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ミステリの祭典

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虫暮部さんの登録情報
平均点:6.20点 書評数:2149件

プロフィール| 書評

No.489 6点 あなたの人生の物語
テッド・チャン
(2018/08/23 12:19登録)
 小林泰三の描く異世界の如き「バビロンの塔」。森博嗣の登場人物のカリカチュアみたいで面白い「理解」。表題作を叙述トリックの亜種だと主張するのは強引だろうか?
 寡作な米SF作家の第一作品集。収録作品全般的に、9割までは文句無しに面白いんだけどラスト1割での着地点がなんだか曖昧で肩透かしに感じる。“天才”とも謳われるが、そうまでは思わなかったなぁ。


No.488 8点 紅のアンデッド
川瀬七緒
(2018/08/23 12:15登録)
 これは大躍進の一冊ではないだろうか。前作までちょいと感じられた砂上の楼閣めいたニュアンスが消えて、どっしりと地に足の着いた力強さを獲得している。ミステリ的には多少のアラも見られるが、それを補って余りあるダイナミズムとカタルシス。毎度宿命的にフィーチュアされるキュートな虫さんネタも絶好調、知らなくてもいい雑学付き。


No.487 8点 ジェリーフィッシュは凍らない
市川憂人
(2018/08/21 12:33登録)
 この動機はいいね。ミステリには時々、表層的な関係性の種類を基準に心情の動きを決め付けるような描写が見られる。親子や恋人なら復讐をして当然だがただの同僚がそこまでするのは変、とか。しかし心の距離はケース・バイ・ケースであってそんな単純に測れるものではない。本作は短いインタールードで当該人物が行動に至るに充分な説得力を示しているし、それが事件の全体像に関する目隠しとしても機能していてグッジョブ。


No.486 5点 パラレルワールド
小林泰三
(2018/08/14 12:59登録)
 混乱した心理をスラップスティックに描写する冴えた筆致と、特殊なルール設定のもとでの攻防戦、というこの作者の得意なパターンで、そりゃあ面白いに決まっているけど、得意技を投入していること自体がお約束で少々物足りないなぁと読者は贅沢にも思うのである。ラスト前の痛い場面は筒井康隆への挑戦、それとも『無限の住人』か?


No.485 5点 夜歩く
ジョン・ディクスン・カー
(2018/08/10 10:09登録)
 バーナビー・ロスは本書を読んで、13~14章、架空の殺人計画(戯曲)が他者の手に渡って云々のくだりを、拡大解釈して、換骨奪胎して、あの作品を書いた、のかもしれない。


No.484 5点 ハイパープラジア 脳内寄生者
望月諒子
(2018/08/02 11:45登録)
 タイトルそのままの話。厳しく言うなら前半は想定内の内容を丁寧に説明しただけ。
 思考が混乱して行く様を本人の一人称で書く試みについて、健闘してはいるが踏み込み不足なところも。“忘れた”と記述している時点で忘れていないよね……。
 全体的に、“品の良さ”という枠組みの中に押し込めてしまった感じで、そこが物足りない。


No.483 5点 タイトルはそこにある
堀内公太郎
(2018/08/01 12:00登録)
 まさかの東京創元社ミステリ・フロンティアということでつい手に取った一冊。軽妙さと軽薄さを混同したような作風は健在で苦笑。第一話のトリックは限り無くユメオチに近く褒められたものではないと私は考える。第四話、第五話は比較的軽さが上手く生きている内容か。
 レーベル買いという観点で見ればミスマッチ。四六判で仰々しく刊行したせいで、私のように“期待し過ぎて落差が大きく結果的に必要以上に低評価”という事態が生じる。良くも悪くもB級作家、という事実にもっと開き直るべきでは。
 あとがきの「編集者註」に、他作家に関する緩やかなネタバレ(作家名を挙げて、○○氏の作品にはこういう趣向のものがありますよ、と)が含まれるのは如何なものかと思う。特に重要なことが書かれているわけではないので、あとがきは読まなくてもいいかも。


No.482 5点 スタイルズ荘の怪事件
アガサ・クリスティー
(2018/07/31 14:06登録)
 最後に出て来る証拠品はあまりにもわざとらしく、処分に困るなら食ってしまえと思った。


No.481 4点 ずっとあなたが好きでした
歌野晶午
(2018/07/30 10:37登録)
 どれもこれも中途半端なところでぶった切ったような結末なのはどういうことか。“大きなパズルのピース” としての役割に傾注し過ぎで、個々の短編としての純粋な満足度がいまひとつ。その割に分厚いので読み進めるのがちょっときつかった。
 私の場合は、「匿名で恋をして」“ロレッタ” の由来が推測出来たので、次の「舞姫」を読んだところで全体の仕掛けがなんとなく見えた。収録順に一考の余地あり?


No.480 6点 遠きに目ありて
天藤真
(2018/07/24 12:12登録)
 非常に魅力的なキャラクターを擁する連作なので、心情的にはもっと高く評価したいのだが、ミステリとしては第一話(手掛かりが面白く、またそういう状況が生じてしまった流れに説得力がある)が頂点で、以降は少々ギクシャクしてしまったのが残念。各犯人がそういうトリックを弄した犯行方法を選ぶ理由が乏しい気がする。もっと外連味のあるストーリーならトリックも生きるが、それだとキャラクターに合わない。難しいものだ。


No.479 7点 火刑列島
森晶麿
(2018/07/23 10:26登録)
 いやーびっくりした。途中で山田正紀の本とすり替えられたかと思った。少し頭のおかしい三人組が自分のことは棚に上げて傍若無人に火災を追いかける珍道中、ではあるが後半ぐんぐん箍が外れる様がスリリングでギリギリの着地点に拍手。導入部はちょっとチャラい新本格第3世代あたりのパターンか、と感じてしまうが敬遠せずに読むべし。私は好きだ。ただ、文体は普通にしちゃったんだなぁ、このひと。


No.478 6点 シャム双子の秘密
エラリイ・クイーン
(2018/07/20 09:31登録)
 シャム双生児の刑罰に関する法律談義が面白い。

 さて、国名シリーズ9作を読み返して思ったこと。タイトルとストーリーの関わりが乏しく、国名を掲げる為にこじつけているようなケースが少なくない。で、あれば。内容の共通性があるわけでもないこれらの作品群を、さほど意味のないタイトルを基準にひとくくりにして、シリーズ内シリーズとして別枠扱いする正当な必然性はあまり無いんじゃないの?


No.477 7点 豆腐の角に頭ぶつけて死んでしまえ事件
倉知淳
(2018/07/17 12:19登録)
 倉知淳の、特に短編の文章はまぁ普通である。軽妙なユーモアを交えてはいるもののほんの味付け程度で、可笑しくて笑いが止まらなくなったりはしない。逸脱があっても適度な範囲内に留まり、コレだ!と言う存在感を主張しない文体。邪推するなら、文体(ハード)の過度の主張はミステリ要素(ソフト)の妨げになると考えているフシがある。それはそれでひとつの見識だろう。
 殊更にそんなことを思ったのは「夜を見る猫」のせい。この話の文章だけ明らかに熱量が多い。猫ちゃんの愛らしさを読者に伝える為に一字一句でも多く奉仕させるべく脳細胞を総動員した跡が窺われる。そしてそれが、妨げどころか、謎と詩情と田舎の風景の融合を果たした濃厚猫萌えミステリとして見事に成立しているのである。この路線で行けば天下取れるかも?

 表題作で語られていない情報をひとつ。凍らせた豆腐を解凍すると水分が分離して、ボソボソした中途半端な高野豆腐の如き物体になるので、見た目や感触で区別出来るようになる。従って、否定するのにあんなロジックは不要。


No.476 5点 深夜の法廷
土屋隆夫
(2018/07/13 11:00登録)
 キャラクターに面白味が無いし、証拠品をさっさと始末しない等のアラが所々見受けられる。特に、他人の眠りの状態を計画に組み込むのはコントロールが難しくリスキー。併録の「半分になった男」の妄想部分は楽しめた。


No.475 8点 私の頭が正常であったなら
山白朝子
(2018/07/12 04:34登録)
 私の気が確かなら、山白朝子というのはそれなりの知名度を持つ作家の別名義なのだが、さて一体それが誰であったか、とんと思い出せないのだ……。
 おっ、いちページ目からそそる展開だ。語り手が!妻と!!暮らしているマンションに!!!
 おー、ついちからが入り過ぎていらぬネタバレをするところであった。妻の無駄に論理的なキャラクターが可笑しい「世界で一番、みじかい小説」、結末で示される因果関係についての可能性が色々示唆的な「酩酊SF」、悲惨なホラーになるかと思いきや感動的な「子どもを沈める」等々々、まことに付け難きは甲乙、一編たりとも流し読み出来ない充実の作品集。


No.474 5点 われはロボット
アイザック・アシモフ
(2018/07/06 09:38登録)
 ミステリも物するSF作家の筆頭アシモフ。“このロボットは何故そんな行動をとるのか?”というミステリ的な短編も幾つか含む本書は、ロボット工学の三原則が初登場した記念碑的連作集。ではあるけれど、今読んで物凄く面白いわけではない。“ロボット”“知性”“感情”と言った物事の捉えかたが変化しているせいもあるし、小説としてのマナーがちょっと古い気もするし、要は“昔のSF”と言う感じ。中では「証拠」が良かった。


No.473 6点 εに誓って
森博嗣
(2018/07/03 15:32登録)
 とばっちりで殺されたバスの運転手が気の毒。最初から団体でバスを借り切っておけば済んだ話じゃないか。


No.472 8点 少女不十分
西尾維新
(2018/07/02 09:12登録)
 最近報道された事件を連想させるような場面もあって胸が痛む。変なタイミングで読み返しちゃったなぁ。
 シリーズ化しようがない内容なので雑念の入る余地が無かったせいか、非常に純度が高く、西尾維新の諸々のシリーズの隙間を埋めるパテとして十二分に機能している。10年前の出来事を文章化しているという設定ゆえ、現在の自分による突っ込みが時々うるさいがまぁ許容範囲内。作者本人による作家論、と考えるなら筒井康隆に於ける『脱走と追跡のサンバ』に該当する作品である(適当)。


No.471 6点 アメリカ銃の秘密
エラリイ・クイーン
(2018/06/25 10:13登録)
 そもそもロデオ・ショーがそんな大規模な興行として成立することがイメージしづらく、文化や時代の隔たりを感じたものだが、“クラブでキャブ・キャロウェイの新曲が演奏されていた”というくだりでなんとなくひとつにつながった。
 第8章、弾道学の場面は基本の再確認という感じで楽しかった。
 あと、これ書いたらネタバレ?犯人がサーカス芸人くずれで銃をすばやく分解して飲み込んだ、と推理したんだけど……。


No.470 8点 宵物語
西尾維新
(2018/06/19 10:54登録)
 大学生になった阿良々木暦が女児誘拐事件の噂に噛む、ミステリ怪異譚。ここだけの話だけれど、結末の神様の台詞には感動してしまいましたでした。単なるキレイゴトになりそうな台詞をこれだけ肯定的に響かせるマジックは西尾維新の面目躍如。

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