蟷螂の斧さんの登録情報 | |
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平均点:6.10点 | 書評数:1693件 |
No.753 | 5点 | 日本ミステリー小説史 評論・エッセイ |
(2015/05/23 21:13登録) 裏表紙より~『江戸後期、大岡越前の裁判小説が人気だったように、日本人は元来、謎解きが大好きだった。だが、ポーの「モルグ街の殺人」にはじまるミステリーが受容され、国産の推理小説が定着するためには長い茨の道が必要だった。黒岩涙香による本邦初のミステリー、探偵小説でデビューした泉鏡花、『新青年』と横溝正史、社会派という新ジャンルを切り開いた松本清張や「日本のクリスティー」仁木悦子まで、オールスターで描く通史。』~ 序章では、シェークスピア「ヴェニスの商人」に登場する裁判官名ダニエルは、旧約聖書外典の裁判物語にあるなど、ミステリーのルーツ的な話題から始まります。また「大岡政談」の子争いなど一部の話は中国の裁判小説「棠陰比事」が原典であるなど、目から鱗が落ちるような話もありました。黒岩涙香氏の翻訳苦労話などは今では笑えるような話です。「ドグラ・マグラ」を読んだ横溝正史氏が頭がおかしくなっちゃたという逸話など楽しめます。ヴァン・ダイン氏に影響を受けた甲賀三郎氏が本格について論争(1931)を引き起こしたことなどは、2005年の「X論争」に通じるものがありますね。そういえば、二階堂黎人氏もヴァン・ダイン氏のファンだと思います。なお、一部有名作品の完全ネタバレをしていることが難点です。 |
No.752 | 7点 | 川は静かに流れ ジョン・ハート |
(2015/05/22 17:06登録) 2008年度アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀長編賞(エドガー賞)受賞作品。謝辞には、「わたしが書くものはスリラーもしくはミステリの範疇に入るのだろうが、同時に家族をめぐる物語でもある。・・・」とあります。サスペンス作品ですが、複雑な人間模様(葛藤)が描かれており深みを感じる作品ですね。ミステリー的な観点からすれば、ミスリードはあるものの犯人は推測しやすいかもしれません。処女作の「キングの死」に続く作品ですが、「あくの強さ」はやや薄くなったかなという印象です。 |
No.751 | 6点 | 女には向かない職業 P・D・ジェイムズ |
(2015/05/19 19:56登録) 独特の文章でやや読みにくいところもありましたが、22歳の世間知らずの娘のひた向きさ(ハードボイルドタッチ)は良く伝わってきました。 |
No.750 | 6点 | 貴婦人として死す カーター・ディクスン |
(2015/05/16 20:28登録) 2つのトリックは評価したいと思いますが、リーダビリティや物語の展開に難があるような気がします。また、H.M卿の存在がやや邪魔(浮いている)に感じられた。 |
No.749 | 5点 | ケンネル殺人事件 S・S・ヴァン・ダイン |
(2015/05/13 11:52登録) 薀蓄不要派なので、中国陶器と犬の話は邪魔になってしまいました(苦笑)。真相にはかなりの無理があり、さらに複雑化したため、その結果、すべてのトリックが中途半端になってしまったという感じです。題名や薀蓄からしても、犬のかかわり方はいま一つでした。 |
No.748 | 7点 | 殺人鬼 浜尾四郎 |
(2015/05/10 21:21登録) 1931年の作品ですが、古臭い感じは全くしません。当時、かなり斬新なスタイルだったのではと思います。どっぶりと本格に浸った作品ですね。この時代にこんな作品が発表されていたことに驚き。丁寧な作りで意外性も充分ありました。 |
No.747 | 8点 | 船富家の惨劇 蒼井雄 |
(2015/05/08 10:03登録) 1936年の作品。「赤毛のレドメイン家」(1922)との共通点は、’死体のない殺人’’○○に盲目となる’’第2の探偵が現れる’などありますが、物語の内容はまったく別物で楽しめます。同書をうまくミスディレクション(読者にではなく、探偵に対して)に利用しているところが非常にユニークです。高評価とするのは、やはりいろいろな面で先駆的な作品であるという点です。時刻表トリック(知る限り、鮎川哲也氏の作品<1950年代>が先駆的との情報が多かった。)、アリバイトリック(大御所の1958年の作品で扱われた有名なトリック)、ユニークな動機(1946年○○殺人事件)など印象に残っている大作に先行していました。古典の中にいいものを発見する喜びを味わえました。 |
No.746 | 5点 | ミステリ・ハンドブック 事典・ガイド |
(2015/05/04 18:10登録) 「読者が選ぶ海外ミステリ・ベスト100」~これまで行われてきた評論家や作家、一部ファン・クラブによる内外のベストテンとは異なり、”私たちの”ベストテンの性格を強く帯びています。したがって、読者によって作られたページといえるでしょう。~とあります。 前段の「東西ミステリーベスト100」とは違い、一般読者620人による人気投票ですよということでしょう。しかし、集計方法に問題があり、読者の意見(好み)を反映したものとは言えないのでは?。ジャンル別(9部門)に投票したものを、集計して上位100を選んでも意味がないと思うのですが・・・。ジャンル別のランクのみとするならば意義がある。つまり、好きな作品を5冊投票し、ベスト100が出来上がり、その結果をジャンル別に再集計してみたということならば理解できるのですが(どうもそうではないみたいです)。ジャンル別も10位までではなく30位くらいまで記載してくれても良いような気がしました。 |
No.745 | 7点 | キングの死 ジョン・ハート |
(2015/05/03 17:42登録) 裏表紙より~『失踪中の辣腕弁護士が射殺死体で発見された。被害者の息子ワークは、傲慢で暴力的だった父の死に深い悲しみを覚えることは無かったが、ただ一点の不安が。父と不仲だった妹が、まさか…。愛する妹を護るため、ワークは捜査への協力を拒んだ。だがその結果、警察は莫大な遺産の相続人である彼を犯人だと疑う。アリバイを証明できないワークは、次第に追いつめられ…。』~ デビュー作とは思えないほど良くできていますね。物語で明らかになってくる、ある題材があまりにもアメリカ的であり、日本では中々受け入れにくいのかも。また、登場人物全員に癖があり、あくが強い。全体の雰囲気も重く暗い。この辺も一般受けがしなかったのかもしれません。しかし、内容は密で濃い600ページでした。 |
No.744 | 6点 | 愚かものの失楽園 パトリック・クェンティン |
(2015/04/29 20:08登録) 「わが子は殺人者」(1954・ホイラー単独作品)の2年後の作品ですが、前作品には及ばなかったですね。プロットはなんとなく似ているのですが、二転三転という意味では物足りなかった。なお、裏表紙は、犯人像を特定してしまっているので、それ以外の登場人物を犯人から排除してしまうという罪づくりなものです。 |
No.743 | 5点 | 雷鳴の館 ディーン・クーンツ |
(2015/04/28 17:56登録) ホラー・サスペンス。入院中の主人公の身の回りの起こる怪奇現象。夢、幻想、それとも精神異常?と前半は引っ張っていきます。後半、残り3分の1で、がらりと展開が変わります。この展開について行けるかどうかで評価は分かれてしまいそう。私の場合は、ついて行けない派でした。 |
No.742 | 5点 | 叔母殺人事件 偽りの館 折原一 |
(2015/04/24 21:40登録) 叔母の殺人計画は、本家のリチャード・ハルも同様でしたが見るべきものがなかったですね。その点では、やはりサスペンスとしての面白味に欠けると思います。叙述は、それほど複雑ではなく理解しやすい基本形?・・・といっても結局騙されたわけですが(笑)。もっとコンパクトでもよかったかなという印象です。 |
No.741 | 7点 | ウォッチメイカー ジェフリー・ディーヴァー |
(2015/04/20 18:15登録) (東西ベスト73位)裏表紙より~『ウォッチメイカーと名乗る殺人者あらわる。その報がリンカーン・ライムのもとに届いた。手口は残忍で、いずれの現場にもアンティークの時計が残されていた。やがて犯人が同じ時計を十個、買っていることが判明した―被害者候補はあと八人いる!だが、いつ、どこで?尋問の天才キャサリン・ダンスとともに、ライムはウォッチメイカー阻止に奔走する。一方、刑事アメリア・サックスは別の事件を抱えていた。会計士が自殺を擬装して殺された―事件にはニューヨーク市警の腐敗警官が噛んでいるようだった。捜査を続けるアメリアの身に危険が迫る。二つの事件はどう交差するのか?史上最強の敵、登場!時計じかけのごとく緻密な犯罪計画をひっさげてライムとアメリアを翻弄するウォッチメイカー。熾烈な頭脳戦に勝利するのはライムか殺人者か?ドンデン返しに次ぐドンデン返し。あまりに緻密な犯罪計画で読者を驚愕の淵に叩き込む現代最高のミステリー・シリーズ最新作!』~(2006年シリーズ7作目) 途中で、話(事件)がちょっと出来過ぎではないの?との思いもしましたが、ラストでは強制的に納得させられてしまいました(笑)。このシリーズを読むのは4冊目ですが、全編長いようなので、あと1冊ぐらいで打ち止めにしようかな・・・(苦笑)。本作は、マンネリ化を避けるため、サックスの父親の事件を挟むなど憎い演出がありました。 |
No.740 | 4点 | バグダッドの秘密 アガサ・クリスティー |
(2015/04/16 07:37登録) 裏表紙より~『おしゃべり好きが災いして会社を馘になったヴィクトリアは、一目惚れした美青年を追いかけて一路バグダッドへ。やっとのことで彼の勤め先を探しあて、タイピストとして潜り込んだものの、とたんに不可解な事件に巻き込まれてしまった。さらに犯人の魔手は彼女にものびて…中東を舞台に展開するスパイ・スリラー。』~ ロマンチックな冒険談といったところですね。とてもスパイ・スリラーとは言えないような、まとまりのない作品です。誰がどういう目的で動いているのかが良くわかりません。著者の私生活(若き頃)をだぶらせて読めば楽しめるかも?。イギリスの秘密諜報部員が登場します。007・ジェームス・ボンドより2年早い登場ということが分かった作品です(苦笑)。 |
No.739 | 5点 | グリンドルの悪夢 パトリック・クェンティン |
(2015/04/14 12:33登録) 裏表紙より~『「グリンドル樫にコンドルが留まると盆地に死が訪れる」。片田舎の小さな村で少女が失踪した。村人総出で探したが見つからなかった。村では最近、猫や猿、鵞鳥などのペットが次々にいなくなっているという。これが少女の失踪になにか関係はあるのか。やがて少女の父親が水死体で発見された。彼は娘の居所をつかみかけていたようだったのだが…。』~ パズル・シリーズと作風が全く違っています。共作者とのコンビが違っていたようです。探偵役の不明確さが狙いのようですが、成功したとは言えないのでは?。語り部の「僕」が”事件”や”恋”に天然ボケをかまし過ぎて、物語全体がボヤケてしまったという感じです。なんともピリッとしません。ラストの、ほのぼの感のみか・・・。 |
No.738 | 6点 | 白銀荘の殺人鬼 愛川晶 |
(2015/04/12 21:13登録) キラー・エックスシリーズ3部作(黒田研二氏・二階堂黎人氏)の前哨戦的な作品でしたね。多重人格ものは、あまり好みではないのですが、本作ではうまく扱っていると思います。倒叙的要素が強いので、緊迫感の点でやや物足りない気がしました。 |
No.737 | 5点 | 善良な男 ディーン・クーンツ |
(2015/04/11 16:02登録) (タイトル男15)裏表紙より~『「ここに半分ある。残りは女がいなくなってからだ」なじみのバーで、レンガ職人のティムは見知らぬ男から奇妙な言葉とともに封筒を渡された。封筒には札束と、名前と住所を記した女性の写真が入っていた。ティムは人違いで殺人を依頼されたことに気づくが、男は去っていた。彼は標的の女性を探し出して警告するが、早くも二人に不気味な殺し屋の魔手が迫ってきた。強烈なサスペンスが貫く逃亡と追跡のサバイバル・ゲーム。』 ウィットに富んだ会話、追いつ追われつの逃走劇は楽しめました。ただ、追われる謎(理由)と主人公ティムの謎(過去)がメインであると思いますが、今一つ納得性がなかったのが残念な点です。前者は動機が弱すぎる。後者はあえて謎とする必要性がない(感動的な話ではあるが・・・)。それよりもヒロイン・リンダの過去の話の方が、本編を食ってしまうほどインパクトがあった。 |
No.736 | 6点 | 主よ、永遠の休息を 誉田哲也 |
(2015/04/08 22:06登録) 裏表紙より~『14年前の女児誘拐殺人事件。”実録映像”はなぜ出現した!?通信社社会部の記者・鶴田吉郎は、コンビニ強盗の犯人逮捕を偶然スクープ。現場で遭遇した男から、暴力団事務所の襲撃事件について訊ねられた吉郎は、調査の過程で、14年前に起きた女児誘拐殺人事件の“実録映像”がネット配信されていたことを知る。犯人は精神鑑定で無罪とされていた…。静かな狂気に呑み込まれていく事件記者の彷徨を描いた傑作、待望の文庫化。』~ 解説によると、姫川玲子シリーズのデビューは「ストロベリーナイト」ではなく、本書であったのかもしれないという作品です。個人的には、玲子自身のトラウマと事件が類似しているので、シリーズの方が面白味が増したのかも?という印象を持ちました。本作は記者と事件関係者の女性それぞれの一人称で語られ、ジョークもあり結構軽めの感じがします。しかし、内容は救いようのない重いものでした。題名は読後に・・・。 |
No.735 | 6点 | コフィン・ダンサー ジェフリー・ディーヴァー |
(2015/04/08 10:11登録) 仕掛けられたサプライズが高評価のようですが、「うーん、どうなのかなあ~」といた感じです。本作では、犯人側の心理描写もあり期待したのですが・・・。 犯人像自体は、「ボーン・コレクター」(サイコ系)の方が良かった。 |
No.734 | 4点 | 聯愁殺 西澤保彦 |
(2015/04/03 14:41登録) 色々な試みは評価したいと思いますが、その結果プロット等に無理が生じてしまったという印象です。第1章は読者にヒントを与えていない点でアンフェアかな?。第2章は、主人公の心理描写がありますが、大いに矛盾しているように感じます。1人称であれば許容できるものですが、三人称では???。やはり、最大の疑問・謎は、なぜ「恋謎会」で討議されなければならなかったのか?。これも突き詰めていくと矛盾していると思うのですが・・・。 |