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ミステリの祭典

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蟷螂の斧さんの登録情報
平均点:6.09点 書評数:1660件

プロフィール| 書評

No.1320 6点 火曜クラブ
アガサ・クリスティー
(2020/04/01 20:38登録)
本作以降に長編にアレンジされたトリックが数点あり楽しめた。
①火曜クラブ~5点 ②アスタルテの祠~7点 ③金塊事件~4点 ④舗道の血痕~8点 ⑤動機対機会~5点 ⑥聖ペテロの指のあと~4点 ⑦青いゼラニウム~5点 ⑧二人の老嬢~8点 ⑨四人の容疑者~4点 ⑩クリスマスの悲劇~6点 ⑪毒草~6点 ⑫バンガロー事件~9点 ⑬溺死~6点 

自薦10冊を読み終えて      (当サイト)
①そして誰もいなくなった 10点 8.65点
②予告殺人         5点 5.74点
③アクロイド殺し     10点 7.83点
④オリエント急行の殺人  10点 7.70点
⑤火曜クラブ        6点 6.45点
⑥ゼロ時間へ        8点 6.38点
⑦終わりなき夜に生まれつく 8点 6.77点
⑧ねじれた家        6点 5.93点(著者が一番好きと言っている)
⑨無実はさいなむ      7点 6.23点
⑩動く指          7点 5.80点


No.1319 5点 死者が飲む水
島田荘司
(2020/03/27 16:28登録)
「樽」「蝶々殺人事件」「黒いトランク」の流れを汲む一冊。本作が一番わかりやすいトリックで、その点は高評価です。しかし犯人以外の容疑者については、もっと早めに開放して欲しかった(ページをカットして欲しかった)。謎の一時間で中盤まで引っ張られて、蓋を開けたら???。かなり萎えました(苦笑)。


No.1318 8点 medium 霊媒探偵城塚翡翠
相沢沙呼
(2020/03/24 10:32登録)
久しぶりに「どんでん返し」を食らいました(笑)。正直言って、途中まではつまらない期待外れの小説と思っての読書。何故って、犯人が霊媒能力で分かってしまうんですから。まあ、倒叙ものだと思って読めばいいか・・・。しかし、推理も甘いしなあ・・・・・・。ところが最終章で???!!!。


No.1317 7点 黒蜥蜴
三島由紀夫
(2020/03/20 13:48登録)
黒蜥蜴は最初の誘拐に失敗した後、二回目のトリック(長椅子)に成功し「トリックは、大胆で子供らしくて馬鹿げていたほうがいい」と自画自賛。これは乱歩氏への皮肉を込めた賞讃か?、思わずニヤッとしてしまいました。乱歩氏は「三島由紀夫さんは、私の骨組みに、新しく織り出した立派な衣装を着せてくれた」と言っています。骨組みは借りていますが、実は内容は全く別物、つまり恋愛小説であるということです。三島氏は「美的恐怖恋愛劇」と表しています。よって翻案ではなく本歌取りということになりますか・・・。戯曲なので会話が中心となり、敵同士の二人の恋愛感情をどう表現するのかが気になっていたのですが・・・。「僕の惚れ方は相手の手も握らずに、相手を破局まで追い詰めることしかない。」(部下との会話)「あなたがこれ以上生きていたら、私が私でなくなるのが怖いの。そのためにあなたを殺すの。・・・好きだから殺すの」(独白)。なるほど、独白という手があったのか・・・。


No.1316 5点 黒蜥蜴
江戸川乱歩
(2020/03/20 13:45登録)
怪人二十面相や少年探偵団といった子供向けの筋に、大人用としてエログロをプラスしたような作品ですね。当時、通俗的と批判されても致し方なかったと思います。黒蜥蜴は、何故裸で女性美を見せびらかしたり、部下の前で裸になるのか?。そしてなぜ男装で、男言葉を話すのか?。イメージが湧いてきません。宝ジェンヌの男役がストリップをするようなもので、あまりイメージとしてはしっくりこなかったです。色々調べたら、露出狂と評した方がいました。あゝ納得(笑)。なお、「僕」「わたし」「わたくし」の使い分けは特に決まりはなく、連載ものなので前に書いたことを忘れたか、あるいは著者の気まぐれだったのかと思います。三島由紀夫氏がどう翻案したのか見ものですね。


No.1315 7点 鉄の門
マーガレット・ミラー
(2020/03/17 14:14登録)
裏表紙より~『十六年前に死亡した親友ミルドレッドの夫である医師アンドルー・モローと再婚したルシールは、一見平穏なその生活の裏側で継子や義妹との関係に悩み続けていた。ある冬の日、謎の小箱を受け取ったルシールは何も言い残さず姿を消した。日常の微かなひびの向こうに広がる荒涼とした心理の内奥を描いて、ミステリに新風を吹き込んだ巧手ミラーの初期を代表する傑作、新訳で復活。』~

しばらく入手困難でしたが復刊され喜ばしく思います。心理描写については、乱歩氏が「心理的純探偵小説の曙光」と感嘆しただけのことはあり巧いですね。第三部(最終章)の最初のページは予想外でかなりのインパクトがありました。本当のラストは、うーん証拠がないんだよねー。


No.1314 7点 動く指
アガサ・クリスティー
(2020/03/14 16:45登録)
(自薦の一冊)裏表紙より~『傷痍軍人のバートンが療養のために妹とその村に居を構えてまもなく、悪意と中傷に満ちた匿名の手紙が住民に無差別に届けられた。陰口、噂話、疑心暗鬼が村全体を覆い、やがて名士の夫人が服毒自殺を遂げた。不気味な匿名の手紙の背後に隠された事件の真相とは?ミス・マープルが若い二人の探偵指南役を務める。』~

なんとも言えないほのぼの感。サブストーリーですが、兄妹二人の恋の同時進行は初もので楽しめました。「冒頭に罠。殺人者の思惑通り読者が引っかかる」と著者の談。その通り!。今回もミスリードにしてやられました(笑)。


No.1313 8点 一九八四年
ジョージ・オーウェル
(2020/03/09 23:21登録)
裏表紙より~『“ビッグ・ブラザー”率いる党が支配する全体主義的近未来。ウィンストン・スミスは真理省記録局に勤務する党員で、歴史の改竄が仕事だった。彼は、完璧な屈従を強いる体制に以前より不満を抱いていた。ある時、奔放な美女ジュリアと恋に落ちたことを契機に、彼は伝説的な裏切り者が組織したと噂される反政府地下活動に惹かれるようになるが…』~
1949年の作品。2002年「史上最高の文学100」に選出された。2017年には米国でベストセラーに。その理由は、トランプ大統領就任式の参加者数がオバマ前大統領のときより明らかに少ないにもかかわらず、報道官が過去最高と発言。この発言を大統領顧問が「オルタナティブ・ファクト」(もう1つの事実)と正当化。本書に似たようなことが現実に起こっているとして読まれたようです。
「権力を求めるのは権力のため」という言葉が恐ろしい。結局、権力があれば、共産、資本主義の体制に係わらず何でもできるということ。ミステリーではないのでジャンル分けは難しい。「洗脳」の物語であると思います。なお、「われら」(ザミャーチン.1921年)の影響は甚大。


No.1312 7点 われら
エヴゲーニイ・ザミャーチン
(2020/03/09 23:17登録)
地球上に「単一国(管理社会)」が出来てから1000年後という設定。宇宙船建造技師の主人公D503が、未来に出会うであろう異星知性体に向けて書いた記録(日記)という形式で物語は進行します。D503が、イデオロギーではなく、「恋」により心を取り戻していく様が人間臭くていいですね。なお、比喩を多用する文章で非常に難解です。「1984年」(ジョージ・オーウェル、1949年)に多大な影響を与えたと思います。


No.1311 4点 愚者(あほ)が出てくる、城塞(おしろ)が見える
ジャン=パトリック・マンシェット
(2020/03/05 17:38登録)
あらすじは、誘拐された二人が、犯人たちから逃げるという単純なものです。登場人物たちの心理・感情がほとんど描かれない(これが特徴?)。よって、何故誘拐したのか、何故逃げなければならないのか(何故助けを求めない)、何故殺そうとするのか?が不明のまま物語が進行します。ミステリーとしての謎ではないので、かなりのストレス(苦笑)。さらに登場人物の行動が常軌を逸しています。結局、感情移入できないため、追いつ追われつのハラハラドキドキ感が湧いてこなかった。残念。


No.1310 5点 アガサ・クリスティー読本
評論・エッセイ
(2020/03/04 19:35登録)
国内外の21名による評論などが掲載されています。「クリスティが語る」「簡潔の女王」が楽しめました。
江戸川乱歩氏と評論家・瀬戸川猛資氏の「アクロイド殺し」の評価が正反対で興味深いです。乱歩氏はクリスティの代表作として推していますが、瀬戸川氏はミステリ史上不朽の問題作であって、不朽の名作ではないと述べています。理由は一人称で終始し、客観性がなくアンフェアというものです。記述が事件の正しい記述であるという最低限の保証、すなわち客観性が必要。同じトリックでも、カーの某作は客観性があると言っていますが、某作の「手記」がどうして正しいといえるのかよくわかりません(苦笑)


No.1309 6点 鬼火
横溝正史
(2020/03/02 21:08登録)
江戸川乱歩は「彼(横溝)は谷崎潤一郎の作品を愛することが深く、意識してか無意識にかその着想を借り来ることが屢々であるが、例えば「鬼火」と「金と銀」と、「面影双紙」と「或る少年の怯れ」と、「蔵の中」と「恐ろしき戯曲」とには、一部ではあるがその明かな類似を見るのである」とやや批判的な見解を述べています。一方、高木彬光は「鬼火」は世界に誇る最高傑作とべた褒めで、この差はどこに?(笑)。
「鬼火」と「金と銀」の共通点はライバル同士の画家が一人の女性を取り合うというものです。あえて言うならば「本歌取り」に該当するのでしょうか。
なお、「水車館の殺人」(綾辻行人)が本作「鬼火」の盗作という評がありました。筋は違うのですが、共通事項は、画家、仮面、犯人の決め手(○○)位かと思います・・・。また、ミイラを扱った作品に関し、古典でミイラ登場の作品が既にあるというだけで二番煎じ扱いされてしまうこともあるような。まあ、人によって基準がまちまちなのは致し方ないことですが・・・。(敬称略)


No.1308 5点 潤一郎ラビリンス〈10〉分身物語
谷崎潤一郎
(2020/03/02 21:03登録)
乱歩によれば、横溝正史の「鬼火」の一部に、本作中の「金と銀」の類似があるとのことです。一部とはどの程度か?で手にしてみました。
①「金と銀」 6点 天才的な青野と、その才能に嫉妬する大川。二人は画家で同じモデルを描く。その後の二人の関係は?・・・。作中で「ウィリアム・ウィルスン」(ポー)に触れていることから、「分身」のイメージを膨らましたのかもしれません。ラストは著者が13歳の時に読んだという哲学者プラトンの理論へ?・・・
②「AとBの話」 5点 AとBは従兄弟で文学の道を志す。Aは善人思想、Bは悪人思想。二人の行方は?・・・
③「友田と松永の話」 4点 松永が四年ごとに姿をくらます。その理由は?・・・

(余談)大正九年、谷崎は「途上」を発表。それを乱歩が「プロパビリティの犯罪小説」と絶賛。しかし、谷崎は大変迷惑そうにして「殺される妻の悲劇を見てほしい」と言ったそうです。「探偵小説」と呼ばれることを嫌ったエピソードですね。また横溝正史から「新青年」への掲載依頼を断り続けていた点からも頷けることです。「途上」「私」などの評価でトリックなどと言われていますが、本人はそのつもりがなかったわけですからどうなんでしょう?。探偵小説への影響はそのようなことではなく、乱歩、横溝の御大二人が、谷崎の猟奇的、耽美的な作風を引き継いだという点が大きいと思うのですが・・・。(敬称略)


No.1307 6点 シタフォードの秘密
アガサ・クリスティー
(2020/02/26 19:50登録)
本作「吹雪の山荘」を坂口安吾氏がべた褒め。~このトリックほど平凡なものはない。現実に最もありうることで、奇も変もないのであるが、読者は見逃してしまうのである。露出しているトリックに気付くことができないのである。このトリックの在り方は推理作家が最大のお手本とすべきものである。~なるほど、その通り。主人公エミリーの男殺しの言動に気を取られ、動機のミスリードにすっかり騙されてしまった(笑)。


No.1306 7点 生者と死者に告ぐ
ネレ・ノイハウス
(2020/02/23 16:40登録)
裏表紙より~『ホーフハイム刑事警察署の管轄内で、犬の散歩中の女性が射殺された。80メートルの距離から正確に頭部を狙撃されたのだ。翌日、森に建つ邸宅で、女性が窓の外から頭を撃たれて死亡。数日後には若い男性が心臓を撃ち抜かれた。そして警察署に“仕置き人”からの死亡告知が届く。被害者たちの見えない繋がりと犯人の目的とは。刑事オリヴァーとピアが未曾有の連続狙撃殺人に挑む!』~

評論家の杉江松恋氏が「ノイハウスってこんなにおもしろかったっけ?」と言っています。そうなんです、面白いんです(笑)。今回の犯人は狙撃の名手です。よって容疑者は少ないかなと思ったら、そうでもなく相変わらず容疑者は多かった。捜査チームはプロファイラーを押しつけられるのですが、”こいつ”がイライラする男でした。”こいつ”のおかげで犯人を見逃してしまった(苦笑)。


No.1305 6点 幻影城
評論・エッセイ
(2020/02/18 21:43登録)
探偵小説に対する乱歩の熱い気持ちが伝わってきます。しかし、乱歩は生涯、純探偵小説を書くことができなかった。さぞ無念なことだったろう。
「不連続殺人事件」(坂口安吾)について、乱歩は「探偵小説四十年」で「トリック外のトリック」と大絶賛している。それが何を指すのか不明であった。本作中の「不連続殺人事件」を評すで、次のように述べている。「普通の意味のトリックではなく、作品全体に蔽いかぶさっている非常に大きな別のトリックである。それは不倫乱行の別世界そのものなのである。」また、松本清張も「人間の設定、背景、会話が巧妙をきわめ、それに氏の特異な文体が加わって、その全体が一つのトリックだと気がつくのは全部を読み終わったときである。」と述べており、両者は一致している。(敬称略)


(以下ネタバレ)普通の登場人物が、ある異常な行為をとると目立つが、異常な人物が異常な行為をとっても目立たないというトリック。「不連続」は大げさに言えば、色情狂ばかりが登場する物語。


No.1304 5点 横溝正史読本
評論・エッセイ
(2020/02/18 21:36登録)
裏表紙より~『名探偵金田一耕助のモデルは?『獄門島』『八つ墓村』ほかのトリックはどのように思いついたのか?―作家小林信彦を相手に、主要作品の詳細な舞台裏を初めて明かした~(略)~乱歩・安吾・彬光による横溝正史作品論』~
デビュー作とも言われる「恐ろしき四月馬鹿」(懸賞小説入選)はフーディーニの映画を日本流に書いたものと・・・。先人が同様なことで懸賞金を得たので自分もということらしい。この時代、罪悪感というものがない模様(苦笑)。
乱歩の「二銭銅貨」に関し、編集者(横溝も)は常に翻案じゃないかという不安があると発言。そして「殺人鬼」浜尾四郎は何となく翻案臭があるでしょう、「高木家の惨劇」角田喜久雄はシムノンの翻訳とそっくりなどとおっしゃる。(昭和51年、この時74才)ご本人は若い頃、翻案ものを何冊か発表しているのですが、お忘れか?(笑)。
なお、坂口安吾による「蝶々殺人事件」評論が痛快。「蝶々」は傑作、最もつまらないのが「本陣殺人事件」、「蝶々」をおさえ「本陣」に授賞した探偵作家クラブの愚挙は歴史に残る。ドストエフスキーは探偵小説とする説は暴論(以上二点には意義あり!笑)。ヴァン・ダイン、小栗虫太郎は衒学ぶりが退屈と容赦ない。クリスティとクイーンは褒めていますね。なぜか「吹雪の山荘」(シタフォードの秘密)をべた褒め。未読なので読まねば。(敬称略)


No.1303 3点 幽霊塔
江戸川乱歩
(2020/02/16 16:59登録)
翻案ものの評価は難しいが、一応、原作の評価-オリジナリティ±αとしてみた。原作(7点)-オリジナリティ(4点)+乱歩らしい作品(1点)-重要部分がカット(1点)=3点 
乱歩は中学生の時、黒岩涙香の「幽霊塔」(「灰色の女」の翻案)に出会い心酔したようだ。この涙香版をさらにリライトしたものが本作品。乱歩の特徴であるおどろおどろらしさは出ているが、ミステリーとしての重要項目がカットされてしまっているのが残念な点。
翻案ものに関し、乱歩自身は「緑衣の鬼」について「赤毛のレドメイン家」(フィルボッツ)を更に通俗化したような筋で、「踊る一寸法師」は「跳び蛙」(ポー)の翻案とか真似というには、少し離れすぎていると語っており、両者とも翻案ではないという認識である。しかし、現在では「緑衣の鬼」は紹介文などで翻案とされている。では、「踊る一寸法師」はどうなんだろうという疑問が湧いてくる。この辺は研究者にお任せするしかないのだが・・・難しいところ。(敬称略)


No.1302 7点 灰色の女
A・M・ウィリアムスン
(2020/02/16 16:49登録)
裏書より~『アモリー家に伝わる由緒ある屋敷、ローン・アベイ館。一族ゆかりの屋敷を下見に来たテレンスは、屋敷の時計塔で謎の美女コンスエロと出会う。婚約者ポーラよりもコンスエロの美しさに惹かれるテレンス。だが、それは次々と起こる奇怪な出来事の幕開けだった…。黒岩涙香が翻案し、その後、江戸川乱歩がリライトした傑作『幽霊塔』の原作をついに邦訳。』~

1898年の作品で、当時のゴシックロマン作品の特徴である”ゆったりとした展開”はやむを得ないか(苦笑)。「白衣の女」(ウィルキー・コリンズ、1860年)のオマージュ的な作品。この時代に○○に関するトリックを採用した先見性に脱帽。「灰色の女」の目的は何か?という謎で引っ張っていく。首なし死体、恋のさや当て、宝探し、蜘蛛屋敷などバラエティに富んだ作品。(敬称略)


No.1301 5点 江戸川乱歩と横溝正史
伝記・評伝
(2020/02/13 17:16登録)
「横溝が「新青年」編集者として乱歩に「パノラマ綺譚」と「陰獣」という傑作を書かせた。横溝がいたからこそ生まれたと言える。そして戦後は乱歩が編集者となり横溝に「悪魔の手毬唄」という最高傑作を書かせたのだ。」と筆者は語る。その間に不仲の時代があったのは興味深い。乱歩が「悪霊」を途中で休載し休養に入った。1年半後の1934年に復活するも、横溝は「復活以後の乱歩こそ悲劇のほかの何者でもない。」再休養したらの旨発言。友情に亀裂が入った。その2年後には和解か?。終戦後、横溝は自信作「本陣殺人事件」を発表。乱歩はべた褒めした後に不満を述べる。それは密室トリックが機械的過ぎ、動機が弱いということであった。横溝はドスをつきつけられたように思ったという。その後「獄門島」が発表された時は貶された「本陣」の方がいいと言われ、更に「君、こんど「犬神家の一族」というのを書くだろう。ぼく、犬神だの蛇神だの大嫌いだ。」などと言われる。二人は時には対立したが、ライバルとしてまた盟友として探偵小説界を牽引したのは間違いない。ただ、「翻訳」「翻案」「創作」の違いを対外的にあやふやのままにしたことは罪づくりであると思う次第。やがて”探偵小説を「お化屋敷」の掛小屋からリアリズムの外に出したかった”という松本清張が台頭することになった。(敬称略)

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