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ミステリの祭典

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使用人探偵シズカ 横濱異人館殺人事件
ツユリシズカシリーズ

作家 月原渉
出版日2017年09月
平均点5.78点
書評数9人

No.9 6点 nukkam
(2023/05/27 06:41登録)
(ネタバレなしです) makomakoさんのご講評と同様に私も本書のタイトルで東川篤哉の「謎解きはディナーのあとで」(2010年)の人気追従作品かと思ってました。大成功した東川作品の影響でその種の作品が2010年代は増えていたように思いますが、(東川作品はしっかりした本格派推理小説ですけど)癖のあるキャラクター頼りでミステリーとしては弱い作品ばかりではと不安があって敬遠してました。しかしこの作者の他の作品を数作読んで硬派の本格派の書き手だと認識したのでようやく手にとりました。2017年発表のツユリシズカシリーズ第1作で、シズカが「栗花落静」と書くらしいことが紹介されていますがその後のシリーズ作品では漢字表記されることは少なかったように記憶しています。作中時代が19世紀後半(明治時代)、舞台が横浜の外国人居留地の洋館とレトロな設定ですが、ミステリープロットも横溝正史やアガサ・クリスティーを連想させる古典的本格派の雰囲気濃厚な内容でした。10章以降の「見立て」を巡ってのどんでん返しの連続が圧巻です。もっと早く読んでればよかったです。

No.8 7点 虫暮部
(2023/05/02 13:19登録)
 ネタバレっぽいけど、アレに切れ込みを入れておく件:最初の落下で切れるかもしれない。逆にその後、都合良くは切れないかもしれない。

 と書いておいて何だが、これは大目に見てもいいかな~。
 物語全体を貫く運命論的構築主義の世界観に読者として気持良く呑み込まれることが出来たからね。どんでん返しも含めて良い意味で予定調和な様式美なので、物理的要素は犯人の目論見通りに作用するってことでいいのだ。
 しかし、“人間金庫” は本気でやる心算だったのだろうか……。

No.7 6点 ミステリ初心者
(2020/07/19 13:03登録)
ネタバレをしています。

 この本の前に読んでいた本が、海外の古典で割と古い訳の本で読みづらかったためか、横濱異人館殺人事件はほぼ一瞬で読み終えられたような気がするほど読みやすかったです(笑)。
 推理小説ファン垂涎のツボを押さえられた良い作品です。時代背景、クローズドサークル、見立て殺人、過去の事件、消える死体やよみがえる死体(笑)。わくわくが止まりません。それでいてテンポが非常によく、無駄なところがありません。

 推理小説部分も楽しめました。自分は大体のことは推測できたのですが、氷神が久住だと予想できませんでした(笑)。見立ての絵の問題から、犯人は絵をかける人物だとは分かったのですが、なぜか氷神=久住というところまで考えが及びませんでした(涙)。頭が悪すぎますね。дурак(ばか)。


 以下、難癖点。
・この小説全体的に、テンプレート感が強いです。推理小説の魅力たっぷりな構成ではありますが、犯人が自分を殺されたように偽装するトリック(行為自体もおもりを使ったことも)は前例があるものだし、氷神=久住のような最初から入れ替わっていた系もまあよく見るものです(笑)。この小説に個性的なアリバイトリックやどんでん返しがあったならもっと良い作品になったと思いました。

 難癖をつけましたが、雰囲気が最高で本格度が強い作品です。探偵のキャラクターがほんの少しだけアニメチックではありますが、やりすぎてないと思います。よいシリーズです。

No.6 5点 E-BANKER
(2020/02/14 23:24登録)
何事も万能な使用人? メイド?のシズカか探偵役を務めるシリーズ一作目。
時は明治の文明開化華やかなりし頃、所は横浜の外国人居留地というのが、シズカのキャラクターと相俟って無国籍間を漂わせる。
2017年の発表。

~嵐に閉ざされた異人館で、「名残の会」と称する奇妙な宴が始まった。館の主は謎めいた絵を所蔵する氷神公一。招かれたのは画家に縁のある六人の男女・・・。つぎつぎと殺されていく招待者たち。絵の下層には、なぜか死んだ者が描かれていた。縊られた姿もそのままに。絵は死を予言しているのか。絵画見立てデスゲームの真相とは。使用人探偵ツユリシズカの推理が冴える本格ミステリー~

先にシリーズ二作目「首無館の殺人」を読んでからの本作読了となった。
「首無館」のときも感じたけど、うーん。この薄っぺらさはどうしようもないなぁ・・・
(このレーベルは)尺的に大容量の長編にはできないという制限があるんだろうから、やむを得ずなのかな。
とにかく、殺人事件は休む間もなく起こるし、探偵役の推理も休む間もなく行われる・・・展開。
これって、よく言えば「時短」で「効率的」なのかもしれんが、本格ミステリーはゆっくりした序盤+急展開を継げる中盤から終盤という「緩急」が重要だと思ってる私からすると、どうしても「平板」さが目に付いてしまう。

今回のテーマは紹介文のとおり「見立て殺人」。
絵の下層に隠された「縊られた死体」どおりに連続殺人は起こる。
雰囲気としては、綾辻(「館」といえばねっ)というよりも、横溝正史の劣化版という方がしっくりくる。
終盤に判明するトリックは、いかにも「横溝」って感じだしね。
もうこれはクローズドサークルの連続殺人としては定番中の定番。それだけ工夫が足りないと言える。、
死体を〇〇する、っていうのも使い古された趣向。

こういう手の本格ミステリーはド・ストライクなんだけど、これはちょっと稚拙すぎた。
「首無館」はもうちょっとましだっただけに、今後徐々に改善されていくのかも。
できれば、違う出版社でもっとじっくりした本格ミステリーを書いてほしいかな。本当の評価はそのときまで持ち越し。

No.5 6点 まさむね
(2019/11/23 21:57登録)
 時代は明治。横浜の外国人居留地に建つ異人館に集まった6人の男女。嵐の中、何者かによって外界との唯一の繋がりである吊り橋が落とされる…。嗚呼、いいね。そして、中盤に至って使用人探偵ツユリシズカが発する「なるほど、見立て殺人でございましたか」との台詞。いやぁ、グッときますね(俺だけか?)。
 ちなみに、犯人自体は、「まさか!」って驚くくらいに明白でしたねぇ。ちょっと判りやす過ぎるかな。とは言え、最後の反転も嫌いではないし、実直にド本格に攻める姿勢は買います。

No.4 6点 makomako
(2019/02/25 21:56登録)
帯に「ご主人様、見立て殺人でございます。」なんて書いてあるからてっきり「謎解きはディナーの後で」風のものを想像しましたが全く違いました。
 バリバリの本格物です。
 出だしは良いなあ。おどろおどろしくて、横溝正史の世界みたい。
 主人公がひょんなことから怪奇な館へ行くこととなり、そこでとんでもない事件に遭遇する。一見不可能と思われる見立て殺人が連続して起きる。なんと、なり昔に描かれた絵をはがすとそこに被害者の絵があり、殺人はそのとうりに進んでいくといったお話なのです。すごいでしょ。使用人シズカは超然としているが最後に謎を解いて見せます。
 これだけみるとまさに本格物でとても面白いであろうと思われるのですが、さほどでもないのです。なんといっても途中で犯人がわかってしまう。大体犯人当てはほぼ外れの私にしてわかってしまうのですから、これはちょっといただけません。この時点で興味は半減。最後は多少意外なところもあるのですが、腰砕けの感は否めませんでした。
 

No.3 6点 名探偵ジャパン
(2019/01/19 23:51登録)
読み始めてすぐに「綾辻行人のあの作品みたいだな。○○の人も出てくるし」と思っていたら、「その○○の人が実は○○で」という、ある意味お約束まで踏襲していてびっくり。これはオマージュと言っていいのでしょうか?

舞台設定や雰囲気からして、もっと紙幅を使った大作向きだったのではないかと思うのですが(もしかしたら作者はそのつもりでも、編集から「もっと短くして」と言われた可能性も)、割とあっさりめに終わってしまいました。
しかしながら、このトリックでこれ以上長くされても、とも思いますので、この量で正解だったのでしょう。
とはいえ、作者の「王道本格を書く」という気持ちは伝わってきました。シリーズ続編も読んでみようと思わせます。

No.2 5点 人並由真
(2018/02/09 14:27登録)
 このサイトに来るような人なら、大方、犯人もトリックもわかってしまうとも思う。『名探偵コナン』か『金田一少年(いまは青年)』シリーズに慣れ親しんだ子供でも察しがつくだろうな。
 とはいえ作者の、丁寧なミステリの作り方そのものには、好印象を抱く。
 最後にさらにもうひとつふたつ仕掛けられた意外性もちょっと良かった。
 シズカはシリーズキャラクターになるんだろうけど、次作に期待。

No.1 5点 メルカトル
(2018/01/07 22:15登録)
時は明治。嵐によって閉鎖状態に陥った横浜名残館で、「名残の会」と称する謎めいた宴が始まった。招かれたのは画家久住正隆に所縁のある男女六人。彼らは久住の絵画に描かれた通り、次々と縊り殺されていく。

絵による見立て殺人に使用人のシズカが持ち前の洞察力で推理していきますが、正直探偵らしくはなく、解説者と言ったほうが相応しいです。登場人物にも個性が感じられず、殺人事件も盛り上がりなく淡々と進行していくため、全般的に凡庸な印象を受けます。
シズカと犯人の後半のバトルは多少読み応えがあります。以下に一連の流れをご紹介します。
見立て破り⇒見立て破り返し⇒見立て論理の崩壊⇒逆襲の見立て返し⇒見立て動機の崩壊⇒見立ての最終結論概要⇒見立ての最終結論破壊⇒見立ての最終結論創造
といった感じです。まあ単なる目次の写しなんですが。これだけ見るとなんか面白そうと思われるかもしれませんが、そうでもないです。

肝心の見立ての動機に関して言えば、左程の必然性がある様には思えず、不満が残ります。犯人の描いた筋書き通りことが上手く運び過ぎの感も否めません。最大の敗因は使用人シズカを生かしたことでしょうね。この沈着冷静な探偵は簡単には殺されないと思いますが。

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