みたぃ)にちょっと登場してたかしら、どうだったかしら


No.266 7点 犯人のいない殺人の夜
東野圭吾
(2015/08/26 17:35登録)
著者らしく軽いタッチで深い内容を描いていますが、本短篇集は特に薄暗いムードの人間ドラマが(濃淡はあれど)目立つかな。 「さよならコーチ」の被害者の念の苛烈さ、「闇の中の二人」の救いの無い暗さは心に残る。 「踊り子」の真相も残酷過ぎるね。。物語の大半が明るいムードなだけ最後に落ちるどん底も深い。
しかし最後に来るトリッキーな表題作だけはゲーム性の高い娯楽大作(短篇ですが)の趣強し。

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