| いいちこさんの登録情報 | |
|---|---|
| 平均点:5.67点 | 書評数:585件 |
| No.205 | 5点 | むかし僕が死んだ家 東野圭吾 |
|
(2015/10/26 16:21登録) 制約条件の多い舞台設定(移動なし、登場人物2名のみ、失われた記憶の復元にのみ焦点)である点を割り引いても、想定の範囲内でしか勝負できていない。 巷間よく指摘されるタイトルの是非については、もともとタイトルだけは上手くない作者であるところ、本作は勇み足気味でアンフェアとの指摘も甘受せざるを得ない印象。 作品としては破綻を見せずキレイに着地してはいるものの、明かされた真相の衝撃度からしても軽量コンパクトと言わざるを得ない |
||
| No.204 | 6点 | 鉄鼠の檻 京極夏彦 |
|
(2015/10/26 16:20登録) 禅に関する薀蓄の面白さはシリーズ随一とも言えるレベルにあり、読物としてはさすがのデキ映え。 一方、こうした衒学とプロット、とりわけ犯行の態様と動機にあまりにもストレートに直結していて、作品としての奥行きには欠けている。 舞台設定自体がご都合主義の産物というより現実味に乏しい点、犯行のフィージビリティがほぼ無視されている点、振袖の少女はじめ解明されない謎が存在する点など、本格ミステリとしては不満の残る仕上がり |
||
| No.203 | 9点 | クライマーズ・ハイ 横山秀夫 |
|
(2015/10/15 17:19登録) 新聞編集の現場にかかる描写のリアリティ・臨場感については、作者自身の実体験に由来するもので、もとより申し分ない。 そのうえで本作では、事件の舞台として御巣鷹山ではなく一地方新聞社を選択しながら、全く無駄のない磨きあげられた、それでいて情熱がほとばしるような筆致で、凄惨な事故とその影響を克明に描き切っている。 そもそも作者の筆力の高さについては疑う余地のないところ、本作は他作よりさらに一段以上高いレベルの出来栄えと言っていい。 その中で、「報道とは何か」「命の重さとは何か」というテーマを掲げ、組織の論理に翻弄される個人の葛藤、スクープと遺族への共感の間で揺れ動く個人の葛藤を抉り出した。 一方、本作への批判点として、主に以下の2点が挙げられるのではないかと思われる。 まず、主人公の人柄(傲慢な態度、判断のブレが大きい、感情に流されやすい、私情優先等)に感情移入しづらいという点については、本作の主人公として公私にわたって隙のないエリート記者ではなく、暗い過去や人格上の欠点をたくさん抱え込んだ等身大の一記者という人物造形を求めたのだと解したい。 次に、本作の落とし処が安易であるという点については、20年近い会社人生を陽のあたる社会部記者として過ごし、臨時待遇とはいえデスクまで勤めあげた人間にとって、残る会社人生20年にわたる過疎地勤務を受け入れるのは、ある意味では退職するよりも過酷な判断であり、安易なハッピーエンドとは受け取っていない。 以上、瑕疵が皆無とは言わないものの、本格ミステリ以外の広義のミステリとしては満点に近い評価を献上したい |
||
| No.202 | 5点 | 誰が龍馬を殺したか 三好徹 |
|
(2015/10/14 11:17登録) 緻密な考証と蓋然性の高い真相の双方で良質な歴史ミステリと評価するが、蓋然性の高さゆえにミステリとしての意外性には乏しいと言わざるを得ないのが難点 |
||
| No.201 | 6点 | あぶない叔父さん 麻耶雄嵩 |
|
(2015/10/14 11:15登録) メルカトルとシリーズは違えど、本格ミステリにおける探偵の存在意義を追求する、昨今の作品と軌を一にする連作短編集。 真相の趣向自体は類似の前例が複数存在するが、フォーカスしているポイントが違う。 推理の無謬性を保証するのは、推理そのものの合理性・論理性ではなく、探偵の存在の絶対性であり、その探偵を「神様」から「あぶない叔父さん」にまで昇華(?)させたとき、推理の無謬性は結局推理を受け入れる側に収斂するということなのか。 こうしたミステリの本質に対する深い問題認識といい、それを金田一耕助のパロディや、バカトリック塗れのバカミスにしてしまうあたりといい、余人の追随を許さない奇想であることは間違いない。 ただ一方で、本格ミステリとしての底の浅さ、狙いがストレートで重量感に乏しい点も事実。 毀誉褒貶の激しい作品 |
||
| No.200 | 7点 | リヴィエラを撃て 高村薫 |
|
(2015/10/14 11:13登録) 組織や登場人物の背景に関する説明を最小限に抑えながらも、続発する事件を通じて徐々に浮かび上がってくるプロット。 緻密な描写で息詰まるようなストーリーテリングと、最後に明らかになる皮肉極まりない真相。 すべてにおいて一級品でサスペンスの佳作と評価 |
||
| No.199 | 6点 | 犯人のいない殺人の夜 東野圭吾 |
|
(2015/10/02 18:45登録) 驚くべき真相を演出した表題作を筆頭に、悪意と皮肉に満ちた良質な短編が揃っており、さすがの出来栄えと完成度を誇る。 一方で他の作品と同様に、本格ミステリとしての踏み込みは浅めで、軽量コンパクトな印象が否めない |
||
| No.198 | 6点 | 憎悪の化石 鮎川哲也 |
|
(2015/09/30 11:17登録) プロットや真相に傑出した点はなく、2つのアリバイトリックが見せ所。 1つ目のアリバイトリックは鮮やかな反面、フィージビリティには大いに疑問。 2つ目のサブトリックは警察の捜査に耐え得るレベルの仕掛けではなく、かなりお粗末な印象。 完成度の高さは光るものの、捜査過程でご都合主義が積み重なるチープさも散見され、この評価に止めたい |
||
| No.197 | 8点 | 明治断頭台 山田風太郎 |
|
(2015/09/30 11:15登録) 維新直後の混沌とした時代背景と弾正台を活かしたプロット、当時の文物を活かした豪快かつ鮮やかな物理トリック、実在の人物を活かした興味深いエピソードの挿入など、舞台設定とその活用に抜群の冴え。 そのうえで連作短編集として納得性と衝撃度の高い真相を演出。 物理トリックの完成度に甘さを感じてこの点数としたが、「妖異金瓶梅」を超える傑作と評価 |
||
| No.196 | 7点 | 炎に絵を 陳舜臣 |
|
(2015/09/25 20:38登録) 一見してミステリとしての緩さを装いながら、衝撃の真相に辿り着く騙しの技術は絶品。 作品の各所にご都合主義が散見される分、減点せざるを得ないが、必読の佳作と評価 |
||
| No.195 | 6点 | だれもがポオを愛していた 平石貴樹 |
|
(2015/09/25 20:38登録) 強固なロジックで真相を解明するプロセスや、敢えて翻訳調の文体を選択する等、考え抜いて描かれた作品であることは間違いない。 一方、犯人が残した手がかりが少なく謎解きの難易度が極めて高い、ポオの作品をある程度読破していることが作品を楽しむうえでの前提となっている点など、読者に課されたハードルは高い。 パズル性を全面に押す作品構成からしても、読者によって評価が大きく割れる、毀誉褒貶の激しい作品 |
||
| No.194 | 5点 | 蒲生邸事件 宮部みゆき |
|
(2015/09/25 20:37登録) タイムトラベルや2・26事件といった魅力的で大がかりな舞台装置を用意した長尺の意欲作ではあるが、十全に活かしきれておらず、平々凡々とした軽量コンパクトな結末に収斂。 エンタテインメントとしてのデキを否定するものではないが、ミステリとしての斬り込みは至って浅いと言わざるを得ない |
||
| No.193 | 5点 | 遠きに目ありて 天藤真 |
|
(2015/09/25 20:36登録) ほのぼのとした独特の読後感には好感。 一定水準に達しているものの、安楽椅子探偵モノでもあり、豪快・トリッキーな真相・トリックとならざるを得ず、ミステリとしては大味さ・弱さを感じる |
||
| No.192 | 6点 | 涙流れるままに 島田荘司 |
|
(2015/09/11 19:14登録) (以下ネタバレを含みます) ヒロイン通子の半生を丹念に描きたい、冤罪事件の惨禍を描き出すことで持論である死刑制度廃止を広く世間に訴えたい、吉敷と通子に幸せになってもらいたい、という想いありきの作品で、本格部分のコアは極めて小さく添え物程度。 シリーズ集大成の位置付けから、ハッピーエンドが半ば既定路線として推測されるなか、本格ミステリとしての伏線が予定調和的に回収される様は、エンターテインメントとして面白みや緊迫感に欠けると言わざるを得ない。 以下は個人的な好みの問題ではあるが、通子の半生はあまりにもショッキングで悲劇的ではあるものの、本人が長年にわたって真実に向き合わず常に逃げ回ってきた、どうしようもない意思の弱さが招いた、文字どおり自業自得とも言えるもので、自らの職を賭して冤罪事件の解決に挑み、通子の問題を悩み抜きながらも、これさえも解決に向けて手を差し伸べた吉敷の高潔さ・意思の強さ・責任感を考えると、2人が何事もなかったかのように結ばれる結末には違和感。 また、警察の吉敷に対する処遇も、気持ちはわかるがあまりにも荒唐無稽で、警察に懲戒解雇されながらも民衆のヒーローとして、親子3人天橋立でひっそりと暮らす結末が相応しいように思う。 作者のほとばしるような想いと筆力を鑑みてこの評価 |
||
| No.191 | 5点 | 砂の器 松本清張 |
|
(2015/09/02 13:37登録) 個々のアイデアは決して悪くないのだが、うまく連結させられておらず、本格ミステリとしての完成度やバランスは大いに疑問と言わざるを得ない。 犯人が残した手掛かりが少なすぎる一方、ある登場人物が不可解極まる大胆な行動を取るなど、偶然に偶然が重なるご都合主義で小さな手掛かりが積み重ねられていく。 トリックはリアリティを補強する工夫に乏しく、無理筋の印象を禁じ得ない。 世上評価される社会差別への斬り込みは十分な深度とは言えず、抒情性あふれるリーダビリティは悪くないが、中盤以降の中だるみも見られるところ。 「映画は素晴らしいデキ」「映画が原作を越えた希有な例」と評価されるが、一方で原作のデキがいま一つなのも間違いない |
||
| No.190 | 7点 | さよなら神様 麻耶雄嵩 |
|
(2015/09/02 13:36登録) 無謬の神様が冒頭に真犯人を明らかにするため、探偵たちは「当該人物がどのように犯行をなし得たか」を究明する、一風変わったハウダニットが並ぶ連作短編集。 各短編を思い切って荒唐無稽な真相とすることにより、神様が真実を保証していることを前提としなければ到底真相に到達できず、警察が特定した犯人が誤っているとしても、神様の存在を前提とできない故に、真犯人を告発できない。 神様の設定を存分に活かしきった挑戦的かつブラックな作品集であり、とりわけ「バレンタイン昔語り」の衝撃的な真相は本作の白眉。 例によってこの作者にしか書き得ない強烈な作品 |
||
| No.189 | 6点 | 一の悲劇 法月綸太郎 |
|
(2015/08/27 18:09登録) 登場人物が極めて少ないにもかかわらず、その大半に犯人と疑うに足る可能性を残しつつ、中盤にあからさまに怪しい人物を撒き餌として配し、最後にどんでん返しを連発。 犯行手順・トリックの鮮やかさ、ミスリーディングに導く手際のいずれもが巧妙。 プロットの性質上、腰を抜かすようなサプライズは演出できていないものの、水準を超える佳作と評価 |
||
| No.188 | 6点 | 双月城の惨劇 加賀美雅之 |
|
(2015/08/27 18:08登録) 第一の犯行は、城の建造経緯を巧みに活用した物理トリック、犯人の狙いを隠蔽する逆説的な構図が抜群。 反面、第二の犯行以降は、真相が複雑で、フィージビリティや合理性にも強く無理が感じられ、かつ手掛かりにも乏しいと褒めるべき点がない。 ハウダニットに重点を置いた作品とは言え、真犯人を特定する根拠が2点しかなく、その2点が非常に露骨であるなど、フーダニットとしてはかなり物足りなさを感じる。 全体としては力作の評価でよいものの、二階堂氏が絶賛するほどの水準とは言えない |
||
| No.187 | 4点 | 七人の証人 西村京太郎 |
|
(2015/08/27 18:08登録) プロットは極めてトリッキーで興味深いのだが、看過し得ない瑕疵があまりにも多い。 まず無人島に犯行現場を再現し、関係者全員を昏倒させてそこに拉致したという舞台設定が、あまりにも無理筋。 獄死した犯人の父親による真相解明は、非常に強引で論理性に乏しいにもかかわらず、その誘いにまんまと乗って真相を吐露する証人たちの愚かさ・不出来さにも強い違和感。 そのうえ、無人島で連続殺人事件が勃発するのであるから、その犯行の杜撰さもさることながら、発生の事実自体が真相を強く示唆するヒントとならざるを得ない。 以上、着想の妙は買うのだが、華麗なる失敗作と評価 |
||
| No.186 | 8点 | 天帝のつかわせる御矢 古野まほろ |
|
(2015/08/27 18:07登録) いい意味で大きく裏切られた作品。 デビュー2作目で下振れするケースは枚挙に暇がないが、これほど上振れするケースは初めて。 まず、物語として、本格ミステリとして、(一旦)しっかりと着地している点が大きい。 ルビ塗れの異様な文体は、慣れてしまえば却って立体的に感じるとさえ言えなくもない。 衒学趣味を1作目よりセーブし、その中に真相の伏線を巧妙に散りばめることで、プロットとの連動性を高めた。 推理合戦はその網羅性といい、緊迫感といい、読み応え十分。 最終盤の伝奇SF的展開によるプロットの破壊は、もったいないとは思うものの、一旦構築したうえでの破壊であるため、1作目とは異なり致命的な減点にはならない。 この荒唐無稽な展開をシリーズものとしてどのように収斂させるのかは、今後の展開を待ちたい。 主人公の人物像とか、随所に散見される文学的な表現等、肌にあわない点は感じるが、それは好き嫌いの問題であり、本作の評価を引き下げる理由にはならない。 作品全体を俯瞰して言うなら、一部の熱狂的ファンが称する「本格の申し子」とまでの評価には抵抗があるものの、「黒死舘殺人事件」にはじまる暗い水脈をバックボーンとして継承しつつ、そのうえに堅固な本格ミステリを建築し、流行りのライトノベル的センスでインテリアを施すことで、一個の新たな世界を作り上げた構築力・オリジナリティは瞠目すべきものと評価 |
||