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ミステリの祭典

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恐怖の研究
エラリイ・クイーン、シャーロック・ホームズ

作家 エラリイ・クイーン
出版日1967年01月
平均点5.17点
書評数6人

No.6 3点 レッドキング
(2021/01/07 22:06登録)
切り裂きジャックとシャーロック・ホームズは、19世紀末倫敦の永遠の霧の神話だから、どんな現代的解釈も色褪せてしまう。島田荘司の合理的ホワイ解決小説はそれなりに面白く、「漱石と倫敦ミイラ~」も悪くはなかったが・・・
※「エラリイ・クイーン」、ミステリ史上の大作家であり、名探偵の一人でもあるが、「エドガー・アラン・ポー」「シャーロック・ホームズ」みたいな神話的名詞って程ではないんだよな。

No.5 7点 虫暮部
(2020/11/18 11:04登録)
 ホームズは殆ど偶然で犯人に辿り着いているように思える。もしかして、あの人がホームズを誘導した、と言う操りテーマなのか?
 “EQが描くホームズ”との前提で読むと、私は斯様にあちこちから批評性を勝手に読み取ってしまう。“容疑者が四人”なんて言うから、すわホームズが消去法推理を? と期待してしまったぜ。

No.4 4点 クリスティ再読
(2020/02/04 22:25登録)
ハヤカワでのクイーン長編作品リストには、本作がカウントされているので、ハヤカワ的には正典扱いである。しかしネヴィンズの「推理の芸術」では「二百万ドルの死者」同様に「エラリー・クイーン名義のペーパーバック長編(いわゆる「外典」)」にカテゴライズされている。エラリイが登場するからには、本作の外枠部分はダネイ&リーのものではあるが、量的にも質的にも、大したことはない。
「推理の芸術」によると、ジェイムズ・ヒル監督、ドナルド&デレク・フォード兄弟脚本の映画「恐怖の研究」(1965英)があり、そのノベライゼーションの権利をランサー社が取得した。ノベライズを依頼されたカーが体調不良を理由に断り、それがクイーンの元に来たらしい。で、実際の映画ノベライゼーション部分はポール・W・フェアマンというSF作家が執筆している。「推理の芸術」では内容が結構違う...なんて書いているが、Wikipedia の映画の内容紹介で見るかぎり、そう違わないみたいだ...クイーンが書いた外枠物語を含め、クイーン監修、という名義貸し程度のもののようである。このランサー社がペーパーバック外典クイーンの最後の版元ということもあって、断れなかったとかオトナな事情があるような雰囲気。
内容的には、とにかく薄味。フェアマン執筆のホームズvsリッパーの本編の方も、ノベライゼーションを割り引いてももう少し小説らしい描写をしてよ、と思うくらいにペラペラの話。ホームズ&ワトソンと名乗っても、どうもそういう香りがしない。パスティーシュは愛こそすべて、って思うんだよ。これじゃタダのお仕事。
外枠のエラリーの話の方は、内容的にもダネイ&リーらしさはあるから「代作?」というような疑問は浮かばない。ただし、ここで扱う謎が大したものではないし、最後にエラリーが推理する内容も全然意外じゃない。あの本編内容で、何を推理すればいいんだろう?というくらいのもの。お約束通り、映画の真犯人をひっくり返してみせる。
まあだから、クイーン的にはリレー長編の解決篇を不本意ながら引き受けさせられた、というくらいに捉えた方がいいのだろう。

No.3 5点 nukkam
(2016/07/30 06:24登録)
(ネタバレなしです) 1966年発表のエラリー・クイーンシリーズ第28作はクイーン単独執筆作ではありません。シャーロック・ホームズ映画(1965年)の脚本をSF作家のポール・W・フェアマン(1916-1977)が小説化し、さらにクイーンが探偵クイーン登場場面を加筆して完成させた作品だそうです。私にとっては実在の犯罪者である切り裂きジャックを初めて知ったのが本書ということでそれなりの思い出のある作品です。物語の大半が「医学博士ジョン・ワトソンの記録」で占められています。冒険スリラー風な展開でサスペンス豊かですがあまり本格派推理小説らしさは感じられません。もっともコナン・ドイルによるオリジナルのホームズシリーズにもそういう作品はありますからそれほど違和感はありません。活動的なホームズに対してエラリー・クイーンの方はエームズ3世との漫談風場面や記録を読む場面ばかりでほとんどぐうたら探偵です(笑)。クイーン場面は無理に後づけされたという印象は拭えないものの最後を本格派推理小説として締めくくることには貢献しています。

No.2 7点 Tetchy
(2012/04/30 22:43登録)
とにかく1章当りの分量が少なく、おまけに1ページ当りの文章量も少ない本書はサクサク読めることだろう。特にホームズ作品に慣れ親しんだ読者ならば実に親近感を持って読めるに違いない。
そしてやはりクイーン。単にホームズによる事件解決に話は留まらない。まず送られた原稿がワトスン博士によるものかという真偽の問題から、ホームズの解決からさらに一歩踏み込んで別の解決を導く。そしてその真相をワトスンの未発表原稿を叙述トリックに用いているのだからすごい。この発想の素晴らしさ。さすがクイーンと認めざるを得ない。

事件の真相はエラリイのよって最後のたった8ページでバタバタと解決される。しかし詳しい動機については作中では触れられない。しかしそれでも読者ならば公爵の動機がおのずと浮かび上がる。
当時の貴族という人種の精神の気高さと身分制度がもたらした差別意識の深さを考えると納得がいく。彼らにとって売春婦などは死んで当然の人間以下の虫ケラの如き存在にしか過ぎないからだ。この心理状態は数多く古典のミステリを読めば理解が深まる。特にジョン・ディクスン・カーの『エドマンド・ゴドフリー卿殺害事件』は裁判の不公正さのひどさも含めて良いテキストになっている。

物語として、また一連のクイーン作品群の中においても出来栄えではごく普通の作品に過ぎないかもしれない。しかしこの作品が内包する当時の時代背景や世情、さらにこの作品が書かれた背景を考えるとなかなかに深い作品だと云える。

No.1 5点
(2009/05/26 21:29登録)
ドイルの存在を無視し、ホームズとワトソンを実在の人物とした設定の話です。
エラリーがワトソンの未発表原稿を持ち込まれ、読み進んでいく部分は、ホームズ対ジャック・ザ・リパーの冒険部分に比べて、少なくとも翻訳ではかなり軽いタッチで描かれています。エラリー登場部分がホームズ物語の途中に所々はさまれる構成には否定的な意見が多いようですが、このCM挿入的な発想は個人的にはかなり新しい感覚でおもしろいと思います。
ホームズ映画のノヴェライゼーションが元になっているそうですが、その映画を見ていない(日本未公開らしい)ので、ホームズ部分のストーリーがエラリー登場部分とのかねあいでどうアレンジされているかまではわかりません。
ホームズのパスティーシュとしては、それらしい雰囲気もあってなかなか楽しめたのですが、最後のエラリーの推理はこの時期の作品としても、もう少し論理的な厳密さ、鮮やかさが欲しかったな(特に動機の掘り下げについて)という気がします。

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