home

ミステリの祭典

login
六つの手掛り
林四兄弟シリーズ

作家 乾くるみ
出版日2009年04月
平均点6.00点
書評数9人

No.9 3点 八二一
(2020/01/23 20:14登録)
短篇集としての荒さがみられる。トリックだけにしては少々魅力が無い。ラスト一行のためにある一作。

No.8 6点 名探偵ジャパン
(2020/01/07 09:15登録)
ロジックに徹底的にこだわった短編集、なのですが、作者が考えたトリックを成立させるために無理やり周辺状況を塗り固めた感がありありで、話の運びや登場人物の言動にちょっと不自然なものが残り、この辺りは上手くいったとはいえない気がします。作者もそれを自覚しているのでしょうか、説明がくどくなることを恐れてか描写が端折りがちになり、それが不自然さに拍車を掛ける結果になっているという。
ですが、各話にて探偵が語る推理は「なるほど」と納得させられるものばかりで、もっと本文をわかりやすく突き詰めていれば本当の名短編集になっていたかもしれません。読みにくい名短編集ということで、「ブラウン神父シリーズ」を彷彿とさせます(意識してわざと読みにくく書いたのか?)
最終話の「開いてテーブルに置いた本」の推理と展開が特に面白かったです。確かに、あの状態で本を置くやつはいないでしょう。それが確認できる周辺状況も上手い設定でした。

No.7 6点 あのろん
(2014/03/04 16:22登録)
トリックに無理やりストーリーを結びつけた感はあるけど、しっかりロジックが組んであって楽しめました。
描写に分かりにくいところが多かったのが残念。
林茶父という名前、結局あれが言いたいがために付けたのね(笑)

No.6 6点 まさむね
(2013/11/10 20:48登録)
 文庫版で読了。
 これまでの林兄弟シリーズ短編集の中で,ロジックへの拘りという点では,確実にベストワン。キャラ的にも,この作品集の探偵役・林茶父が抜きん出ていると思いますね。
 個人的には,「三通の手紙」の綺麗な纏め方に感心。一方で,「二枚舌の掛け軸」は,問題の掛け軸がいま一つイメージしにくく,どうも自分の中で処理し切れなかった…。
 全体的には,作者の遊び心も楽しく,好きなタイプの短編集でしたね。

No.5 6点 メルカトル
(2012/09/19 21:41登録)
意外に評価が高いですね、読み手のレベルの高さが偲ばれます。
これは徹底的にロジックに拘った、本格ミステリの短編集である。
しかし、やや小難しく細部にまで神経を行き届かせないと、展開についていくのがやっとで、理解に苦しむ事になるケースも考えられる。
なので、ミステリ本来の楽しさを味わおうとする小説ではないと思う。
真剣に頭を使って読まないと、理解しづらいことは事前に覚悟しておいたほうがいいだろう。

No.4 7点 E-BANKER
(2012/04/07 21:26登録)
「林兄弟の三男坊」で、大道芸とマジックの達人・林茶父を探偵役とした作品集。
作者がロジックに徹底的に拘った6つの作品が小気味よく並びます。

①「六つの玉」=大雪に囲まれた一軒家で一晩を過ごすことになった4人。初対面なのに翌朝に発生した密室殺人というわけで、典型的なミステリーっぽいのが本作ですが・・・茶父の解き明かす真相はかなり「突飛」ではないか? 「六つの玉」とツララから、そこまでのことが次々に解き明かされるとは・・・。
②「五つのプレゼント」=1人の女性に届く5つのプレゼントのうち、1つが何と爆弾だった、という謎なのだが、茶父の解法はなかなか見事。それよりも、茶父の姪・仁美が前座的に指摘した解法の方が個人的には面白いと思った。これって人間心理だからね。
③「四枚のカード」=事件現場に残った4つのESPカード(十字やら波、星のマークを書いたカードね)。しかもそのうち3枚は端っこが破られていた・・・。アリバイとマジックをうまい具合に融合させてるのがいい。動機はまぁ、置いといて・・・
④「三通の手紙」=これは、まぁワン・アイデアから膨らました作品なんだろうな。固定電話を使ったごく単純なアリバイトリックが、写真を使ったミスディレクションとうまく連動できている。
⑤「二枚舌の掛け軸」=6編のなかでも本作がどうやら一番評価が高いようなのだが、個人的にはあまりピンとこなかった。掛け軸の薀蓄はなかなか面白かったが・・・
⑥「一巻の終わり」=さすがにこれはムリヤリ感がある。どうしても「一」に関するものを書きたくて、しかも洒落たタイトルで・・・というのが先にあったんだろうか? そもそもこんなアリバイトリックなんて、警察の捜査が入ればすぐに崩れるのでは・・・

以上6編。
6編ともロジックを追求して追求した作品。
リアリティは全く無視した特殊な設定下(犯人と被害者が初対面など)なのだが、パズラーの面白さが満載といっていい。
たまには、動機やら事件の背景なんかは無視して、徹底的に「犯人当て」に取り組むというのもいいのではないか。
(作者が楽しそうに書いてる感じがするのも好ましい)

No.3 7点 虫暮部
(2010/11/17 14:17登録)
 この作者の妙に嘘っぽい作風がプラスに働いて、楽しいパズル小説集に仕上がっていると思う。
 「五つのプレゼント」の“正しいルートじゃない解答”の論理展開が面白かった。「四枚のカード」で“ナオミは発音によっては『波』に聞こえる”というのはどうなんだろう。それなら奈美とか波岡とかにしとけばいいじゃないか。
 あと、これってやはり泡坂妻夫へのオマージュ的なものですよね。ファンとしては“おお同志よ”てな感じで嬉しかったなあ。

No.2 6点 あるびれお
(2009/09/09 03:48登録)
ちょっと立ち止まって整理しないと、「二枚舌」になっている掛け軸とか、頭の中に入ってこない。誤解しないでほしいのは、欠点として言っているのではない。つまり、読者側がある程度頭を使って参加しないと面白くない類のミステリーだ、ということである。ところで最後の趣向、文庫化する際にはまた少し手を加えることになるんでしょうね。こういう遊びは大好きだな。

No.1 7点 江守森江
(2009/07/17 06:11登録)
大道芸人プロモーター林茶父を探偵役にした連作短編集。
短編集のタイトルにちなんで各編のタイトルが六から一までカウントダウンされる。
「四枚のカード」(08)と「二枚舌の掛軸」(09)は年度を変えて本格短編ベスト・セレクションに選ばれている様に本格の王道を行き、各編地味ながらロジカルな作品が揃った。
マジック・ネタを題材にした作品は、泡坂妻夫作品的雰囲気も漂う。
そして、最終話「一巻の終わり」では一冊に纏める為の"書き下ろし"ならではの遊び心が最後の1ページまで施され実に楽しめた(+1点)
※追記
遅ればせながら目次に仕込まれた遊び心に気付いた(普通はスルーしちゃうよ)

9レコード表示中です 書評