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ミステリの祭典

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蟷螂の斧さんの登録情報
平均点:6.09点 書評数:1660件

プロフィール| 書評

No.940 4点 黒と愛
飛鳥部勝則
(2016/07/10 10:11登録)
裏表紙より~『奇妙に傾く狂気の城、奇傾城―血と内臓と腐肉が主題の絵画が集う一室に幽霊が出没する噂がたち、“探偵”亜久は心霊特番に協力して城を訪れる。遅れて“霊能リポーター”役の女子高生、全身黒服の少女・黒が現れ、亜久にそっと囁いた。「あなたは、鋏が好きですか」…やがて密室状況で、黒と親しい男がくだんの部屋で首を切断された。これは幽霊の凶行か?呪わしく美しい純愛(変愛)本格ミステリ。』~
ツイッターベスト100の83位、読書Mでも高評価なので手に取りましたが、肌に合わず残念。純愛(恋愛)ものではありませんでした。序幕で「彼女は、両の肩から手首まで、びっしりと―」とあり、以前「ラミア虐殺」(低評価)を読んでおり、その続編か?と嫌な予感。主人公の女子高校生・黒に全く魅力がないので感情移入できず(登場人物の数人が彼女に魅了されるのですが・・・)。構成(犯人拘束の章→犯人の前日談の章)は奇をてらったものですが、果たして効果的であったかどうか疑問。その章に仕掛けがあるのですが、伏線が弱すぎアンフェア気味でしたね。動機も良くわからないし、犯人がそんなところにいていいんですか?と突っ込みどころが多し(苦笑)。


No.939 5点 名探偵に薔薇を
城平京
(2016/07/06 17:39登録)
ATB本格ミステリベスト100の24位(2015.4ツイッター上でファン150名が投票、一人10作品で1位10点~10位1点での集計)結構評価が高いですね。真相へのどんでん返し(推理の過程)が高評価なのか??。推理は根拠があるわけでなく仮定の話(多重解決)で、どうも好きになれません(苦笑)。どちらかというと告白など後出しの感が強い。一番気になったのは名探偵の悩みです。その結果、暗い探偵像になってしまって感情移入できませんでした。なお、動機のついての前例有無については全く問題ははないと思います。


No.938 6点 王女マメーリア
ロアルド・ダール
(2016/07/01 09:47登録)
裏表紙より~『17歳の誕生日の朝、王女マメーリアは鏡に映った自分の顔に愕然とした。不器量な少女が、一晩で眼もくらむような美女に変身していたのだ。彼女は美しさゆえに絶大な力を身につけるが、かわりに優しい心を失っていく。やがて、マメーリアの傲慢さは彼女を不幸な運命へ導くが…大人のための寓話である表題作の他、鮮やかで洒落た結末や残酷な味など偉大なストーリーテラーのすべてが堪能できる九篇。日本オリジナル短篇集。』~
「古本屋」(ベスト)・・・裏家業があるのだが、それが何だかわからない。読者はイライラさせられるが、ラストでやっとそれが判明する。なるほど、そういうこと、~では終わらずもう一捻り。
「ヒッチハイカー」(次点)・・・変わった職業の人間を乗せてしまう。そしてスピード違反で捕まってしまう。その職業には思わず笑ってしまう。
「ボティボル氏」(特別賞)・・・レコードを聴くと、作曲家や指揮者になりきってしまう変人。短篇でありながら、その演奏場面は臨場感あふれるものがある。余談~この主人公は極端にアスパラガスに似ている。下から上へ先細りにのび、てっぺんは禿げ頭。巻末の著者自身の写真に実に似ているのである(笑)。


No.937 5点 殺人者の街角
マージェリー・アリンガム
(2016/06/29 18:32登録)
裏表紙より~『その男は一人また一人、巧妙に尊い命の灯を吹き消してゆく。だが、ある少女の登場を端に、男は警察から疑いをかけられることに…。寂れた博物館、荒れ果てた屑鉄置場―人々から置き去りにされたロンドンの街角を背景に、冷酷な殺人者が追いつめられる。英国黄金時代の四大女性探偵作家のひとり、アリンガムのシルバー・ダガー賞受賞作品、初の完訳。』~

倒叙物に近い作品です。サスペンスとしては弱い感じがしました。活躍する中心人物が不在といった印象で、主人公が誰なのか明確でなかった。結局、伯母の犯人に対する感情や意識などを描きたかった作品とは思うのですが、その点が伝わってこなかった。


No.936 7点 ある詩人への挽歌
マイケル・イネス
(2016/06/27 10:58登録)
序盤の読みにくさは我慢するしかない?。真相に至る構図は面白い。江戸川乱歩氏による1935年以降のベスト10の一冊。あとは、「殺意」「伯母殺し」「判事への花束」「クロイドン発十二時三十分」「野獣死すべし」「大いなる眠り」「十二人の評決」「検屍裁判」「幻の女」


No.935 3点 ウサギ料理は殺しの味
P・シニアック
(2016/06/20 13:20登録)
裏表紙より~『レストランのメニューにウサギ料理が載ると若い女が殺される!女占い師と彼女にほどこしを受けるホームレス、ウサギ料理が好きな男、金ではなく高級商店の新入荷品で上客を取る娼婦。絡み合う人間関係。ある日、「ウサギ料理をメニューに載せるな」という脅迫状がレストランに届く。この町に何が起きているのか?とてつもないブラック・ユーモアが横溢する仏ミステリの傑作。』~

フランスミステリーの一番人気とのことで手に取るも、まったく相性が合わなかった。トホホ・・・。まず、フランス人の名前が覚えきれない、そして前半はかなり退屈。6件も事件は起きているのですが、単に殺されたということだけで調査の記述もなく、ただ町の人物の行動を紹介する、その繰り返しです。まあこの辺が伏線らしきものになっているのですが・・・。怪作と褒めるような評もありますが、どちらかと言えば「バカミス」の類になるのか?。


No.934 6点 羊たちの沈黙
トマス・ハリス
(2016/06/18 06:38登録)
(東西ベスト第9位)ジョディ・フォスター監督が映画宣伝(マネーモンスター)の為来日。女優業としては、本作「羊たちの沈黙」が彼女の代表的な作品となるのでしょう。映画の印象が強く残っており、中々手に取りづらいものがありました。ベスト10作品でありながら、本サイトで書評数が少ないのは同様の理由からなのかもしれません。いま一つ高評価をつけづらかったのは、物語の配分かな?。エピソードが分散されてしまった印象です。レクター対クラリス、および犯人対被害者の緊迫した場面をもっと多く中心に、と期待したためです。


No.933 6点 暗黒館の殺人
綾辻行人
(2016/06/13 13:52登録)
ジャンルは、新本格というより幻想・伝奇小説に分類されるのではないでしょうか。”視点”の存在(登場)もありますし、偶然が重なりあうことなどもありますし・・・(苦笑)。
『ダリアの時計』から、画家サルバドール・ダリ氏の代表作「柔らかい時計(記憶の固執)」を連想しました。この絵は氏の経験した夢に基づいて描かれ、時計は時空のひずみを象徴しており、現在と過去が入り乱れている夢の時間をあらわしているとのことです。本作のモチーフに通じるものがありますね。偶然か?。


No.932 5点 生きていたおまえ…
フレデリック・ダール
(2016/06/11 14:50登録)
倒叙形式で語られる犯罪計画そして実行、判事による追及はサスペンスフルで楽しめました。しかし、その後の主人公の考え方に感情移入できませんでした。というより心の変遷が理解できなかった(苦笑)。殺した妻を愛していたということなのでしょうが、何をもって愛とするのかが伝わってこなかった・・・。


No.931 8点 影男
江戸川乱歩
(2016/06/11 06:13登録)
(「BOOK」データベース)より~『影男!その正体は、速水荘吉・綿貫清二・鮎沢賢一郎・殿村啓介・宮野緑郎と無数の名をもつやせた男。さらに小説家としては佐川春泥という名で知られ、その執筆する怪奇異風の小説は世にもてはやされていた。このふしぎな男は何をもくろむのであったか!どんな人間ももっているヒミツの裏側を探求するのが影男の目的であった。影のような人間に変化して。かくて、影男の出現するところ、一軒家の地下室で行なわれる闘人、地底のパノラマ国等々。奇々怪々な事件の連続であった。名探偵・明智小五郎の明推理は。』~

オムニバス形式のような作品です。明智小五郎探偵登場は大人向け作品では本作がラストのようですね。大技の密室トリックの例示があったり、乱歩氏らしい覗き趣味もあったり楽しめます。

高評価の最大の理由は下記”先駆的トリック”に敬意を払うものです。

<以下ネタバレ>
有閑マダム達が秘密の組織を作り、そこで美青年二人を闘わせるというショーを開催していた。一人が死亡してしまい、世間体から内密にしたい。そこへ影男が現れる。「この青年が、あすまで生きていて、あす行方不明になったことにすればいいのです。そして、あなた方は、あすじゅうは秘密の行動をしないで、いつ聞かれても答えられるようなアリバイを作っておけばいいのです。事件を今夜からあすに移すわけですね」・・・これって、例の超有名作品と同じ!!!???・・・。
こんな発見をすることも古典を読む楽しみの一つですね。


No.930 6点 赤い密室 名探偵星影龍三全集(1)
鮎川哲也
(2016/06/10 11:44登録)
<ネタバレがあります>
「呪縛再現」・・・「りら荘事件」の原形です。解説によると同人誌(ガリ版)に載っっていた幻の作だそうです。「りら荘」の書評では「華」がない、つまり美人の登場がないなどと苦言を書いていますが、原案の本作では美人が登場しています。どうしていなくなってしまったのでしょうか?(笑)。本作登場のトリックは「りら荘」では使用せず、「憎悪の化石」での使用となっていました。また「朱の絶筆」の書評での苦言部分(ミスリードとして用をなさない)が、ここに登場していました(苦笑)。名探偵・星影氏と鬼貫警部の共演があることは収穫?しかし、初登場の星影氏はかなりキザで鼻持ちならない人物として描かれています。
「赤い密室」・・・長編での密室ものはほとんど考えることはしません、というより面倒くさい?・・・が、短編となるとクイズのようなものなので、かなり真剣になります(笑)。消去法で考えると割合簡単でした。警察がしっかり痕跡を調査すればわかるようなものですね。物理的密室と心理的密室をあわせたところや新聞紙によるアリバイ工作は買います。
「消えた奇術師」「妖塔記」・・・この密室も、これしかないというような、ごく初歩的なものでした。
「道化師の檻」・・・トリックは面白いが、見せ方が良くない。○○の存在や○○の出来事は私としては許容範囲外ですね。
「黄色い悪魔」・・・これもよくあるパターンでの合わせ技。
以上、密室ものはやはり先駆的なものでないと高評価はつけづらいということでした。


No.929 4点 街の観覧車
阿刀田高
(2016/06/08 10:53登録)
(再読)裏表紙より~『人生は観覧車、めぐるゴンドラ。人は他人と繋りながら生きている……。私鉄沿線の古い住宅地を見下ろす観覧車からの眺めのなかに、ふと目をひいたさまざまな人間模様。愛する人との邂逅、別れ、突然の死、憎しみ、殺人、避けられぬ運命、幸運とのすれちがのい―10のゴンドラで著者が奏でるロンドの世界。』~
ロンドといっても前の作品に登場した人物が、次の作品の主人公になるといったもので、ほとんど意味がありません。毒気が弱いのでこの評価。


No.928 5点 飛ばなかった男
マーゴット・ベネット
(2016/06/07 18:08登録)
回想シーンが長すぎて・・・。結局、物語の前後を逆にしただけのようなもの。


No.927 5点 朱の絶筆
鮎川哲也
(2016/06/06 10:51登録)
裏表紙より~『人気作家・篠崎豪輔が殺された。軽井沢の彼の山荘に元編集者、挿絵画家、作家志望者、ホステスら関係者が集まっている時だった。絶大な支持を笠に着て周囲の者には傲岸不遜な彼だったゆえ、誰にも殺害の動機は考えられた。だが、警察は容疑者すら絞れない。混迷のなか、さらに殺人は続き…。そこへ名探偵・星影龍三!鋭利な推理で不可解な事件の真相に迫る。』~
物語の流れ、第1の殺人のトリックなどは評価7点ぐらいと思います。読者への挑戦があるので気合を入れて読んだのですが、前半のミスリード?ミスディレクション?にはがっかりでした(苦笑)。まったく効果(影響力)なし!、これが大きなマイナスポイントとなってしまいした。第2以降の殺人のトリックは見るべきものがないし、伏線も弱いというより後出しの感が強かった。犯人を知っているとの発言だけで毒殺されてしまうのは、チョット酷過ぎやしませんか?。


No.926 5点 神様が殺してくれる
森博嗣
(2016/06/03 18:15登録)
「BOOK」データベースより~『パリで往年の大女優が絞殺された。両手首を縛られ現場で拘束されていた重要参考人リオン・シャレットは「神様が殺した」と警察で証言。彼は同時にその神の名前として僕の名を挙げた。僕に身に覚えはまったくない。リオンはかつて大学の寮の僕のルームメイトで、当時から多くの人をその美しさで幻惑した。僕は卒業以来2年半、一度も会っていない。容疑者の特定はおろか、なんの手がかりもないまま、やがて起こった第2の殺人。ミラノで有名ピアニストが絞殺された。またもや現場には皆睡したリオンがいた。インターポール(国際刑事警察機構)に勤務する僕は、現地の警察と連携しながら、独自に捜査を始める―。』~
本格ものとして期待して手に取りましたが、いい意味で裏切られました。著者がこの種の作品を!?という意味です。登場人物同士で、その程度のことは判るだろうというような疑問符がつく点もありますが、おおむね楽しめました。


No.925 6点 甦える旋律
フレデリック・ダール
(2016/06/02 06:53登録)
裏表紙より~『ヴァイオリンを胸に抱いて、ぼくの車に身を投げた女・・・その衝撃で過去の記憶をなくした彼女にぼくは恋をし、彼女の記憶が甦えるために色々なことを試みた。だが彼女の過去の断片が判ったとき、それは恐ろしい話だった。二人は逃げる。誰から?どこへ?-フランス推理小説大賞を受賞した長篇ラブ・サスペンス。』~
ラブ・サスペンスということで、ウィリアム・アイリッシュ氏の作品群に近いイメージです。二人は愛し合うようになるのですが、男は過去を知りたい気持ちと、悪い過去なら知らない方がいいと思う気持ちで揺れ動きます。しかし女性の記憶が徐々によみがえってくるという心理サスペンスものです。顛末はある意味で国民性の差を感じましたね。
余談ですが、あるサイトで「フランスミステリベスト100」と「作家別ランキング(上位30人)」を発表しています。ちなみに本作は63位、作家別は24位です。


No.924 7点 夜歩く
横溝正史
(2016/05/31 06:08登録)
題名「夜歩く」はディクスン・カー氏の作品名(1930)と同じだったので、氏を意識した内容か?と思いきや全く関係ありませんでした。それよりクリスティー氏を意識した作品だったのでビックリ!(笑)。首なしの真相とアリバイトリックは秀逸でした。


No.923 8点 黒い蘭の追憶
カーリーン・トンプスン
(2016/05/28 10:00登録)
裏表紙(略)より~『誘拐された少女ヘイリーは、必死の捜査にもかかわらず、惨殺体となって発見された。事件が迷宮入りして十九年後、ヘイリーの母親キャロラインの周囲では事件の関係者が次々と殺されていく。誘拐犯がふたたび戻ってきたのか、それとも……? 息詰まるようなサスペンスで全米書評子から絶賛をあびた大型新人のデビュー作。』~
読者からみた容疑者候補が次々と殺されたり、銃撃により怪我をしたりする。登場人物から容疑者は徐々に絞られてくるのだが動機が全く分からない。この辺までの展開は新人らしからぬものがあります。そしてラストでのどんでん返し。Good(笑)。本邦であまり評判にならなかったのは、主人公とその元夫の人物造形が感情移入できるような人物でなかったからかも?・・・。本作は「100冊の徹夜本 海外ミステリーの掘り出し物」(佐藤圭氏)から選んで読んでみた1冊で、本当に掘り出し物といった感じでした。


No.922 5点 切り裂く男
ウィリアム・J・コグリン
(2016/05/24 18:03登録)
(タイトル・男14冊目)裏表紙(略)より~『殺人者が戻ってきた・・・ルッソー警部補は確信した。その女の死体は首から下の皮を剥がれ、腹部は縦に切り裂かれて内臓が掻き出されていた。そして全身の骨という骨が折られていた。それは数年前に犯行を重ねた、エドワード・ティーグとそっくり同じ手口であった。彼は心神喪失を認められて無罪となっていた。法が野放しにしたのだ。』~
(昔、父親と一緒に猟に出かけ、早朝の霧のなかで獲物を待ちうけていたときと同じ気分だった。)というような猟と対比させたシリアルキラーの心理が挿入されており、結構不気味な感じがしました。シリアルキラーものとして、何か特長のある作品とは思いませんが、まあ、心神喪失で無罪となる事へ疑問(社会派的なメッセージ)がこめられていることは感じました。


No.921 5点 蝮のような女
フレデリック・ダール
(2016/05/20 08:16登録)
(タイトル・女31冊目)「BOOK」データベースより~『南仏の豪邸に棲む美しい姉と車椅子の妹。一夜のアバンチュールの謎を追って、禁断の館に足を踏み入れた男はたちまち“魔性”の虜に。毒された三角関係は、やがて意想外の破局へ…。 』~

200ページほどの中編です。内容は短編向きと思われるブラック・ユーモア系でした。もう少し男の心情(疑心暗鬼)が伝わってくればなあ・・・と思いました。しかし、あとがきによると著者の特徴は「心理描写のディテールにある」ということなので、あと2,3冊は読んでみようかとは思います。

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