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ミステリの祭典

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傷だらけのカミーユ
カミーユ・ヴェルーヴェン警部

作家 ピエール・ルメートル
出版日2016年10月
平均点6.60点
書評数5人

No.5 7点 八二一
(2020/10/01 20:43登録)
今回視点となるカミーユが恋する男と警察官の境目で揺れ動く上、事件全体が「あやつり」構造となり、事件の構図が刻々と変わるのに舌を巻く。

No.4 7点 びーじぇー
(2020/03/06 20:19登録)
章の頭に時刻を掲げ、強盗、逃走、仲間割れという犯人たちと、監視カメラの再生、情報の収集、一斉捜査という捜査人の動きが交互に描かれ、事態の推移を克明にしていく。
物語を牽引するのは、強力なホワイ。なぜ犯人は目撃者を執拗に痛めつけ、危険をおかして搬送先の病院まで追ってきたのか?一方で、自分に好意的な親友のジャンや部下のルイも欺き、独断専行の捜査を進めるカミーユへのプレッシャーは、上司ミシャールとの摩擦でマックスに達する。事件の謎と主人公の内面の双方から、物語の緊張感は増していく。
現代という時代を映す鏡の役割を果たしている暴力描写は、先の二作にくらべ、その過激さがやや薄まった印象がある。しかし、本作が三部作の締めくくりであることを思い起こさせる怒涛の展開が待ち受ける。
本作では、過去の登場人物たちが、思いもかけなかった形で帰ってくる。読者の意表をつくどころではない大胆不敵なケレン味は、先の二作に決して見劣りしない。

No.3 7点 HORNET
(2017/05/03 21:11登録)
 相変わらずの疾走感で、読み応えがあったし読み易かった。ただ、周囲の理解を得ることもせずに(事情が事情だけに仕方がないが)単独で突っ走り、無茶をし続けるカミーユにはやきもきして、読んでいて何だか疲れる感じもあった。
 後半に明かされる真相も、特に「アレックス」を読んだ読者なら早い段階で気付くのではないかと思う。そういう仕掛けがあるので、ミステリとしても評価できる作品だが、それにしても悲しく切ない話だなあと思う。
 ただ、カミーユとアンヌの馴れ初めについて「そんなうまいことハマるか?」「そんな回りくどいことするか?」と感じたり、アンヌがこうなってしまったことの理由付けが、「それだけでここまで許されるか?」「そう思おうとしているカミーユの未練?」と感じたりして、座りが悪く感じる部分もあった。

 結局アンヌの本心はどうだったのだろう・・・?

No.2 5点 人並由真
(2016/11/23 13:27登録)
(ネタバレなし)
 事件の黒幕については本書の巻頭でいきなりある疑念が生じ、前半3分の1くらいでそれがほぼ確信に変わる。そしたら思ったとおりの真相というか、犯人だった。

 たぶんルメートルの頭の中では、母国の原書で読ませるかぎり、この大技で読者のスキをつけると思ったんだろうね。ただ日本の翻訳ミステリの大半には●●●があるので、そこで勘のいい? 多くの読者は気がついちゃいますのう(事件のなかに仕掛けられたホワイダニット的な部分は、ちょっと面白かったけど)。
 
 私的には三部作のなかでは『イレーヌ』が筆頭のベストで、本書と『アレックス』はそれなりに楽しめる、であった。まあ『アレックス』の終盤の犯人との対峙図は、シムノンの大傑作『メグレ罠を張る』と比較して、向こうの方がずっと面白かったなーと思うばかりでもあったのだが。
 
 ところで三部作完結ということで、カミーユは今後どうなるのでしょうな。思いつくことはいろいろとあるけれど、本書のクロージングのネタバレになりそうなのでここでは書かない。何らかの形でまた姿を見せてほしいけれど。

No.1 7点 蟷螂の斧
(2016/11/08 22:08登録)
裏表紙より~「カミーユ警部の恋人が強盗に襲われ、瀕死の重傷を負った。一命をとりとめた彼女(アンヌ)を執拗に狙う犯人。もう二度と愛する者を失いたくない。カミーユは彼女との関係を隠し、残忍な強盗の正体を追う。『悲しみのイレーヌ』『その女アレックス』の三部作完結編。イギリス推理作家協会賞受賞、痛みと悲しみの傑作ミステリ。」~
出だしから圧倒される展開でした。プロット勝負で警察小説の王道を行くような感じです。ついつい感情移入させられてしまいました。これがシリーズ最終作となり残念です。

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