チェインドッグ 改題『死刑にいたる病』 |
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作家 | 櫛木理宇 |
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出版日 | 2015年07月 |
平均点 | 6.67点 |
書評数 | 6人 |
No.6 | 7点 | 鷹 | |
(2024/07/23 09:50登録) 残酷な描写は苦手ですがミステリーまたは哲学(?)として楽しめました。 |
No.5 | 6点 | パメル | |
(2022/11/10 08:11登録) かつて優等生だった雅也は、今はさえない法学部の学生として鬱屈した孤独な日々を送っている。そんな彼に一通の手紙が届く。差出人は榛村大和。二十四件の殺人容疑がかけられている男だ。警察が立件できたのは二十四件のうち九件のみ。大和は九件のうち八件の容疑を認めたが、九件目の事件だけは冤罪だと主張している。大和が雅也に依頼したのは、その九件目の事件を再調査し、無実を証明することだった。 実際にモデルにしているのは、海外のシリアルキラーだと思うが、この題材は近年多く扱われているので物語としては意外性はない。そこに語り手である雅也の生い立ちと劣等意識に苛まれる人となりが合わさることで、雅也の家族や謎の男が絡むことでミステリとして楽しめる。 依頼を引き受けた雅也は、大和の過去を知る人々を訪ね話を聞き、拘置所の大和との面会を重ねるうちに雅也は大和に魅了されていく。選んでいい。選ぶ権利がある。作中、そのような意味の言葉が印象的に繰り返される。自分は選ぶ側の人間であるという自覚、あるいは自分が選ばれた人間であるという自覚、またはそうありたいという願望。多くの人が似たものを抱えているのではないだろうか。 雅也は事件の真相にたどり着けるのか。大和の実像をつかめるのか。それを知るために読み進めると、物語の最後に気づかされることになる。心の闇を暴かれるのは自分自身ということを。 |
No.4 | 6点 | HORNET | |
(2022/06/19 17:04登録) Fラン大学に通う大学生・筧井雅也の毎日は鬱屈していた。同級生たちは刹那的な快楽にしか目を向けないバカばかり。そんな雅也のもとに、稀代の連続殺人鬼・榛村大和から一通の手紙が届いた。大和は雅也が幼いころ、近所でパン屋をしていた男。世間を震撼させる連続殺人事件を起こして逮捕された彼からの手紙は「最後の一件だけは冤罪だ。それを証明してくれないか?」との依頼だった。幼いころよき理解者だった大和に頼まれ、事件を再調査に乗り出す雅也を待ち受けていた、残酷な真実とは。 連続殺人鬼の、「最後の一件だけは僕じゃない」という訴え。魅力的な設定である。それが真実であるという受け止めで、「では、その一件の真犯人は?」という思いで読み進めていくのだが― いろんな意味で読者の予想を裏切り、そういう意味では上手いのだが、上に書いたような流れで正道でいったほうがある意味すっきり楽しめたかもしれない。腕の立つストーリーテラーだと思うが。 |
No.3 | 7点 | 蟷螂の斧 | |
(2019/04/10 15:55登録) 久しぶりに「最後の一行」的な作品に出会いました。サイコパスの過去の調査過程をもう少しカットして、主人公がサイコパスに魅かれていく過程をじっくりと描いてくれれば・・・と、ないものねだり。題名は改題後の「死刑にいたる病」の方がいいですね。 |
No.2 | 7点 | メルカトル | |
(2017/12/05 22:17登録) 主人公の筧井雅也は元は優等生だったが、今は鬱屈した生活を送る大学生。そんな彼の元に一通の手紙が届く。差出人は世間を震撼させたシリアルキラーの榛村大和。人当たりのいいベーカリーの店主として地元の人から愛されていた彼は、十代の少年少女を拷問、殺害した罪で五年前に逮捕されていた。二十四件にも及ぶ大量殺人容疑をかけられていたが、立件されたのは九件のみ。そのうちの一件だけは冤罪だと訴え、それを再調査して無罪を立証してほしいというのが榛村の願いだった。 『チェインドッグ』を改題文庫化された『死刑にいたる病』を読了。 雅也はまず過去の榛村を知る人々に聞き込み調査をおこないます。尋ねる人によって全く違った証言を得た雅也ですが、実際に本人と面会を重ねるにつれ、榛村に次第に惹かれていく自分に戸惑います。榛村は稀代の連続殺人鬼ではありますが、ある意味インフルエンサーとも言えると思います。彼は周囲の人々に少なからぬ影響を与え、時には精神的に支配してしまいます。それは洗脳にも似た人心掌握術であり、彼がただならぬ魅力を持っていることを証明します。 雅也は榛村の過去を探っていくうちに、意外な事実を知るにつれ、榛村の狙いが一体どこにあるのか、冤罪というのは本当なのか、冤罪だとしたら誰が真犯人なのかなど彼の真意に悩みます。こうした緊迫したムードが流れる中、雅也は自分の変化を周囲から指摘され、良くも悪くも榛村の支配下に置かれることに気付かないまま翻弄されます。 正直これほど面白いとは思いませんでした。題名も『死刑にいたる病』のほうがピンときますね。しかも、単行本のほうの装丁は誤解を招くおそれがありますので注意してください。過去の有名なシリアルキラーについても触れられており、そちらも興味深く読みました。ダークな雰囲気の本作は、本格ミステリとは言えないですが、本格好きにも勧められる作品であるのは間違いないと思います。 |
No.1 | 7点 | パンやん | |
(2017/04/19 08:38登録) 殺人鬼の冤罪を晴らす為、彼の背景に触れるうちに次第に惹かれ、取り込まれ、模倣し、同化していく過程がとてもわかりやすく怖い。サクッと読める文体の中に、チェインドッグ化してしまう人の脆さ、悲しさに実に考え込んでしまう小生も既に繋がれてしまったか。 |