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ミステリの祭典

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虫暮部さんの登録情報
平均点:6.20点 書評数:2224件

プロフィール| 書評

No.784 5点 暗号のレーニン
藤本泉
(2020/09/03 12:55登録)
 普段あまり読まない舞台設定ゆえ、'80年代ソビエト連邦と言う排外的社会の有り様は興味深い。過去を背負う諸々の登場人物にも味がある。ミステリ及びサスペンス作品としての冴えはいまひとつ。暗号はヒントを判り易く示し過ぎだが、それ自体がテーマではないのでまぁいいか。


No.783 5点 帰りは怖い
青柳友子
(2020/09/03 12:52登録)
 作者の資質は心理描写向きだが、物理的要素の大きい事件に挑んでしまい、どちらも中途半端。殺人事件そのものの説明をなおざりにして、探偵役の家庭事情を長々と語られても困る。被害者一族に関わる縁起が伝聞ばかりなのも勿体無い。秘められた鬱屈や思慕の類は得意分野だろうに。一応“雪の密室”付き。


No.782 5点 ななつのこ
加納朋子
(2020/09/03 12:51登録)
 全体的にわざとらしさが目立つ。日常の描写の中に伏線をちりばめるのはこのジャンルの基本マナーだが、本書は伏線の隙間を文章力で埋めていると言った趣でしばしば感興を殺がれた。
 その中で「白いタンポポ」のみ何故か出色の出来。“違和感を抱える心”をこんなに自然に描いた作品は、なかなか無いように思う。


No.781 7点 分解された男
アルフレッド・ベスター
(2020/08/27 14:04登録)
 完成度とか整合性とかに固執しなければ、大味ながらSFとミステリがそれなりに上手く融合しているのでは。テレパシーで情報を送る場面は、今読むとそのままデジタル技術みたい。弾丸のトリックは苦笑しつつも好み。ラスト前に垣間見る孤独な世界は本気で怖い。


No.780 8点 オクトローグ 酉島伝法作品集成
酉島伝法
(2020/08/27 14:03登録)
 キー・ワードは“粘”? 収められた短編8作、あまりにも個性が強烈なせいで、却ってどれも同じように感じられてしまうジレンマがある。ハードカヴァーの単行本が、ぬめぬめしたぐにゃりとした不定形の息物に見えて来た。(実は、例外的な作品も混ざっているんだけど……。)

 ところで、いわゆるトリビュート企画も収録されており、解説によると、それを承知で読むなら原典とのつながりはすぐに見当が付くらしい。私はそういう予備知識無しで読んだ為、結末でアレとアレが重なってオオッ~、と驚きを味わえた。作品との出会いも一期一会であって、今回のコレは私にとって偶然にも幸せな形になったと思う。


No.779 5点 ガラスの村
エラリイ・クイーン
(2020/08/27 13:55登録)
 赤狩りを主導したマッカーシー上院議員のファースト・ネームは、ジョゼフ。EQは本作で散々な目に遭う余所者にその名を与えている。露骨だ。まぁここで描かれた危うさはマッカーシズムに限らずいつでもどこでも有り得るものだし、読者が作者の意図云々に縛られる必要はないわけで、そんな知識は蛇足だけどね。


No.778 5点 誰でもない男の裁判
A・H・Z・カー
(2020/08/27 13:55登録)
 それなりに面白くはあるが、そこまで際立った特異性は感じられず。ものによっては、もう一歩踏み込んでも良いところをえぐくなる手前で引いちゃった、みたいな物足りなさ。過大評価は避けたい。

 表題作は1950年EQMMコンテスト第二席。“彼は無罪に決まっている!”と言う“圧”の中での裁判の話。(読むタイミングが偶然重なって過剰に意識しちゃったけど)エラリー・クイーン『ガラスの村』(1954年)の逆パターンだ。


No.777 7点 メルカトルと美袋のための殺人
麻耶雄嵩
(2020/08/27 13:54登録)
 ミステリのスタイルやルールを“どのように”扱うか、と言うメタ的興味が麻耶雄嵩作品のキモであるが、核になる事件自体は割と正統的な(≒今読むとややしょぼい)フーダニットに思える。そのせいで“地味な短編に奇妙な味のエンディングが付いている”だけのように見えてしまうところがあって損だな~。やっていることを考えるともうちょっと感じるものがあってもいいところ。
 「遠くで瑠璃鳥の啼く声が聞こえる」は非常にエクセレント。
 「ノスタルジア」の “A≠A´ (を呼び方と絡めるトリック)”は他の短編で再利用していて、使い方としてはそちらの方が思い切りが良い。その点がちょっと微妙。


No.776 7点 オレだけが名探偵を知っている
林泰広
(2020/08/20 17:55登録)
 真相はちょっとずるい。“ルールを優先して、やれることをやらないのは怠慢”と言う登場人物の哲学を実践しているのか。でもそれを小説として成立させる為の肉付けが、いつの間にか暴走し肥大化し、ロジカルなのに歪な異物を生んだのだ。思考実験やらマネジメント論やらをあちこちの本から集めてツギハギしたのではと邪推も可能だが、編集が巧みなので私は楽しく読んだ。パターン通りではない物を書こうと言うその意気や良し。


No.775 8点 双頭の悪魔
有栖川有栖
(2020/08/20 17:53登録)
 気になった点。
 Xが殺したかったのは片方だけなのか両方なのか。
 “手紙の工作”は少々わざとらしい手掛かりだ。インクが違えばばれる。また、密会の理由が警察に伝わってしまう。再利用ではなく新たに(脅迫状とか懸想文とか)でっちあげた方が捜査の攪乱に有効では。
 マリアがモデルを務めたのは裸婦像かと思ったが、読み返すと幾つか否定的な記述が。ちっ。


No.774 7点 匿名交叉
降田天
(2020/08/20 17:51登録)
 前作と似た趣向とはいえ、仕掛けが効いていて楽しめた(刊行順に読んでないのが良かったかも)。登場人物への共感と嫌悪感を両立させる匙加減が上手い。

 ネタバレしつつ揚げ足取り。
 “ネット上でつながったAとBがリアルでも身近な関係だった”と言うのは御都合主義的ではないか? との疑問に対して、“それを承知の上で結び付けた第三者C”が示され一応納得。
 しかし、その行動は“AとBが、互いのブログについては知らない”ことが前提。その状況は充分有り得るし、そうでなくてもCの不利益にはならないから、決定的な矛盾ではない。
 ただ、Cがその“前提”について何も考慮していないのは、作者が“Cの持つ情報の範囲”を意識せずに筆を滑らせちゃった感じもする。


No.773 5点 陽気な容疑者たち
天藤真
(2020/08/20 17:46登録)
 ベースの部分をしっかり持っていて、その上で軽妙な表現を上手にコントロールしているような筆致は好感度大。ユーモア小説として高く評価したいのだがしかし。
 
 ネタバレしつつ書くが、ミステリとしては何か変だ。
 これは、不測の事態によって計画変更を余儀なくされ即興的にプランBを実行、と言う話である。
 さてそれでは、当初の計画で、侵入する予定だったのは誰か? 誰もいないのだ。探偵役の解説でもその点がいつの間にかあやふやになっていて、もしや読者を煙に巻くことがあの会話の目的だったのか。

 もう一点。“目撃者”がいるけれど、あの存在は何なのか。見て、告げて、かと言って犯人に絡むわけでもない。あの人は何がしたかったのか。作者はあの人で何がしたかったのか。


No.772 5点 スキュラ&カリュブディス 死の口吻
相沢沙呼
(2020/08/20 17:45登録)
 設計段階ではそこそこ良かったのに、安い材料で組み立てちゃった? 読み易さを優先していると考えればこれはこれでアリか。
 私は予備知識無しで純ミステリのつもりで読み始めたので、中盤の逸脱して行く感じは良かった。私はねむりの部屋なら住める。


No.771 6点 忘却のレーテ
法条遥
(2020/08/12 13:10登録)
 冷徹な文体が“狙い過ぎ”な感じで多少鼻に付くきらいはあるものの、決して出来が悪いわけではない。
 ただ、こういうガジェットを組み合わせた話は幾つも読んだ。それらの類似性については大らかに受け入れているつもりだが、どうしても後出しの方が不利になってしまう。特に“天才”はパターン化しがちだ。


No.770 7点 緋文字
エラリイ・クイーン
(2020/08/12 13:09登録)
 動機を理由にアレが(減刑や猶予でなく)無罪になるとは驚き。しかもそれが当然の不文律として広く認知されている? どの程度リアルな話なのだろうか? 実際にああいう事件を誘発しかねないのでは? 陪審員制の危うさが印象に残った。
 ダークなんて名前アリなのかと思ったらスペルは Dirk とのこと。


No.769 8点 宇宙の孤児
ロバート・A・ハインライン
(2020/08/04 11:41登録)
 中編2編を組み合わせた長編、と言う出自のおかげか、勿体振ったところが無く、スケールの大きな物語がテンポ良く読める。この手の設定(中世的な閉鎖世界、実は巨大宇宙船で……)の作品の中では、必要にして充分な要素が的確に配置された、規範のような一編ではないか。
 一つの肩に二つの首が並んだジョウ=ジムは主役を喰って本作の顔。昨今こういう異形キャラクターは作家が自主規制しがちでもう出て来ないかなぁ……。


No.768 7点 罪人の選択
貴志祐介
(2020/08/04 11:40登録)
 ミステリ1、SF3の短編集。
 表題作はヒントの台詞が判り易く、仕掛けが概ね読めた。しかしそれでつまらなくなるわけでなく、“こう来たか” と楽しめた。この手の謎は、特殊な知識が無くても “こういう性質のモノがあればこうなる” と推測出来れば “御名答!” でいいよね。
 「赤い雨」。子供っぽい登場人物ばかりでジュヴナイルかと思ったが、初出は別冊文藝春秋。


No.767 4点 カフェバー「クロ」の殺人調書
青柳友子
(2020/08/04 11:38登録)
 この軽さは私には合わなかった。'80年代後半東京の社会風俗言葉遣いについての資料、ってところ。“ナウい”やら“花金”やら、本気で使っているのかジョークなのか今となっては判断出来ません。「露天風呂の泥棒」が、謎解きストーリーでない故に却って面白かったことは明記しておくべきだろうか。


No.766 8点 すみれ屋敷の罪人
降田天
(2020/08/04 11:36登録)
 いわゆる叙述トリックは使われていない(よね?)が、証言の積み重ねで視点人物がコロコロ変わる、いかにも仕掛けのありそうな形態。なので、ついメタ的な方向への警戒に余計なリソースを割きつつ読んでしまったことが悔やまれる。もっと素直に物語自体に没入して大丈夫だった。
 多面的に語られる群像劇。人の世の光と影。見え方を二転三転させる構成も良く出来ている。そしてその上で、作者の筆は人物の“情”に重きを置いており、私はその熱量にこそ撃たれた。技術の使い方を知っている人、だと思う。


No.765 6点 M.G.H.楽園の鏡像
三雲岳斗
(2020/07/31 12:26登録)
 “森博嗣以降”の理系キャラクターって感じ? しかし主人公はともかく、“天才”がステレオタイプに思えて物足りない。

 第一の殺人。正直、トリックに絡む部分の構造がいまひとつ把握出来ず。何が起きたかはどうにか理解したものの、“こういうことが起こり得る配置だった、ということなんだな”と逆方向に納得するしかなかった。
 第二の殺人。犯人はトリックの為の道具の類を持ち込んだわけではなく、現場の構造・設備を悪用しただけ。つまり純然たる事故でアレが起きる可能性がもともとあったのでは。欠陥施設だよねぇ。

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