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ミステリの祭典

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蟷螂の斧さんの登録情報
平均点:6.09点 書評数:1660件

プロフィール| 書評

No.1260 3点 花実のない森
松本清張
(2019/11/04 17:14登録)
(再読)裏表紙より~『会社員の青年・梅木隆介はある夜、夫婦と名乗るヒッチハイクの男女を車に乗せた。高貴さをも漂わせる美女と粗野な中年男は、まるで不釣り合いなカップルだった。好奇心が燃え上がる梅木は、車に残された万葉の古歌が彫られたペンダントから女の正体を突き止めようとする。だがそれは、甘い死の香りが漂う追跡行だった。謎が謎を呼ぶロマンチック・サスペンスの傑作!』~
今では単なるストーカーの話ですね。身元の分かるような小道具を、二人とも車の中に落としていたというのは、偶然過ぎて笑ってしまいます。そして謎の女性に、どうしてそんなに駆り立てられるのかが伝わってこないのが弱いところです。そしてその正体も、うーんどうなんでしょう・・・といったものです。残念。


No.1259 5点 殺人犯 対 殺人鬼
早坂吝
(2019/11/03 14:49登録)
様々な要素を取り込む姿勢、努力はおおいに買いますが、まるで緊迫感がないのが玉に瑕でした。信頼のおけない一人称ですから、素直に読めない(笑)。よって騙され感もそれほどでもなかった。同じ○○トリックでは「○x8殺人事件」(6点)に軍配なので、この評価です。


No.1258 4点 死者はよみがえる
ジョン・ディクスン・カー
(2019/11/03 08:13登録)
あらすじだけを捉えればバカミスですね。カーという名前と書かれた時代を考慮すれば、まあ許容範囲内か?(苦笑)。主人公は死体の第一発見者ですが、すぐ容疑者から外れてしまいます。これには驚き!。主人公に関する前書きが長かっただけに、物語の興味や面白みを失ってしまいました。本作は意外な犯人がメインですけれど、もし、主人公が犯人であったら満点!?。


No.1257 6点 時間の習俗
松本清張
(2019/11/01 19:00登録)
(再読)本作は、「点と線」と同様に書かれた時代(1962年)を考慮しなければならないでしょう。その時代でなければ成立しないような物理トリックがあります。反対に心理トリックはいつの時代でも通用するのが強みかもしれません。今となってはトリックよりもアリバイ崩しの過程や、崩しの爽快感を楽しむ方がベターな作品と言っていいでしょう。


No.1256 6点 最後の銃弾
サンドラ・ブラウン
(2019/10/29 20:56登録)
裏表紙より~『北米一美しい街、サヴァナ。殺人課刑事のダンカンは真夜中に、レアード判事の邸宅に呼び出された。侵入犯を撃ったのは判事の美しい妻エリース。正当防衛を主張する彼女には多くの謎がある。事件の背後に浮かんでくる犯罪組織の親玉サヴィッチ。だが、ダンカンはしだいにエリースに惹かれていった。判事の妻で、しかも殺人の容疑者に…。』~
ベストセラー作家らしく、二転三転の筋の運び方は巧い。600頁超の長編ですが飽きさせない。容疑者の美しい人妻は嘘つきで浮気性?。彼女に惹かれてしまった刑事は冷静に事件を解決できるのか?。相棒の女性刑事が辛辣でいい味を出しています。


No.1255 8点 球形の荒野
松本清張
(2019/10/27 12:51登録)
(再読)有名どころでは、本作が一番著者の力量が発揮された作品ではないかと思います。善悪の反転など、ストーリーテリングが秀逸ですね。またラストが泣かせます。なお、TVドラマ化の回数は今のところ「砂の器」「ゼロの焦点」「黒い樹海」などを抑え第一位。このあたりも作品の質の良さを表しているのでは?。ヒロイン役では栗原小巻さんが一番印象に残っています。


No.1254 6点 殺人保険
ジェームス・ケイン
(2019/10/25 20:04登録)
彼女は顔を真っ白に塗りつぶし、目のへりに黒い隈をつくり、唇と頬に真っ赤な紅をさした。おお怖っ!!(笑)。彼女の方が主人公より上手だったようですね。本作は「郵便配達は二度・・・」より複雑ですが、後者に軍配。


No.1253 8点 白衣の女
ウィルキー・コリンズ
(2019/10/24 18:42登録)
この時代(1860年)の小説は長いのは致し方ない?(苦笑)。まあ、ずっと気になってた一冊であり、読み終えてほっと一息。本作は、予想以上にプロットがしっかりしているのにビックリ。一応、現代に通じるトリックも用意されています。ただし、当時はトリックとして意識されていないので、あっけなくネタバレしまっているところが実に面白いところ。ちょっぴり不満点。真のヒロインであるマリアン(よく頑張りました!!(笑))の処遇を何とかできなかったのか???・・・。


No.1252 8点 郵便配達は二度ベルを鳴らす
ジェームス・ケイン
(2019/10/22 16:44登録)
(再読)「東西ミステリーベスト100(1985年版)」の56位。かすかな記憶はボニーとクライド(1934年に銃殺)に似ていたような?でした。訳者あとがきによれば、本作(1934)並びに「殺人保険」(1936)は1927年のルース・スナイダー事件(保険金殺人)にインスパイア―されているようですね。題名については、脚本家から郵便配達員がいつも二度ベルを鳴らすという話を聞いて、本作では重要な出来事が必ず二度起きることより、タイトルに相応しいと思ったとのことです。

(ネタバレあり)
二度目の殺人、二度目の裁判、二度目の自動車事故など。 ミステリー的には裁判が一番楽しめました。歪んだ愛情で結ばれた風来坊フランクと人妻コーラ。本物の殺人が過失となり、本当の過失が殺人となる。因果応報。○○メーターでは、恋愛物語などとの評が多いのですが、フランクの”二度の裏切り”(調書での保身、コーラ不在中の浮気)があり、彼に愛を語る資格などない(笑)。


No.1251 4点 波の塔
松本清張
(2019/10/22 08:20登録)
(再読)~愛した女性は被疑者の妻だった。衝撃の事実は若き検事を悩ませる。現代社会の悪に阻まれる悲恋を描いたロマンチックサスペンス~とありますが、サスペンス色はほとんどありません。純愛不倫物語といって良いのでしょうか。 本作は「女性自身」に掲載されたもので、当時はこういったものが受けたのでしょう。時代を感じます。なおミステリーとしての採点です。


No.1250 6点 黒い樹海
松本清張
(2019/10/20 17:04登録)
(再読)~仙台へ旅行のはずの姉が、浜松のバス事故で死んだ。不審に思う妹が姉の交友関係を探る。~
社会派と言われる諸作品と趣を異にしており、旅情ミステリーに分類されるのか?と思います。本作は「婦人倶楽部」に掲載されたもので、当然と言えば当然なのですが、やはり女性を意識して書かれた内容になっています。「波の塔」(1960年)や「花実のない森」(1964年)も同様ですね。著者は「女性心理を描くのは得意ではない」と言っていたらしいのですが、そんなことはありません。なお、題名の「樹海」は登場しませんが、同年発表の別の作品で重要な舞台となっています。


No.1249 5点 蒼い描点
松本清張
(2019/10/19 12:39登録)
(再読)本作は若者向け雑誌に連載されたもので、著者らしい重厚さがあまり感じられないロマンチック・ミステリー風味な作品です。ジャーナリストの変死に始まり、その妻および女流作家とその夫が行方不明となる。章題は「誰もいなくなった」・・・と言っても本家のような展開にはなりません(笑)。


No.1248 6点 眼の壁
松本清張
(2019/10/17 20:28登録)
(再読)手形のパクリ事件は2年後(1960年)に発表された「白昼の死角」(高木彬光氏)の方が印象に残っています。本作の印象はやはり死体トリック!!(笑)。この作品が経済犯罪ものの走りであったようですね。「点と線」と本作で著者の人気が不動のものとなり、この作品の背景が以後に発表された「砂の器」に発展していったものと思います。


No.1247 4点 ZI-KILL-真夜中の殴殺魔
中村啓
(2019/10/15 18:22登録)
主人公は自分が連続殺人鬼ではないかと疑心暗鬼になります。その描写が何回も出てくるのですが、文章がぎこちなく心に響きません。よって感情移入できなかったですね。スピード感も足りなかったし、恋人と謎の女性との関係も中途半端でした。内容自体も新鮮味はありませんでした。残念。


No.1246 7点 三秒間の死角
アンデシュ・ルースルンド&ベリエ・ヘルストレム
(2019/10/12 23:27登録)
英国推理作家協会賞受賞、スウェーデン最優秀犯罪小説賞受賞。裏表紙には上下とも、あらすじが全開となっています。冒険小説風なものに、この手の紹介文が多いような気がします。警察小説のシリーズものに該当するみたいですが、内容はストックホルム警察の潜入捜査員(元犯罪者)が刑務所に侵入する話が中心となっています。題名の「3秒間」は別に謎ではないのですけれど、成る程と思いましたね。テンポはいいのですが、やや侵入捜査員の妻と子どもの描写が物足りなかったかな・・・。この11月に映画が公開されます!(こちらはFBI)


No.1245 7点 月長石
ウィルキー・コリンズ
(2019/10/10 17:50登録)
(再読)東西ミステリーベスト100(1985年版51位、 2012年版67位)
「月長石」盗難事件の関係者が、それぞれの視点(手記)で語ってゆきます。一人の視点では何でもないようなこと(実は伏線)が、別の視点が重なることによって明らかになってゆくという構成です。各視点のキャラクター、特に老執事と医師が魅力的ですね。謎が複雑になってしまう要因が、女性陣の恋愛感情にあるなど、単なる恋愛物語ではない点も好みです。なお、マイケル・イネス氏の「 ある詩人への挽歌」(1938年)が本作品のような多数の手記形式の構成を引き継いでいますね。昔、本作以上に長~い「白衣の女」をあきらめたので、この機会に挑戦しようかな?。


No.1244 7点 カササギ殺人事件
アンソニー・ホロヴィッツ
(2019/10/06 22:55登録)
プロットはよく考えられていると思います。しかし、レッドへリングが多すぎるような気がしました。さらに主人公が書き上げた容疑者が小説部分で5名、現実場面では7名と、いくら何でも多すぎ(笑)。結局このことより物語が散漫になってしまったような・・・。クリスティ氏であれば、ものすごく怪しい人物をひとり登場させると思います(当然犯人ではない)。この辺のメリハリがあればなあ。


No.1243 8点 小説帝銀事件
松本清張
(2019/10/05 19:37登録)
(再読)「BOOK」データベースより~『昭和23年1月26日、帝国銀行椎名町支店に東京都の腕章をした男が現れ、占領軍の命令で赤痢の予防薬を飲むよう告げると、行員らに毒物を飲ませ、現金と小切手を奪い逃走する事件が発生した。捜査本部は旧陸軍関係者を疑うが、やがて画家・平沢の名が浮上、自白だけで死刑判決が下る。膨大な資料をもとに、占領期に起こった事件の背後に潜む謀略を考察し、清張史観の出発点となった記念碑的名作。』~
著者は、平沢氏には毒物の知識がなく犯行は不可能と冤罪を主張しています。そして真犯人は旧陸軍関係者である可能性を指摘しています。
読後の感想~平沢氏は実行犯ではないと考えますが、金品処理についての疑いは晴れないというのが正直な気持ちです。それは強奪された小切手の裏書の筆跡が本人とものと鑑定されていることや出所不明の預金があったことなどです。旧刑訴法により、自白と状況証拠のみで死刑確定しており、その後の再審請求はすべて棄却されていることは残念な点です。当時のGHQの圧力は相当なものであったと感じられます。
なお本作品(1959年)後の1985年にGHQの秘密文書が公開されました(読売新聞)。①毒殺犯の手口が軍科学研究所の作成した毒薬に関する指導書に一致。②犯行時に使用した器具が同研究所で使用されたものと一致。③1948年3月、GHQが731部隊の捜査・報道を差し止めた。
以上のこと、および生き残った目撃者の1人が一貫して氏は犯人ではないと証言していることより、実行犯ではないのは確実でしょう。しかし、この2年後の1987年5月、氏は刑務所で天寿を全うしました(享年95歳)。


No.1242 8点 金環蝕
石川達三
(2019/10/03 18:39登録)
(再読)最近、原発マネー疑惑が新聞紙上を賑わしています。本作は同じ電力関連の汚職事件です。過去の疑獄事件では、必ずといって死者が出ています。ロッキード事件(1976年)では、事件を追っていた記者、フィクサーの通訳、首相の運転手。リクルート事件では、首相の秘書。最近では、立件はされませんでしたが森友学園問題での財務局職員2名、工事関係者2名の死が記憶に新しいところです。本作品は1965年に表面化した九頭竜ダム汚職事件(これも立件されず)をモデルに描かれたものです。首相秘書官と事件を追っていたジャーナリストが死亡しています。そして総理夫人(当時の池田隼人総理夫人がモデル)が大きく関与しています。どこかで聞いたような話ですが・・・。以下総理夫人と西尾秘書官のやり取り。~「あなたは8月の初めに、星野官房長官のお使いで、電力建設の財部総裁に会いに行って下すったでしょう。行って下すったわね」「はい参りました」「そのとき、総裁宛の私の名刺(*竹田建設のこと、私からもよろしくお願い申し上げます。と書いてある)を持って行ってくださいましたね」「はい」「その事が、もし世間に知れわたったりしたら、私が非難されるばかりではなくて、総理の政治的生命にもかかわる問題だということも、お分かりの筈ですね」「はい」「それだけ解かっていらっしゃるのに、なぜあなたはあの事を世間に言いふらしたりなさったの」「いいえ、僕は言いふらしたりなんかしていません」~略~「弁解したって駄目よ。あなたは私の顔に泥を塗って下すったのね。私だけなら我慢もします。総理の名誉は完全に傷つけられました。もしこの噂が広まって、新聞が書き立てたり、野党の方が国会で質問を提出したりしたら、あなたの責任はどういうことになるの。西尾さん、どうなさるおつもり。私は人事に口出しなんか致しませんからね。あなたにどうしろという事は申しませんよ。あなたご自分でお考えになって、一番適当な方法をお取りになることですわね。」(映画では京マチ子さん)~その後、西尾秘書官は自殺するのですが、小説といえども、よくここまで書いたものと感心します。金環蝕~まわりは金色の栄光に輝いて見えるが、中のほうは真黒に腐っている。


No.1241 7点 渡された場面
松本清張
(2019/10/01 20:22登録)
~同人誌評に引用された小説の一場面が、強盗殺人事件の被害者宅付近の様子と酷似しすぎていた。~
倒叙ものなので、犯人を追ってゆく警察の地道な捜査が中心です。文学青年の盗作が、まったく関係ない二つの殺人事件を結び付けてゆくというもの。プロットが楽しめる作品です。

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