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ミステリの祭典

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万博聖戦

作家 牧野修
出版日2020年11月
平均点7.00点
書評数2人

No.2 7点 糸色女少
(2021/03/07 20:14登録)
昔は良かったわけではないと思う。「昔」には、歪んだり捏造されたりした記憶も含まれている。美化と忘却とで、過去は粉飾される。
でも今が暗いトンネルで、抜けた先にももっと暗い予感しかない時、人はつい「良かった昔」を繰り返そうとする。東京オリンピック、大阪万博...。
万博は、未来への夢と希望を込めた祭典だ。ついでに政治や経済や誇大広告も、ぎっしり。1970年の大阪万博を前に、一部のは、オトナが実は侵略者で、本来の人類であるコドモに憑依しては面白い事や楽しいことを奪ってオトナ化し、奴隷化していることに気付く。オトナ化されるコドモの心は色褪せて、世界はモノクロになってしまう。この作品では、コドモ軍は自分たちの武器でオトナと戦いが、圧倒的な権力と組織を持つ彼らに追い詰められる。
そして作中では2025年ではなく37年に、再び万博がやってくる。すでに直線的な時間に肉体を侵されて、大人となっているかつてのコドモは、再び立ち上がることが出来るのか。戦いの先に何があるのか。奇想と社会風刺と友情が、たっぷり詰まった一冊。

No.1 7点 虫暮部
(2020/12/11 12:04登録)
 基本は壮大な与太話、されど前半の歪んだノスタルジーにせよ、後半の暗くて明るい未来予想図にせよ、塗り込められた悪意の質・量ともに半端ではない。世界は何故こんなに悲しいのか、うつろな笑いに託して問いかけてくる。
 最後まで主人公の心に潜む重石である割に、ヒロイン波津乃未明の存在感が弱い。或る種の過剰さに意義があるとはいえ、ちょいと長くて読み疲れたかな。

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