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ミステリの祭典

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バトル・ロワイアル

作家 高見広春
出版日1999年04月
平均点6.50点
書評数4人

No.4 8点 虫暮部
(2020/12/11 12:05登録)
 強引な引力を備えた話だ。バトル開始と同時に“他者の信義に期待する平和主義者=愚か者”と言う価値観に思考がシフト。殺人欲が刺激される。
 体力の無い私としては、前半は隠れて漁夫の利狙いか。一か八かで山火事を起こすのはどうだろう。機動性や脚の保護を考慮するとスカートは不利だから、女の子は死体から奪ってでもズボンに穿き換えるべきでは?
 文庫版解説では色々もっともらしい事が述べられているけれど、“中学生がガンガン殺し合う娯楽作品”と言う表層通りの読み方でもいいと思う。或る種の過剰さに意義があるとはいえ、1クラス分の人数を書き切るとは、作者も良く頑張った。

 あの彼がのべつ幕なしに煙草を吸っているでしょ。煙草の臭いは人の存在を示す重大な目印になって危険なのに。でもニコチン依存症になっちゃうと、そういう冷静な判断が出来ないらしい。
 山中に隠れた犯人が、警察の山狩りからは逃げおおせたのに、ニコチン切れに耐えられず煙草を買いに町に出て御用――と言う事例が実際にあったそうな。依存症って怖いね。

No.3 5点 tider-tiger
(2020/11/23 13:04登録)
二十年近く前に読んだのですが、再読はきついのでその時の印象をそのまま書きます。
大誤解されている作品だと思っています。
非常にシニカルな視点で描かれておりますが、そこがあまり理解されていないのではないかと。理解されなかった理由は書き方が非常に稚拙だからです。言い回しが下手だと皮肉は皮肉として認識されないのです。
作者の意図がまったく読者に通じず、それ故に大ヒットしてしまった作品だと自分は認識しています。

No.2 5点 Tetchy
(2013/04/24 23:54登録)
当時角川ホラー大賞に応募し、最終候補まで残るものの、審査員の不評を買い、落選したところを太田出版にて出版され、大いに話題になり、映画化もされた曰くつきの作品、とここまでの事情を知らない人はあまりいないだろう。その後映画はパート2も作られ、そのノヴェライズは杉江松恋氏の手によってなされた。つまり本書の作者高見広春氏による作品はこの作品のみ。

キャラクターそれぞれは個性があるものの、正直云って非常に稚拙だ。本当に素人が書いた文章で、話、設定ともに実にマンガ的。いや文字で書いた漫画を読まされているような気になる。

本書のように複数の人が限定された場所で殺し合いをするという小説は他にもある。例えば稲見一良氏の『ソー・ザップ』などがその典型だが、味わいは全く違う。『ソー・ザップ』には最強の名を賭けて戦う男の矜持や美学が盛り込まれていた。しかし本書では単なるゲームとしての殺し合いとしか捉えられない。それはやはり中学生が殺し合うという設定と国が率先して教育の一環として行っているという胸のムカつくような荒唐無稽さにあるのだろう。
恐らく作者自身もそれには自覚的で「やるならとことんB級で」といった気概も感じられる。それに乗れるか乗れないかで本書の感想や物語への没入度は全く異なるだろう。

しかし話題先行型だが本書のような作品が100万部も売れたとは、刊行された1999年とはまさに世紀末だったのだなぁ。いや世紀末だからこそこのような退廃的な作品が受けたのかもしれない。まさに時代の仇花として象徴的な作品だ。

No.1 8点 メルカトル
(2012/11/22 22:14登録)
再読です。
私は不思議だった。なぜこれまで、映画化され劇画にもなったこの有名な作品が書評どころか、登録さえされなかったのか。
確かにミステリではないし、そうした意味で誰も書かなかったのかもしれないが、例えば『イニシエーション・ラブ』のような作品に多くの書評が寄せられているのだから、本作にも一人くらい書評があってもいいだろう。
もう既にみなさんご存知だと思うが、概要を簡単に紹介しよう。
極東の島国、大東亜共和国では今年も“プログラム”が実施されようとしていた。
城岩中学3年B組の生徒達は修学旅行に向かう途中で、催眠ガスにより眠らされ、瀬戸内海の沖木島に運び込まれる。
そして彼らは目が覚めた時、自分たちが“プログラム”の対象クラスに選ばれた事を知る。
そのプログラムとは生徒同士で最後の一人になるまで殺し合う、といういたって簡単なもの。
勿論反則はない、決められた時間内に禁止エリアに残っていた者は強制的にはめられた首輪が爆発し、死亡する。
また、24時間誰も死ななかった場合もすべての生徒の首輪が爆発し全員死亡する。
よって、優勝者はなしということになる。
この究極の緊張状態の中で、その気になる者、自殺する者、仲間同士で集まって篭城する者、拡声器で呼びかけて殺し合いをやめさせようとする者など様々。
本作は著者が三年の年月をかけて描かれた、究極のサバイバル・ゲームであり、それぞれの青春模様を浮き彫りにした力作だ。
とにかく面白く、読者は余計な雑念を忘れてそれこそ夢中でその世界に入り込める、得がたい経験をすることになるだろう。
大部分の生徒のプロフィールが紹介されている辺りも、考えてみれば凄いことだと思うし、一体誰が誰を狙うのか、最後まで生き残るのは誰なのか、興味は尽きないところだ。
このタイプの小説が好きで未読の方は、是非読まれることをお勧めする。
尚、映画はかなり脚色されているので、映画を観た人も原作を読む価値は大いにあると言いたい。

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