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ミステリの祭典

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蟷螂の斧さんの登録情報
平均点:6.09点 書評数:1660件

プロフィール| 書評

No.1080 4点 風の扉
夏樹静子
(2018/04/04 22:12登録)
裏表紙より~『染織工芸界の巨匠が破門中の弟子の恨みを買い、メッタ突きにされて殺された。 しかし事件はいっこうに報じられない。なぜなら、殺されたはずの男が生きていたからだ―。』~
帯には医学ミステリーとありますが、どちらかと言えばSFに近いかも。4組の患者が登場するので、中心人物がややぼやけてしまった感がする。それなりのオチはありますが、全体的に好みでない分野なのでこの評価。


No.1079 5点 死霊鉱山
草野唯雄
(2018/04/02 09:23登録)
男女5人が雪山で遭難。密室で一人一人殺されてゆく。出だしは絶好調です。性技の講義まであります(笑)。途中で一休み(伏線の回収事件等)。後半、生き残った二人がお互い犯人だと罵り合うところが楽しめます。しかし、カー氏のある有名作品を思い起こさせる点や、密室の解明に多々疑問点が残っておりこの評価とします。


No.1078 5点 甦った脳髄
草野唯雄
(2018/04/01 15:10登録)
報復譚、オカルト、異常心理、医学ホラー、猟奇妖艶、本格風味とバラエティに富んだ短篇恐怖小説集です。
「表題作」~先天的に知能発育が遅れていた14歳の男の子に、急逝した天才教授の脳汁を皮下注射して、その推移を追っていた。半月ほど経ったころ、言語の発達など明らかに変化が見られた。ところが、その男の子が思いもよらない行動に・・・。
「闇の中の棺」~義父(自然死)の棺の中に、夫(殺害)の死体を入れ、義父の死体は庭に埋めるという完全犯罪を計画。証拠もなく警察はお手上げ、そこにルンペンが証拠品を持ち込んできた。二転三転する展開。
全体的には先が読めるものが多かった。


No.1077 6点 爆殺予告
草野唯雄
(2018/03/30 16:25登録)
もっと簡単に捜査できないかとイライラするのですが、携帯電話もパソコンもまだ登場していない昭和48年の作品でした(笑)。昭和らしいお色気シーンも描かれています。犯人の残した場所「うぐいすだに」に関し、上野~山梨県身延山と転々と捜査するあたり、「砂の器」を連想させます。誘拐を裏で操作する犯人は?、この辺のミスリードや伏線は巧いと思います。


No.1076 5点 フリッカー、あるいは映画の魔
セオドア・ローザック
(2018/03/29 18:32登録)
(東西ベスト81位)紹介文より~『大学の映画科教授となったジョナサンは幻の映画監督マックス・キャッスルの謎を追いつづける。どう観てもB級としか評価できない作品の、なにがこんなに彼を惹きつけるのだろうか。その答えはフィルムの中に隠されていた!映画界の「闇」をめぐる虚実のあいだに、壮大な仕掛けをめぐらせた危険なゴシック・ミステリー。 』~

映画ファンにはたまらない本とありますが、ファンをマニアに変更した方がよいかも?。40~50年代の映画作品への言及が多いためです。全体的に評判は良いようですが、ミステリー的には弱い(殺人は起こりません)。またテンプル騎士団、異教徒カタリ派などの物語が挿入されますが、その関連性がミステリーファンには読めてしまう?と思いますのでこの評価としました。


No.1075 6点 生ける屍の死
山口雅也
(2018/03/28 22:32登録)
(東西ベスト15位)長いっ!(笑)。読まなければならないとずっと頭の中にあった1冊で、やっと手に取りました。ユーモアミステリーでもあり、SFでもあります。死者が蘇るという特殊設定の中での殺人事件。犯人の設定、動機が巧い。


No.1074 5点 十和田・田沢湖殺人ライン
深谷忠記
(2018/03/23 22:52登録)
ラストのどんでん返しは初物で面白かった。しかし、提示された謎のメッセージや探偵役に魅力がなかったのが残念な点です。


No.1073 5点 悪人は三度死ぬ
大谷羊太郎
(2018/03/22 13:30登録)
4年前、推理作家の浅井はある事件ついて他殺説を唱えた。その犯人として推定した人物・櫛田が今度は殺された。櫛田はホテルの部屋に入ったところを別件で見張っていた刑事に確認されていた。外にも刑事が張り込んでいた。彼の部屋に電話が交換手経由でかかってきた。その電話で話した相手は3人いる。しかし、櫛田はホテルの部屋から消失し、ホテルから遠く離れた場所で死体となって発見された。電話の相手(利害関係はない)は櫛田本人に間違いないと証言した。密室からの人物消失という謎で、前半は引っ張て行くが、密室トリックはあまり感心したものではなかった(苦笑)。その他のトリック自体もそれほどではないが、犯罪構造は面白かった。


No.1072 7点 聖母
秋吉理香子
(2018/03/17 22:38登録)
「この子を、娘を、守ってみせる」そのためなら何でもする。という母親の言葉。その意味がラストで浮かび上がってくる構成はお見事。○○があるという前提で読んでいたのですが、すっかり騙されました。8点を献上したいのですが、同じ○○テーマの先行作品(2013年)があり7点どまりとしました。


No.1071 6点 黒の組曲
深谷忠記
(2018/03/17 11:27登録)
娘の手元に父親の手記と、その友人による小説「静寂の秘密」があった。父の手記には父親の兄の自殺と兄の友人の自殺について書かれてあった。一方、小説「静寂の秘密」も登場人物の名こそ違え、その二人の死に関する内容である。小説は前半だけで、後半の真相、二人の死は自殺ではないとする部分は未発表であった。父の調査によると、不正入学が絡んでいるようである。しかし、小説の方ではそのことに全く触れられていない。真相は?・・・。作中作があり、若干混乱します。作中作「静寂の秘密」の真相は成る程と思えるものでした。また、ラスト、小説「黒の組曲」自体にあるトラップをかけるところが楽しめます。


No.1070 5点 軍旗はためく下に
結城昌治
(2018/03/13 18:09登録)
(再読)紹介文より~『陸軍刑法の裁きのもと、祖国を遠く離れた戦場に処刑された帝国軍人たちの知られざる真実と非情を追求した力作。直木賞受賞作。』~
本サイトに登録されていたので再読してみましたが、ミステリーとは言えないと思います。5編の短編で構成されていますが、「敵前党与逃亡」が唯一ミステリーっぽい。不名誉な罪で軍人恩給を受けられない遺族関係者が、真相を探って当時の関係者を訪ね歩くというもの。終戦まじか、食料難での人肉食などのエピソードが描かれています。


No.1069 5点 夢の10分間
豊田有恒
(2018/03/11 20:43登録)
(再読)25篇のショートショート。話がどんどんエスカレートしてゆき最後には爆発するというパターンが多い。
「美人コンサルタント」~豊満な女性には、楊貴妃やインドの女神像の例を持ち出し、あなたは美人と言って持ち上げる。目や鼻が小さい女性に対しては、平安時代にはそれが美人だったのだという。ところが、どう褒めていいか分からない女性が相談に訪れた・・・(大爆笑もの)
「逆上コンサルタント」~テーブルをひっくり返しなさい、逆上しなさいとアドバイスしていた俺。3年前に俺に金を巻き上げられた男がやってきた。その男は3年間逆上の訓練をしてきたという。何とか男に帰ってもらったのだが、看板は「○き○としコンサルタント」と変更せざるを得なかった。
「用語コンサルタント」~TV台本などの不適切な差別用語をチェックし、適切な言葉に入れ変えるのが俺の仕事。そんな俺に対し、用語だけを変えても差別はなくならないと、判り切った正論を言ってきた奴がいた。俺は頭にきて「○△×*!?」と叫ぶ。
ユーモア系からSF系までバラエティに富んでいます。


No.1068 6点 恐怖特急
アンソロジー(国内編集者)
(2018/03/10 19:17登録)
(再読)22篇の短篇アンソロジー。うち8篇のあらすじ。
①「大望ある乗客」中井英夫~バスに乗った乗客5人、彼らはそれぞれ殺人計画を実行するために目的地を目指していたが・・・(どんでん返し)
②「人の顔」夢野久作~幼子は天井や壁に人の顔が見えるという。ある日、父親にあそこにお母様の顔が見えるという。そして隣に・・・(無邪気な証言)
③「死の投影」大下宇陀児~死刑囚の画家Bの告白。師匠を殺害した罪であったが、実はその前に2人を殺害していた。何故殺害してしまったのか・・・(1枚の絵にその因果関係が)
④「箱の中のあなた」山川方夫~女は旅の男に写真を撮ってくれと依頼される。もっといい景色の所があると案内したところ男に襲われる。彼女は男を崖から突き落した。彼女の部屋にはその男の写真が飾られている。更に・・・(サイコ系)
⑤「乗越駅の刑罰」筒井康隆~小説家は駅員に無賃乗車を咎めらた。彼の弁明の言葉尻をとって駅員はいびり出す。もう一人の駅員が来て子猫のスープを作り始めた。金をつかませ逃げようとするが、更に怒りにふれ猫スープを飲まされてしまう。そこへ子猫の親と名乗る猫男が現れた・・・(不条理)
⑥「エナメルの靴」佐野洋~デパートの火災に巻き込まれた妻。身元確認はエナメルの靴を履いていたということだけであった。妻の妹は下駄箱にエナメルの靴を発見した・・・(本格的)
⑦「剃刀」志賀直哉~剃刀の名人である芳三郎は風邪をおして仕事場に立った。しかし、手元が狂い客の顔を傷つけてしまった。血を見た芳三郎は・・・(ホラー系)
⑧「さよなら」山田風太郎~昭和30年、ある町でペスト菌を持った鼠が発見され住民は次々と逃げ出した。しかし、町は汚染されていなかった。ある人物がペスト菌を鼠の死骸にまぶしただけであったのだ。退職した刑事は、この街並みが以前火災で消失した街並みにそっくりなことに気づく。当時、火災の中、男女二人組の犯人を捕らえた。そして女は発狂していたことを思い出した。ある男は何の為にペスト菌を・・・(愛の物語)
「二癈人」江戸川乱歩は「江戸川乱歩傑作選」で書評済み。ベストは③「死の投影」かな。


No.1067 4点 幽体離脱殺人事件
島田荘司
(2018/03/05 17:26登録)
本作は「高山殺人行1/2の女」と同様に、セバスチアン・ジャプリゾ氏の「新車の中の女」(1966)のオマージュと思います。皆さんおっしゃる通り、解決篇が著者とは思えないくらい、あっさりしたものでした。その点が残念。


No.1066 6点 ネメシスの使者
中山七里
(2018/02/01 21:31登録)
初老の女性の刺殺体が発見され、現場には「ネメシス」という血文字が残されていた。彼女は通り魔事件の犯人の母親であった。「ネメシス」とはギリシア神話に登場する復讐の女神である。被害者家族による復讐劇なのか?・・・。死刑制度、被害者家族と加害者家族の問題を扱った社会派色の強い作品。一筋縄で終わらない点は著者らしいが、そろそろエンタメ系の作品を読んでみたい気もする。


No.1065 6点 女相続人
草野唯雄
(2018/01/23 20:25登録)
裏表紙より~『不治の病に冒され、死を目前にした富豪大倉政吉は、関係者を病床に呼び集めた。彼の逆境時代に捨てた娘を探り出し、遺産の三分の一を譲りたいというのだった。直ちに捜索が開始された。だが巨額の遺産の行方に重大な影響を及ぼすとあって、さまざまな策謀がくりひろげられた。そして、政吉のいう特徴を備えた娘が、二人発見されたのだ。しかもその前後から、連続殺人があいついだ。卓抜な構想と大胆なストーリー展開で描く長編推理の傑作。』~
幻影城ベスト99(1978発表)の84位にランクインした作品。倒叙方式(但し、犯人名は隠されている)で犯行を描写することや、ラストの章「捜査の限界」でオーソドックスな展開とはならないよう工夫しているなど、著者の意気込みを感じることが出来ました。登場人物の夫々の思惑が交差する点や、関係ないような事故が伏線となるなど、予想以上に楽しめました。


No.1064 6点 0.096逆転の殺人
深谷忠記
(2018/01/21 16:53登録)
本格ミステリ・フラッシュバックで紹介された一冊。アパート(密室)でガス中毒死。ガス栓が開けられた時間及び死亡推定時間に完全なアリバイがある。アリバイ崩しがメインです。推論を重ね、やがて、これで間違いなしと思われるものも、結局瑕疵があり崩れない。そんな展開が続きます。ユニークなアリバイトリックで、題名もそれに因んでいました。


No.1063 5点 悪いものが、来ませんように
芦沢央
(2018/01/18 10:43登録)
読後の感想は「うーん、勿体ない」でした。著者は、○○より「真相」に重点を置いて、順序を○○、真相としたのか?。これを逆にしていたら、非常に効果的であったと思います。最後の一行で説明できるのに・・・。プロローグを読み直してみたが、やはりアンフェア―であるという思いは拭い去れなかった(苦笑)。


No.1062 4点 双生児
折原一
(2018/01/16 21:16登録)
裏表紙より~『安奈は、自分にそっくりな女性を町で見かけた。それが奇怪な出来事の始まりだった。後日、探し人のチラシが届き、そこには安奈と瓜二つの顔が描かれていた。掲載の電話番号にかけるとつながったのは…さつきは養護施設で育ち、謎の援助者“足長仮面”のおかげで今まで暮らしてきた。突如、施設に不穏なチラシが届く。そこにはさつきと瓜二つの女性の願が描かれていて…“双生児ダーク・サスペンス”。』~
短い章で、人物の視点が変わり、複数の話が進行し、過去と現在が行き来する。よって読者はいつも通りに混乱するのである(苦笑)。トリックは二つ。メイントリックは、著者としては初めて?と思うが、う~ん、どうなのかなといったレベル。登場人物の一人が二重人格らしい設定なのだが、効果的ではなかった。残念。


No.1061 9点 カラマーゾフの兄弟
フョードル・ドストエフスキー
(2018/01/15 18:14登録)
(ネタバレあり)「罪と罰」はアメリカではミステリーとしても読まれています。アメリカ探偵作家クラブが選んだミステリベスト100の24位にランクイン。高野史緒氏の「ミステリとしての『カラマーゾフの兄弟』」「カラマーゾフの妹」を読むと「罪と罰」よりも本作の方がミステリー度は数段上ということがわかります。今回、サイトに登録されたのを機にミステリー面(犯人は誰か)を中心に拝読。高野史緒氏は○○を真犯人としています。さて、どうなのか?・・・。なんとなんと、推理するまでもなく序文にて○○が主人公であると著者は明言しているではありませんか。本作(第一部)では○○は決して主人公ではありません。よって第二部(本作の13年後)で○○が主人公となり全貌が明らかにされることになるわけです。つまり、必然的に○○が犯人となる?。ところが、著者が死亡し、第二部は書かれることはなかった。もし完成すればミステリー的には「倒叙式の完全犯罪」ものとなったのかも?。一般的に、犯人は△△の暗黙の指示で●●が実行したという解釈のようです。しかし、著者はその点非常に曖昧にしています。当然です!○○が犯人なのですから(笑)。その点の検証。犯行時、ドアが開いていたか否かが論点。逮捕された◇◇(冤罪)は「窓は開いており、生きている父を見た。ドアは閉じていた」部屋に入っても殺してもいないと主張。その後、現場から逃げる◇◇を見た召使「窓は開いており、ドアも開いていた」。両者とも嘘をつく必然性はない。よって、アリバイのない○○がドアを開けた可能性がある。●●は自分が犯人と告白し自殺する。犯行時、●●は癲癇を起こし寝ていた。仮病というが、犯行後わざわざうめき声を立て看護人を起こす必要はない。ドアは被害者に開けてもらったというが、時間的経過の観点からドアは開いていたという証言と矛盾。凶器の処理、返り血がないなどの不審点。遺書に自分が殺したと書いていない。現金が封筒に入っているのを知っているので、封筒を破り金をとりだす必要もない。等々●●が犯人とする根拠は乏しい。一方、○○が犯人とする根拠。○○のアリバイはない。2日前○○は”闘士”になったと明言。父が母の話をすると、眼が燃え唇が震えだし癇癪を起した。このあたりが動機となるような気がする。第二部の題名が「偉大なる罪人の生涯」?も気になる。一番関心を持った記述は「母屋は中二階のある平屋建てで、隠し部屋があり、思いがけない階段もある」という点です。どんな意図があってこんなのことを書いたのか?。犯人が隠れていたとの大伏線では???などと妄想が膨らみました。

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