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ミステリの祭典

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虫暮部さんの登録情報
平均点:6.20点 書評数:2254件

プロフィール| 書評

No.1194 7点 名探偵の証明
市川哲也
(2022/05/09 11:48登録)
 事件全体が “名探偵” の存在を前提に構築された広義の “作り物” でラストにひっくり返す。またこのパターンで来たか(マイナス)、ってなもんで驚きは無かった。それはそれとして良く出来ている(プラス)とは思う。
 基本的には好きなタイプ。その上でプラスとマイナスが拮抗。
 殺人犯が “近付くと自殺するぞ” と牽制するのは有効なのか?


No.1193 4点 一寸法師
江戸川乱歩
(2022/05/09 11:47登録)
 確かに江戸川乱歩の世界、ではあるが、それ以上の突出したものは感じられない。何より肝心の一寸法師と事件との関わり方が “アレッ、そんなもん?” て感じでがっかり。


No.1192 6点 パノラマ島奇談
江戸川乱歩
(2022/05/09 11:47登録)
 妻は島に閉じ込めれば済むのであって、殺す必要は無かったよね。その点にどうしても譲れない状況や心情がきちんと設定されていると良かった。
 パノラマ島の様相は盛り過ぎで胃もたれする。モテキ神輿? なんて思っちゃ駄目だよ私。


No.1191 6点 シャーロック・ホームズの事件簿
アーサー・コナン・ドイル
(2022/05/03 12:22登録)
 ミステリとして「ソア橋の怪事件」、奇譚として「ライオンのたてがみ」「覆面の下宿人」、ユーモアSFとして「這う男」が良い。

 と言うことで、コナン・ドイルによるシャーロック・ホームズ譚を一通り再読。私にはこのシリーズ、チャック・ベリーのように思えた。
 1.強烈なキャラクター性と先駆者ゆえの有利なポジションによって、後進に直接間接の大きな影響を誇る。
 2.引き出しは決して多くはなく、しばしば使い回しが見受けられる。
 3.原典よりかっこいいカヴァー・ヴァージョンが多数存在する。


No.1190 5点 バラバの方を
飛鳥部勝則
(2022/05/03 12:20登録)
 ムード良しキャラクター良し。印象的な台詞や場面が幾つもある。抽象的な動機や、それとは対照的なタブローの形而下的メッセージも可笑しく、かなり好き。しかし。
 計画的犯行であり、犯人は必要な道具類を予めホームセンターで購入している。それなのにアレだけは現地調達で、それが(唯一の?)手掛かりとなって犯人確定。
 と言う不自然さは私にとって無視出来ない瑕疵で、評価を大幅に下げざるを得ない。


No.1189 5点 安楽探偵
小林泰三
(2022/05/03 12:19登録)
 Lazy Detective ――どういうことだろう。明らかにこの連作短編のうち幾つかは、作中で示された真相とは別の真相が仄めかされている。しかし最終話に至ってもその “真の真相” が語られることはないままだ。
 確かに “読者に対して親切に書かないことが読者に対する親切” みたいな芸風の人ではあるが、一体何があったのだろうか。

 考えられる可能性は以下の通り。
 1.ものぐさな作者は最後まで説明するのが面倒になった。
 2.“真の真相” が某国の機密に関わっていた為、最終話を差し替えられた。
 3.この問題点への対処法によって読者を選別している。選ばれた読者は泰三の国へ迎え入れられ幸せに暮らせると言う。


No.1188 5点 魔王城殺人事件
歌野晶午
(2022/05/03 12:17登録)
 今にも子供が戻って来るかもしれない状況でデジカメに偽装工作、と言うのはサーヴィス精神が過剰かな?
 机に刻みこまれていた“19845150OU812” は知名度がどの程度あるんだろう。VHのアルバム・タイトルですよ。


No.1187 3点 猟人日記
戸川昌子
(2022/05/03 12:14登録)
 何か変だ。
 ネタバレするけれども、ドンファン本田一郎が罠に掛けられ有罪判決、二審の弁護士が調べ直すと、背後に怪しい人物が浮かび、しかしそれはダミー犯人で真犯人は別にいた、と言う話。
 さてそれでは、ダミー犯人は誰に対するカムフラージュなのか?
 
 警察の見解は “殺人犯=本田一郎” で、ダミー犯人を認識すらしていない。
 素直に読めば、冤罪だと信じて調べる人間が現れ、血液型の関係者に辿り着くことまで見越して、予め彼に対するミスディレクションとして背後にホクロの女をちらつかせたことになる。でもその結果、弁護士は “この事件には裏がある” と思ったのだから本末転倒である。
 それだとまるで “本田一郎に濡れ衣を着せる計画を露見させて、その犯人としてホクロの女を警察に差し出すこと”  が真犯人の真の目的だったみたいだ。忘れてはいけない、本田一郎への復讐こそ真犯人の狙いなのである。
 記述に曖昧な部分があり、それも含めた好意的な解釈として、“復讐の動機を持ったこの女が羨しくなり、果ては私がこの女になり変ったらと考えはじめていた” と書かれているように、真犯人の思い込みによる精神的融合、カムフラージュではなく変身願望の発露、みたいな考え方も可能だが、それならそこをもっと読者に強調すべきでやはり苦しい。

 だからこう言うしかない。本作では、読者のメタ視線に対する偽装工作を真犯人が非メタなまま行っている。
 読者が “冤罪” を前提に読み進めることを利用した、意図的な引っ掛け――だったら面白いけど、それは無いよね。作者のミスだ。


No.1186 8点 殺戮にいたる病
我孫子武丸
(2022/04/26 13:20登録)
 気持悪い! グッジョブ!
 些細なことだが、途中から協力する記者に特別な動機付けが無く、作者にとっての作劇上便利な手駒に過ぎない点はバランスが悪い。いつの間にか消えちゃってるし。実はこの本が彼の書いたルポって設定? それは無いか。


No.1185 7点 妖都
津原泰水
(2022/04/26 13:20登録)
 拡散しつつ収斂して、めまぐるしく点と点をつなぐスピード感。毒を脳の隙間にねじ込むような語り口。出番の少ない人物でもキャラクターは濃厚。ただ、ラストがな~。いくら作者本人が“終わりきっちゃっている”つもりでも、これでは単にピリオドの打ち方を知らなかっ


No.1184 7点 ゼロ時間へ
アガサ・クリスティー
(2022/04/26 13:19登録)
 レディ・トレシリアンなる古い考え方の石頭キャラが、ACの手に掛かるとそこそこの好感度と共に読めてしまうのが不思議。
 3章の8。トマス・ロイドがバトル警視に仄めかす “考えられる唯一の人物には、あの殺人を実行するのは不可能だった” って誰のこと? そしてその後、警視がテッド・ラティマーについて語るが、いつ彼のことをそんな風に知った?
 計画の概要とか偽の手掛かりとかEQみたい。


No.1183 6点 断罪のネバーモア
市川憂人
(2022/04/26 13:18登録)
 色々頑張っているのは判る。ただ、細かい部品が多過ぎて、組み立てた時に、全体のフォルムに驚くのと、細部の巧緻さを愛でるのと、両立しがたい感じ? 作品の欠点ではなく、あくまで私とはちょっと合わなかったと言うことで。
 最後に出て来る犯人の毒を吐くキャラクターは良かった。


No.1182 6点 模像殺人事件
佐々木俊介
(2022/04/26 13:17登録)
 長らく疎遠だった親類なり知人なりに再会した時、相手を見分けられるか? 入れ替わっていたら気付くか? 本作では、入れ替わりが成立している反面、“気付かないのはおかしい” と言うロジックが推理に採用されていて二重基準っぽい(アンフェアだとは言わないが)。
 骨格は悪くないが書き方で損をしていると思う。整理するところはして。横溝正史ばりの展開の中に “モバイル接続” とか出て来るのはやはり興醒め。冒頭を読み返すと味わい深い。

 “ホワットダニット” は変な言い方だね。 whodunit の who が what に変わっただけだから “何がやったか” の意味でしかない。“ホワッツダン(what's done)”とでも言うべき、と言うかあんな台詞はいらん。


No.1181 7点 魔術師
山田正紀
(2022/04/23 12:49登録)
 神獣聖戦シリーズは作者本人による『神狩り』のリメイクみたいなものだと思う。デビュー時より語彙が増えた分、虚構性の切迫感も増強されている。“鉱脈を掘りあてたかもしれない” とのコメントや『神狩り2 リッパー』との共通性もむべなるかな。但しキャラクター造形も相変わらずなのである。


No.1180 7点 NかMか
アガサ・クリスティー
(2022/04/23 12:48登録)
 誘拐事件の真相が判ってみれば、知らなかったとはいえ残酷な成り行きに皆で手を貸してしまったんだな~、と言う点が最大のインパクト。
 主にタペンスのせいでふわふわした漫画的なイメージ(悪い意味ではない)。背景の政治的設定とかよく判らないがどうでもいい。登場人物は多いけど意外に混乱せず読めた。


No.1179 6点 アルファ系衛星の氏族たち
フィリップ・K・ディック
(2022/04/23 12:47登録)
 シミュラクラの事故に見せかけて人を殺せないか、と言うアイザック・アシモフばりのSFミステリ的テーマが示されて心が躍る。が、あっさり脇に追いやられ(まぁその手の緻密さはディックは苦手そうだし)、B級スパイ・スリラーのパロディみたいな流れになって残念。
 アルファ系衛星の氏族たちは出自を鑑みると結構まともじゃないか、と思うのは、精神疾患に関する私のステレオタイプな理解の方が寧ろ偏見だからだろう。粘菌のキャラクターがナイス。


No.1178 6点 一九八四年
ジョージ・オーウェル
(2022/04/23 12:46登録)
 作者は訴える “こういう社会はひどいね!”。
 私は応える “そんなの判っとるわ!”。

 普遍的な価値観に則った小説は、しばしばその価値観に過剰に寄り掛かっている気がしない? いや、必ずしも “普遍的” ではないのかな。現代日本の或る程度標準的な立ち位置で読む限りに於いて、と言うことで。
 大雑把な言い方だが、社会の悪い部分なんて似通っているものだから、それを描けば、あとはちょっとした運次第でタイムレスな作品として高評価されるのではないか。
 意地悪く言えば、それは作家にとって “楽な道” だと私は思ってしまうのだ。

 本作は、ディストピア小説としてはあまり飛躍が無くて普通(アングッドな意味で)。作者の物凄い想像力による予言の書、とか言う感じではない。
 途中で長々と挿入されるゴールドスタイン哲学の妙な説得力には要注目。統治して転向させる為の様々な手法もアナログで楽しい。あれじゃ責める側も大変だ。


No.1177 5点 気まぐれスターダスト
星新一
(2022/04/23 12:45登録)
 ジュヴナイルは別として、一貫した “時代性の無さ” が、まさに星新一。初出情報が無いのは手抜きだな~と思っていたが、読むうちにどうでもよくなった。中には “えっ、星新一がコレを?” な短編もあって、逆説的に “星新一とは何か” を照らし出しているあたり興味深い。土着的ホラーになりそうなのをサラッとまとめた「珍しい客」が私には印象的だった。
 しかし物凄く面白い作品集と言うわけではまぁない。【星】の【屑】とは言い得て妙。いや、逆かな。最低ラインがコレって凄い、と言うべき?


No.1176 6点 フランケンシュタイン
メアリ・シェリー
(2022/04/16 12:25登録)
 イメージと全然違うな! これは見た目が醜いと言うだけで差別された者の哀話。

 意外や怪物のヴィジュアルについての記述は僅かしかない。“身の丈八フィート”で “均衡を欠いた姿”だけど “髪は黒くつややかに伸び、歯は真珠のように真っ白” だって。包帯を巻いたり釘が刺さったりの記述はありません。あとはひたすら醜い醜い醜い、だから、中身も恐ろしい怪物に違いない、と決め付けられた。
 同じことが小説の外でも起こっている。実は彼、頭は冴えていて饒舌だし、本質的には素直だし、運動神経も抜群。ところが、総身に知恵が回りかねみたいな、コミュニケーション不全のメタファーみたいなキャラクターが、二次創作三次創作で捏造されてしまった。

 つまり怪物は小説の中でも外でも、“醜い大男” に相応しい(と思われがちな)内面だと誤解されたのである。因みにそこまで暴れまくり殺しまくったわけでもない。
 “判り易い表層的なイメージが、正しい情報よりも、如何に一人歩きするか” と言う作中のテーマを見事に実世界でも体現してみせた。天晴れである。風評に囚われていた私は伏して怪物に許しを請わねばならない。

 小説としては、真ん中あたりに位置する怪物の自分語りがめっちゃ面白い。その前後は、物語成立の手続きをきちんきちんと踏んでいるところが堅苦しい。ここにもっとメリハリがあればなぁ。夫の詩を引用しているのは御愛嬌。


No.1175 6点 モーツァルトは子守唄を歌わない
森雅裕
(2022/04/16 12:25登録)
 クラシック音楽には詳しくないので小説として読んでも楽しめる。ポップ・ミュージックだと突っ込みどころが多くてそうは行かないんだよね。
 ユーモアのタイプとしても好みだし、見せ場の連続でだれずに読めたが、さて振り返ってみると物語はふにゃふにゃしている。特に、注目されると差し障りがあるなら「子守唄」を握り潰せばいいのに、そうせずに別名義で出版させた、と言うくだりが腑に落ちない。

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