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ミステリの祭典

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夫の骨

作家 矢樹純
出版日2019年04月
平均点7.00点
書評数3人

No.3 7点 蟷螂の斧
(2023/09/04 08:33登録)
①夫の骨 8点 夫は義母の後を追うように亡くなった。遺品を片付けていると、赤子の骨が出てきた。義母が産んだに違いないが・・・まさか夫の?(夫が高校生のとき、義母(後妻)は30代だしなあ)
②朽ちない花 5点 私は癌検診の後に別室に呼ばた。お金がかかる。私は姉に彼氏を取られていた。意地悪な姉からお金を・・・倒産(相手の男もどうなのかなあ)
③柔らかな背 7点 孫から電話。オレオレ詐欺か?。預金通帳を見ると残高がない。同居の娘が引き出したに違いない・・・介護士(殺人の意味がよく分からん。認知症?)
④ひずんだ鏡 6点 妹が妊娠、結婚するという。私は彼氏から振られたばかり。ポシェットのお金が半分減っていた。いったい誰が・・・顔認証(叙述のつもり?)
⑤絵馬の赦し 7点 娘は中学受験を控えていた。そんな時「あること」で二度と関わらないと約束していた夫の又従妹から電話。妊娠したという・・・合格祈願(娘が愛おしい)
⑥虚ろの檻 4点 別荘の管理人の私。隣に大きな檻が設置され、狂犬病らしい犬が入れられた・・・殺意(奇をてらい過ぎ)
⑦鼠の家 7点 血のつながっていない妹が家出して10年。その間、母は彼女の痕跡を消そうとしていた・・・殺人?(屋根や床下にある歯まで、念の入れすぎ(笑))
⑧ダムの底 6点 引きこもりの娘が突然ダムに行きたいという。盗品の証拠品を捨てるらしい・・・父にも捨てたものがあった(トリックは新鮮味に欠ける)
⑨かけがえのないあなた 8点 FXに失敗した夫。妻は保険金を手に入れるため、夫を殺さなければならない。昔の愛人(今はヤクザ)に手伝ってもらい自殺に見せかける・・・子供のDNA(プロットがいい)

No.2 6点 メルカトル
(2019/10/16 22:47登録)
昨年、夫の孝之が事故死した。まるで二年前に他界した義母佳子の魂の緒に搦め捕られたように。血縁のない母を「佳子さん」と呼び、他人行儀な態度を崩さなかった夫。その遺品を整理するうち、私は小さな桐箱の中に乳児の骨を見つける。夫の死は本当に事故だったのか、その骨は誰の子のものなのか。猜疑心に囚われた私は…(『夫の骨』)。家族の“軋み”を鋭く捉えた九編。
『BOOK』データベースより。

サスペンスとして登録されていますが、もう本格ミステリで良いんじゃないでしょうか。何しろ『イニシエーションラブ』が本格扱いされている訳ですから、本作は超本格ってことになりませんかね。
どれもこれも○○を前提として書かれているので、その意味では確かになるほどと思いますが、どうも構成や文章に問題がありそうな気がしますね。時系列がバラバラでいきなり場面が切り替わり、一瞬?となる個所が幾つもありました。登場人物が限られている中で、しかも短編なのにこれはどうかと思います。そして本職ではないにしても、プロの作家としてこの表現はどうなのとか、語彙のチョイスがちょっと違うのではとか、単に私には文体が合わなかっただけなのかも知れませんが。折角のアイディアの良さが半減しているのでは、と思います。

まあそうは言っても、多分老若男女広く受け入れられる作品なのは間違いないでしょう。私のイチオシは表題作。ミスリードはミエミエですが、意外すぎる結末に驚きを隠せません。これは想定外でしたね。他の作品も粒揃いですが、確かに一気読みすると混乱するかもしれません。

No.1 8点 虫暮部
(2019/07/09 10:44登録)
 短編集としての欠点は、作風が一貫し過ぎていること。“家族”が主題。事件を探偵が解くのではなく、情報を制限し“読者に対して”謎を演出する形式。手堅く普遍的な文体や人物設定(“嫌な感じ”の匙加減が絶妙)……ゆえに非一気読み推奨、一話ずつばらして賞味するが吉。
 収録作品はどれもレヴェルが高くて正直びっくりした。一編選ぶなら「柔らかな背」(人殺しの場面が愉快)。
 因みにかなり毛色は違うが漫画原作者としての仕事もなかなか面白い。

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