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ミステリの祭典

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ミステリーオタクさんの登録情報
平均点:6.97点 書評数:155件

プロフィール| 書評

No.135 5点 名探偵のいけにえ 人民教会殺人事件
白井智之
(2023/08/02 21:11登録)
 このサイトでは非常に評価が高いが、自分にはあまり合わなかったとしか言いようがない。

 不可能と思われる殺人を演出するトリックの数々やそれらを突き破るロジックのしつこいまでのお披露目直しなどが高評価の理由なのだろうが、トリックはいずれもチマチマせせこましい上、成功率が高くないと思われるものばかりだし、現実には存在しない疾患を作り出して利用するのも如何なものかと思うし、それらに目を瞑ってもこの程度のロジック、多重解決なら有栖川や法月や綾辻の作品で何度も味わったレベルにしか感じられなかったし、最後の動機の解明もただの変な価値観としか思えない。

 このサイトのおかげで読んでみた「方舟」の衝撃があまりにも大きかったため、当サイトでの現在、国内作品ランキング第1位の本作に期待し過ぎた部分はあるかとは思うが、本作の世評の高さは自分には理解できなかった。


No.134 7点 掲載禁止
長江俊和
(2023/06/22 21:33登録)
 テレビや映画関係の仕事も幅広く手掛けているという作者の5話からなる短編集。

《原罪SHOW》
どんな話を書いてくるかと思えばこういう系か。刺激的ではあるが、あまり好きではないし、バカ過ぎる気がする。また、最後の取って付けたような「トリック」・・・これは途中、それを完全に否定する記述が何度かあったと思うが。

《マンションサイコ》
 序章の不可解な行動は一体・・・と思ったら何と折原張りの奇行。というか折原氏へのオマージュだね、この作品は。ただ本作も前作ほどではないがアンフェアに近い部分があると思う。

《杜の囚人》
 途中で漠然とではあるが話の方向性は見えてくる。しかし最後は・・・。
 何となく「世にも奇妙な物語」に出てきそうな・・・いや、無理だ。

《斯くして、完全犯罪は遂行された》
 これも随分凝った話だが、そう簡単にそこまでするほど〇〇されるものだろうか。まぁ正常を著しく逸脱しているからこそのミステリなのだろうが。

《掲載禁止》
 うーん、何という展開。ちょっと腑に落ちないところもあるが、やっぱこの人、ミステリ作家としては折原系なんだろうね。


 本書の作品の大半は異様な「思想」や「宗教」に関わるものだが、これらに対する自分の個人的な印象を一言でいうと「不気味」。


No.133 7点 記憶の中の誘拐 赤い博物館
大山誠一郎
(2023/06/01 23:08登録)
 「赤い博物館」第2弾。5話からなる短編集。
 第1弾と決定的に異なるのは第1弾では犯罪資料館から一歩も外に出なかった雪女が何とワトソン役の主人公と一緒に聞き込みに回ること。


《夕暮れの屋上で》
 うーん、「不可解な殺人事件に関する読み物」としては面白いし、よくできていると思う。だがこの推理は本当にロジカルか、また真相の詳細、当事者のその後などはどうもねぇ・・・そしてどうなるんだろう。

《連火》
 これも「不可解な放火物」として面白くはある。多少ミステリに慣れていれば序盤のヒントでネタの概要には気づいてしまうだろうが。しかしこの動機でここまでやることを理解できる人がどれほどいるのだろうか。

《死を十で割る》
 ミステリにおいて死体が切断されている場合は「なぜ切断したか」がテーマになるが、その新たな発案を提示してみせた作品。でも早々に犯人フラグは立ってしまう。
 作者はこの作品を書くに当たって相当いろいろ勉強したと思われるが、惜しむらくは「上腿」ではなく「大腿」です。

《孤独な容疑者》
 これは警察が普通に解決できないだろうか。
 比較的斬新なタイプの・・・・だが「椅子」の推理は無理くり過ぎるし他にいくらでも可能性はあると思う。また犯人はともかく、被害者も変人過ぎる。

《記憶の中の誘拐》
 これはちょっとねぇ・・・そこまでやる動機の蓋然性と必要性があまりにも低い。と思ったらそれだけではなくて少しだけ納得。
 でも「第1弾」の最終話や「アルファベット・パズラーズ」の最終話の誘拐物が衝撃的だったのでハードルを上げ過ぎて・・・。


 主人公は各話の最初だけ『寺田聡』と称され後は全て『聡』であるのに対して、名探偵役の館長は『緋色冴子』と『雪女』の二つの呼称で代わる代わる表されるまのが面白い。

 また、この作者の作品は肩肘張ってトリックやロジックを詳細に検証してやろうなどと思わずに、「ミステリ的奇想」を楽しむつもりで大らかに読む方が堪能できるのではないかと思う。
 本書も作者の曲者ぶりが十分味わえる一冊。
 当然第3弾も期待したいが、そこでは聡が一歩も外に出なくて雪女が一人で聞き込みに回ってたりして・・・んなわけネェだろ。


No.132 7点 味なしクッキー
岸田るり子
(2023/05/20 02:48登録)
「男女物」を中心とした6話からなる短編集。

《パリの壁》
 バリの高級アパルトマンの一室での男と女のせめぎ合い、暴き合いミステリ。そしてエンディングは・・・

《決して忘れられない夜》
 京都の高級住宅内での男と女の、ある意味バトル。しかしこの「仕打ち」はあまりにも・・・

《愚かな決断》
 怜悧な研究者が犯人の倒叙物だが、時々いるよね、こういうバ○な「優秀な学者」。しかしコイツは○カ過ぎる。

《父親はだれ?》
 マンマなタイトルで超常現象も出てくるが、十分ミステリとして読めると思う。また途中で「読めた」。が・・・
流石理学部出身の作家だけあって、前作に続いて医科系研究室内での作業描写は非常に精緻だが「心細胞」という細胞は存在しないと思う。

《生命の電話》
 これもよくできたミステリだと思った。が・・・
しかし、読後感、望んだ結末は読者によって大きく分かれることだろう。

《味なしクッキー》
 プロローグの人間消失は一体如何に?・・・と思ったらソッチか。
 まぁ~半端ないジメジメストーリーだが、第5話までかなり楽しめた自分は、最終話にして表題作の本作の「仕掛け」に半端なく期待しながら読み進めたが・・・これは想定内だったかな・・・


 個人的には粒揃いの短編集と言ってもいいのではないかと感じたが上述の通り、表題作が(ヒューマンドラマとしては濃厚すぎるが)ミステリとしては一番平凡に近い印象だった。



No.131 7点 最後のページをめくるまで
水生大海
(2023/04/28 21:29登録)
 タイトルを見てから、それが短編集であることを知り、即買い。

《使い勝手のいい女》
 メインとなる「捻り」の一部だけは読めたが、よくできていると思う。また確かに最後の1ページで意外な展開を見せるが、これは驚愕度はさほど高くなかった。

《骨になったら》
 これもなかなか面白いストーリーで、途中の意外性もかなりのものだが、エンディングはミステリのオチとしてはさほど新鮮味があるものではない。

《わずかばかりの犠牲》
 3作目も読み物として十分面白い。これもメインのネタの一部だけ読めた。最後の数行はタイトルの皮肉がピリリと。

《監督不行き届き》
 突拍子もないオープニングから、頭がおかしいのか違うのか訳の分からない女に振り回される先の読めない展開が続くが真相はあまりピンと来ない。が、ラストの・・・

《復讐は神に任せよ》
 何とも悲愴と悲壮に満ちた話だが、こういろいろと重なるとチョッとね。


 この作者は作中で決して難しい言葉を使うわけではないが、会話や描写が表現不足で分かりにくいことがときどきある。始めのうちは、これは作者の未熟性によるものかとも思ったが読み進めるうちに、故意にか無意識にかは分からないがこれはかなり現代的な「スタイル」なんだなと感じられるようになってきた。


No.130 8点 無垢と罪
岸田るり子
(2023/04/14 21:23登録)
 連作短編集の形を取っているが、先のお二方が仰るように実質的には6章からなる長編小説と言えよう。単体で読めるのは第1話ぐらい。

 個人的には第5話「幽霊のいる部屋」のエンディングが、偶然流れていたルームミュージックの「星に願いを」とシンクロして感極まってしまった。

 各編の絡み方が技巧的過ぎて、驚き、戸惑い、合点の繰り返しだったが、愛、運命の悪戯、絶望、底知れぬ切なさ、救い、の物語として非常に印象深い作品だった。

 正直真相はあまりしっくり来ないし、あの子も○○に守ってもらえばよかったのではないかと思うし、京都弁の会話はキツかったが、忘れられないミステリ(本格とは言えないが)になりそうだ。

 本作の作品名も第1話のタイトル「愛と死」でもよかったのではないか、と読後ふと感じた。


No.129 8点 婚活中毒
秋吉理香子
(2023/04/01 22:34登録)
 そういうジャンルがあるのか知らないが「婚活ミステリ」短編集。全4話。

《理想の男》
 失恋した主人公が結婚相談所の紹介で理想の男性と出会うが、やがて疑惑の数々が・・・どうまとめるかと思えば、そうきたか・・・これはヨメなかった。

《婚活マニュアル》
 出会いパーティーから始まり、割とありがちなラブ・ストーリーかと思いき・・・・・・これはヨメた。

《リケジョの婚活》
 昔、こういう出会いの場をセッティングして、多くの男女に恋愛バトルを繰り広げさせるTV番組あったよね。今でもあるのかな。でも本作のような泊まりがけのプログラムで、尚かつ相手の実家に行ったり、そこで家族がゾロゾロ出てきたりというのは今も昔もないんじゃないかな。しかし本作ではそれが伏線に・・・

《代理婚活》
 何年か前にテレビなどで話題になっていた、親による「代理婚活」。今でも盛んなのかな。まあ、結婚は両者の家族の実情を切り離してできるものではないから悪くはないと思うが・・・


4話とも現実的な婚活話で始まり(第1話以外は)とてもミステリなど出てきそうもないストーリーが、やがて現実ではほぼあり得ない展開を見せるところが凄い。

(ネタバレ的感想)
 

 前半の2話は完全にイヤミス。3話目はハッピーエンドともバッドエンドとも言えないがちょっと気持ち悪い。最終話は唯一「いい話」と言えるだろう。


私は30回婚活パーティーに出席して20回見合いをして10年前の4月1日に結婚しました。


No.128 5点 完全・犯罪
小林泰三
(2023/03/26 19:33登録)
 3年前に50代で鬼籍に入った作者の短編集の一つ。

《完全・犯罪》
 バカSF、いやコメディ、いやコントだが全然面白くない。オチもデキの悪い子供漫画レベル。これが第一話にして表題作とは先が思いやられる。

《ロイス殺し》
 寒々しいストーリーだがあまり、いや殆ど面白くない。(寒々しくても面白い話はある)
 ミステリ要素に何かあるのかと思えば、デキの悪い子供向けの推理クイズレベル。

《双生児》
 始めから6割位までは双生児をテーマにした自己認識論やアイデンティティに関する禅問答のような議論が延々と続く。次いで新たなファクターが介入し、少しは面白くなるのかと思えばそうでもなく、訳の分からない結末へ続く。

《隠れ鬼》
 これはリーダビリティがとても高く、一気に読めてしまったが・・・
序盤は、迫ってくる不条理な恐怖、を描いたのだろうが全く怖くない。その後、その件および「鬼ごっこ」に関するフィアンセとの会話を挟んで、主人公の幼少期の「虐め」の記憶が展開される。そして最終シーンでは、これも訳の分からないエンディングへ。まあ、これは皮肉を込めた喜劇のつもりなんだろうね。

《ドッキリキューブ》
 これも不快極まりない話だが、本書の中で唯一「面白かった」。終始「次の一手」が読める展開だが、笑えるシーンもあったし前作に続いて読み止まらないリーダビリティの高さ。


 昨年、初めてこの作者の短編集「浚巡の二十秒と悔恨の二十年」を読んだ際、唸らされた作品がいくつかあったので本書も期待して手に取ったのだが・・・「浚巡・・」は本書の10年以上後に刊行されているようなので、この間に作者が「成長」したということなのだろうか。いずれにせよ今後、新作が出ることはないが・・・


No.127 6点 陽だまりの偽り
長岡弘樹
(2023/02/28 22:48登録)
 以前からその名前はチラホラ見聞きしていたこの作者の作品を初めて手に取ってみた。まずは比較的評価が高い本短編集を。

《陽だまりの偽り》
 これは楽しい。こんなに読みやすくて、いろいろな事が起こる短編はなかなかない。ミステリもしっかり入っているし。
 サブタイトルをつけるとしたら「必死に痴呆症を隠そうとする自称名士の長ーい1日」といったところだろうか。でも、この時代には既に「認知症」という病名が世間一般に十分浸透していたと思うが。

《淡い青の中に》
 これも読みやすくて、それなりに面白いが、結局・・・どうなるのか。まぁ、それは野暮というものか。

《プレイヤー》
 なるほど・・・こういう話も書くのか。
 個人的には本作のミステリ要素、引いては言葉遊びにも「ふ~ん」を越える感想は湧いてこなかった。

《写心》
 誘拐を舞台にした心理ミステリとも言えるかもしれないが、さすがに無理があると思う。人間関係の濃度が違いすぎる。また、第2話同様、で、どうなる?っつうシメ。

《重い扉が》
 ネタ自体は先例があるが、「絆」をテーマにした、この作者らしいストーリーに作り上げている。
 でも「この状態」ではこうはならないと思う。


 以上5編、全て非常にソフトで読みやすい文体で綴られていて、幅広い読者層におすすめできる短編集。


No.126 8点 逆転美人
藤崎翔
(2023/02/03 21:42登録)
 未読の人は以下読まない方がいいと思います。


 う~ん、アレだね・・・
 確かに想起させられる作品があるよね。

 帯の「史上初の伝説級のトリック」という惹句が一部で「嘘だ」と不評を買っているようだが、そもそも「史上初」というのは「過去に一度もなかった」という意味なのに対して「伝説」というのは事実か虚構は別として「昔の尋常ならざる事象や人物についての言い伝え」のことであり「過去にあった」物事であることを前提にしたワードである。本作に関して言えば「史上初」には首を傾げたくなるが、「伝説級」については「アノ作品級」、野球で言えば「大谷翔平はベーブルース級」というのと同じく誇張ではないと言えるだろう。
 つまりこのフレーズは「白い黒豚」とか「昨日生まれた婆さん」と同様自己矛盾を具現したキャッチコピーであり、同じ帯上で「紙の本でしかできない」とトリックの方向性を明示してしまった劣悪CMも含めて双葉社の鼎の軽重が大いに問われるPRマネジメントのレベルの低さを露呈している。

 本作を「二番煎じ」と評する人もいるだろうが、自分は、仕掛けの難易度の高さ、ストーリーの緻密性、数十年に渡る時代考証に基づいた時系列使用の巧緻性などにおいて「アノ作品の令和の進化版」と評してもいいのではないかと思っている。

 くだらないことをグダグダ書いたが、結局自分は人のひとかたならぬ頑張りに大きな拍手を贈らずにはいられないタイプなのて、努力点込みで。


No.125 10点 方舟
夕木春央
(2023/01/12 17:15登録)
 基本、ミステリは文庫で読むことにしているが、本作のここでの評価があまりにも高いので我慢できなくなり、ひっさびさに単行本を入手して読んでしまった。(記憶がないが2冊買ってしまった)

 以下は未読の人は読まない方が宜しいかと。

 
 文字通り、タイムリミット付きのクローズドサークル・ミステリ&デスゲーム。(サバイバルゲームといった方が正しいかも)
 しかしエピローグ前までは実質「よくできた推理小説」という印象を越えるものではなかった。「最後の葛藤」では心が火照ったが。
 そしてエピローグ・・・これはさすがに予測不能。帯を読んでいなかったので、流れから感傷的なエンディングを想像していたら・・・タマげた。これほどの高評価にようやく納得。
 ただ、アノ人の「期待と準備」には何とも言えない皮肉な甘酸っぱさを感じてしまった。最後は究極の「告白」でもあったよね。自分ならどうしただろう・・・今までの人生で一番・・・だった人をイマジンして・・・いや、今の・・でも・・

追記:もし後日、警察の徹底的な捜査により全てが明らかになったらどうなるだろう。スゴ腕の弁護士がついたら「カルネアデスの舟板」に持ち込める可能性はないだろうか。


No.124 7点 アルテーミスの采配
真梨幸子
(2022/12/17 18:20登録)
 AV業界の生々しい実態を舞台にした、作者らしいサスペンスフルなイヤミス。

 作者の多くの作品と同様に、グイグイ話を広げていき、ボカスカ登場人物を乱立させるが最後は見事に収束させる。

 しかし本作の主人公は一体誰だったのだろう?


No.123 7点 Iの悲劇
米澤穂信
(2022/11/21 13:24登録)
 廃村の復興をテーマにした連作短編集。
 地味だがとても読みやすい「ヒューマンドラマ+ライトミステリ」が連ねられている。
 いくつか印象に残ったストーリーに触れると・・・

《第二章 浅い池》
 不可思議な現象が起きるが・・・・殆どバカミスで笑った。

《第四章 黒い網》
 マジシャンズセレクト。これは解ってしまった。

《第六章 白い仏》
  不可思議な現象が起きて、一応説明が付けられるがスッキリしない・・・・と思っていたら次の終章で・・・

《終章 Iの喜劇》
 まとめの章。回収の章とも言える。確かに多少驚いたが、結局地方の貧困行政の愚かな上層部がもたらした虚しい悲喜劇と言えよう。


 城塚翡翠もいいけど、こういう連作もTVドラマ化したら静かな人気を博するかも。


No.122 8点 medium 霊媒探偵城塚翡翠
相沢沙呼
(2022/10/26 22:18登録)
 心霊だとか超能力だとかには全く興味がない、どころかできれば関わりたくない分野だが、最近入れ込めるミステリを探すのに少し行き詰まってきたのと、本書の世評があまりにも高いのと、いつの間にか文庫化されていたことを知ったのが重なって、思い切って入手してみた。(テレビでやっているのは読み始めてから知った)
4編の中短編とプロローグと各話の間のインタールードとエピローグから成る作品集。

《泣き女の殺人》
 「霊媒が出てきて霊視や降霊をする」ことを除けば、ごくごく平凡なミステリだと思うが・・・

《水鏡荘の殺人》
 本作を読んで、本シリーズのテーマなのかなーと思っていた「霊視、霊感をを論理に変換する」ということの意味は理解したが、本作の論理は正直よく解らんかった。

《女子高生連続殺人事件》
 これも霊視や降霊が使われることを除けば、普通の猟奇ミステリだと思うが・・・


繰り返しになるが、ここまでの感想・・・ホントにクドクて申し訳ないが、霊媒が出てくる以外取り立てて取り上げるものはなく、作者は随所随所で深味のある文章を書こうとしているが、いっぱいいっぱいで、まさにラノベの域を越えることができない。なるほどラノベとはこういうものなのか。ミステリとしてのストーリー展開もベタベタだし五冠って何?それとも本当は凄いミステリだが俺が読解できていないだけなのか?香月と翡翠のモヤモヤした関係も「そこまでするならさっさとヤッちゃえよ」とイラつかされる。ミステリに霊媒が出てくるとそんなに凄いのか?


《VSエリミネーター》
 何という・・・・・・・・・

《エピローグ》
 これぐらいはないとね・・・


 ここまで多くの方が「ほぼネタバレ」をされているので今更ネタ隠しをしてもしょうがないけれど、自分の主義なのでこれ以上の感想は控えます。

でも食わず嫌いしなくてよかった。


No.121 7点 初恋さがし
真梨幸子
(2022/09/24 22:31登録)
 今年に入って文庫化された作者お得意の連作短編集。

《エンゼル様》
 相変わらずのリーダビリティの高さで始まるが、オチは大体見えてしまう。お下劣描写も健在・・・などと思いながら読み進めたが、最終章のある一文が琴線に突き刺さって涙が出そうになった。そりゃないよ、マリ先生。

《トムクラブ》
 メインの捻りは斬新とは言えないが軽妙で悪くはない。でもストーカー絡みの話はイマイチピンと来ずスッキリしない。最後もさほど驚くべき展開とも思えない。

《サークルクラッシャー》
 これはアクの強さはあまりないが、サスペンスミステリとして普通に面白い。初めは全く解らなかった2つの物語のつながりが段々見えてくる展開も作者らしくて小気味いい。エンディングも意表を突く形でまあまあ。

《エンサイクロペディア》
 これも面白い読み物だが、いかにも「続く」という形で終る。

《ラスボス》
 このふざけた話のような中の緻密さとバカっぽくも感じられる心理描写こそはマリちゃんの真骨頂の一角だろう。これも露骨に「続く」で終る。

《初恋さがし》
 これは表題作に相応しく、いかにも作者らしいショートミステリ。単品でも問題なし。

《センセイ》
 本短編集のマトメになるが、いつもの連作短編集同様目まぐるしいアンサーディスプレイ、そしてラスボスの正体。
 

各種書評サイトでは「今までに比べてパワーが落ちている」などというニュアンスの感想が多かったような気がするが、確かに「エログロ」や「生臭さ」のグレードは昔の作品に比べると高くないかもしれないが、作者の長年の創作活動に裏打ちされた技巧性はかなり高い連作短編集だと個人的には感じた。というか、こうも「引っ掻き回して回収する」連作短編集を書くのはこの人ぐらいではないだろうか。


No.120 7点 アメリカン・ブッダ
柴田勝家
(2022/09/07 22:21登録)
 このふざけた名前の作家の作品を初めて読んでみた。まずは短編集をチョイス。

《雲南省スー族におけるVR技術の使用例》
 この話はVRに生きる仮想民族を通して、感覚認識論を深く緻密に掘り下げた仮想レポートだと思うが、物語としては「なぜこんなことをするのか」「それは民族にいい結果をもたらしたのか」も書いてほしかった。でも何かの賞を受賞したことは十分納得できる。

《鏡石異譚》
 主人公である若い女性の不思議な体験を通して「タイムトラベル」と「記憶」の問題とそれを解決する仮説を「遠野物語」に出てくる数々のストーリーに絡めて展開する、量子力学的サイエンスフィクション。
 くどかったり解りづらい所も少なからずあったが、終わり近くの次のフレーズは心に残った。
 「後悔も含めて人生だからね。僕は自分が後悔することも受け入れるよ」

《邪義の壁》
 ちょっといびつな民俗信仰モノ。一読SFではないが、あの「壁」は殆どSFだよね。最後は明記はされていないが・・・・ミステリだよね。

《一八九七年:龍動幕の内》
 なかなか凝った創りの「SFミステリ」。これも読み応えズッシリ。

《検疫官》
 第1話と同様ある統制の物語だが、これはチョッと無理すぎだと思う。実際、題材の扱いも中途半端な感が否めないし、そもそも人間の「目的のある行動」自体が既に「物語」なんだから、いかなる空想世界においてもこの規制が通る人間社会は成立し得ないだろう。

《アメリカン・ブッダ》
 壮大なマルティプレックスフューチャーヒストリーだが個人的には、読んでいて面白かったかと訊かれると・・・・ビミョー。
 途中、「この作者は自分が何を書いているのか解ってるのかな」と思ったことも。
 また頓珍漢な印象だとは思うが、「Mアメリカ」からは当初「あつ森」を連想してしまった。

総じて精緻さと完成度の高さにおいて称賛に値する短編集だとは思うが、万人向けとは言い難いだろうね。
 


No.119 7点 アリス・ザ・ワンダーキラー
早坂吝
(2022/08/15 18:03登録)
 少女アリスが主人公の、5つのクイズという形式の連作短編集。

 所々で『不思議の国のアリス』のシーンが紹介されるが、子供の頃に読んだ薄っぺらい絵本では記憶にないものがたくさんあり、あのおとぎ噺の原作は実はかなり盛り沢山の内容があったんだな、と思い知る。ハンプティ・ダンプティが『アリス』に出ていたことも初めて知った。
 本書の内容も子供の絵本より、大人になってから見た盛り盛りの映画『アリス・イン・ワンダーランド』の方に遥かに近い。いや、それ以上と言えるだろう。

 ミステリとしては面白いロジックが使われている所もあるが、殆ど読者が解けるようにはできていない。

 全体としても何とかまとめた感はあるが、その形が何とも・・・。


No.118 7点 午後の足音が僕にしたこと
薄井ゆうじ
(2022/07/23 13:10登録)
 かなり短い作品ばかりが二十余作収録された短編集。

 大半がボーイミーツガール物(1作だけガールミーツボーイ)だが、始めの数作を読んだ時点で何というか、ストーリーに責任を持たずに思いつくままに書き綴り最後は読者の期待など全く無視して意味がありそうなふりをしたセンテンスで適当にクローズしてしまう、という印象ばかり受けたので投了しようかとも思ったが5作目ぐらいになると、このツカミドコロのない作風が少しクセになってしまった感も否定できず結局読み続ける。
 以後はボーイミーツガールのみならず「不安定なカップルの物語」なども語られるが後半に入ると殆どが海外編になる。マニアックな地域が多く情景描写も趣が深く、作者の海外旅行通ぶりが窺われる。
 ただし、最終話は国内に戻り・・・・マトメも悪くない。

マイベストは「中国語のカサブランカ」:これだけは文句なしにオススメできる。
次点は「パタゴニアで買えなかったもの」


No.117 8点 逡巡の二十秒と悔恨の二十年
小林泰三
(2022/06/29 21:49登録)
 今頃になって初めてこの作者の本を読んでみた。
 10の作品が収録された短編集。

《玩具》
 何これ・・・まあここまでベチョベチョグチャグチャに突っ走ればある意味立派。最後の一行は普通驚くよね。

《逡巡の二十秒と悔恨の二十年》
 う~ん、そう来たか。類似例がないわけではないが、これはこれでかなりエグい。

《侵略の時》
 非常に珍妙な発想の侵略モノ。最後の方で「人間の存在」に関する意味論が少しだけ展開されるが、エンディングは自分もウンザリした。

《イチゴンさん》
 民俗信仰系の・・・何だろう、これは。バカホラーか?

《草食の楽園》
 平和と種族間闘争に関する文明論がテーマの未来の物語だと思うが、この話は好きではない。ふとロバート・ジェクリイの短編を思い出したが、最後の男は誰なんだ?

《メリイさん》
 これはお化け噺の落語。オチは○□く◇△ん▽。

《流れの果て》
 よく分からん話だが短いから許せる。「無量大数」を越える数字の単位が興味深かったが「アレフ」なんてあったっけ?

《食用人》
 前半はふざけすぎで抱腹絶倒。後半は文字どおり食傷気味。

《吹雪の朝》
 ツカミは好みではない感じだったが、途中からどんどん好きな展開になっていき、間違いなく本書内のマイベスト。事件後の延々と続く議論はもたついた感じも少なからず受けたし、決め手が専門知識なのもちょっとどうかと思われるかもしれないが、それでも巧妙な作りは色褪せない。この作者はこんな冴えたミステリも書けるのか、いや書けたのかと少し意外な気がした。

《サロゲート・マザー》
 代理出産と家畜の伝染病を題材にした、悲壮で濃密な生命の物語だが・・・これもマイベスト。


いやぁ~、よくもこんなにもバラエティーに富んだ異様な話をこんなにも思いつくもんだ。
亡くなった方を誹謗するつもりなど毛頭ないが、まともな精神状態の人が書いた作品集とは思えない。天才と何か。紙一重の共存。
新作はもう出ないけどまだまだ楽しませてもらおうと思う。
新作出たりして。


No.116 7点 失はれる物語
乙一
(2022/06/20 17:26登録)
 この作者とはあまり相性がよくないと思っていたが、少し前に読んだアンソロジーの中での作品が面白かったので食わず嫌いをやめて久々に乙一短編集を読んでみることにした。

 表題作はあまりにもキツい話だが、マイベストの「手を握る泥棒の物語」を除けば他の作品も程度の差はあれ作者らしい哀愁と切なさと淡い希望を漂わせる物語になっている。しっかりした本格要素を含む作品もある。

 マイベスト以外の作品を自分は本当に楽しんで読んだのか何とも判然としないが、しばらくしたら又、乙一作品を読んでみようと思う。

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