ミステリ初心者さんの登録情報 | |
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平均点:6.17点 | 書評数:412件 |
No.232 | 7点 | RPGスクール 早坂吝 |
(2020/09/14 20:36登録) ネタバレをしています。 かなり変わった設定のミステリでした。その名の通り、学園RPGアクションゲームのような剣と魔法のミステリ(?)。学園RPGはペルソナぐらいしかやったことありません(しかも2まで)。 文章は非常に読みやすく、漫画を読むかのように進んでいきます。最初にイマワが殺され、それがモンスターの者ではない=誰かが殺した殺人事件の謎が提示されて以来、長いページ学園アクション小説になっています(笑)。しかし、その中で超能力についての説明があったり、魔王が仕掛けたRPGゲームの説明があったり、かつその要素が"誰がイマワを殺したか?"のロジックにかかわっていて、全体として無駄な文が少なかったです。非常に本格度の強い作品だと思います。 以下、不満点。 ・誰がイマワを殺したか?については、校長が殺したというのが読者にたどり着ける唯一の答えだと思います。どんでん返しとしてミラがそれを助けた形ですが、これはさすがに推理不可能だと思われます。すべての伏線が回収されている点は素晴らしいですが、ミラを犯人役としてみた場合は都合のよ良い偶然がありすぎています。さらに、若干の悲しい最後(笑)。 |
No.231 | 7点 | 葬儀を終えて アガサ・クリスティー |
(2020/09/11 01:27登録) ネタバレをしています。 今回は少し読みづらさを感じました。非常に多くの登場人物にくわえ、事件としては地味な(個人的に)展開が続きます。殺された方法を議論するでもなく、登場人物もたいていアリバイがない。みんな金が欲しいので、誰がリチャードを殺したとしても不自然ではない。盛り上がり所がよくわからず、なかなかページが進みません。しかし、もう私はアガサ・クリスティーの術中にはまっていたわけです(笑)。 ポアロが犯人を明かしたとき、これまであった伏線が見事に回収され、視点が180度変わってみえる快感はアガサ作品特有のすばらしさですね。思えば作品の雰囲気の遺産争い的なもの(家系図なども含めて)も、ミスリードだったわけですね。本当に殺人事件だったのは第2の事件であり、口封じに見せるなんてかなり大胆です。 以下、不満点。 ・犯人の行動は大胆で虚を突かれましたが、かなり賭けなのではないでしょうか? 私もうっすら"誰もコーラを認識できないのでは?"と思いましたが、誰が覚えているかもしれません。いまいち成功するとは思えないのですが。 ※追記:コーラに化けた人間が、またその家族の元へ行くのっておかしくないですか(笑)。 ・ヒ素入りケーキは結構怪しいと思ってました(笑)。それでも私は犯人から外してしまったわけですが。致死量以下の毒を飲んで容疑者から逃れるという展開は、ミステリにおいてよく見ます。しかし、これも致死量の表現があいまいですよね。せめて、すべて食べたら絶対に死に、半分残したら絶対に死なないぐらい書いてほしいです(実際にはそうではないにしても、ミステリ的ヒントとして(笑)) |
No.230 | 7点 | medium 霊媒探偵城塚翡翠 相沢沙呼 |
(2020/09/01 20:56登録) ネタバレをしています。 剣崎比留子ではなく、二階堂蘭子だった(笑)。じつは蘭子よりも適当な人物を思い浮かべましたが、そっちの作品のネタバレになってしまうので、蘭子にしておきます(笑)。 非常に読みやすい文体ですいすいページが進みます。登場人物が限られていて、言葉遣いなどから簡単に誰がしゃべっているかがわかります。翡翠と香月のイチャイチャに腹が立ちますが、衝撃ラストには必要なものです(笑)。 推理小説部分は、3つの本格短編と、1つの叙述的な仕掛けと、全体を通しての仕掛けがありました。なかなか濃厚です。 まず、3つの短編から。短編顔負けの論理が展開され、この3つの話だけで終わっても(香月翡翠ともに前半のキャラクターのままでも)評価できるぐらい端正な推理小説となっています。私は香月の推理を当てる事が全くできませんでした(涙)。翡翠に馬鹿にされている香月の推理ですが、私は見事だと思いました(笑)。翡翠のそれより説得力を感じます。 次に1つの叙述的な仕掛け。香月=シリアルキラーです。これは正直予想できました。におわせるヒントがたくさんあり、作者はあえてここまではバラしている感じがありました。 最後に衝撃の翡翠詐欺霊媒師(笑)。実は私は、翡翠がそれほど圧倒的な能力がないことと、香月の推理は翡翠の霊力が必須ではないほどのヒント程度なことから、翡翠が推理の先回りしている→霊能力なしでも成立するのではないかと疑っておりました。しかし、第2、第3の翡翠のいろいろな出来事を読み、論理だけでは予想しえないと思い、翡翠の霊能力が嘘であるという確信が持てませんでした。まあ、ラストの翡翠の推理はあまりにも難易度が高く、頭パープリンの私には当てる事ができなかったでしょう。 以下、難癖部分。 ・最終盤の翡翠の推理は可能性の域を出ていない気がします。そして、解決編とよぶには明らかに読者へのデータが足りないような。 ・エピローグでどちらの翡翠が本当なのかわからないように書いてましたが、ぶっちゃけ詐欺霊媒師であってほしい(笑)。続編は翡翠主観文章で男を騙しながらってのもいいですね(笑)。続編があるのなら。 叙述トリック一本の作品かと思いきや、実は最小限の叙述トリックしか使われておらず、それに頼らないどんでん返しは見事でした。やや既存小説を揶揄した表現がなくはないですが、"男性の理想が詰まった女性キャラクター"が苦手な私にとっては不快な表現ではありませんでした(笑)。鮎川さんも"真のフェミニストは女性の汚い部分も書く"的なことをおっしゃってましたし(笑)。 |
No.229 | 8点 | 中途の家 エラリイ・クイーン |
(2020/08/25 18:26登録) ネタバレをしています。 "国名○○+秘密"というタイトルではなかったため、なんとなく読んでいませんでした(とはいえ、国名シリーズを制覇しているわけではなく、つまみ食い的に読んではいますが)。しかし、国名シリーズでも屈指のフェアさと論理性を兼ね備えた名作でした! ページ数が結構あり、ビルとアンドレアの恋愛パートが冗長に感じられるところもありましたが、全体的に読みやすく、不満はあまりありません(下に書いてますが(笑))。 非常にフェアなため、やや犯人がわかりやすすぎるとは思います。しかし、論理的な犯人当てというのは犯人が犯人臭いことよりも、犯人以外が犯人ではない理由のほうが大事だと思っています。犯人ではない理由も読者に推測が可能で素晴らしいです。不満点もありますが(笑)。意外な犯人を演出しようとし過ぎる他作品より100倍は好みです。青崎有吾さんの小説もこれぐらい論点をわかりやすく書いてくれるとよいのですが(笑)。 私は何回か読み直し、ほぼほぼエラリーの推理を当てる事ができました。実は、犯人が一番犯人らしい犯人すぎて絶対に外していると思い、フィンチ以外の人物の検証をしまくりました(笑)。 以下、好みではなかった部分。 ・犯人が女性でない理由がやや不満。"犯人が女性であれば自身の口紅をペン代わりに使っただろうし、アンドレアの口紅を使うという発想も出たはず"というのはどうでしょうかね? また、女性がパイプをやったっていいはずです。さらに、ギンボール夫人がパイプをやらないという描写はなかったような…?(勘違いならすいません)。 ・アンドレアの犯人でない理由は、心理的アリバイだと思います。クロロホルムを嗅がされたとき、近くにクロロホルムがしみ込んだハンカチ的なものが落ちていない(たぶん)ので、狂言ではないとは思いましたが。まあ話の流れ的に犯人ではありえないのですが(笑)。 ・題名は"スウェーデン燐寸の秘密"のほうが絶対に良いとおもう(笑)。 |
No.228 | 7点 | アリス殺し 小林泰三 |
(2020/08/17 17:19登録) ネタバレをしています 夢の中での不思議の国アリスでの殺人が、現実にも起こる…という風な感じで、ファンタジーやSF?の要素を取り込んだミステリです。 文章は非常に読みやすく、ほぼ一晩ですべて読み終えることができました(笑)。調べると、同作者の同コンセプト作品があるらしいので、いまから買うのが楽しみです(笑)。 実は私は、不思議の国のアリスのことを結構知りません(笑)。なので、細かいネタはわからないのですが、それでも楽しむことができました。 全く関係ないですが、アリス探偵局を思い出しました。 推理小説としても楽しめる内容でした。 まず、不思議の国での殺人事件についての謎があります。これについては、証言者である白兎の勘違いからアリスが濡れぎぬを着させられてしまうのですが、1ページ目から伏線があり、また物語中盤にも伏線があります。論理的にだれが犯人かわかると思います(私は当てられなかったが(笑))。 また、人物の入れ替わりが起こっていました。つまり、別のアーヴァタールと自称する人物が複数人いました。正直、この設定でこれは予想できたのですが、まさか主人公とペットも入れ替わっているとは思いませんでした。犯人の入れ替わりが強調され、主人公とハム美間の入れ替わりを隠しているようにも感じます。また、主人公とハム美の入れ替わりは、ほとんどの登場人物も読者とともに騙されている、変わったタイプの叙述トリックだと感じました。 不思議の国のほうが現実であり、現実と思われた世界が仮想世界という展開は予想できました(笑)。 余談ですが、非常に似た設定の漫画が存在するようですね。そちらは夢が前世?らしいです。見たことはないのですが。 読みやすさ、犯人当て、叙述トリックによる驚き、すべてそろった良い作品でした。しいて難癖をつけるとしたら、グロ表現が過激ということ(笑)。 |
No.227 | 6点 | 幽霊の2/3 ヘレン・マクロイ |
(2020/08/16 17:21登録) ネタバレをしています。 登場人物がまあまあ多く、やや読むのに苦労しました(笑)。 パーティでの毒殺があった後、探偵役ベイジルの調査によって被害者の正体が徐々に明らかになっていき、物語全体の謎が解けていくという流れです。ベイジルが出てきてからは物語が盛り上がっていき、読むスピードも上がっていきました。 本全体の”何が起こっていたのか?”系の謎に関しては、面白い2時間ドラマや映画のような趣があり、楽しめました。 一方で、毒殺トリックとしてはあまりに小粒で必要性を感じませんでした(笑)。私は面白い毒殺トリックをいうものをまだ見たことがなく、ただ殺害方法が毒殺だったという作品ばかりです。どうやって気づかれずに毒をいれたのか?や、どうやって特定の人物にだけ毒を飲ませられたのか?などを問う小説は、思い出しても3~4作品だけであり、しかもその小説のメイントリックではありませんでした。そのため、幽霊の2/3の帯に書かれた毒殺の文字に、勝手に心躍らせていました(笑)。 私の勘違いもありましたが、フーダニットや毒殺トリックとしては弱いと思います。 |
No.226 | 5点 | 『ギロチン城』殺人事件 北山猛邦 |
(2020/08/10 01:18登録) ネタバレをしています。 買ったのは正月前後ですが、城シリーズ最初がクロック城だったことをしり、クロック城からよみました。しかし、wikiによると、作品毎に世界観が独立しているシリーズとのことなので、今回はギロチン城を読みました。 とても読みやすい文章であり、クロック城よりも専門用語もなく、とっつきやすいです。首切り人形の伝説から始まり、頼科のナコが登場してからすぐに城までたどり着きます。登場人物紹介はないですが(というか書けない)、認証システムでの表がその役割をしてしています。名前も覚えやすいですね(笑)。 推理小説部分に関しては、大掛かりな城の仕掛けを利用した密室殺人と、読者をだますために用意された叙述トリックがあります。 密室殺人に関しては、状況が完璧すぎたため、まるでわかりませんでした。回廊の廊下が円形になっていることが示される前まで、犯人との共犯を疑っていました(共犯でも密室の謎は解けませんでしたが…)。回廊の廊下が円形であるとわかってからは、動くことは予想できたのですが、やはり完全にはわかりませんでした。 叙述トリックに関しても全く予想できませんでした。確かに悠は存在が薄すぎましたが(笑)。頼科たちが藍と初めて会うシーンを読み返しましたが、なるほど藍はしゃべるが悠はしゃべったと書いてはありません(笑)。ただ、首から上と下とで名称が違うなんてことは、通常この世にありえないので、このページを読んで「同一人物だ!」なんて思う人間はいないでしょう(笑) 以下、好みではない部分 ・登場人物は人形を意識してなのか、大量殺人が起こっているにもかかわらず、あまり感情を表しません。一族の血なのでしょうか。そのため、クローズドサークル特有のサスペンス感や緊張感は感じられませんでした。 ・スクウェアの儀式を行う回廊での廊下が動く仕掛けですが、似たようなトリックの作品をいくつか見たことがあります。しかし、それを見るたびに、移動していたら体感でわかるのではないか?と疑問に思ってしまいます。トリックに必要な回転速度も完全にはわかりませんし、人間が動いていると知覚できないくらいの速度って結構遅いものだと想像しますが…? ・一人の人物を小説上二人に見せるという仕掛けもたびたび見ます。しかし、やや強引すぎる気がしますし、小説上効果的でもないと思います。 |
No.225 | 7点 | カササギ殺人事件 アンソニー・ホロヴィッツ |
(2020/08/05 18:52登録) ネタバレをしています。 上下巻分かれていて、かなり長い作品です。 まず上巻。その大部分が、アガサ・クリスティーのような雰囲気の古典作品のようで、単なる作中作品でおわらず単体でも楽しめるレベルの作りこみが深い作品です。が、楽しくなってきて、いよいよ事件の解決…というところでお預けをくらってしまいます(涙)。 次に下巻ですが、作中作品の解決部分が見つからず、その作者が死んでしまうという事件が起こります。出版社に遺書めいた文章が送られてきて、自殺ということで片付けられますが、アランの担当編集者(下巻の主人公)が疑問を持ち、事件を追っていく内容になります。 この遺書は偽造されたものであり、手書きで書かれた作中作品が利用されているというアイディアは非常に素晴らしく、かつ伏線も張ってあり、明かされた時にはやられた!と思ってしまいました(笑)。作中作品をうまく利用したトリックです。3ページ目が若干短いのがいいですね(笑)。 最後に上巻では明かされていない作中作品の解決部分が登場します。探偵によって事件の全容が明らかになると読者に別視点が与えられ、今まで見えていた事実が180度変わり、わからなかった部分が氷解していく快感は、まるでアガサ・クリスティー作品のそれでした(笑)。 以下、難癖部分。 ・長いです(笑)。あと、登場人物も多いです(笑)。上巻では探偵が登場するまでなかなか面白くならず、150pあたりまでは読むのに苦労しました。下巻では全体的に苦労しました(笑)。ややテンポの悪さを感じました。もう少し短くできたのでは…? ・アガサ・クリスティーのような作品と書きましたが、好みではない部分もアガサ・クリスティー並みでした。最後に伏線がきれいに回収され、驚きがあるのはよいのですが、それを隠すために大量のミスリードがあり、結局のところ探偵の解決も可能性でしかないと思います。ただ、下巻の、誰がアランを殺したか?についてはよりフェアだと思いました。 |
No.224 | 6点 | 使用人探偵シズカ 横濱異人館殺人事件 月原渉 |
(2020/07/19 13:03登録) ネタバレをしています。 この本の前に読んでいた本が、海外の古典で割と古い訳の本で読みづらかったためか、横濱異人館殺人事件はほぼ一瞬で読み終えられたような気がするほど読みやすかったです(笑)。 推理小説ファン垂涎のツボを押さえられた良い作品です。時代背景、クローズドサークル、見立て殺人、過去の事件、消える死体やよみがえる死体(笑)。わくわくが止まりません。それでいてテンポが非常によく、無駄なところがありません。 推理小説部分も楽しめました。自分は大体のことは推測できたのですが、氷神が久住だと予想できませんでした(笑)。見立ての絵の問題から、犯人は絵をかける人物だとは分かったのですが、なぜか氷神=久住というところまで考えが及びませんでした(涙)。頭が悪すぎますね。дурак(ばか)。 以下、難癖点。 ・この小説全体的に、テンプレート感が強いです。推理小説の魅力たっぷりな構成ではありますが、犯人が自分を殺されたように偽装するトリック(行為自体もおもりを使ったことも)は前例があるものだし、氷神=久住のような最初から入れ替わっていた系もまあよく見るものです(笑)。この小説に個性的なアリバイトリックやどんでん返しがあったならもっと良い作品になったと思いました。 難癖をつけましたが、雰囲気が最高で本格度が強い作品です。探偵のキャラクターがほんの少しだけアニメチックではありますが、やりすぎてないと思います。よいシリーズです。 |
No.223 | 6点 | 僧正殺人事件 S・S・ヴァン・ダイン |
(2020/07/15 03:03登録) ネタバレをしています。 推理小説を読んでいると、さまざまな本で名作として紹介(?)されている僧正殺人事件。一度は読んでおかなくてはと思い、本棚から引っ張り出してきました(笑)。うちにあったのは、どうやら1959年の創元推理文庫のもの。印刷が薄いページがあったり、字が変になっていたり、字が小さかったり、訳が古かったり、とにかく読みづらかったです(笑)。 内容は非常に本格色が強いプロットで、楽しめました。以前読んだグリーン家がいまいちだったので期待していませんでしたが、やはり見立て殺人はワクワクしますね。元ネタのマザーグースは一切わからないのですが、知っている人が読めば。なおワクワクすることでしょう(笑)。wikiを見てみると、見立て殺人部分が横溝やクリスティーの名作にも影響を与えているようなので、そういう意味でも評価できます。また、チェスの話はかっこよかったです(知らないのでよくわかりませんが(笑)) 推理小説部分はというと、今読むとさすがに少々物足りなさを感じます(笑)。キャラ的にはアーネットソンが露骨にあやしい…がアリバイがある(たぶん)。次に怪しく、はっきりとしたアリバイがない(たぶん)教授があやしいのですが(というか、登場人物が死に過ぎていて自動的にわかってしまうが)、王位を窺うものの話をヴァンス達にした時点で、いよいよ役満でした(笑)。 個人的には、もうすこし論理的に犯人が当てられる問題形式のフーダニット要素か、アリバイトリック要素があるとよかったです。 ところで、ヴァンスは間接的に人殺ししちゃっていますが、最後は犯人の自殺でよかったのでは(笑) |
No.222 | 5点 | 彼女は存在しない 浦賀和宏 |
(2020/06/30 00:31登録) ネタバレをしています。 途中、すこし不快な描写がありましたが、文章が読みやすく、すぐに読了しました。 文章の感じから、叙述トリックであり、物語の展開から大まかな仕掛けを予想しました。外れてほしかったのですが、そのまんまでした(笑)。今日、多くの叙述トリックの作品があるので、もうひとひねり欲しかったところです。アリバイトリックものや論理的な犯人当ての作品は、たとえ推理が当たっても外れても、それにかかわらず良い作品と感じることは多々ありますが、叙述トリックに関しては本の序盤で予想が当たると損をした気分になりますね(笑)。 愚痴っぽくなってしまいましたが、蒲田の本が新刊と勘違いさせるところのミスリードは見事でした。 |
No.221 | 5点 | 聖アウスラ修道院の惨劇 二階堂黎人 |
(2020/06/24 23:56登録) ネタバレをしています。 前作とは打って変わって、インディージョーンズのようなトレジャーハンターっぽい趣(?)がありました。頭を切られた神父の正体とその娘を追う警察の視点はやや退屈でしたが、蘭子パートの殺人事件についてと修道院の謎と宝探し(?)は面白く、読了まで時間がかかりませんでした。 推理小説的には2つの大きな事件があり、5~6人ぐらい殺されます。犯人当てというよりかは、密室トリックものという印象です。 私は、第一の密室は皆目見当がつきませんでした(笑)。第二の密室についてはわかりました。ただ、ページ数の割には小粒なトリックであり、前作からボリュームダウン感が否めません。 全体的な印象としては、本としては面白かったですが推理小説としてはいまいちといった感じです。 |
No.220 | 7点 | 三本の緑の小壜 D・M・ディヴァイン |
(2020/06/16 23:49登録) ネタバレをしています。 海外翻訳ものには登場人物の覚えにくさを感じてしまいます(笑)。100pぐらいを過ぎてから、それほど苦にはなりませんでしたが。 マンディの1人称視点の文章が、やや冗長に感じることもありましたが、恋愛小説要素には必須であり、最後の感動(?)につながっていてよかったです。 推理小説部分でも非常に良かったです。 なかなか論理的に犯人を断定していて、好感が持てます。それゆえに、犯人の条件が限定されていくので、驚きは少ないかもしれません。しかしそれはフェアであるということだと思います。 犯人のセリフ、「一度危険な目にあったら懲りるのに」的な発言はよい伏線だと感じました。ちょっとヒント過剰だったかもしれませんが。 私は、グウェンは怪しいとは思いましたが、あまり真剣にいかにして殺せたか=どうやって被害者のいる場所を知ることができたのかを検証していませんでした(笑)。そのため、犯人を当てたとはいえません。レスリー殺害周辺はヒントがちりばめられていて、素晴らしいですね。 以下好みでない部分。 非常に不満点が少ない作品ですが、あえて挙げるとすると、シーリアの目撃情報があやまっていました。しかし、これはシーリアの性格や健康状態を思えば察することができますし、文中でも警部やベンおじさんが示唆(多分)していましたし、フェアだと思います。 |
No.219 | 6点 | 漂流者 折原一 |
(2020/06/10 01:29登録) ネタバレをしています。 500ページを超える力作です。風間と美智代の漂流の件はやや長いと感じることもありましたが、サスペンス色の濃く、全体的にはすいすい読めました。とくに風間が三田村夫妻と佐伯と美智代をあつめた、そして誰もいなくなった風復讐劇が始まってからは先の展開が気になって仕方がなかったです(笑)。 推理小説的には、しょっぱなから風間の口述テープから始まり、三田村の復讐ノートという作中作のような複雑な構造でいろいろ妄想させられます。しかし、肝心の叙述トリックの肝が、真っ先に思いつく類のものであり、やや拍子抜けしました。推理小説的にはいまいちな印象です。 |
No.218 | 6点 | 『クロック城』殺人事件 北山猛邦 |
(2020/06/02 01:29登録) ネタバレをしています。 ”城”や”館”や”荘”などにめっぽう弱い私は、クロック城をチェック済みだったのですが、なかなか手に入りませんでした(笑)。ブックオフにはギロチン城?が売っていたので購入しましたが、城シリーズ(なのか?)ものは1作目から読みたいですよね。 ちなみに今wikiをみたところ、本ごとに独立した物語のようですね! じゃあギロチン読んじゃおうか(笑) 文章は非常に読みやすいです。登場人物のしゃべり方の癖やキャラクターなんかも差別化できていて、誰がしゃべっているのか混乱することはありませんでした。 また、終末世界であり、専門用語や幽霊的な存在、軍事勢力や真夜中の鍵(結局これなんだったの(笑))と、スクウェアのRPGなみの雰囲気でした。なんだかヒロイン候補(?)もいっぱいいましたね(笑)。 推理小説部分について。城を冠するだけあり、大掛かりなトリックが楽しめます。いくつかヒントも出ており、フェアさもあって良いです。 私はなんとなくい時計の針を移動するトリックはわかりました。位置的に鈴が犯人だとは思いました。しかし、未音が覚醒し、真探偵として真犯人を指摘するシーンで語られた菜美の推理に対しての反証の”鈴は時計を読めない”という指摘に戦慄しました(笑)。なんでこれに気づかなかったのか…。ただ、菜美によって否定されてましたが(笑)。 以下不満点。 ・鈴は時間がわからない→からの、法医学の知識によって時間を計っていたというアイディア自体は狂っていて最高なのですが、時計が読めないのならどう動くかわからないのでは…? 読めはすれど、時間の感覚だけがないということでしょうか? ・未音の推理に対する菜美の反証は、可能性の域を出てない気がします。でも深騎犯人よりはいいかなぁ…。 ・結局真夜中の鍵ってなに(笑)。誰? 世界はどうなったの? |
No.217 | 5点 | the TEAM 井上夢人 |
(2020/05/29 21:24登録) ネタバレをしています。 裏表紙の紹介文から、変わった設定に惹かれて購入しました。しかし、期待したよりも普通の短編推理小説でした。非常に読みやすくて悪くはなかったですが、それほど心に残らなかったです。 |
No.216 | 6点 | 丹波家の殺人 折原一 |
(2020/05/21 18:30登録) ネタバレをしています。 光文社文庫の割と新しいのを購入しましたが、シリーズ④と書いてあります。wikiをみると黄色館の秘密よりも早く出版されているのですが、この順番で正しいのでしょうか(笑)。 ちょっと間抜けでおもしろい黒星警部が魅力のシリーズで、本作もとても読みやすかったです。丹波家の人々が竜造の遺産を巡って争い、その中での連続殺人という、横溝作品のような良い雰囲気があります(笑)。こういう展開は何度読んでも飽きませんね。 今回も密室が多数存在します。末子殺しの密室はなかなか考えてしまいました。私は神谷が犯人かと思い、ミスリードに引っかかってしまいました(笑)。千春と共犯や、リエの本当の父親なのかと妄想していました(整合性とかの検証は全くしてません(笑))。末子殺しの足跡のトリックは、他の作品で見ました。その作品は大好きなのですが、本作のほうが早く世に出ているということに驚きました! また、途中に挿入される殺人者の独白もよいヒントと伏線であったと思います。 好みではなかった部分 ・虹子が出ない(涙)。部下の竹内も悪くないのですが、やはり黒星警部とのコンビは虹子が一番です。探偵役は最終的にリエということになるのでしょうが、リエは丹波家であり、まじめな性格なので作風もまじめになってしまいました。個人的にこのシリーズにはユーモアも期待していたので、ここは残念です。 ・密室事件は多かったが、末子殺し以外はあまり価値を感じませんでした。健太郎殺しについては、電気による外部からの犯行…という密室をたびたび見ますが、これって本当に殺せるものなのでしょうかね(笑)。まあ本作はいたずら程度だったようですし、それが犯人の独白で明らかになっているのですぐわかりましたが…。そして涼はただの自殺。 この作品でシリーズ長編が出てない…ということは黒星警部シリーズはもう出ないのでしょうか(涙)。 |
No.215 | 6点 | その可能性はすでに考えた 井上真偽 |
(2020/05/18 22:15登録) ネタバレをしています。 なんとなく難しく読みづらい作品なのかなと思っていましたが、非常に本格度が高く、またキャラクターも適度に漫画チックで読みやすかったです。主要キャラクターが全部でた感じがあり、続編もあるみたいなんで今から楽しみですね(笑)。 本全体を見ても無駄なページがあまりない印象です。相談者である渡良瀬が過去に体験した事件について語るのですが、それほどページ数がなく、それでいて多くのトリックを考えられる伏線とそれを否定する論理の伏線が同時に張られています。 多くの登場人物が出るのですが、それぞれのトリックを披露するさいに同時進行でキャラクターの説明もされている感じで、読者に対して変に流れを切らずにテンポよく進行しています。 物語は、探偵は奇跡を証明したい…なので、それ以外の可能性を全て否定する、といった話の流れです。続々現れる敵のトリックと、それを否定する流れが、どこか毒入りチョコレート事件を思わせます(?)。敵一人一人の語る可能性はそのままアリバイトリックものとして楽しめる上に、それを探偵が否定するところは非常に論理的であり、端正なフーダニットの消去法を読んでいる感覚で楽しめます。1冊で二度おいしい。 以下、好みではなかった部分。 ・トリック部分がやや馬鹿ミス的。さらに、可能性があった程度。これは、本の中では、奇跡を否定するだけのためのトリックでいいことになっているためですが、本格ファンとしてはもうちょっと必然性があるトリックが見たいところ。また、物語終盤に明かされる、探偵による事件の解決は、最も無理の無くかつ読後感がよい結末ですが、これも本格ファンとしては悪意のある殺人事件がみたかったところ(笑)。 ・探偵によるトリックを否定する論理の難易度が高すぎる。これは私の頭がパープリンのためかもしれません(笑)。 ・5章の、探偵の反証が互いに矛盾している問題は、矛盾しているから奇跡なのでは?と思ってしまいました(笑)。なんで奇跡を証明したい側が現実世界の論理性を保たないといけないのか(笑)。頭の悪い私には理解できません(涙)。 なかなか気に入ったので、続編も楽しみです。 |
No.214 | 7点 | 倒錯のオブジェ 天井男の奇想 折原一 |
(2020/05/11 17:37登録) ネタバレをしています。 江戸川乱歩の短編?を思わすような、天井裏にひそむ男がいる話です。穴から毒薬を垂らして口を狙うシーンなど、オマージュ的な要素があります。序盤の天井男は、時子の妄想なのか実在するのかがはっきりとはわからず、その正体をいろいろと妄想するのが楽しいです。 また、登場人物もキャラクターが濃くて惹き込まれました。ボケているのかボケていないのか、あるいはとても賢いのか、しかし意味不明な行動をとる時子。夫からDVを受け、かわいそう…だが出会った男を即利用する直美。DV糞夫。そして小野寺(笑)。登場人物が全員どこか狂っていて、おもしろ(?)かったです。途中、ややダレる展開もありましたが、全体として読みやすかったと思います。 推理小説的要素は、いくつかの叙述トリックがありました。 " まず大きなものが、時子の主観の話と直美の主観の話では同じ時間軸ではありません。プロローグに、飯塚家2階で女性の密室殺人が起こり、それを時子が発見し、自分でそれを解き明かすことを決意します。そして天井男の主観となります。これを最初に入れることで、このシーンが物語の時系列の最初にきていると勘違いしてしまいます。また、このシーンの天井男の文章を太字ではなく、本の後半に登場する時子によって書かれた天井男ノートではないことが示唆されていて、よいミスリードと伏線になっています。 小野寺は時子と直美の両視点に登場し、それがまた同時系列と混同させるように書かれています。それだけのために登場させただけでなく、天井男の正体にするところも大きな驚きであり素晴らしいと思いました。 時子が密室を解けないでいることも伏線であると思います。読者にはプロローグや(天井裏)のパートの文章で天井男の存在を知らされているし、時子もまた天井男を挑発するシーンが多々あり天井男を認識しています(いるように読めます)。読者には、密室にした犯人が天井裏に逃げたに決まっているとわかりきっているので、なぜ時子が密室を解けないでいるのかが疑問だと思います(笑)。時子のボケ具合と推理能力はどうとでも取れるのですが…。これは物語前半の太字部分には天井男がいなかった伏線だと思うのですがどうでしょう??" その他の叙述トリックとしては、時子の正体はその娘の春江でした。これは味付け程度の叙述トリックでしたが、この小説に厚みをもたらす意味ではよかったです。正直、時子にはその伏線も多く、また時子の物語の文章では時子のことを”彼女”と表記しているし、春江しかないと割と早い段階で思っていました(笑)。直美が時子になる展開も妄想しましたが、30代が80代になるのはやはり不可能ですね(笑)。勝男を天井裏に住まわすというのも、なかなか狂っていて好みだったのですが(笑)。 私は割と早い段階で、密室殺人の被害者が直美であり時系列がずれていることに気づきました。しかし、天井男の正体に気づけませんでした(涙)。登場人物の中であり、飯塚家の中を知ることができたのは小野寺ぐらいなので、よく考えればわかったはず。非常に悔しかったです(笑)。 以下、好みではなかった部分。 ・時子の妄想天井男がないとこのトリックは成立しませんが、一方でボケてはいないので、やや作者に都合がよい妄想と頭脳をもったキャラクターだと思いました。 ・小野寺の犯行後の行動は意味不明だと思います(笑)。それも狂っていてまた良しですが。 ちょっと甘めかもしれませんが7点にしました。 長ったらしい文章を書いてしまってすいません(笑)。 |
No.213 | 6点 | 水の迷宮 石持浅海 |
(2020/05/02 01:02登録) ネタバレをしています。 水族館のなかで始まり、そのまま水族館の中で終わります。やや特殊な状況での事件です。 序盤は水族館の説明や、登場人物の説明があり、すこしだけ読みづらい感じがありましたが、電話での脅迫が始まってからはテンポが良かったです。 胸を打つ感動…というほどでもないのですが、読後感は非常に良いものでした。タンカーを丸々水族館化し、地球を再現するアイディアは、私も見てみたいと思いました。 推理小説としても、論理的に真相を予想できるようなヒントがちりばめられており、なかなか面白かったです。大島殺害の際に処理をしなくてはならなくなったボラから犯人を推測するところが一番よかったです。 ガチガチの本格推理小説としてみた場合は少々軽い印象もありますが、広義でのミステリーとしては質が高かったです。 |