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ミステリの祭典

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記憶の中の誘拐 赤い博物館
緋色冴子

作家 大山誠一郎
出版日2022年01月
平均点6.60点
書評数5人

No.5 7点 ミステリーオタク
(2023/06/01 23:08登録)
 「赤い博物館」第2弾。5話からなる短編集。
 第1弾と決定的に異なるのは第1弾では犯罪資料館から一歩も外に出なかった雪女が何とワトソン役の主人公と一緒に聞き込みに回ること。


《夕暮れの屋上で》
 うーん、「不可解な殺人事件に関する読み物」としては面白いし、よくできていると思う。だがこの推理は本当にロジカルか、また真相の詳細、当事者のその後などはどうもねぇ・・・そしてどうなるんだろう。

《連火》
 これも「不可解な放火物」として面白くはある。多少ミステリに慣れていれば序盤のヒントでネタの概要には気づいてしまうだろうが。しかしこの動機でここまでやることを理解できる人がどれほどいるのだろうか。

《死を十で割る》
 ミステリにおいて死体が切断されている場合は「なぜ切断したか」がテーマになるが、その新たな発案を提示してみせた作品。でも早々に犯人フラグは立ってしまう。
 作者はこの作品を書くに当たって相当いろいろ勉強したと思われるが、惜しむらくは「上腿」ではなく「大腿」です。

《孤独な容疑者》
 これは警察が普通に解決できないだろうか。
 比較的斬新なタイプの・・・・だが「椅子」の推理は無理くり過ぎるし他にいくらでも可能性はあると思う。また犯人はともかく、被害者も変人過ぎる。

《記憶の中の誘拐》
 これはちょっとねぇ・・・そこまでやる動機の蓋然性と必要性があまりにも低い。と思ったらそれだけではなくて少しだけ納得。
 でも「第1弾」の最終話や「アルファベット・パズラーズ」の最終話の誘拐物が衝撃的だったのでハードルを上げ過ぎて・・・。


 主人公は各話の最初だけ『寺田聡』と称され後は全て『聡』であるのに対して、名探偵役の館長は『緋色冴子』と『雪女』の二つの呼称で代わる代わる表されるまのが面白い。

 また、この作者の作品は肩肘張ってトリックやロジックを詳細に検証してやろうなどと思わずに、「ミステリ的奇想」を楽しむつもりで大らかに読む方が堪能できるのではないかと思う。
 本書も作者の曲者ぶりが十分味わえる一冊。
 当然第3弾も期待したいが、そこでは聡が一歩も外に出なくて雪女が一人で聞き込みに回ってたりして・・・んなわけネェだろ。

No.4 5点 makomako
(2023/05/28 17:45登録)
前作で次作を期待したのですが、今回はいまいちでした。
本格物が好きなものにとってしっかり楽しめるシチュエーションではあるのですが、推理があまりに強引でご都合主義のように感じたのです。
勿論警察がしっかり捜査しても解決できなかった事件を報告を読んだだけで解決に導いてしまうのですから、普通に行けば無理に決まっているではありますが。



No.3 7点 蟷螂の斧
(2022/12/14 17:55登録)
①夕暮れの屋上で 8点 卒業式の前日、校舎の屋上で美術部の女子生徒(2年生)が殺害された。「先輩、これでお別れですね」の言葉。3年生の男子美術部員が疑われ・・・別れの原因
②連火 6点 連続放火事件が発生。ただし、放火された家には火事だと電話がある。犯人は誰かに会いたがっている・・・過去の事件 
③死を十で割る 7点 男のバラバラ死体が発見された。DVを受けていたその妻は電車に飛び込み自殺していた・・・バラバラの理由 
④孤独な容疑者 6点 同僚から借金の返済を迫られ殺害してしまった。他に借金をしている者の名前をダイイングメッセージにしたが・・・利腕 
⑤記憶の中の誘拐 6点 養子の子供が実母に誘拐され、身代金を請求されたが、後日身代金も取らず解放された・・・○○の隠蔽

No.2 7点 まさむね
(2022/11/19 22:57登録)
 未解決事件などの捜査書類を保管する、警視庁付属犯罪資料館(通称「赤い博物館」)を舞台としたシリーズ続編。館長である変わり者キャリア・緋色冴子と、凡ミスから捜査一課を追い出された寺田聡のコンピはそのままです。でも、前作と異なり、今回は緋色が博物館の外にも足を運ぶようになっていて、そのことが作品に奥行きを与えているような気がします。
 どの短編も、謎自体はシンプルで、入り込みやすいもの。短編によっては、ネタの一部が想定しやすそうではあるものの、着地点はそれを完全に超えてきます。短編集としての質は高いのではないでしょうか。第一話「夕暮れの屋上で」と、最終話の表題作が良かった。
 個人的には、「アリバイ崩し承ります」シリーズよりも、このシリーズの方が好み。続編を期待したいところです。

No.1 7点 人並由真
(2022/07/30 00:50登録)
(ネタバレなし)
 警視庁管轄の犯罪資料館「赤い博物館」館長の「雪女」緋色冴子を主役探偵にした連作短編シリーズの二冊目。
 本当に最初から文庫オリジナルで出してもらっていいのか? おい、という感じである(汗)。

 全5編、一本一本多少の出来不出来はあるが、翻訳ミステリでいうならホックのレオポルド警部ものレベルの連作で、個人的には十分に面白かった。
 第一話「夕暮れの屋上にて」の真相と結着で、今回の一冊の方向性がなんとなく見えたような気もしたが、実際のところは(以下略)。

 ベスト編は表題作(第五話)と第二話の「連火(れんか)」辺りか。残りの二つもそれなりに良かったが、ちょとだけ落ちる。
 犯人に関してはとんがった(善人とか異常者とかの尺度とは全く別で)キャラクターが多くなった印象だが(ここまでは書いてもネタバレにならないだろう)、意外な動機や犯罪の真実についてのサプライズを追う上でそれは順当なものかも。
 
 できればまだまだ、シリーズの継続を願う。

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