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ミステリの祭典

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蟷螂の斧さんの登録情報
平均点:6.10点 書評数:1693件

プロフィール| 書評

No.973 7点 アルモニカ・ディアボリカ
皆川博子
(2016/10/15 22:28登録)
謎解きというより、前作「開かせていただき光栄です」(2011)で出奔したエドとナイジェルのその後の物語といった感じです。ナイジェルの生い立ちや、その周辺の人物の恋物語(アルモニカ=グラスハープを制作する若者とその手伝いをする娘、恋人を守るため精神病院にあえて入っている人物)が描かれています。法を守ろうとする盲目の治安判事ジョン・フィールディングの悩みが主題の一つになっていました。


No.972 4点 赤い殺意
藤原審爾
(2016/10/02 17:44登録)
若竹七海氏「さよならの手口」の巻末にある紹介本です。1964年今村昌平監督により映画化されています。キネマ旬報「オールタイムベスト・ベスト100」日本映画編(1999年版)では第7位にランクインしています。(参考~1位・七人の侍、3位・飢餓海峡、5位羅生門)。
内容は、平凡な主婦が夫の出張中に強盗に犯されてしまう。夫に言おうとするが言えず死のうとも思う。夫の不在時、また強盗が現れ「自分はもうすぐ死ぬので優しくしてほしい」という・・・。
原作は昭和34年の発表で時代の差を感じてしまう。つまり当時の貞操観念が現在とはかけ離れており、その女性心理がよくわからない。死ぬこともできず、告白することもできない。相手を殺そうとも思うがそれもできない。ずるずると関係を続けてしまうのです。あえて愚鈍な女性として描いているのかもしれませんが共感できなっかった。直木賞作家で、心理描写には定評があるそうですが、イライラしてしまいました(苦笑)。


No.971 6点 陽気な容疑者たち
天藤真
(2016/10/01 13:58登録)
著者のデビュー作。後発の作品に比べれば、ユーモアはあまり感じられなかった。本作にユーモアがあるとの書評が多いということは、後発の作品がいかに面白いかの証左ですね。本作はのんびりした、ほのぼの感のある作品といったイメージです。白眉は、結婚式で明らかにされる元警察医の視点とそのロジックです(感心、感心)。


No.970 5点 キルトとお茶と殺人と
サンドラ・ダラス
(2016/09/24 11:48登録)
裏表紙より~『カンザスの田舎町ハーヴェイヴィル。不況の波は農村にも押しよせおまけに日照りつづき、しかし主婦たちはキルトの会に集まってはお茶と噂話に日をすごす。ある日現われたのはキルトより“事件”が好きという新聞記者志望の若い女性、それから何かと騒動が起こりだす―流れ者の登場、不倫と妊娠騒ぎ、そして殺人事件まで…。』~

若竹七海氏「さよならの手口」の巻末紹介に、「最後の一撃」ものとあり手に取りました。前半はキルト仲間の日常が描かれます。コージー的な作風がお好きな方には良いかも?。中盤から殺人事件が起きますが、ある程度ミステリーを読んでいる方には、やや物足りないかもしれません。後味は決して悪くありませんし、いかにも田舎らしいほのぼの感があります。


No.969 5点 ペンローズ失踪事件
R・オースティン・フリーマン
(2016/09/19 12:12登録)
~骨董品のコレクターであるペンローズ氏が失踪。自動車事故で老婦人をはね、その後病院から姿を消したらしい。ペンローズ氏の父親の死亡により、遺産相続問題も発生した。ペンローズ失踪の裏には何があるのか?。ソーンダイク博士が捜査に乗り出す。~
地味な展開で、あまりメリハリがありませんでした。じっくり謎解きをする方にはいいのかもしれませんが・・・。ラストはそれなりのどんでん返しはあります。


No.968 6点 死刑台のエレベーター
ノエル・カレフ
(2016/09/15 09:39登録)
結末の皮肉がいい!滑稽でもあり好みです(笑)。このようなモチーフの作品は他にないのでは・・・。やや中盤に退屈感があったのが残念。その分は後半で盛り返したか?。「大アンケートによるミステリーサスペンス洋画ベスト150」(1991版)では、第5位となっており映画の方が有名ですね。


No.967 5点 さよならの手口
若竹七海
(2016/09/11 22:38登録)
ハードボイルド風の展開が、あまり肌には合いませんでした。本題とは関係ありませんが、主人公のバイト先がミステリ専門書店であるところより、巻末に「おまけ」として店長のミステリ紹介が載っています。「オリエントの塔」(水上勉氏)「赤い殺意」(藤原審爾氏)「キルトとお茶と殺人と」(サンドラ・ダラス氏)は読んでみたいと思います。


No.966 6点 真夜中の詩人
笹沢左保
(2016/09/05 14:05登録)
誘拐サスペンスものです。メインは動機探しになるのでしょうか。3分の1くらいで大筋は見えてくるのですが、真の動機がうまくカムフラージュされて分からずじまいでした。ヒロインの妹の恋愛に絡んでくる男性陣がいま一つ効果的でないところが残念な点です。
余談ですが、岐阜の景勝「中山七里」が出てきました。中山七里氏のペンネームは岐阜出身でここからきていることを知りました。


No.965 9点 招かれざる客
アガサ・クリスティー
(2016/09/02 17:31登録)
裏表紙より~『深い霧がたちこめ、霧笛が響く夜。庭を見わたすフランス窓の前で、車椅子に座った館の当主が射殺されていた。そのかたわらには、拳銃を握ったままの若い妻が立ちつくしている。車の故障でたまたま立ち寄った男は、美しい妻のために一計を案ずるが…スリリングな展開と意外な結末が待ちかまえる傑作ミステリ戯曲。』~

久しぶりに「ガツン」と来ましたね。サスペンスものです。巧い!(笑)。著者らしさが凝縮された作品であると思います。著者の作品では戯曲ということもあり、あまり読まれていないようです。「アガサクリスティー完全攻略」(霜月蒼氏)での高評価と、あるサイトでの”べた誉め”評により手にしてみました。大正解でした。


No.964 6点 星読島に星は流れた
久住四季
(2016/08/30 08:31登録)
恋?に絡めたラストで後味はいいですね。真相(仕掛け)が本作の肝で非常に気に入っています。地球上で数年かかったとしても、宇宙時間からすればほんの一瞬の出来事なのですから・・・犯人の気持ちと私の気持ち(笑)。たまには夜空をみるのも楽しいですよ。まあ私の住む都会では無理ですが・・・。ということで毎年、満天の星(天の川)を求めて旅をしています。夜晴れること。新月であること。でこれが結構難しいのです。余談でした。


No.963 7点 鍵孔のない扉
鮎川哲也
(2016/08/29 10:05登録)
第2の殺人のアリバイ崩しが魅力的でした。「鍵」が謎解きのカギになっているところがいいですね。サブ的に「シデ虫」が登場します。最近の「法医昆虫学捜査官シリーズ」(川瀬七緒氏)によって、この「シデ虫」メインの物語に変換されることも可能でしょう。このようなミステリーの変遷や発展形を考えると感慨深いものがあります。


No.962 5点 求婚の密室
笹沢左保
(2016/08/26 17:27登録)
パーティの招待客13人ですが、事故が起こっているにも拘わらず、4~5名以外の描写や会話がほとんどなく、いてもいなくてもいいような感じで、小説として非常に異質なものを感じました。また「心中説」の章が冗長でしたね。読者も、あり得ないと思っているようなことを、長々と説明されても・・・といったところです。ダイイング・メッセージもいま一つ。密室も完全な密室ではなく、あまり興味が湧かなかったです。まあ、本作のアイデアはオリジナリティがあり、その点は認めますが・・・。それより、どのように二人が水を飲んだのか(飲ましたのか)が本作では白眉でした。もっと登場人物(生前、女性スキャンダルを仕組んだ教授、助教授、女本人、その恋人)を活かしながら、アリバイ崩しに重点を置き(ページを増やし)、そこから浮かび上がってくる犯人像!とした方がインパクトがあったように思います。真相などは気に入っているのですが、全体にちぐはぐ感が残り、やや辛目の採点となりました。


No.961 6点 空白の起点
笹沢左保
(2016/08/23 17:37登録)
裏表紙より~『真鶴の海岸近くの崖から男が突き落とされ墜落死する。折しも、付近を通過中の列車の乗客が事件を目撃するが、目撃者の一人は被害者・小梶美智雄の娘・鮎子であった。やがて小梶が多額の生命保険に加入しており、要注意の契約者であったことが判明。事件に不審を抱いた保険調査員の新田純一は、小梶の調査を開始するが…。複雑な人間模様に潜む危険な愛憎を捉えた本格長編ミステリー。』~

犯人、トリック、動機が巧く絡み合った作品との印象です。○○○○○○○の殺人に分類されると思いますが、それほど違和感や否定的な感情は起こらず、素直に納得させられてしまいました(笑)。


No.960 5点 蠢く触手
江戸川乱歩
(2016/08/21 14:06登録)
~新聞記者の進藤は、これからある事件が起こるとの予言を怪老人から聞き出す。そして次々と予言通り事件が起きるのであった。~
岡戸武平氏による代作であることを承知の上での拝読。乱歩氏らしさを出そうと、猟奇的な犯罪やそれらしき怪しい登場人物も出てきます。当然、明智小五郎も(笑)。しかし、主人公が新聞記者ということもあり、話のテンポは早く、乱歩氏らしい雰囲気は?マークでしたね。読みやすくプロットは面白いのですが、ミエミエな部分が結構ありました。一点、非常に惜しいところは、現在ならば「叙述」に該当する部分があったのですが、当時ではうまく処理しきれなかったことです。この部分をもう少し、掘り下げていれば結構いい小説になったような気がします。


No.959 6点 招かれざる客
笹沢左保
(2016/08/19 21:33登録)
目新しいものはないのですが、動機、アリバイ、トリックを複合的に組み合わせたもので好印象を受けました。警部補の消去法的推理はなかなかのものです。ただし、題名はイマイチ、ピンときませんでした。


No.958 4点 探偵小説談林
評論・エッセイ
(2016/08/18 13:13登録)
探偵小説愛好団体である”怪の会”の機関誌「地下室」のコラムに掲載したものや、他の雑誌に発表したものであり、かなりマニアックな内容でした。探偵小説に関わった人々についてのものが多いのですが、ほとんど知りませんでした(苦笑)。
そんな中で興味を持ったものを2点ほど。
「EQ」誌に連載(1984年)されたH・R・F・キーティング氏による代表作採点簿があり、それはC(人物)P(プロット)R(読みやすさ)T(サスペンス~TはTension)の4項目で採点したそうです。なお、エラリー・クイーン氏が発表した採点表は10項目あったようです。後者は主に本格を、前者はサスペンス、ハードボイルドなどを対象としているので項目数が少ないのは致し方ないのかも。個人的には、意外性や先駆性をかなり重要視して採点しています。
江戸川乱歩氏の作品で「蠢く触手」(1935)があり、それは岡戸武平氏による代作であるということです。遅筆の乱歩氏は短期間に長篇を書きあげることは出来ないので、やむなく代作者を使用したとのことです。よって、その後の全集などに載せることもなかったし、今後も刊行されることもないであろう。”幻の作品”として珍重されるかもしれない。・・・とありました(1986時点)。しかし、1997年、春陽文庫より復刻されていました。早速読んでみよう!(笑)。


No.957 5点 私刑
パトリシア・コーンウェル
(2016/08/17 13:25登録)
裏表紙より~『凍てつくような冬のニューヨーク。ひらひらと雪の舞うセントラルパークで名もなき女が無惨な死体で発見される。恐怖の殺人鬼ゴールトが遂にその姿を現わす。スカーペッタ、マリーノ警部、ベントン捜査官の必死の追跡が続く。やがて明らかにされるゴールトのおぞましい過去。検屍官シリーズ、戦慄のクライマックス!』~

シリーズ6作目。シリーズものの宿命か?、人物関係の説明が簡単にかたずけられてしまうので、最初から読んでいないと各人物(特にケイの姪・ルーシーやその友人であったキャリー~第5作を読まないと不明)に感情移入できないというのがやや欠点。特に犯人は、第4作「真犯人」から登場しているのですが、どういう人物像かが良く伝わってこない。これは主人公ケイの一人称で語られるため、犯人側の心情が全く不明(語られない)。子供の頃の行動(特に本作の重要部分に繋がる)や、ケイを守る?ような行動、最終的な目的など、どのような心境だったのか?モヤモヤ感が残る結果です。


No.956 4点 理想的な容疑者
カトリーヌ・アルレー
(2016/08/14 16:57登録)
内容紹介より~『深夜、口論の果てにドライブ中の車から妻を降ろし、置き去りにしたミシェル。翌朝、殺害され、車で轢かれ顔の判別もできない女性の変死体が路上で発見された。ミシェルの車には傷があり、状況は彼を理想的な容疑者にしたて上げていた。身に覚えのない彼なのに、実の兄さえ彼を殺人犯だと思いこんでいる! 信じてもらえなかった男のたどった道は? 仏冒険小説大賞受賞の傑作。』~

サスペンスものとしては微妙。夫婦のあり方や特に女性の生き方(心情)を描いた作品かも。フランス・ミステリーと言えば、それらしい雰囲気やラストではありますが・・・。


No.955 8点 異常者
笹沢左保
(2016/08/11 09:43登録)
新進弁護士・波多野の妹が『残虐魔』の第五の犠牲者になってしまう。それは妻が何者かに暴行され、自殺した日と同じ日であった。偶然なのか?波多野は大学同期の山城警部補の協力のもと調査に乗り出す。

「悪魔の寵児」(横溝正史氏)のオマージュ作品のような気がします。「悪魔・・・」で物足りなかった点(傑作になり得た部分?)が十分描かれ大満足です。プロットはよく練られており、シリーズもの2作品を読んだ気にさせられました(笑)。木枯し紋次郎のイメージが強く、著者の作品はまだ3冊です。かなり推理小説の特殊性にこだわりを持っていたとのことで、これから読み込んでいこうと思っています。


No.954 6点 悪魔の寵児
横溝正史
(2016/08/10 08:17登録)
金田一登場するも活躍(推理)はなく、通俗的なエログロ色の濃いサスペンス小説といったところでしょうか。本トリックは先駆的(今のところ)であり、その後、結構有名作品でも取り上げられていますね。そのオリジナリティについては、高く評価したいと思います。本格ものではないので、もっと登場人物を絞った方がスッキリした作品になったような気がしますし、探偵役の記者の感情の描き方によっては、傑作になり得たような・・・。

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