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ミステリの祭典

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死火山系

作家 水上勉
出版日1963年01月
平均点6.00点
書評数2人

No.2 7点 斎藤警部
(2015/09/03 12:24登録)
山岳冒険ミステリではなく林業社会派ミステリという如何にも地味な本です。 農業や漁業と異なり戦後改革の嵐を逃れた林業界ならではの封建的因習を背景とした謀殺事件が語られます。ある登場人物への評価が最後にクルリと反転してしまうのが、本作の推理小説としての鍵でしょうか。

No.1 5点
(2010/07/15 06:29登録)
物語の背景は林業、鉱脈、陸稲研究などで、いたって地味ですが、これも時代を反映したものなのでしょうか。まあ、金鉱や山師からは宝探しも連想され、ちょっと楽しそうな気もします。
でも本書は、ただひたすら暗くて陰気で、遊び心もなく、雰囲気的にみれば、個人的には許容範囲ぎりぎりの作品でした。華といえるのは、主人公の江田と、檜山絵里子との恋愛描写ですが、これもさほど楽しめる代物ではありません。
水上勉といえば社会派ミステリの番頭格ですが、本書は社会派色を出しきれず、本格色はもちろん少なく、中途半端な出来に感じます。復讐とか、過去の事件とかが深く関わって、素人探偵がそれに巻き込まれながら謎を解いてゆく構成ならまだ良かったのですが、悲劇的な背景はごくわずか、主人公の巻き込まれ方もごくわずかで、結局、ワクワクするところもありませんでした。実は最後に、どんでん返しのごとく復讐めいた真相と社会的背景が明かされるのですが、そのときはもう気持ちが萎えてしまっていて、感動もなにもなかったですね。
このように不満はたくさんありますが、謎の提示の仕方や、謎の絡み合う展開は良かったですね。文豪の筆の冴えと、構成の巧みさによるものなのでしょうか。

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