ポオ小説全集2
創元推理文庫

作家 エドガー・アラン・ポー
出版日1974年06月
平均点6.50点
書評数6人

No.6 7点 みりん
(2025/01/05 03:42登録)
『ナンケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語』 7点
現代的な叙述トリックを匂わせるような冒頭から壮大な冒険譚が始まる。序盤1/3が船内での反乱、中盤1/3が漂流サバイバル、残り1/3が南極秘境冒険小説。この「漂流サバイバル編」の冷徹さは類を見ません。もう少しジャ○プ漫画のように主人公側に都合の良い展開があっても良いのではないでしょうか。物語が進むにつれてピムの精神が荒廃し、人の死に対する感傷が鈍感になっていく様も読み取れます。
ポオは話の面白さで読ませる作家ではなく、発想力や文章力で黙らせる作家という認識であったがそれは間違いで、本作に関しては話の面白さに引っ張られた。それだけに5時間も夢中にさせといてぶん投げはやめてほしかった。乱歩…夢Q…なぜ短編作家達はすぐに長編をぶん投げるのか…(n=3)
ちなみにSFを大きく発展させた記念碑的な作品でもあるらしい。ほんとか?

『沈黙』 3点
わけわからん。あれか?過ぎたるは及ばざるがごとしみたいな話か?

『ジューリアス・ロドマンの日記』 5点
こちらも冒険譚であるが『ピムの冒険』と比べると大した苦難はなく退屈。そしてこれもほぼぶん投げ。スー族への過剰なる警戒心を読むと、手記者のロドマンは南極冒険の一件を経て成長したピムのよう、その分緊張感は薄れるけどね。この冒険の根源にある動機は353pに明確に記されていて、「未知なものに対する燃えるような愛」、イイネ。

『群衆の人』 6点
趣味は人間観察。今回のターゲットは都会人の罪を背負った老人。孤独を恐れ、群衆に溶け込むことで安心を得る、まさに大いなる不幸。そんな醜悪な人間の心を読み解く方法も価値もない。
それじゃあ、他者の観察を生き甲斐とする語り手もまた罪悪の権化ではないか?
※前読んだのよりコチラの翻訳の方が良さそう

『煙に巻く』 7点
難解な書物をなんでもかんでも深読みする奴へww 残念でした!お前らの期待しているような高尚な中身なんてありませーんwwwwwww
ということか?
ポオ作品も200年の時を経て神格化され、一部が『関係ニヨル、結合ニヨル、又自身ニヨル危害』のような存在になっているような(笑)

『チビのフランス人は、なぜ手に吊繃帯をしているのか?』 7点
パトリック卿の妄想やり取りが大袈裟で面白いし、オチでも笑ってしまった。本作だけでなく、節々にレイシストの気質あるよねポオ。

全集1はイマイチでしたが全集2はポオ唯一の長編『ピムの冒険』や最後2つのユーモア小説が面白くて、満足感の高い仕上がりになっとりました。

No.5 6点 蟷螂の斧
(2020/07/29 19:46登録)
ポオ小説全集4冊の再読完了。結構時間がかかりました。やはり全体的には難解なものが多かったという印象です。
①ナンタケット島出身のアーサー・ゴードン・ピムの物語 7点 冒険譚で楽しめましたが終わり方に?マーク
②沈黙 5点 岩に書かれた文字が変わる? 理解力不足でよくわかりません(苦笑)。余談~沼地の睡蓮(スイレン)とありますが蓮(ハス)の誤りだと思います。
③ジューリアス・ロドマンの日記 5点 本作は中編ですが、プロットが似ている冒険譚(短篇)がありましたね。
④群集の人 6点 何ということがないストーリーなのですが、不気味。これも難解。
⑤煙に巻く 6点 ユーモア系 マニアほど騙しやすい?
⑥チビのフランス人は、なぜ手に吊繃帯をしているのか? 6点 コント風 題名の理由が笑えます。

No.4 8点 クリスティ再読
(2020/01/22 16:40登録)
「ゴードン・ピム」の巻である。質+量でやはり代表作に思う。これでもかこれでもか、のサービス精神旺盛な怪奇冒険譚。デテールの魔。中絶みたいな終わり方が、変な想像を誘う。最後の方の「文字」に関する考察とか、わけがわからないて割り切れないのが良さと思うんだ。テケリ・リはやはり白い毛の奇妙な獣の名前なんだろうか。何が忌まわしいんだろうか?わからない。わからないから、いい。なぜ手記があるんだろう。わからない。ラヴクラフトも「ゴードン・ピム」から韜晦を学んだんじゃないかな。
「ジューリアス・ロドマンの日記」は「ゴードン・ピム」の北米大陸横断版みたいなもの。こっちは抑制的な筆致がいい。とくに大したことが起きてないのが困るけど。
「群衆の人」はやはり事件のないミステリ。何も起きないのに不穏。
でおまけのボードレールによる「エドガー・ポオ その生涯と作品」はなかなか鋭い考察なんだけど、小林秀雄の訳が古すぎ。何とかした方がいいと思うよ。詩人が詩人を語った文章だから、一筋縄ではいかないし。

ポオの酩酊は、一つの記憶法、労作の一方式、その情熱に相応わしい断乎たる致命的方式であったと私は信じるのである。

この「記憶法」という言い回しに膝を打つ。

No.3 6点 ∠渉
(2015/07/17 21:06登録)
やっぱりピムの冒険かな。これがむちゃくちゃ退廃的な冒険小説。なんか中絶しちゃうのもわかる気が。むちゃくちゃ好きだけどね。

No.2 7点 おっさん
(2011/03/19 13:05登録)
ミステリの楽しみを共有できることを信じて・・・いつものように書きます。

<全集1>が21篇を収録していたのに対して、本巻の収録作は――
1.ナンタケット島のアーサー・ゴードン・ピムの物語
2.沈黙
3.ジューリアス・ロドマンの日記
4.群衆の人
5.煙に巻く
6.チビのフランス人は、なぜ手に吊繃帯をしているのか?

全ページの半分以上を占めるのが、主人公が密航していた船で叛乱がおき、船は漂流をはじめ・・・という海洋冒険小説が後半、南極を舞台にした幻想小説にスライドする1。異様な迫力に満ちていますが、統一感はなく、結末も尻切れとんぼです(その未完成感が後続を刺激するのか、ラヴクラフトやジュール・ヴェルヌがこの“続編”を書いています)。
同じく道中記にカテゴライズできる3(副題は、文明人によってなしとげられたる最初の北アメリカ・ロッキー山脈横断の記録)も、中編サイズの力作ですが、これまたストーリーなかばで中絶したようなエンディング。
この2作を読むと、やはりポオは生粋の短編職人で、長い話の構成力は無かったのかな、と思わせられます。ともに、主人公を次々と危機が襲う、そのエピソードは面白いのですが、肝心の旅の終わり(物語の解決部)に何もカタルシスが無いのは、物足りません。
また、文章の密度に関しても、計算違いがあるような。とくに1に顕著なのですが、長めのお話ということで、従来以上に説明的な文章をこと細かに盛り込むサービスぶりで、必然的にひとつの段落が長くなっています。長編の“面積”を短編(以上)の“密度”で埋められたら・・・リーダビリティはあがらないし、読んでいて疲れるだけです(学生の頃は、背伸びしてましたから、その“重厚さ”を有難がってたようなw)。
完成度は、残る4作のほうが上です。
異界のアフリカで、悪霊が神をしりぞける、ファンタスティックな寓話の2、ユーモア系の5と6(ベタなオチの後者より、シニカルな前者が好み)、そして白眉は、都市型ミステリ(にして心理的ホラー)の雛型といえる4でしょう。
初読時より、この「群衆の人」の不気味さがはるかに増して感じられることに、驚かされました。風俗的な描写は古びても、属性の集合体として群衆をとらえ、そこから匿名の個人をクローズアップする狙いと効果は、いささかも古びていない、どころか、きわめて現代的(いまの作家であれば、問題の人物を、老人ではなく青年に設定するか?)。1840年の作ですが、普遍性という点では、ポオの数ある傑作のなかでも、屈指のものだと思います。

No.1 5点 mini
(2009/07/01 09:50登録)
発売中の早川ミステリマガジン8月号は、ポー生誕200周年特集
便乗企画とは言え一応本家ポーの書評も書かないとね

創元文庫の全集は単純に各短編を発表順に並べて全4巻に分けただけ
世界最初の探偵小説「モルグ街」が第3巻目収録だから、ミステリー作品は第3巻と4巻に収録されてるだけという理屈になるが、「モルグ街」以前の作品しか収録されていない第1巻と2巻にはミステリー的な作品は無いのか?
第1巻には「メルツェルの将棋指し」が収録されていたが第2巻はどうか?
第2巻はやや特殊で、ポー唯一の長編である「ゴードン・ピムの物語」が全体のページ数の半分以上を占めるので、第2巻はミステリー読者には最も無用な巻ということになる
しかし全く用無しというわけでもないのは「群集の人」という短編が含まれているからだ
「群集の人」は昔から一部のファンの間でも、”事件無き探偵小説”との声がある作である
これをミステリーと呼ぶにはちょっと拡大解釈が必要だが、ポーのミステリー作品で纏めた今年の新潮文庫の新刊でも、「群集の人」をあえて入れてあったので、ファンの間では知られていたんだな

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