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ミステリの祭典

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グリンドルの悪夢

作家 パトリック・クェンティン
出版日2008年02月
平均点6.33点
書評数3人

No.3 7点 弾十六
(2020/10/04 21:09登録)
1935年8月出版。Q. Patrick名義。WebサイトThe Passing Trampの説(2019)では、従来と異なりWebb単独作品だろうと言う。私も読んでみてそう思う。Webbの独白じみた若い男(30ちょい)の一人称小説。同居人は知性と肉体美を誇るイタリア系医師(ほぼ同年代)、主人公は彼に劣等感を感じている。その塩梅が良い。各キャラの設定が上手で、展開も見事。素晴らしい場面(凄く悲しいけど)があって、最近の読書ではピカいち。
相変わらず物証が希薄で暗闇大好きだが、この小説ではぴったりハマっている。素人の手記、という設定なので多少の不手際は全然問題なし。ラストの盛り上げ方も良いのだが、解決編はややゴタつき(純本格ものとすると不満が多いけど、本格風サスペンスとして見れば傑作。「太陽がいっぱい」テイストで映像化したらピッタリ)。Q. Patrickの第1作、第2作も読みたいなあ…
この作品、p235のアレが重要なファクターなので知らない人はググって欲しい。
ああ忘れてた。グリンドル村の素敵な手書き地図(多分初版に掲載されてたもの)がGrindle Nightmare site:thepassingtramp.blogspot.comで見られるので、ぜひ。この本のダストカバー裏面の写真もあり、そこにはQ. Patrickは謎の男だが「日中はimportant Earstern executive」で「昔、南アフリカでギリシャ語を教えていたことがあり、パリで新聞関係に携わっていたこともある」と書いてある。
The Passing TrampとGadetectionから集めたWebbの個人情報を追加しておくと、1926年に英国から米国に移り住んだときに、"Research man" としてフィラデルフィアの chemical companyで働き、Robert E. Turnerという男と同居していた。1930年の国勢調査で彼のことをpartnerといったん書いて消してlodgerとしている(えっそこまで情報公開してるの?)。このTurnerは1966年のWebbの死にあたって遺産管財人の一人に選ばれている、という。
WebbがWheelerと知り合ったのは1933年のロンドン。大学を卒業したばかりだった。Webbは同年Wheelerを米国フィラデルフィアに連れてきた、という(同居していたかは不明)。大戦中、Webbは赤十字関係でHollandia, Dutch New Guinea(現在のJayapura, Indonesia)にいた。Wheelerはずっと米国内にいられたようだ。
また、Webbは1943-1948にFrances Winwarとの結婚歴あり。イタリア系で伝記作家として結構有名らしい(英Wikiに項目あり。注にWebbの名が出ていた)。WebbとWheelerが戦後すぐ(1946?)受けたインタビューでは、二人はMontereyで同居しているようなのだが…
トリビアは後で詳細を。こちらも原書は入手済みです。
p9 今日びの裕福な母親にとって、誘拐の恐怖は…♠︎米国の有名誘拐事件の相場は、Charlie Ross(1874)2万ドル、Bobby Franks(1924)1万ドル、Marion Parker(1927)1500ドル、Charles Augustus Lindbergh Jr(1932)5万ドル

No.2 5点 蟷螂の斧
(2015/04/14 12:33登録)
裏表紙より~『「グリンドル樫にコンドルが留まると盆地に死が訪れる」。片田舎の小さな村で少女が失踪した。村人総出で探したが見つからなかった。村では最近、猫や猿、鵞鳥などのペットが次々にいなくなっているという。これが少女の失踪になにか関係はあるのか。やがて少女の父親が水死体で発見された。彼は娘の居所をつかみかけていたようだったのだが…。』~
パズル・シリーズと作風が全く違っています。共作者とのコンビが違っていたようです。探偵役の不明確さが狙いのようですが、成功したとは言えないのでは?。語り部の「僕」が”事件”や”恋”に天然ボケをかまし過ぎて、物語全体がボヤケてしまったという感じです。なんともピリッとしません。ラストの、ほのぼの感のみか・・・。

No.1 7点 nukkam
(2009/06/01 17:31登録)
(ネタバレなしです) リチャード・ウエッブ(1901-1970)とメアリー・アズウェル(1902-1984)のコンビによる作品としては「死を招く航海」(1933年)に次ぐ1935年発表の作品ですが、同じコンビの作品とは思えぬほど雰囲気が違いました。「死を招く航海」がどちらかといえば洗練された本格派推理小説だったのに、本書は同じ本格派でも息詰るようなサスペンスが特徴です。次々と動物や人が死に、しかも死体の演出も凝りまくりで横溝正史もかくやと言わんばかりのおどろおどろしさです。それでいて目まぐるしいほどスピーディーな展開で、さんざん息苦しい思いをさせた読者に最後は新鮮な空気を味わうような気分にさせているところが計算高く、しかも謎解きプロットは緻密に構成されているのですから大満足です。

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