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ミステリの祭典

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殺人鬼探偵の捏造美学

作家 御影瑛路
出版日2017年11月
平均点6.67点
書評数3人

No.3 7点 silver cloud
(2024/01/12 23:06登録)
あ、これは荒業というか、とても無理のある話だった。
この人物のことだから、こういう行動はあり得るみたいな推理は説得力が足りないんじゃないかな。
でも個人的には結構好き。たまにはこういう刺激的な話も読んでみたいものだ。

No.2 6点 名探偵ジャパン
(2019/12/01 22:10登録)
ライトノベルの主人公みたいなペンネームの作家ですが、なかなか侮れません。
「今までにないものを書こう」「変わったものを書こう」というチャレンジ精神は非常に買えますし、これ系の作品を成立させるために安易な特殊設定に逃げず、真っ向勝負したところも心地よいです。
ですが、それらが全て上手くいきはしなかったように思います。まあ、作者の企み、意図が全て成功していたら、とんでもない傑作、あるいは怪作が生まれていたはずで、出版から二年以上経っても書評が(私のこれを加えて)二つしか投稿されないという事態にはなっていなかったはずですから。

上手く行かなかったですねぇ。力業に走りすぎたように感じました。「こういう人だから、こういう非常識なこと(トリック)をしても納得できるでしょ」という目に見えない個人の性格という論拠の上に成り立っている推理なものですから、作者の操り人形の作中人物はそれで納得しても、読者は「そうかなぁ」と最後まで首の傾げが止まりませんでした。

それでもこのスタイルは応援できます。気になる作家の一人に加えます。

以下、ネタバレあります!




実は最後に、上記の問題点をひっくり返す仕掛けがあるのですが、それでも作中の登場人物が、あやふやな根拠による推理を受け入れてしまっていることは変わらないので、問題の解決にはなっていない気がします。

No.1 7点 メルカトル
(2018/01/05 22:10登録)
海岸沿いで発見された、顔を削り取られて左足首を失った惨殺死体。それは殺人鬼マスカレードの仕業と思われた。新米刑事鶯百合巡査部長は指導係の山路刑事とともに捜査に当たるが、早々に紹介されたのは精神科医で探偵の氷鉋清廉だった。

ロジック重視の読者にはアラが目立ちすぎて低評価を受けるのは当然でしょう。ですが、その荒唐無稽さから来る奇想が私には異様な輝きを放っているように思えてなりません。ケチを付けようと思えばいくらでも付けられる作品には違いありませんが、無謀とも思える新たな試みが好ましいのです。ミステリは現実味も大切な要素ですが、それ以上に必要なのは読者をそれまで見たことのない世界に引きずり込み、新鮮で強烈な空気に触れさせることだと私は思います。その意味で本作は十分にその役目を果たしていると感じます。おそらく誰も読まないでしょうが、続編が出たなら私は必ず読みますよ。


【ネタバレ】 


エピローグまでは至極真っ当な本格ミステリであり、一応はしっかりとした推理に基づいた解決を見ます。しかし、それ以降の急展開は目を見張るものがあり、あまりのバカバカしさに声も出ません。ですが、これこそがこの作品の真骨頂であり、クライマックスなのです。

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