ミステリーオタクさんの登録情報 | |
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平均点:6.93点 | 書評数:161件 |
No.141 | 8点 | 殺人犯 対 殺人鬼 早坂吝 |
(2024/02/06 22:37登録) 孤島の養護施設の子供達だけからなるクローズドサークル物。 禍々しいタイトル自体も仕掛けの一片になっている大いなる騙しを秘めたミステリと言えよう。 殺人鬼Xに関する事情はあまりにも荒唐無稽だが、あそこまで整合性を持って組み立てられてしまうと文句の出しようもない。その他の部分のロジックの緻密性も高く、またカーを彷彿させるトリックもあったりして正にミステリ要素満載。 解決編では「ん、超アンフェアではないか?」と思った所もあってパラパラと捲り直してみたが、ギリギリうまくフェアに騙していて改めて感心した。 好き嫌いは分かれるだろうが、ミステリファンなら一読してみる価値はあると言っていい作品ではないかと思う。 |
No.140 | 7点 | 復讐は合法的に 三日市零 |
(2023/12/21 22:01登録) 昨年の「このミス」大賞の最終候補にまで残ったという4話からなる短編集。 《女神と負け犬》 本書のタイトルとカバーからドロドロした内容を予想していたが、意外にもライトタッチな文調で実に読みやすい。第一話からなかなか痛快。 《副業》 結局どうなる?という感は残ったものの巧みな展開に引き込まれて読み止まらず。 《潜入》 目新しいトリックではないが、たまに(何年かに一度ぐらい)こういうのを作りのいい短編で読むのは悪くない。 《同類》 IT関連の話はよく解らないところもあったが(ていうか全部理解できるのはかなりマニアックな人だけでは?)強力な敵との戦いのストーリーは十分楽しめた。 ミステリとして図抜けたものはなかったかもしれないが、物語の構成力、そして文章そのものにも女性作家のデビュー作とは思えない程の完成度の高さを感じた。(「いい」が全て「良い」と書かれているのには少し引っ掛かったが) 月並みな誉め言葉だが「今後が楽しみ」。 さて、来年3月に綾辻行人の「十角館の殺人」が実写映像化されることが決まり、関連サイトではファン達の「一体どうやって?」という声で騒然としているが、それ以上に実写化が難しいのが本短編集ではないかと思う。何しろ主人公を演じられる俳優が存在するだろうか。(「宝塚」とかにならいるかな?) |
No.139 | 7点 | レモンと殺人鬼 くわがきあゆ |
(2023/11/30 18:12登録) なるほど、これが例の昨年の「このミス」大賞・文庫部門のグランプリ受賞作の改題版ですか。 宣伝文や何となく見てしまっていたレビューなどの前情報から想像していたほどの派手さは感じられなかったが、終盤の薄っぺらい怒涛の展開は理屈抜きで純なエンターテインメントとしてシンプルに楽しめた。 しかしエンディングはどう捕らえるべきだろうか。 |
No.138 | 6点 | 世界でいちばん透きとおった物語 杉井光 |
(2023/10/19 17:05登録) やはり未読の人は以下読まない方がいいでしょうね。 「透きとおった」の意味は説明されるまで解らなかったが、自分の読書は(残念なことに)細切れになることが多いのでその都合上、仕掛けの一端には割りと早い段階で気がついた。ただそれが何を意味するのか、ただの作風なのかは、やはり前述の説明があるまで見抜けなかったが。 そんな面倒なことをする理由づけとなるミステリ要素に関して、ホントにそんな事象があるのかも分からないが仕立てぶりは悪くないと思う。 まぁアイデア賞+努力賞だが、こういう外枠で勝負する作品は本書で最後にしてほしい。 ミステリはやはりミステリとしての内容を堪能したい。 しかし新潮社のCMも酷い。「ネタバレ絶対厳禁!」と書いた隣にあんな文言を入れるとは。まあ某社も同様だった気がするが。 本作の仕掛けとその意味が途中で分かったという人がいるけど、このサイトには恐ろしく高度な医学知識を持っている人がいるんだね。 |
No.137 | 7点 | 六人の嘘つきな大学生 浅倉秋成 |
(2023/09/22 21:12登録) う~ん、タイトルや簡単な紹介文からは、もっとゲーム色の濃いエゴイスティックな騙し合いみたいな内容を想像していたが・・・・確かに前半の荒唐無稽なグループ・ディスカッションではそういうテイストがそれなりに出ていたが、ホントに勝とうと思ったらあんなマトモな投票の仕方はしないだろう。 それ以外の部分や後半に入ってからもいろいろとミステリ要素がちりばめられていたが、あくまでも散りばめられていて何か統合性に欠ける感が否めなかった。 また登場人物達に語らせる「就活」や「採用」に関する延々と続く持論の展開、引いては人間性にまで関する膨大な考察や関係者達へのインタビュー・・・そして最後は「実はみんな○○人でした」で終わるのかと思ったが流石にそこまでクサくはしなかったね。 作者としては「ミステリ+社会派ヒューマンドラマ」のつもりで書いたのだろうが、冒頭に記したようなコテコテのミステリを期待した自分としてはもうチョッと・・・・ それにあそこまで手の込んだことをやる、あの「動機」に納得できた読者が一人でもいるのだろうか。就活惨敗組にはいるかもw |
No.136 | 6点 | 忌名の如き贄るもの 三津田信三 |
(2023/09/02 23:03登録) 忌名の儀礼はともかくとして、それ以外の民俗学や怪異伝承などの蘊蓄がとにかく多い。本筋に関係してくるものなら止むを得ないが、その9割方は無関係だった。特に葬儀から野辺送りの準備や執り行われの手順やそれぞれを担当する人々の役名やらその説明、使われたり置かれたりする多大な品物の名前や使用法、そして「送り」中の人や物の配置や進行の仕方の細かい描写などには流石にウンザリして読み飛ばした。こういう話に関心が高い人にとっては嬉しいオマケ(大マケ)の数々なのだろうが。 ミステリとしてもシンプルな内容の割には自分にはダラダラした印象が拭えなかったし、解決編の二転三転は悪くなかったが、あのトリックには合点が行かない。あまりにもリスクが大きい。くっついたままかもしれない(そもそも眼を刺して生命を奪うためには先端が脳幹に達する必要がある)し、そうでなくとも思い通りにならない確率の方が高いと思う。個人的にはココが最大のマイナス・ポイント。 確かに動機を含めた真相の「意外性」に関しては、非常に高い評価に値すると思うが、じゃあこれほど意外性の高いミステリは他にはないかと問われれば、「そんなことはない」という話になってしまう。 力作であることは認めるが、一部で見られた「首無以上」という称賛は自分には理解できなかった。 個人的には、首無>山魔>忌名 まぁ好みの問題としか言いようがない。 |
No.135 | 5点 | 名探偵のいけにえ 人民教会殺人事件 白井智之 |
(2023/08/02 21:11登録) このサイトでは非常に評価が高いが、自分にはあまり合わなかったとしか言いようがない。 不可能と思われる殺人を演出するトリックの数々やそれらを突き破るロジックのしつこいまでのお披露目直しなどが高評価の理由なのだろうが、トリックはいずれもチマチマせせこましい上、成功率が高くないと思われるものばかりだし、現実には存在しない疾患を作り出して利用するのも如何なものかと思うし、それらに目を瞑ってもこの程度のロジック、多重解決なら有栖川や法月や綾辻の作品で何度も味わったレベルにしか感じられなかったし、最後の動機の解明もただの変な価値観としか思えない。 このサイトのおかげで読んでみた「方舟」の衝撃があまりにも大きかったため、当サイトでの現在、国内作品ランキング第1位の本作に期待し過ぎた部分はあるかとは思うが、本作の世評の高さは自分には理解できなかった。 |
No.134 | 7点 | 掲載禁止 長江俊和 |
(2023/06/22 21:33登録) テレビや映画関係の仕事も幅広く手掛けているという作者の5話からなる短編集。 《原罪SHOW》 どんな話を書いてくるかと思えばこういう系か。刺激的ではあるが、あまり好きではないし、バカ過ぎる気がする。また、最後の取って付けたような「トリック」・・・これは途中、それを完全に否定する記述が何度かあったと思うが。 《マンションサイコ》 序章の不可解な行動は一体・・・と思ったら何と折原張りの奇行。というか折原氏へのオマージュだね、この作品は。ただ本作も前作ほどではないがアンフェアに近い部分があると思う。 《杜の囚人》 途中で漠然とではあるが話の方向性は見えてくる。しかし最後は・・・。 何となく「世にも奇妙な物語」に出てきそうな・・・いや、無理だ。 《斯くして、完全犯罪は遂行された》 これも随分凝った話だが、そう簡単にそこまでするほど〇〇されるものだろうか。まぁ正常を著しく逸脱しているからこそのミステリなのだろうが。 《掲載禁止》 うーん、何という展開。ちょっと腑に落ちないところもあるが、やっぱこの人、ミステリ作家としては折原系なんだろうね。 本書の作品の大半は異様な「思想」や「宗教」に関わるものだが、これらに対する自分の個人的な印象を一言でいうと「不気味」。 |
No.133 | 7点 | 記憶の中の誘拐 赤い博物館 大山誠一郎 |
(2023/06/01 23:08登録) 「赤い博物館」第2弾。5話からなる短編集。 第1弾と決定的に異なるのは第1弾では犯罪資料館から一歩も外に出なかった雪女が何とワトソン役の主人公と一緒に聞き込みに回ること。 《夕暮れの屋上で》 うーん、「不可解な殺人事件に関する読み物」としては面白いし、よくできていると思う。だがこの推理は本当にロジカルか、また真相の詳細、当事者のその後などはどうもねぇ・・・そしてどうなるんだろう。 《連火》 これも「不可解な放火物」として面白くはある。多少ミステリに慣れていれば序盤のヒントでネタの概要には気づいてしまうだろうが。しかしこの動機でここまでやることを理解できる人がどれほどいるのだろうか。 《死を十で割る》 ミステリにおいて死体が切断されている場合は「なぜ切断したか」がテーマになるが、その新たな発案を提示してみせた作品。でも早々に犯人フラグは立ってしまう。 作者はこの作品を書くに当たって相当いろいろ勉強したと思われるが、惜しむらくは「上腿」ではなく「大腿」です。 《孤独な容疑者》 これは警察が普通に解決できないだろうか。 比較的斬新なタイプの・・・・だが「椅子」の推理は無理くり過ぎるし他にいくらでも可能性はあると思う。また犯人はともかく、被害者も変人過ぎる。 《記憶の中の誘拐》 これはちょっとねぇ・・・そこまでやる動機の蓋然性と必要性があまりにも低い。と思ったらそれだけではなくて少しだけ納得。 でも「第1弾」の最終話や「アルファベット・パズラーズ」の最終話の誘拐物が衝撃的だったのでハードルを上げ過ぎて・・・。 主人公は各話の最初だけ『寺田聡』と称され後は全て『聡』であるのに対して、名探偵役の館長は『緋色冴子』と『雪女』の二つの呼称で代わる代わる表されるまのが面白い。 また、この作者の作品は肩肘張ってトリックやロジックを詳細に検証してやろうなどと思わずに、「ミステリ的奇想」を楽しむつもりで大らかに読む方が堪能できるのではないかと思う。 本書も作者の曲者ぶりが十分味わえる一冊。 当然第3弾も期待したいが、そこでは聡が一歩も外に出なくて雪女が一人で聞き込みに回ってたりして・・・んなわけネェだろ。 |
No.132 | 7点 | 味なしクッキー 岸田るり子 |
(2023/05/20 02:48登録) 「男女物」を中心とした6話からなる短編集。 《パリの壁》 バリの高級アパルトマンの一室での男と女のせめぎ合い、暴き合いミステリ。そしてエンディングは・・・ 《決して忘れられない夜》 京都の高級住宅内での男と女の、ある意味バトル。しかしこの「仕打ち」はあまりにも・・・ 《愚かな決断》 怜悧な研究者が犯人の倒叙物だが、時々いるよね、こういうバ○な「優秀な学者」。しかしコイツは○カ過ぎる。 《父親はだれ?》 マンマなタイトルで超常現象も出てくるが、十分ミステリとして読めると思う。また途中で「読めた」。が・・・ 流石理学部出身の作家だけあって、前作に続いて医科系研究室内での作業描写は非常に精緻だが「心細胞」という細胞は存在しないと思う。 《生命の電話》 これもよくできたミステリだと思った。が・・・ しかし、読後感、望んだ結末は読者によって大きく分かれることだろう。 《味なしクッキー》 プロローグの人間消失は一体如何に?・・・と思ったらソッチか。 まぁ~半端ないジメジメストーリーだが、第5話までかなり楽しめた自分は、最終話にして表題作の本作の「仕掛け」に半端なく期待しながら読み進めたが・・・これは想定内だったかな・・・ 個人的には粒揃いの短編集と言ってもいいのではないかと感じたが上述の通り、表題作が(ヒューマンドラマとしては濃厚すぎるが)ミステリとしては一番平凡に近い印象だった。 |
No.131 | 7点 | 最後のページをめくるまで 水生大海 |
(2023/04/28 21:29登録) タイトルを見てから、それが短編集であることを知り、即買い。 《使い勝手のいい女》 メインとなる「捻り」の一部だけは読めたが、よくできていると思う。また確かに最後の1ページで意外な展開を見せるが、これは驚愕度はさほど高くなかった。 《骨になったら》 これもなかなか面白いストーリーで、途中の意外性もかなりのものだが、エンディングはミステリのオチとしてはさほど新鮮味があるものではない。 《わずかばかりの犠牲》 3作目も読み物として十分面白い。これもメインのネタの一部だけ読めた。最後の数行はタイトルの皮肉がピリリと。 《監督不行き届き》 突拍子もないオープニングから、頭がおかしいのか違うのか訳の分からない女に振り回される先の読めない展開が続くが真相はあまりピンと来ない。が、ラストの・・・ 《復讐は神に任せよ》 何とも悲愴と悲壮に満ちた話だが、こういろいろと重なるとチョッとね。 この作者は作中で決して難しい言葉を使うわけではないが、会話や描写が表現不足で分かりにくいことがときどきある。始めのうちは、これは作者の未熟性によるものかとも思ったが読み進めるうちに、故意にか無意識にかは分からないがこれはかなり現代的な「スタイル」なんだなと感じられるようになってきた。 |
No.130 | 8点 | 無垢と罪 岸田るり子 |
(2023/04/14 21:23登録) 連作短編集の形を取っているが、先のお二方が仰るように実質的には6章からなる長編小説と言えよう。単体で読めるのは第1話ぐらい。 個人的には第5話「幽霊のいる部屋」のエンディングが、偶然流れていたルームミュージックの「星に願いを」とシンクロして感極まってしまった。 各編の絡み方が技巧的過ぎて、驚き、戸惑い、合点の繰り返しだったが、愛、運命の悪戯、絶望、底知れぬ切なさ、救い、の物語として非常に印象深い作品だった。 正直真相はあまりしっくり来ないし、あの子も○○に守ってもらえばよかったのではないかと思うし、京都弁の会話はキツかったが、忘れられないミステリ(本格とは言えないが)になりそうだ。 本作の作品名も第1話のタイトル「愛と死」でもよかったのではないか、と読後ふと感じた。 |
No.129 | 8点 | 婚活中毒 秋吉理香子 |
(2023/04/01 22:34登録) そういうジャンルがあるのか知らないが「婚活ミステリ」短編集。全4話。 《理想の男》 失恋した主人公が結婚相談所の紹介で理想の男性と出会うが、やがて疑惑の数々が・・・どうまとめるかと思えば、そうきたか・・・これはヨメなかった。 《婚活マニュアル》 出会いパーティーから始まり、割とありがちなラブ・ストーリーかと思いき・・・・・・これはヨメた。 《リケジョの婚活》 昔、こういう出会いの場をセッティングして、多くの男女に恋愛バトルを繰り広げさせるTV番組あったよね。今でもあるのかな。でも本作のような泊まりがけのプログラムで、尚かつ相手の実家に行ったり、そこで家族がゾロゾロ出てきたりというのは今も昔もないんじゃないかな。しかし本作ではそれが伏線に・・・ 《代理婚活》 何年か前にテレビなどで話題になっていた、親による「代理婚活」。今でも盛んなのかな。まあ、結婚は両者の家族の実情を切り離してできるものではないから悪くはないと思うが・・・ 4話とも現実的な婚活話で始まり(第1話以外は)とてもミステリなど出てきそうもないストーリーが、やがて現実ではほぼあり得ない展開を見せるところが凄い。 (ネタバレ的感想) 前半の2話は完全にイヤミス。3話目はハッピーエンドともバッドエンドとも言えないがちょっと気持ち悪い。最終話は唯一「いい話」と言えるだろう。 私は30回婚活パーティーに出席して20回見合いをして10年前の4月1日に結婚しました。 |
No.128 | 5点 | 完全・犯罪 小林泰三 |
(2023/03/26 19:33登録) 3年前に50代で鬼籍に入った作者の短編集の一つ。 《完全・犯罪》 バカSF、いやコメディ、いやコントだが全然面白くない。オチもデキの悪い子供漫画レベル。これが第一話にして表題作とは先が思いやられる。 《ロイス殺し》 寒々しいストーリーだがあまり、いや殆ど面白くない。(寒々しくても面白い話はある) ミステリ要素に何かあるのかと思えば、デキの悪い子供向けの推理クイズレベル。 《双生児》 始めから6割位までは双生児をテーマにした自己認識論やアイデンティティに関する禅問答のような議論が延々と続く。次いで新たなファクターが介入し、少しは面白くなるのかと思えばそうでもなく、訳の分からない結末へ続く。 《隠れ鬼》 これはリーダビリティがとても高く、一気に読めてしまったが・・・ 序盤は、迫ってくる不条理な恐怖、を描いたのだろうが全く怖くない。その後、その件および「鬼ごっこ」に関するフィアンセとの会話を挟んで、主人公の幼少期の「虐め」の記憶が展開される。そして最終シーンでは、これも訳の分からないエンディングへ。まあ、これは皮肉を込めた喜劇のつもりなんだろうね。 《ドッキリキューブ》 これも不快極まりない話だが、本書の中で唯一「面白かった」。終始「次の一手」が読める展開だが、笑えるシーンもあったし前作に続いて読み止まらないリーダビリティの高さ。 昨年、初めてこの作者の短編集「浚巡の二十秒と悔恨の二十年」を読んだ際、唸らされた作品がいくつかあったので本書も期待して手に取ったのだが・・・「浚巡・・」は本書の10年以上後に刊行されているようなので、この間に作者が「成長」したということなのだろうか。いずれにせよ今後、新作が出ることはないが・・・ |
No.127 | 6点 | 陽だまりの偽り 長岡弘樹 |
(2023/02/28 22:48登録) 以前からその名前はチラホラ見聞きしていたこの作者の作品を初めて手に取ってみた。まずは比較的評価が高い本短編集を。 《陽だまりの偽り》 これは楽しい。こんなに読みやすくて、いろいろな事が起こる短編はなかなかない。ミステリもしっかり入っているし。 サブタイトルをつけるとしたら「必死に痴呆症を隠そうとする自称名士の長ーい1日」といったところだろうか。でも、この時代には既に「認知症」という病名が世間一般に十分浸透していたと思うが。 《淡い青の中に》 これも読みやすくて、それなりに面白いが、結局・・・どうなるのか。まぁ、それは野暮というものか。 《プレイヤー》 なるほど・・・こういう話も書くのか。 個人的には本作のミステリ要素、引いては言葉遊びにも「ふ~ん」を越える感想は湧いてこなかった。 《写心》 誘拐を舞台にした心理ミステリとも言えるかもしれないが、さすがに無理があると思う。人間関係の濃度が違いすぎる。また、第2話同様、で、どうなる?っつうシメ。 《重い扉が》 ネタ自体は先例があるが、「絆」をテーマにした、この作者らしいストーリーに作り上げている。 でも「この状態」ではこうはならないと思う。 以上5編、全て非常にソフトで読みやすい文体で綴られていて、幅広い読者層におすすめできる短編集。 |
No.126 | 8点 | 逆転美人 藤崎翔 |
(2023/02/03 21:42登録) 未読の人は以下読まない方がいいと思います。 う~ん、アレだね・・・ 確かに想起させられる作品があるよね。 帯の「史上初の伝説級のトリック」という惹句が一部で「嘘だ」と不評を買っているようだが、そもそも「史上初」というのは「過去に一度もなかった」という意味なのに対して「伝説」というのは事実か虚構は別として「昔の尋常ならざる事象や人物についての言い伝え」のことであり「過去にあった」物事であることを前提にしたワードである。本作に関して言えば「史上初」には首を傾げたくなるが、「伝説級」については「アノ作品級」、野球で言えば「大谷翔平はベーブルース級」というのと同じく誇張ではないと言えるだろう。 つまりこのフレーズは「白い黒豚」とか「昨日生まれた婆さん」と同様自己矛盾を具現したキャッチコピーであり、同じ帯上で「紙の本でしかできない」とトリックの方向性を明示してしまった劣悪CMも含めて双葉社の鼎の軽重が大いに問われるPRマネジメントのレベルの低さを露呈している。 本作を「二番煎じ」と評する人もいるだろうが、自分は、仕掛けの難易度の高さ、ストーリーの緻密性、数十年に渡る時代考証に基づいた時系列使用の巧緻性などにおいて「アノ作品の令和の進化版」と評してもいいのではないかと思っている。 くだらないことをグダグダ書いたが、結局自分は人のひとかたならぬ頑張りに大きな拍手を贈らずにはいられないタイプなのて、努力点込みで。 |
No.125 | 10点 | 方舟 夕木春央 |
(2023/01/12 17:15登録) 基本、ミステリは文庫で読むことにしているが、本作のここでの評価があまりにも高いので我慢できなくなり、ひっさびさに単行本を入手して読んでしまった。(記憶がないが2冊買ってしまった) 以下は未読の人は読まない方が宜しいかと。 文字通り、タイムリミット付きのクローズドサークル・ミステリ&デスゲーム。(サバイバルゲームといった方が正しいかも) しかしエピローグ前までは実質「よくできた推理小説」という印象を越えるものではなかった。「最後の葛藤」では心が火照ったが。 そしてエピローグ・・・これはさすがに予測不能。帯を読んでいなかったので、流れから感傷的なエンディングを想像していたら・・・タマげた。これほどの高評価にようやく納得。 ただ、アノ人の「期待と準備」には何とも言えない皮肉な甘酸っぱさを感じてしまった。最後は究極の「告白」でもあったよね。自分ならどうしただろう・・・今までの人生で一番・・・だった人をイマジンして・・・いや、今の・・でも・・ 追記:もし後日、警察の徹底的な捜査により全てが明らかになったらどうなるだろう。スゴ腕の弁護士がついたら「カルネアデスの舟板」に持ち込める可能性はないだろうか。 |
No.124 | 7点 | アルテーミスの采配 真梨幸子 |
(2022/12/17 18:20登録) AV業界の生々しい実態を舞台にした、作者らしいサスペンスフルなイヤミス。 作者の多くの作品と同様に、グイグイ話を広げていき、ボカスカ登場人物を乱立させるが最後は見事に収束させる。 しかし本作の主人公は一体誰だったのだろう? |
No.123 | 7点 | Iの悲劇 米澤穂信 |
(2022/11/21 13:24登録) 廃村の復興をテーマにした連作短編集。 地味だがとても読みやすい「ヒューマンドラマ+ライトミステリ」が連ねられている。 いくつか印象に残ったストーリーに触れると・・・ 《第二章 浅い池》 不可思議な現象が起きるが・・・・殆どバカミスで笑った。 《第四章 黒い網》 マジシャンズセレクト。これは解ってしまった。 《第六章 白い仏》 不可思議な現象が起きて、一応説明が付けられるがスッキリしない・・・・と思っていたら次の終章で・・・ 《終章 Iの喜劇》 まとめの章。回収の章とも言える。確かに多少驚いたが、結局地方の貧困行政の愚かな上層部がもたらした虚しい悲喜劇と言えよう。 城塚翡翠もいいけど、こういう連作もTVドラマ化したら静かな人気を博するかも。 |
No.122 | 8点 | medium 霊媒探偵城塚翡翠 相沢沙呼 |
(2022/10/26 22:18登録) 心霊だとか超能力だとかには全く興味がない、どころかできれば関わりたくない分野だが、最近入れ込めるミステリを探すのに少し行き詰まってきたのと、本書の世評があまりにも高いのと、いつの間にか文庫化されていたことを知ったのが重なって、思い切って入手してみた。(テレビでやっているのは読み始めてから知った) 4編の中短編とプロローグと各話の間のインタールードとエピローグから成る作品集。 《泣き女の殺人》 「霊媒が出てきて霊視や降霊をする」ことを除けば、ごくごく平凡なミステリだと思うが・・・ 《水鏡荘の殺人》 本作を読んで、本シリーズのテーマなのかなーと思っていた「霊視、霊感をを論理に変換する」ということの意味は理解したが、本作の論理は正直よく解らんかった。 《女子高生連続殺人事件》 これも霊視や降霊が使われることを除けば、普通の猟奇ミステリだと思うが・・・ 繰り返しになるが、ここまでの感想・・・ホントにクドクて申し訳ないが、霊媒が出てくる以外取り立てて取り上げるものはなく、作者は随所随所で深味のある文章を書こうとしているが、いっぱいいっぱいで、まさにラノベの域を越えることができない。なるほどラノベとはこういうものなのか。ミステリとしてのストーリー展開もベタベタだし五冠って何?それとも本当は凄いミステリだが俺が読解できていないだけなのか?香月と翡翠のモヤモヤした関係も「そこまでするならさっさとヤッちゃえよ」とイラつかされる。ミステリに霊媒が出てくるとそんなに凄いのか? 《VSエリミネーター》 何という・・・・・・・・・ 《エピローグ》 これぐらいはないとね・・・ ここまで多くの方が「ほぼネタバレ」をされているので今更ネタ隠しをしてもしょうがないけれど、自分の主義なのでこれ以上の感想は控えます。 でも食わず嫌いしなくてよかった。 |