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ミステリの祭典

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蟷螂の斧さんの登録情報
平均点:6.09点 書評数:1660件

プロフィール| 書評

No.1180 7点 恐怖小説キリカ
澤村伊智
(2019/02/20 20:06登録)
著者の「ぼぎわんが、来る」が日本ホラー小説大賞を受賞。彼の妻・霧香(キリカ)や仲間から祝福される様子などが描かれ、また、ゲラの校正から校了までの苦労話等々、私小説かのような展開です。出版社、選考委員も実名で登場しますし。そして第一部のラストで事件が起こります。この第一部ではある仕掛けが施してあるのですが、勘のいい読者は途中でわかってしまうかも。それはプチサプライズ。第二部では妻・霧香の視点で物語が進行します。ところがまさかのルメートル的展開に。さらに虚構か現実か?読者はけむに巻かれることに・・・。前作品のネタバレがあるので発表順に読んだ方がいいですね。そして、この作品の読者は上から目線で「時間の無駄」などと辛辣な投稿(批評)はできないようになってしまう?!(笑)。


No.1179 6点 重婚
夏樹静子
(2019/02/18 17:38登録)
裏表紙より~『清水市の三保の松原の砂地で船越広勝の死体が発見された。死因は一酸化炭素中毒。船越は旅行会社社長の四十二歳、二年前、バーに勤める玲美を入籍したが、実際は先妻の寿子の同意を得ないで離婚届を出しただけの重婚であった。玲美には恋人がおり、また寿子には船越の生命保険という動機があった。しかし、犯行時間のアリバイは二人ともに崩せない―(「重婚」)』~

7作の短篇集。誘拐もののトリックの先例があるということで拝読。後発の作品はそのトリックを応用したのではなく、まったく本作があるのを知らなかったようです。まあ、いずれにせよ先例には敬意を表したいと思います。表題作他、意表を突くようなアリバイものの作品があり楽しめました。


No.1178 7点 嘘ですけど、なにか?
木内一裕
(2019/02/16 17:26登録)
「BOOK」データベースより~『水嶋亜希、三十二歳独身。文芸編集者としてトラブル処理に飛び回る日々。仕事を頑張ったご褒美のように、ある日高スペックのエリート官僚と偶然出会い恋が始まる予感が。だが新幹線爆破テロ事件が発生すると、明らかに彼の態度が怪しくなっていく―私、騙されてる?痛快でドラマティックな反撃が始まる!』~

トラブル回避のためなら平気で嘘をつく亜希。偶然出会ったエリート官僚は殺人者???。クライム・コメディというのかな?。スピーディーな展開、爆笑もありで飽きさせない。キャラクターがお気に入りなので甘めの採点。(*表紙は著者による鉛筆画)


No.1177 5点 RANK
真藤順丈
(2019/02/14 23:02登録)
裏表紙より~『監視カメラのネットワークによって国民に絶えず順位を付ける制度―『RANK』によって管理された近未来・日本。『RANK』の圏外に落ちた人間は抹殺される。国家が企む本当の目的、そして隠された真相は!? 社会の崩壊を前にして、人間の未来と希望を描く物語。』~

祝!直木賞受賞、驚愕の真相が待ち受ける、新感覚ミステリーとの帯に釣られました(苦笑)。2009年の発表で2019年を描いている作品です。監視システムにリアリティが感じられないのが惜しいところ。


No.1176 6点 作家刑事毒島
中山七里
(2019/02/11 09:34登録)
(ネタバレあり)
5篇の短篇集。ミステリー的には、完全なアリバイものと意外な犯人ものが楽しめた。共犯は好みではないが、共犯を逆説的な観点から捕らえた物語は新鮮に感じられた。また、サイン本の仕組みや、初版、第2刷版が作家にとってどういう意味を持っているのか等の専門的なディテールから真相を導き出す作品もあり、勉強になりました。なお、本作は「毒島」の名の通り、全篇ブラックユーモアに満ち溢れています。ある女性書評家が登場。彼女は書評なるものを始めたが至極簡単で、自己顕示欲を満足させられる。現実の世界では自分の意見を聞いてくれる者など誰もいない。しかしネット書評でベストセラーをこきおろす時だけは世界の女王になったような優越感を味わうことができる。点数をつけるのは裁判官になったような陶酔を覚える。しかも図書館から借りているので投資額はゼロだ。耳が痛い(爆笑もの)。


No.1175 8点 あした天気にしておくれ
岡嶋二人
(2019/02/09 14:21登録)
身代金受け渡しのトリックに前例があり、江戸川乱歩賞を逃したとのこと。惜しいですね。本作の肝は、倒叙形式からフーダニットへの展開にあると思うのですが・・・。”私が誘拐計画を立てた二日前に、第三者がその計画を予知することができるのか?”という謎は秀逸です。「前例」はリスペクトしますので、早速読まなければ(笑)。


No.1174 6点 チャーリー・チャンの追跡
E・D・ビガーズ
(2019/02/03 23:54登録)
エラリー・クインの探偵小説批判法で評価された作品ということで拝読。その評価は~プロット8、サスペンス9、意外な解決7、解決の分析6、文体8、性格8、舞台7、殺人方法6、手掛り7、フェアプレイ6、計72。 佳作。普通の水準は遥かに突破している。ビガース氏はすべての点で平均のとれたストーリイを書いた傑れた作家であった。(50平均、60やや佳作、70佳作、80秀逸、90クラシック)~


1928年の作品なので、やむを得ないのかもしれませんが、やや中だるみでスピード感に乏しいような・・・。中国のことわざ(論語など?)が結構出てきます。そのたび意味を斟酌するので、一時的に立ち止まってしまうのが難(苦笑)。ずっと、モヤモヤしていたものが、ラストで晴れるといった感じですかね。


No.1173 6点 能面検事
中山七里
(2019/01/31 16:44登録)
新しいキャラクター「不破検事」の誕生。彼は何事にも表情を変えない能面検事と言われている。他シリーズの「御子柴弁護士」(沈着・冷静)を更にバージョンアップしたような感じですね。こちらもシリーズ化されることが決定しているようです。本作は不破検事のキャラクターを前面に押し出している点や、検察官補佐の惣領美晴の成長物語でもあるので、お得意のどんでん返し度は「まあ、まあ」といったところです。ファンとしては被告人「有働さゆり」(カエル男に登場)、弁護士「御子柴礼司」、検事「不破俊太郎」の物語を読みたい!!!(笑)。


No.1172 7点 黙示録殺人事件
西村京太郎
(2019/01/29 20:12登録)
裏表紙より~『“現代の狂気”をダイナミックに描き出した力作推理長編』~

目的達成のためには自殺をも推奨するという狂気(洗脳)が描かれている社会的な要素の強い作品(1980年)。洗脳されてしまうと何を言っても無駄ということがよくわかります。恐ろしいことです。


No.1171 5点 盗まれた都市
西村京太郎
(2019/01/27 19:16登録)
設定(洗脳)が数百人の村であれば理解できますが、人口十万都市となるといかがなものか?という気持ち。SFチックな気分で読まざるを得ず、残念でありました。ドイツ、日本以外の国、例えばアメリカを舞台にした方がよかったのかも?。


No.1170 8点 監禁面接
ピエール・ルメートル
(2019/01/25 15:40登録)
「BOOK」データベースより~『重役たちを襲撃、監禁、尋問せよ。どんづまり人生の一発逆転にかける失業者アラン、57歳。企業の人事部長だったアラン、57歳。リストラで職を追われ、失業4年目。再就職のエントリーをくりかえすも年齢がネックとなり、今はアルバイトで糊口をしのいでいた。だが遂に朗報が届いた。一流企業の最終試験に残ったというのだ。だが人材派遣会社の社長じきじきに告げられた最終試験の内容は異様なものだった。―就職先企業の重役会議を襲撃し、重役たちを監禁、尋問せよ。重役たちの危機管理能力と、採用候補者の力量の双方を同時に査定するというのだ。遂にバイトも失ったアランは試験に臨むことを決め、企業人としての経験と、人生どんづまりの仲間たちの協力も得て、就職先企業の徹底調査を開始した。そしてその日がやってきた。テロリストを演じる役者たちと他の就職希望者とともに、アランは重役室を襲撃する!だが、ここまでで物語はまだ3分の1。ぶっとんだアイデア、次々に発生する予想外のイベント。「そのまえ」「そのとき」「そのあと」の三部構成に読者は翻弄される。残酷描写を封印したルメートルが知的たくらみとブラックな世界観で贈るノンストップ再就職サスペンス!』~

翻訳は2018年ですが、発表は2010年で、「その女、アレックス」(2011年)より前の作品です。物語は3部構成で、アレックス同様、先の読めないような展開となっています。サスペンスもののミステリーとして十分楽しめますが、作者の狙いは中高年失業者の悲哀を描くことにあったような気がします。


No.1169 7点 探偵の秋あるいは猥の悲劇
岩崎正吾
(2019/01/20 15:06登録)
「Yの悲劇」の本歌取りということで拝読。同書を読んでいなくともOKですね。4部作を読んでいれば、ラストで、さらにニヤリとすることができると思います。ミスディレクションがあからさまで楽しい。といっても犯人は分かりませんでした。『猥』の悲劇~なるほど、うまい!。


No.1168 6点 ゼロ計画を阻止せよ
西村京太郎
(2019/01/17 20:13登録)
1977年の作品。同年発表に「華麗なる誘拐」があります。同じ誘拐ものですが、本作の方がやや下回るかな?といった印象。といっても、スピード感はあり、大胆な発想など読みごたえは十分ありますね。まあ、左文字探偵の「読み」が当たり過ぎの嫌いもありますが・・・(笑)。


No.1167 8点 TAS 特別師弟捜査員
中山七里
(2019/01/15 15:18登録)
~「ねえ。慎也くん、放課後ヒマだったりする?」演劇部のアイドル・楓から突然声をかけられたことで、慎也の胸は高鳴った。その彼女が校舎の3階から転落死してしまった。慎也は、楓が所属していた演劇部に入部し、楓の周辺人物に接触を図ってゆく。~

題名からは想像もつかない、コテコテの青春ミステリーです。事件よりも演劇にのめりこんでしまう主人公に好感を持ってしまいました。転落死は、事件ではなく実は事故であったというハッピーエンドを望んでしまっている自分がいました(笑)。著者が、そんな甘っちょろい結末を用意するはずはないのですが・・・。他の書評で、触れている人はいないですが、私はハウダニットとその大伏線に感心し高評価としました。


No.1166 4点 虹の歯ブラシ 上木らいち発散
早坂吝
(2019/01/11 20:08登録)
バカミスと多重解決が好みであれば、評価は高くなるのかな?といった印象。「青」の章~葛飾北斎の春画「蛸と海女」を思い起こさせてくれ、まずまずの評価。「紫」の章~らいちはコピーの現物を見ていない。にもかかわらずトリックを見破ってしまうのはいかがなものか。写真に興味がある等の伏線が欲しいところ。なお、藍川刑事は援交費をどのように工面しているのか?気になって仕方ない(笑)。「藍」の章~一見、指紋は逆になりそうだが、実はその可能性は少ないのでは?。「赤」の章~お遊びなんだろうけれど、理屈をこねくり回されただけでピンときませんでした。


No.1165 6点 札幌・オホーツク 逆転の殺人
深谷忠記
(2019/01/10 11:33登録)
著者の言葉に「今回は特に伏線に意をそそいだつもりなので、読者の挑戦を期待したい。」とあります。著者はある事柄にかなりしつこく言及していましたので、それでは伏線とはならず、読者に逆読みされてしまうのでは?と心配になりました。結果(真相)はその通りで、ドンピシャ(笑)。最近読んだN氏の作品で、同種のトリックがありましたが、そちらは読者が読み過ごししてしまうのではないかと思えるほどあっさりしたものでした。著者の性格が垣間見えた感じがしましたね。本トリックは、今のところ先駆的なものでGood。


No.1164 5点 殺人者は眠らない
ウィリアム・カッツ
(2019/01/06 09:49登録)
裏表紙より~『不眠症に悩むアンは向かいに住むマークに好意を抱いく。しかし、マークの正体は連続殺人鬼。「見張られている」と疑うマーク。なんとか始末しなければ。だが、マークの真意を知らず、アンは一人勝手な恋にのめり込んでいく。』~


ラストの方はサイコ系でお気に入りなんですが、途中が何とも言えません。本来ハラハラドキドキするはずが、主人公アンのお馬鹿さ加減にイライラ(苦笑)。ブラック・コメディ的要素があるので、もっとドタバタ系にした方が楽しめたかも?。


No.1163 5点 ブルーローズは眠らない
市川憂人
(2018/12/28 20:36登録)
謎が次々と提示されるので、前の謎をすぐに忘れてしまいます(苦笑)。フー、ホワイ、ハウダニットとサービスのてんこ盛りですね。動機、密室、○○殺人、時間軸・人物に係るトリックなどと欲張り過ぎ?の感も。結局、何がメインなのか、的を絞れないままの読書となってしまいました。なお、○○アレルギーがあり、他作品の評価と同様に減点となりました。


No.1162 5点 フェイスメーカー
ウィリアム・カッツ
(2018/12/22 10:08登録)
事故で顔面に重傷を負った女性記者。彼女の顔は天才形成外科医により見事に修復された。しかし、彼女と全く同じ顔の女性がいることが判明。その女性は行方不明になっていた。女性記者は真相を探りだそうとするが・・・。

恐怖小説としての展開は楽しめました。読者としては動機が気になるところですが、何となくうやむやとなってしまったのが残念。


No.1161 7点 下り特急「富士」(ラブ・トレイン)殺人事件
西村京太郎
(2018/12/16 13:46登録)
ミッションインポッシブルのような騙し合い。テンポもいい。題名(ラブ・トレイン)も気に入っているのですが、初刊のカッパ・ノベルスだけで、のちの徳間文庫ではカットされています(涙笑)。暗号の謎解きや、大仕掛けな真相は十分楽しめました。

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