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ミステリの祭典

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首無館の殺人
ツユリシズカシリーズ

作家 月原渉
出版日2018年09月
平均点6.20点
書評数10人

No.10 7点 虫暮部
(2023/08/10 12:25登録)
 強引な真相だとは思ったが、それを踏まえて再読すると俄然面白くなる。そういう手続きを要する作品もアリだけど、そこまで一読目で網羅するように書けていたら凄かっただろうなぁ。

 シンプルながら意表を突かれたのは “堀の渡り方”。
 館の見取図が無い → 中庭の建築物について、物語の半ばまで読者に対して隠されているわけで、そのネタバレになるからでは。

No.9 6点 好兵衛
(2019/10/24 21:54登録)
昔ながら?のこてこてな雰囲気がたまりません。
主人公が記憶を失っており、どこか幻想小説的でもあります。
ただ、雰囲気がいいだけあってもうすこしおどろおどろしさというか、味付け。館や一族の因果などボリュームをプラスしてもよかったんじゃないかな?と思います。この時代物によくある粘り付く感じというか。
思ったより、殺人がサクサクと進み。残酷な殺し方なのに、さっぱりとした人々の反応のコントラストが少し違和感を感じました。話しのテンポがサクサクなのかな?探偵もサッパリというか機械的。あくまで、好みの話です。

何がやりたかったか、と言う部分が目を引き斬新で面白かったです。
小作りではない、意欲作。ひとつの作品を通してこれをやってやろうという一貫性が好きです。首無しでここまで勝負!みたいな。
新しい作品みたいなので、この古い時代の雰囲気の続編を楽しみにしてます。

No.8 7点 ミステリ初心者
(2019/06/28 19:17登録)
ネタバレをしています。

 昔ながらの、コッテコテの推理小説要素満載で、満足しました(笑)。孤島、記憶喪失の主人公、首無し死体、空飛ぶ首の怪奇、謎の幽閉された人…最高ですね…。これだけの要素を詰め込んだにもかかわらず、どれもしつこくなく、非常にテンポ良く読めました。横溝作品のような雰囲気がありましたがどうでしょう。
 首無し死体というと、その死体と犯人が入れ替わっていて、死んだとみられた人が犯人…という展開はよくありますが、この作品はそれを逆手に取り(?)、さらにその前に全員入れ替わっているという構成が面白かったです。
 私は、空飛ぶ首の怪奇の正体がなんとな~く予想できたので、大体の展開は読めました。ただ、フーダニットや、アリバイトリックと楽しむ類の作品ではないので、当てたことよりかはそれが好きかどうかだと思いますが。

 好みで無い点をあえて挙げるとすれば、この作品ならではの強い個性はなかったように思えます。昔ながらの展開は大好物なのですが、それにプラス大トリックの個性が加われば8~9点でした(笑)。
 今見たら、シリーズものなのですね! シズカさん探偵物の

 ※追記 他の方も書かれていますが、絶対館図がほしいですよね(笑)。 無いから、用意できないトリックがあるのかと思いましたが、あっても困りませんよね?

No.7 5点 蟷螂の斧
(2019/04/07 17:44登録)
首なしの理由は好印象で+1、しかしメインプロットに既視感あり(黒〇〇〇惨〇)で-2。表紙からするとラノベではないと思いますが、内容はややラノベ風。特に探偵役。

No.6 6点 E-BANKER
(2019/03/10 21:38登録)
「使用人探偵シズカ~横浜異人館殺人事件」に続いて発表されたシリーズ第二長編。
新潮文庫NEXのために書き下ろされた作品。
2018年の発表。

~没落した明治の貿易商、宇江神家。令嬢の華煉は目覚めると記憶を失っていた。家族がいて謎の使用人が現れた。館は閉ざされており、出入り困難な中庭があった。そして幽閉塔。濃霧立ち込める夜、異様な連続首無事件が始まる。奇妙な時間差で移動する首無死体。猟奇か怨恨か。戦慄の死体が意味するものとは何か。首に秘められた目的とは?~

もうすぐ平成の世も終わるというこのご時世に、こんな大時代的な設定を出してくるとは・・・
この作者何奴?
っていうことで「首切り」である。
探偵役となるシズカ自身が作中で「首切り」=「入れ替わり」というロジックを読者にちらつかせます。
これが本作のプロットの肝となるのは当然で、読者は入れ替わりを意識しつつも、その裏や裏の裏まで想像することになる・・・

で、終章に明かされるサプライズ感満載の真相。
他の方も触れられている首切りの理由については、これは・・・要は戦国時代の武将と同じような発想ってことか?
でも、しかし・・・これはいくらなんでも無理筋だろう。さすがに荒唐無稽すぎて、どうにも消化不良だった。
あと、濃霧の中を移動する「首」の真相。
まさかと思ったが、最も単純なやつだったとは・・・(最初は例の島荘振り子トリックかと考えてた)

動機を含めて事件の構図自体をガラっと変えてみせる仕掛け自体は面白い。
ただ、これを成立させるにはこのボリュームでは無理が目立ちすぎる。
いきなり記憶喪失を持ち出されると、ここに仕掛けがあることもすぐに察してしまうしなぁー
まぁでも、その心意気や良しだ。
2019年の世でこんな作品を書く作者、発売してくれる出版社に乾杯!
前作も未読なので、読んでみようと思います。

No.5 6点 makomako
(2019/03/09 14:02登録)
シズカシリーズ第2作。
 前回は本格物としての雰囲気は十分でしたが、犯人が比較的簡単にわかってしまい興ざめ?でしたが、今回はそうはいかない手ごわさでした。
 相変わらず不気味で雰囲気は十分です。謎もそれなりにあり、首が空中浮揚するという見え見えのトリックもありましたが、メインの謎は意外なものでした。
 よほどの名探偵でもなかなか真相を見抜けないでしょう。まあこのお話の途中までで答えを見抜くのは無理かもしれませんが。
 私は本格物が好きなのでかなり楽しめました。
 エピローグから見るとシズカさんはこれでおしまいなのでしょうかね。
 変わったキャラクターなのでもう一作ぐらい登場されてもよさそうですね。
 

No.4 6点 名探偵ジャパン
(2019/02/05 08:30登録)
確かにメルカトルさんが書いていらっしゃるように、事件の内容やスケールに比してテンポがよすぎるきらいがあります。ミステリは長ければいいというわけでは決してありませんが(逆に「その程度の事件でだらだらと長すぎだよ」感じる作品もありますので)、この作品で起きる事件の規模でしたら、もっとそれなりの重厚さ、じっくりと読ませる展開を用いるべきだったように思います。何だかダイジェストみたいな印象でした。
探偵の喋る、分かったんだか分からないんだか分からない(笑)煙幕みたいな逆説論議よりも、雰囲気作りにページを割くべきだったように思います。

そしてもうひとつ気になったのは、この手の作品でしたら館の見取り図は入れるべきではないでしょうか。そう複雑な構造でもないため、すぐに頭に思い描くことは可能ですが、それでも見取り図のあるなしでは、雰囲気が全然違ってきます。私は見取り図がないことを不審に思い、何かしらの大がかりな物理的トリックが仕掛けられているのかと思っていました。
とはいえ、メイントリックと、それを補完するある詐称が最後に見事に繋がり気持ちよく決まっていて、本格としては申し分ない出来映えでしょう。それだけに惜しい作品に映りました。

No.3 7点 まさむね
(2019/02/02 21:20登録)
 純粋に面白かったですね。クローズドサークルに連続首切り殺人、主人公の令嬢は記憶喪失という、何とも魅力的(?)な設定。展開のテンポもよく、雰囲気もあります。使用人探偵「シズカ」もカッコいい。首を切断する理由が独創的なのですが、個人的には、事件全体の真相の方が記憶に残りそう。無駄に水増しせず、分量をこの程度に抑えたことにも好感。

No.2 6点 nukkam
(2018/12/29 20:49登録)
(ネタバレなしです) 2018年発表のツユリシズカシリーズ第2作の本格派推理小説です。チェスタトンのブラウン神父の逆説のごとく、シズカの推理は説明すればするほど混乱してしまいます(笑)。まあそこが普通の本格派と違っていて面白いと感じる読者もいるでしょうけど。新潮文庫版で300ページに満たないボリュームに記憶喪失の主人公、いわくありげな一族、クローズド・サークル状態、首切り殺人と実に色々と詰め込んでおり一気に読み切りました。首切りの理由がなかなか斬新、そしてそれ以上に印象的だったのが動機につながるとてつもない秘密です。まあこの秘密は読者が推理するに十分なデータを与えているようには思えませんが、私は驚きのあまり不満を感じませんでした。

No.1 6点 メルカトル
(2018/10/10 22:06登録)
没落した明治の貿易商、宇江神家。令嬢の華煉は目覚めると記憶を失っていた。家族がいて謎の使用人が現われた。館は閉されており、出入り困難な中庭があった。そして幽閉塔。濃霧たちこめる夜、異様な連続首無事件が始まる。奇妙な時間差で移動する首、不思議な琴の音、首を抱く首無死体。猟奇か怨恨か、戦慄の死体が意味するものは何か。首に秘められた目的とは。本格ミステリー。
『BOOK』データベースより。

テンポよくストーリーが展開されるのはいいですが、連続して陰惨な殺人事件が起こるのだから、もう少しそれらしい雰囲気とか空気感が欲しかったですね。そこが一番悔やまれます。それさえクリアしていれば7点献上するに吝かではなかったです。

使用人探偵シズカの徐々に事件の核心に迫っていく推理は回りくどく、意味不明な点が多々ありますが、最後にはそれも納得のとんでもない真相が待っています。
伏線はそれほど多くはありませんが、主人公の言動や心理状態、宇江神家の人々のよそよそしさなどから、勘のいい読者はこの絡繰りに中盤で気づくかもしれません。読みながら挑戦してみるのも一興でしょう。

首を切断する理由、目的は他に類を見ないものだと思います。少なくとも私の読書歴の中では初めてです。顔を潰された死体が混じっているのもミソです。
そして『首無館の殺人』という仰々しいタイトルは伊達ではないと断言しても間違いとは言い切れません。

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