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ミステリの祭典

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首断ち六地蔵
奇蹟鑑定人シリーズ

作家 霞流一
出版日2002年07月
平均点6.29点
書評数7人

No.7 6点 パメル
(2024/11/17 19:10登録)
豪凡寺にある六地蔵の首が何者かに切断され持ち去られる。その首が発見されるたびに、奇怪な殺人事件が起こるという連作短編集。オカルト現象の調査を担当している魚間岳士、霧間警部、豪凡寺の住職・風峰が推理合戦を繰り広げるという各話が、それぞれ幾通りかの推理がされる多重解決の構成となっている。
これでもかと言わんばかりのトリックと謎解きが詰め込まれており、ユニークな見立て、作者独特のギャグ、どう考えても実行は無理そうな物理トリックを受け入れることが出来るかで評価が分かれるのではないか。ラストは、どんでん返しも待ち構えており、伏線も巧妙に張られていることがよく分かる。以前の自分だったら、リアリティに乏しいと低評価にしていただろうと思える作品。今では、バカミスが受け入れられるようになったというよりも、どちらかと言えば好きになった。

No.6 6点 名探偵ジャパン
(2017/07/16 16:15登録)
「異様な趣向を凝らした連作短編」という衣から、最後に何か待ち受けていることは明白で、「恐らくあれだろう」と予想はしていまして、まさにその通りでした。
短編という、ただでさえ少ない紙幅の中に多重推理を盛り込むものですから、一つひとつが掛け足推理になって、忙しないことこの上ありません。しかも、そのほとんどが物理トリックであるのに、図版が一枚もないため、犯行現場やトリックをイメージしずらいところもありました。
ですが、かなりの力作であることに間違いはなく、とことんトリックてんこ盛りの作者のサービス精神には頭が下がりました。

No.5 4点 いいちこ
(2015/07/30 20:13登録)
徹底的に多重解決にこだわった連作短編集。
荒唐無稽な物理トリックの多用やリアリティの欠如は作風として理解。
ただ、各短編とも最低4回以上の“解決”を盛り込んでいるため、やむを得ないとはいうものの、ロジックは至ってルーズで、個々の解決の完成度は低水準。
連作短編としてのどんでん返しは、章立てから十分に予測可能なうえ、その内容も「これだとつまらないけど…」という予測どおりの古典的なもの。
意欲・密度を買ってもこの評価

No.4 6点 蟷螂の斧
(2014/01/06 09:01登録)
連作短編、見立て殺人、多重解決とあまり好みでない分野でした。フィクションなので、物語全体が荒唐無稽なのは良いのですが、細部にはリアリティ(納得性)があってほしいと願う者の一人です。その点で、やや突っ込みどころが多いような気がします。ラストの反転は古典的ではありますが、構成はよく考えられていると思いますのでやや甘めの採点となりました。

No.3 7点 メルカトル
(2013/12/21 23:32登録)
再読です。
東京は杉並区にひっそりと存在する豪凡寺。その土塀の片隅に並ぶ6体の地蔵の首が盗まれた。そして、その地蔵の首が転がるところには必ず仏法の六道を見立てた殺人事件が発生するという、連作短編集。勿論それぞれの短編を独立した物語として読むことも可能である。そして、推理合戦を繰り広げる面々である、所轄の霧間警部、事件のナビゲート役の私こと、カルト教団から市民を守る「寺社捜査局」の魚間、そして豪凡寺の住職峰風の三人が知恵を絞って、トリックを解明していく過程が本書の肝であるのは間違いない。
が、第一話を第一章として捉えた時、一つの長編としての流れをくみ取ることも十分可能であり、最終話が全ての物語を収束させ、繋がりを持たせて完結させている形式は、今更ではあるが実に上手くまとめており、その結末は驚愕に値する。
ほとんどの事件が密室になっており、派手な道具立てもあったりして、読み応えも満足のいくものだと思う。また、一人が推理し、否定され、また別の人が推理を披露しては崩されるという図式は、ワンパターンではあるが読者を飽きさせない苦心の跡が見られ、作者のサービス精神が如実に表れている。
とにかく一読の価値のある異色の本格推理小説であるのは間違いないと思う。

No.2 6点 kanamori
(2010/07/17 14:56登録)
奇蹟鑑定人・魚間岳士シリーズ第3弾。
見立て連続殺人ものを、密室殺人、足跡のない殺人など不可能興味満載で、連作形式で多重解決パターンを繰り返しています。
事件の緊迫感をそぐ悪乗りギャグも押さえめで、最終話の落とし所も素晴らしい。次々事件が起きる疾走感が大きくて、読者が推理するいとまがない感じもしますが。

No.1 9点 teddhiri
(2009/02/22 21:39登録)
6体の地蔵の首が盗まれ、発見されたときには常に仏教の六道の見立てられた不可能犯罪が発生する。これが全編に共通するストーリー。
 大量に盛り込まれた壮絶なトリックと推理、(特に第三首の警部のジャイアントスイングの推理は笑った。)事件→ハズレ推理→推理→犯人自殺のリフレイン。そしてラストの第七首に訪れる凄まじいカタストロフ。このカタストロフは前例はあるものの、本格推理の究極的に煮詰めたもののひとつだと思う。

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