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ミステリの祭典

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名探偵ジャパンさんの登録情報
平均点:6.21点 書評数:370件

プロフィール| 書評

No.330 6点 七色の密室
佐野洋
(2020/04/29 22:48登録)
ある日、佐野が「七人の作家による密室特集」という企画を編集者に持ち掛けたところ、「密室と限定するとトリックや設定がぶつかる恐れがある。それなら佐野さんが一人で書いてみませんか?」と返され、生まれたのが本作だそう。確かに一人の作家が書くなら、トリックや設定がぶつかることはあり得ないわけで、まさに「一人アンソロジー状態」
「現代のミステリファンでも遜色なく読める」とはさすがに行きませんが、初出の1977年という年代を考えれば(そして一人の作家が全て書いていると思えば)十分及第点を付けられるレベルの短編集だと思います。


No.329 6点 千年岳の殺人鬼
黒田研二
(2020/03/15 22:36登録)
一作目『Killer X』は趣向を凝らした怪作で、本作も楽しめたことは楽しめましたが、なぜか前作のようには乗れませんでした。
「趣向を凝らしたトリック」は本作にもあるのですが、タネを明かされても、「あっそ」で終わってしまうというか。一作目と比較して、トリックの質自体に大きな差があるとも思えないので、こればかりは読者の趣味、好みの問題でしかないのでしょうね。
思うに、叙述トリック(あー、書いちゃったわ)に最も必要なのは、確か綾辻行人がどこかで書いていたことですが、トリックが明かされる前と後の「落差」です。そう考えると、本作にはその「落差」がなかった(私が感じなかった)のが原因なのかもしれません。


No.328 5点 皇帝と拳銃と
倉知淳
(2020/03/09 16:12登録)
本作にキャッチコピーを付けるなら、「ザ・可もなく不可もなく」というものに私はしたいと思います。
もう、本当に普通の倒叙ものです。ラスト一話だけが少し凝っていますが、それ以外はもう本当の本当に普通。
主人公が死神みたいな容姿をしていて、相棒がスーパーイケメンだそうで、そこが他の類似作品との差別化になってはいます。
ですが、本作は基本、犯人も含めて聴取を受ける人物の視点で書かれているのですが、新しい登場人物が出てくるたび、「刑事が死神みたいで、相棒はイケメンだ」ということに驚く描写が入り、しかもそれが結構な行数に渡って続けられて、それが正直しつこいです。この場面を集めただけで、全文章量の一割くらいは消費しているのではないでしょうか。繰り返されるこの描写がラストへの伏線になっているのか? とも思っていたのですが、全然そんなことはありませんでした。
倉知淳はこんなものではないはずだぞ。

本筋とは全然関係ないのですが、倒叙もので主人公が慇懃な口調の刑事、という共通点から、主人公の台詞をかなりのシンクロ具合で「古畑任三郎」の喋り方で脳内再生することができます。途中で飽きたら、こんな楽しみ方も一興です。


No.327 6点 無事に返してほしければ
白河三兎
(2020/03/02 14:06登録)
この著者の作品は初めて読みました。
どうやら、青春ミステリ系を得意としている作家のようで、本作を読んでいて、どうもこなれないな、と感じたのはそういったところによるものかもしれません。
やりたいことはよく分かるし、「読者を驚かせよう」という気概も伝わってきて、実際それは十分驚きに値するものなのですが、書き方がやはり、こなれていない感じです。読者にトリックを見破られるのを過度に恐れているのか、ぼかしすぎなところもあったり。
同じプロットを別の、こういうものを書き慣れている作家(折原一とか、などと名前を出すとネタバレっぽくなってしまいますが 笑)が書けば、もっと完成度の高いものに仕上がったと思います。難しいですね。


No.326 6点 ナポレオン狂
阿刀田高
(2020/02/27 09:00登録)
表題作はある人物が出てきた時点でオチが読めてしまいますが、これは様々な作品に触れた現在の目で見るためなのかもしれません。何せ40年前の短編集ですから。それを考えれば、収録作品どれも読んでいて古びた感じがほとんどしないというのが凄いですね。
個人的ベストは「来訪者」です。主人公の二人、どちらに肩入れしてよいのか迷いながら読み進めていって、最後にあのオチ。素晴らしかったです。


No.325 7点 Wの悲劇
夏樹静子
(2020/02/27 08:47登録)
「タイトルが海外有名シリーズにあやかっているだけで、中身は二時間ドラマ並みの小粒ミステリ」と勝手に偏見を持っておりました。
読んでみると、かなり本格度高めのうえ(過度にエキセントリックでなく、ほどほどリアルなのも一般受けする要因でしょう)、クイーン本人公認(?)だったとは!
現在の目で見るとそれほどでもないでしょうが、発表当時はかなりの驚きを持って迎えられた作品だったのだろうと思います。
ミステリファンなら押さえておきたい一作です。


No.324 5点 流転の女
松下麻理緒
(2020/02/09 23:06登録)
『転落』と改題された文庫版で読了しました。
「普通」という感想以外、特にありません。
でも、これは別に貶めているわけではなくて、こういう「普通さ」って重要だと思うのですよ。これは多分、誰でも読めます。「ミステリって面倒くさいから苦手」という人も、これなら読めます。で、「ミステリって難しいと思ってたけど、意外といけんじゃん」と自信を持ってくれたら、さらに世間で話題になっている有名どころのミステリに手を伸ばしてもらえたりする可能性があったりなかったりしますから。


No.323 6点 怪物の木こり
倉井眉介
(2020/02/01 16:23登録)
物語の開始早々「脳チップ」という架空のアイテムが出てきて面くらいました。この「脳チップ」に関する設定のご都合主義がなければ成立しないストーリーのため、登場人物の葛藤などを説かれても、「そりゃ、作者がそういう設定にしたからね」というメタレベルの「覚め」がどうしても出てきてしまい、いまひとつ乗れませんでしたね。これが漫画やドラマなどで、引き込まれるビジュアルや役者の好演で、そういった不自然さを覆い隠してくれていたら、もっと楽しめたように思います。「小説」って、そういう意味で作家の「生の力」がモロに反映されるので、難しいんだなと改めて思いました。


No.322 7点 時空旅行者の砂時計
方丈貴恵
(2020/01/29 13:51登録)
鮎川哲也賞受賞作品だというのに、発売から三ヶ月一件も書評がないというのはどういうことでしょう?
やっぱり皆さん、このタイトルを見て「あ、これヤベーやつだわ」と嗅覚を発揮したのでしょうか?
本作の概要は、「主人公が過去にタイムトラベルして、妻の命を救うため、その遠縁となっている過去の連続殺人事件の謎を解く」というものです。これを読んで「俺の嗅覚は正しかった」と安心した方もいると思います。さらにこの「タイムトラベル」という要素は舞台設定だけで終わりません。トリックにもがっつり絡んできます。正真正銘「特殊設定ミステリ」なわけですね。ですので「この手のミステリが苦手」という方は回避してもいいのではないかと思います。私は、それでもよく出来ていた(「特殊設定」のトリックへの使い方も含めて)と感じたので、この点数を付けていますが。

ここからは余談です。
本作(及び今回の第29回鮎川哲也賞への全ての応募作品)は、時期的に、近年まれに見る大怪物作品へと成長した第27回の受賞作品を踏まえたうえで応募されたものであるためか、巻末に掲載されている講評にあった最終選考作品にオーソドックスなミステリは一本もなく、全てが何かしらの「色物系」属性を持った作品だったようでした。
そもそも「新人賞」には「これまで誰も読んだことのないような斬新な作品」が求められがちですが、それを考慮するとしても、もはや現代ミステリにおいては「オーソドックスなミステリ」は必要とされていないのかな?と少し寂しい思いをしました。「江戸川乱歩賞」や「横溝正史ミステリ大賞」などの受賞作を見ても、「色物系」「社会派」「医療系」のどれかが受賞している印象がありますし。


No.321 4点 誰そ彼の殺人
小松亜由美
(2020/01/20 11:04登録)
私も、HORNETさんとほぼ同じ感想を持ちました。
専門用語の羅列は「あ、これ本筋と関係ないんだ」と分かったら、もう読み飛ばしです。主人公はこれ、かなり火村英生入ってますね(笑)
帯の裏に、その火村の生みの親、有栖川有栖を始め作家、評論家数名の激賞推薦文が載っていましたが、「そこまでかな?」とは思います。こういう推薦文は、あまりに持ち上げすぎると読む前の期待値が上がりすぎて、結果落差が大きくなってがっかりすることが多いのですが、その最たる例でしたね。内容的には今どき珍しい、そつのないミステリでしたので、あれがなければもっと高得点を付けていたかもしれません。
最近になって分かったのですが、ああいう推薦文って読者のためじゃなくて、作家のためのもの(本の箔付けと推薦文の原稿料)なのですね。


No.320 4点 波上館の犯罪
倉阪鬼一郎
(2020/01/20 10:19登録)
これはいけません。
仕掛けとしては、これまでで最高難度のことに挑戦していることは分かりますが、ぶっちゃけ言ってしまえばそれだけです。
倉阪鬼一郎のバカミス、仕掛け本といえば、その仕掛けの難度もさることながら、書かれている話だけを取り出してみても面白い、という奇跡的な代物だったはずです。
はっきりいって今回のものは面白くないです。「亡霊がやった」「いや、やってない」のやりとりが延々と続くところも、ただのページ数稼ぎであることバレバレで辟易しますし、トリックも「何じゃそりゃ」というものばかり。
作者は本作を機にこの手の仕掛け本から撤退することをあとがきで表明していましたが、それもやむなしだと思います。色々と命を削りすぎたのでしょう(笑)ゆっくりと療養してほしいです。

でも、いつか、また「仕掛けが凄くて面白い」バカミスをひっさげて帰ってきてくれることを信じています。
ありがとう、倉阪鬼一郎! あなたこそ「キング・オブ・バカミス」でした。また会う日まで!!


No.319 5点 日曜日の沈黙
石崎幸二
(2020/01/09 11:36登録)
メフィスト賞受賞作家で、結構な数の作品を上梓しているにもかかわらず、よほどのマニアでもなければほとんど知られていない作家ですよね。私も去年『あなたがいない島』という作品で初めて知りました。このサイトでの登録作品平均点数が軒並み「5点」の連発で、(恐らく)ノベルズが文庫化もされてないということは、まあ、そういう評価の作家なのでしょうね。
確かに、5点を付けるのにこれほど無難な作品はないなと私も思いました(笑)
唯一、『あなたがいない島』でも十分すぎる個性を発揮していた二人の女子高生キャラクターに対して、もっと高得点を付けてもいいかなと思ったのですが、「金で買えないトリック」のオチで相殺です。
あと、作者と同名の登場人物が探偵役で、二人の女子高生にいじられつつ、まんざらでもないという設定が作者の願望や性癖を具現化しているみたいで、ちょっと気持ち悪かったです(笑)


No.318 8点 ベーシックインカム
井上真偽
(2020/01/08 14:49登録)
もし、作者名を伏せられてこれを読まされて「作者は誰か?」と問われたら、井上真偽の名前は私は永遠に出てこなかったと思います。それくらい既存作品とのギャップが凄いです。
手が届きそうで届かない近未来的なガジェットがテーマになった短編が続き、最後にそれまでとは一風変わったテイストのもので締められます。いわゆる「連作短編」なので、拾い読みではなく最初から順番に読んでいくことが推奨される作品です。

確かにジャンルを問われれば「SF」と言うしかないと思いますが、荒唐無稽なホラ話ではなく、描かれているのは、SFというジャンルを通してしか語ることのできないドラマ(ミステリ)、あるいは問題提起で読み応えがあります。

紛れもない傑作だと私は思いますが、「このミステリーがすごい」や「本格ミステリベスト10」にはランクインしませんでした。審査員たちが「これはミステリーではない」と位置づけたためでしょうか? それとも単純に「ランクインに値しない作品」と評したということでしょうか? 前者なら見識が浅すぎますし、後者であれば見る目がなさすぎます。


No.317 6点 六つの手掛り
乾くるみ
(2020/01/07 09:15登録)
ロジックに徹底的にこだわった短編集、なのですが、作者が考えたトリックを成立させるために無理やり周辺状況を塗り固めた感がありありで、話の運びや登場人物の言動にちょっと不自然なものが残り、この辺りは上手くいったとはいえない気がします。作者もそれを自覚しているのでしょうか、説明がくどくなることを恐れてか描写が端折りがちになり、それが不自然さに拍車を掛ける結果になっているという。
ですが、各話にて探偵が語る推理は「なるほど」と納得させられるものばかりで、もっと本文をわかりやすく突き詰めていれば本当の名短編集になっていたかもしれません。読みにくい名短編集ということで、「ブラウン神父シリーズ」を彷彿とさせます(意識してわざと読みにくく書いたのか?)
最終話の「開いてテーブルに置いた本」の推理と展開が特に面白かったです。確かに、あの状態で本を置くやつはいないでしょう。それが確認できる周辺状況も上手い設定でした。


No.316 6点 紅蓮館の殺人
阿津川辰海
(2020/01/06 09:27登録)
こんなタイトルを見せられたら、コテコテのド本格を期待してしまうじゃないですか。まあ、事件内容自体は「ド本格」なんですけれど、そこに「名探偵としての宿命」みたいなテーマが絡んでくるものですから、ちょっと注目ポイントがあやふやになってしまった感があります。他の評者の方のご指摘にもありましたが、市川哲也の『名探偵の証明』みたいで、このテーマに関してだけなら、そちらのほうが上手く描けていたように思います。
とはいえ、実在する職業ならまだしも、架空の存在である「名探偵」について、「かくあるべし」みたいな定義をしたり、「こんなにつらいんです」という業を語られても、そんなの書き手の胸三寸でどうとでも定義できるでしょと思って白けてしまい、個人的にはこういうテーマはそんなに響いてきません。
もう一方の「ド本格」としての内容は、かなりいいものが書けていただけに(特に、死体が濡れていた理由は秀逸)、余計なテーマを添付しなくてもよかったのに、と思ってしまいました(こういうのが好きな人もいるとは思いますが)。


No.315 9点 medium 霊媒探偵城塚翡翠
相沢沙呼
(2020/01/02 21:57登録)
相沢沙呼、やっちまったなぁ~!(笑)
後半に出てくる「日常の謎」に対しての登場人物の言葉。あれを書きたかっただけなのでは?(笑)「このミステリがすごい」「本格ミステリベスト10」の二冠を取ってしまったのは、ついでです(違います)
これまで、こつこつと「日常の謎」「青春ミステリ」と呼ばれるジャンルを書き続けてきた作者が、初めて殺人事件を扱ったミステリを出したら大ヒットですよ。二冠王ですよ。人生なにが起きるかわからないものですな。
相変わらず、読んでいてムカムカする(文章が下手という意味でなくて)キャラクター造形は健在(?)ですが、ラストで「ああ、ムカムカしていてよかった」と痛快に思いますよ(?)(また別の意味で「ムカムカする」可能性もあるかもですが……)


No.314 6点 怪人対名探偵
芦辺拓
(2020/01/02 21:47登録)
虚実が入り混じったような、読んでいて頭を揺さぶられる感覚に捕らわれる書き方は、いかにも2000年代前半のミステリっぽいです。古式ゆかしい「怪人対名探偵」を現代に無理なく(まあ、乱歩の昔でも、あれが無理なく当時の社会に溶け込んでいたのかと言われたら、違うんじゃないかと思いますけれど(笑))蘇らせ、かつ、現代ミステリっぽい書き方をしたら、こんなふうになったよ、という感じですね。決して回顧趣味の時代錯誤な話ではありません。今、一周廻ってまたこういうのが流行りそうな感じですね。復刊したら受けるんじゃないでしょうか。
芦辺拓の小説を読んでいていつも思うのは、この人、本当に自分のシリーズ探偵の森江春策のことが大好きなんだなあ、ということです。愛情を感じます。


No.313 6点 倒叙の四季 破られたトリック
深水黎一郎
(2020/01/02 17:19登録)
作者初の「倒叙もの」だそうですが、器用な人ですから、それはもうごく当たり前に書きこなしてしまいます。こういう何でも出来る感においては、深水黎一郎の右に出る人っていないのではないでしょうか。

文庫化にさいして、ノベルズ版にあった最後のエピローグが削られたそうです。私が読んだのは、その文庫版だったため、気になってノベルズ版も確認してみました。

※以下、ノベルズ版のエピローグに触れています。というか、文庫で削ったということは、作者的にはこのエピローグは「なかったこと」にするつもりである可能性が高く、いわば「存在しないもの」に対してネタバレが成立するか? という問題はありますが。

ノベルズ版のラストでは、探偵が一連の事件の背後にいる「黒幕」の存在に気付き、そこへ捜査の手が伸びることを暗示して終わっています。このエピソードを削ったということは、文庫版においては本作の「黒幕」は未だ健在であり、もしかしたら、この「黒幕」を某名探偵の孫漫画の「地獄の傀〇師」よろしく、探偵のライバル的キャラクターに育てようという考えがあって、最後のエピローグを削ったのかもしれません。


No.312 5点 犬神館の殺人
月原渉
(2019/12/30 22:53登録)
現在と三年前、同じ場所で違う時間の出来事を交互に描くという構成が、綾辻行人の『水車館の殺人』を思い起こさせます。ただ、『水車館』が過去と現在を、三人称と一人称という書き分けをしているのに対して、こちらはどちらも視点人物こそ違えど同じ一人称で、かなり紛らわしいです。『水車館』のほうは、場所に加えて登場人物もほとんど一緒で、それでも過去と現在の書き分けが明確にされていて、『水車館』の凄さを再認識することになりました。
「ぎろちん扉」という、本作だけにしか登場しない特殊なギミックが出てきますが、これを使う理由付けのためだけにかなりの紙幅を費やしていて、いくらトリックを成立させるために逆算的に世界を作るのがミステリとはいっても、これはちょっと強引すぎた気がします。あと、その「ぎろちん扉」の図解と館の見取り図、登場人物一覧も欲しかったです。

不満点ばかり書いてしまいましたが、こういう直球本格を書き続けている作者(と出し続けている出版社)がいるということは、本格ミステリファンとしてとても喜ばしいことです。今後にも期待。


No.311 6点 殺人鬼探偵の捏造美学
御影瑛路
(2019/12/01 22:10登録)
ライトノベルの主人公みたいなペンネームの作家ですが、なかなか侮れません。
「今までにないものを書こう」「変わったものを書こう」というチャレンジ精神は非常に買えますし、これ系の作品を成立させるために安易な特殊設定に逃げず、真っ向勝負したところも心地よいです。
ですが、それらが全て上手くいきはしなかったように思います。まあ、作者の企み、意図が全て成功していたら、とんでもない傑作、あるいは怪作が生まれていたはずで、出版から二年以上経っても書評が(私のこれを加えて)二つしか投稿されないという事態にはなっていなかったはずですから。

上手く行かなかったですねぇ。力業に走りすぎたように感じました。「こういう人だから、こういう非常識なこと(トリック)をしても納得できるでしょ」という目に見えない個人の性格という論拠の上に成り立っている推理なものですから、作者の操り人形の作中人物はそれで納得しても、読者は「そうかなぁ」と最後まで首の傾げが止まりませんでした。

それでもこのスタイルは応援できます。気になる作家の一人に加えます。

以下、ネタバレあります!




実は最後に、上記の問題点をひっくり返す仕掛けがあるのですが、それでも作中の登場人物が、あやふやな根拠による推理を受け入れてしまっていることは変わらないので、問題の解決にはなっていない気がします。

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