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ミステリの祭典

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少女不十分

作家 西尾維新
出版日2011年09月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 6点 メルカトル
(2019/02/07 22:24登録)
悪いがこの本に粗筋なんてない。これは小説ではないからだ。だから起承転結やサプライズ、気の利いた落ちを求められても、きっとその期待には応えられない。これは昔の話であり、過去の話であり、終わった話だ。記憶もあやふやな10年前の話であり、どんな未来にも繋がっていない。いずれにしても娯楽としてはお勧めできないわけだが、ただしそれでも、ひとつだけ言えることがある。僕はこの本を書くのに、10年かかった。

この異形の小説を前に6点という可もなく不可もない点数を付けるのは如何なものかと、正直思います。結論から言うと西尾維新ファン必読の書であり、とんでもない物語なのであります。その意味からすれば、私はダメ読者なのでしょう。
最初、自叙伝か私小説のような出だしで、これはドキュメンタリーなのかと勘繰りたくなりますが、明らかなフィクションです。ただ、己の内面や癖を吐露している数々の描写の何割かは、西尾維新自身本来のパーソナリティである可能性も否定できません。

極端に会話文が希薄で、他人には理解しがたい少女の行動と、こちらもいささか理解に苦しむところの多い主人公の心理状態と行動。こんなものを読まされて、一体どうすればいいと言うのでしょうか。しかし、序盤こそ読みにくいとか思っていましたが、それがやがて癖になるのは、多少なりとも作者に共感しているせいかもしれません。「変わっている」という感覚が、ああ解ると自分と重ね合わせている私の心持はやはり異常なのでしょうか。

No.1 8点 虫暮部
(2018/07/02 09:12登録)
 最近報道された事件を連想させるような場面もあって胸が痛む。変なタイミングで読み返しちゃったなぁ。
 シリーズ化しようがない内容なので雑念の入る余地が無かったせいか、非常に純度が高く、西尾維新の諸々のシリーズの隙間を埋めるパテとして十二分に機能している。10年前の出来事を文章化しているという設定ゆえ、現在の自分による突っ込みが時々うるさいがまぁ許容範囲内。作者本人による作家論、と考えるなら筒井康隆に於ける『脱走と追跡のサンバ』に該当する作品である(適当)。

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