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ミステリの祭典

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アルモニカ・ディアボリカ
エドワード・ターナー三部作

作家 皆川博子
出版日2013年12月
平均点6.75点
書評数8人

No.8 6点 虫暮部
(2024/10/18 10:58登録)
 舞台設定も登場人物もシリーズ前作より濃くなって、(なのに)読み易さもアップ。但し、読者の視点から重層的に見える幾つもの事件が、ちと未整理。特に、過去の出来事と、その情報を現在に伝える為の行動が、絡み合って必要以上に判りにくいのが惜しまれる。グラスの縁をなぞっているといきなり指先が切れる妄想に囚われるので危険だよ君達。

No.7 6点 ミステリ初心者
(2021/11/02 20:04登録)
ネタバレをしています。また、前作のネタバレにもなってしまっています。

 前作からの続編となっています。ただ、過去の話も多いのです。

 前作よりもすこし読みづらさを感じました。
 登場人物が結構多いです(笑)。現在の事件、エスターの過去事件とアルモニカ・ディアボリカについて、ナイジェルの過去についてと、大きく3つあります。共通している登場人物も多いですが、人物の総数自体も多く、読むのに苦労します。
 また、前作の登場人物だったナイジェルが死んでしまったことで、ダニエル先生やその元弟子たちが少し暗い感じになってしまい、またナイジェルとエスターの過去の話もやや悲惨で、読み進めるのに苦労しました。

 推理小説部分はというと、それほど本格色は強くなく、ミステリというよりかはミステリ的要素を含む小説のような感じです。過去話と現在の登場人物の認識をずらすことは珍しくないです。前作もそう独創的なトリックというわけではなかったのですが、物語の舞台設定とトリックがマッチしていて素晴らしかったです。しかし、本作はナイジェルの過去話が主になっているような印象で、前作より本格色はおとなしめになったと思います。

 総じて、読みやすさやキャラクターが活き活きとしていた感じも、推理小説としても、前作よりやや落ちてしまったと感じました。

No.6 7点 レッドキング
(2021/08/06 07:40登録)
1775年ジョージ三世下の英国。天使の飛翔と見まがう空中浮遊死体の胸には「アルモニカ・ディアボリカ(=悪魔のハーモニー)」の文字が。さかのぼること14年前、洞窟内で催された伝説の楽器を使った御前演奏会。そこで起きたという謎の事件。その場にいた誰もが口を噤む事件とは何だったのか。「開かせていただき光栄です」の5年後が舞台の続編で、前作からの主要人物の過去と現在、洞窟演奏会と精神病院患者達、歴史浪漫とWHAT「WHO」ダニットミステリの複雑な連結の糸が紡がれる。この続編には1点オマケつけて7点。

No.5 7点 zuso
(2020/12/24 20:00登録)
繊細で美しい楽器、悲惨な精神病院の実態など、さまざまな要素を絡め、大胆で美しい物語を紡ぎだす。年齢を感じさせない作者の創作力には感嘆するしかない。

No.4 7点 ボンボン
(2017/01/18 19:51登録)
前作「開かせていただき光栄です」は、がっちりと完成した素晴らしい作品だが、なんと、あの中で見えていなかったこんなにも分厚い物語が裏側に存在していたのか。「アルモニカ・ディアボリカ」は、「開かせて~」の続編となっているが、単純な続きではなく、前作に至る過去の話も交錯して深みを増している。
そして、前作の犯人の行く末にも、さらに確かな決着がつくので、実はここまで読んで一区切りと言えるのかもしれない。
提示される謎も魅力的だし、事件解明の探索も面白いし、幾重にも複雑に交差する登場人物の人生も巧妙に描かれている。ただ、謎解きが痛快な「開かせて~」に比べ、事件自体の悲惨さのほうに重心が傾いているので、読後にあまりミステリ感が残らない。
とにかく、ナイジェルの手記には圧倒され、胸がつぶれた。克明で静かな筆致の陰に悲鳴が聞こえ、慟哭が響くような告白。
日本では、杉田玄白が「ターヘル・アナトミア」を訳して「解体新書」を刊行した頃の話だ。英国にもスコットランドヤードはなく、ホームズもいない。はるか昔の歴史の暗闇を見せる作品。

No.3 7点 蟷螂の斧
(2016/10/15 22:28登録)
謎解きというより、前作「開かせていただき光栄です」(2011)で出奔したエドとナイジェルのその後の物語といった感じです。ナイジェルの生い立ちや、その周辺の人物の恋物語(アルモニカ=グラスハープを制作する若者とその手伝いをする娘、恋人を守るため精神病院にあえて入っている人物)が描かれています。法を守ろうとする盲目の治安判事ジョン・フィールディングの悩みが主題の一つになっていました。

No.2 7点 HORNET
(2015/02/28 15:50登録)
前作を読んでから時間が経っていたので登場人物の相関を思い出すのに時間がかかり、前半はやや読みにくかったが整理できてきてからは一気に読めた。オックスフォード郊外で発見された身元不明の死体と、その体に書かれた「ベツレヘムの子よ、よみがえれ! アルモニカ・ディアボリカ」という言葉。ジョン・フィールディング判事とダニエルの弟子たちによる真相究明から、そこにはかつての同僚、ナイジェル・ハートの生い立ち、彼が入所していた精神病院の過去、さらにその背景に当時のイギリス皇室事情が絡んでいることが見えてくる。
 18世紀のイギリスを舞台とした歴史的要素を含みながらも、ユーモアも交えた軽快なストーリー展開の魅力は筆者ならでは。このシリーズは今後も続くのだろうか。注目していたい。

No.1 7点 kanamori
(2014/01/14 22:50登録)
オックスフォード郊外の逓信大臣の所領地で天使のような死体が見つかった。いまは盲目の治安判事サー・ジョンのもとで犯罪防止新聞の編集をしている元解剖教室の弟子たちは、失意のダニエル医師を伴って発見現場に赴くが、現在の事件に14年前の謎の事件とアルモニカ・ディアボリカ(悪魔のハーモニー)と呼ばれる楽器が絡んで来て--------。

18世紀英国を舞台にした歴史ミステリ、「開かせていただき光栄です」の続編。
前回の事件から5年、ダニエル先生の私的解剖教室の5人の愛弟子のうち、例の2人は行方知れず、残りのアルたち3人は、判事と彼の姪で助手のアンの手助けをしているという設定です。盲目の治安判事ジョン・フィールディング卿の推理を中心に、彼らが判事の手足や眼となって行動するプロットは集団探偵モノの趣があります。
一方で、行方不明のナイジェルとエドも重要な役割を担っており、特にナイジェルの過去に触れたパートは、この時代の闇の部分や残酷さを峻烈に描いていて胸に迫るものがありました。
英国人作家が書いたかと思わせる緻密な時代考証と豊かな物語性は今作も健在で、主人公たちのキャラクター造形は前作を踏まえて、より魅力を増してきました。Twitter情報によると第3作も構想中とのこと。ぜひ次作はサー・ジョンと(不仲といわれていたらしい)サム・ジョンソン博士との共演を期待したいw

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