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ミステリの祭典

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たまさか人形堂物語
たまさか人形堂/別題『たまさか人形堂ものがたり』

作家 津原泰水
出版日2009年01月
平均点6.50点
書評数2人

No.2 7点 虫暮部
(2022/06/04 13:52登録)
 ミステリと呼ぶには謎の輪郭が曖昧だし、きちんと着地もしていない。しかしそういう、ジャンル的に割り切れないところこそ、この作家の持ち味なのだと判って来た。人と人との間の湿り気が上手く文章化されていて、かと言ってべた付かないその程好さが良い。創元推理文庫版は書き下ろし短編を追加収録。

No.1 6点 tider-tiger
(2019/01/03 20:45登録)
~広告代理店でリストラを食らって無職になった澪は祖父から日本人形の零細小売店を譲り受けることになった。小売りだけではやっていけないと人を雇って人形の修復も手掛けることにする。募集に応じたのは芸術家タイプの富永と職人タイプの師村。人形とそれに関わる人々が紡ぎ出す短編集。

ど素人の営む人形店に二人の天才的な職人が薄給で雇われているというのはいささか都合がよいが、キャラの魅力、人形薀蓄、話の面白さでなかなか読ませる。文章は相変わらずキレがあってよい。癖のある作家だが、本作は一般受けも狙える短編集のように思える。 
以下 収録作六篇の簡単な評を。

★毀す理由
たまさか人形堂に顔が滅茶苦茶になっている人形と、手足のもげたクマの人形が持ち込まれる。タイトルのとおり「毀れた」のではなく「毀した」わけだから、人形を修復するだけでは問題の解決にならない。富永と師村、各々が自分の担当した人形が毀された理由を考察し、相応しい修復法を模索していく。二人のキャラの違いが鮮明に描かれ、内容もなかなか面白い。ミステリとしてはホワイダニットに分類されるのか。7点
★恋は恋
富永は友人にラブドールを預かって欲しいと頼まれ、ブツはたまさか人形堂で保管されることになった。人形は人形というタイトルでもよかったかも。ミステリ色はほぼなし。現代的なフェチズムがあまり生臭くない形で描かれている。5点
★村上迷想
もっともミステリ色の濃い一篇。7点
★最終公演
人形劇の良し悪しは、その劇団の持つ狂気の度合によって大きく左右される。導入部にこのような前置きがあり、大いに期待した。話自体は面白かったが、オチが読めてしまうところ、また狂気とはあまり関係のないところに物語が着地してしまったのが残念。6点
以下二編『ガブ』『スリーピング・ビューティ』はほぼ続き物で独立した短編として個々に点数はつけづらい。普段は寡黙な師村が過去に巻き込まれた事件、たまさか人形堂の行く末などが描かれ、登場人物たちに愛着を持てた方には楽しめる内容だが、そうでない方にはどうでもいい話かも。

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