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ミステリの祭典

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誰のための綾織

作家 飛鳥部勝則
出版日2005年05月
平均点7.12点
書評数8人

No.8 8点 メルカトル
(2023/10/15 22:23登録)
あの日、あの新潟の大地震の夜、私たちは拉致され、ある小さな島に監禁された。誘拐者たちは「おまえたちに、あの罪を認めさせるため」に連れてきたのだという。復讐だった。今にも私たちを殺してしまいそうな怒りだった。その夜、ひとりが木の枝で刺されて死んだ。しかし、私たちの誰も気づかずに、彼女を殺せたはずがないのだ。犯人はどうやって「そこ」に入ったのか。そして次のひとりが死んだ…。誰が生き残ったのか、そして誰が殺したのか。作中作に秘められた「愛」がすべての鍵。
『BOOK』データベースより。

これが盗作騒動を起こしていたのは知りませんでした。まあ別にプロットやストーリーを、という訳ではなかった様なので、そんなの関係ないとそれには目を瞑りこの点数。最後まで7点か迷いましたが、こういうの好きなんで。
しかし、細かな疵もあると思います。些細な事ですが例えば、事件の発端となった出来事(と言うにはあまりに悲惨)に関しての、加害者の心情が個人的にあまり理解出来なかった点。何となく誤魔化されている様な感覚でした。あと、終盤のある二人の会話がイマイチ噛み合っていなかった気がするところも、若干モヤモヤしました。

しかし、プロローグとエピローグは凄く良いんです。これがなければ小説として破綻していたのではないかと思うくらいです。作中作だけだとあまり評価できないのは確か。ただ蛭女に関しての記述は生理的に嫌悪感を催し、蛭が大嫌いな私には結構グッとくるものがありました。蛭自体の存在をクローズアップしている嫌らしさも不気味です。又、意外性のある和室のトリックも評価します。
まあね、怪作だと思いますよ。良い意味でね。やられた感も半端ないですし。

No.7 8点 虫暮部
(2022/06/20 11:53登録)
 ①事件の展開や少女達の投げ遣りな存在感は非常に読ませる。雰囲気を補完する細かな描写も上手い。蛭女の場面は三津田信三ばりの怖さ。
 ②しかし真相はどうもぱっとしない。言い訳がましい。捻って書かないと謎にならないか。メタネタはやめて、いっそ不条理なホラーにしてもいいくらい。

 両者を秤にかけて、本作では前者(ページ数としては八割以上だしね)を重視して高評価。

No.6 5点 nukkam
(2021/11/28 23:25登録)
(ネタバレなしです) ある事件に関わった人たちが集団誘拐されて島に集められる設定が西村京太郎の「七人の証人」(1977年)を彷彿させる2005年発表の本格派推理小説で、記念すべき第10作ということで絵画とあとがきが復活している意欲作ですが、盗作指摘(正しいらしい)で有名になって絶版になってしまいました(盗作箇所を削除改訂しての復刊の可能性はあるでしょうか?)。プロローグで「推理小説の禁じ手」議論があり、エピローグでも読者が納得するかどうかについて議論するなどフェアな謎解きかどうかぎりぎりの線をねらったような作品です。某国内女性作家の某作品(1960年代)をちょっと連想させるエピローグで解明される最後の謎は確かにユニークではあるけど、ゴルフに例えるならOB区域にあるボールを打っているような印象を受けました。ゴルフにはルールがあるがミステリーにはルールがないという主張を受け入れられる読者ならこれも許容範囲?

No.5 8点 レッドキング
(2018/07/26 22:01登録)
作中作「蛭女」と、それを囲むプロローグエピローグからなり、作中作の要点は 機械トリックをダミーにした和風「密室」心理トリックで、ここで終わっていたらせいぜい5~6点止まり。面白いのはプロローグエピローグで、工夫された叙述トリックと驚愕の最後の一行に2点も加点しちゃう。

※以上 二段階に語るべき観点のある作品だが、本当はもう一つある。これは作者にとって十作目になる作品で、あとがきで 誇らしげな自讃めいた事まで書いているのに、その後 「剽窃問題」から絶版となってしまった。記念碑が汚点となってしまい作者は無念だったことだろう。弁護して言えば、ミステリとしての要点は 作中作での剽窃云々とは関係なく光っている。

No.4 4点 蟷螂の斧
(2012/02/12 08:04登録)
プロローグ「推理小説に禁じ手などあるのだろうか。おそらく、ありはしない。面白ければそれでいい。」そのとおりなのですが、本作のトリック自体は面白くありませんでした。今まで読んだ限り「○○荘事件(1990)」「○○城殺人事件(2003)」と同じなので同評価とします。絶版なのでアマゾンでは8千円~5万円、もちろん図書館で借りましたけれど。

No.3 9点 黒い夢
(2011/11/01 11:20登録)
なかなか手に入らなかったので期待がかなり高まっていましたが、その期待を裏切らないどころかそれ以上の素晴らしい作品でした。物語の構成によってこんな仕掛けができるんだなぁととても驚かされました。入手困難なのがもったいないです。

No.2 8点 ウィン
(2010/09/29 00:32登録)
ミステリの禁じ手に挑戦している作品であるが、それほど禁じ手というほどには思えなかった。
しかしすごい作品である。
プロローグとエピローグがこれほど効果的に作用しているミステリが他にあろうか……と思ってしまうほど。
あまり言うとネタバレになってしまうのだが、ミステリをミステリたらしめるためのプロローグとエピローグとでも言おうか。
作品自体で試みられている謎への解決は勿論面白いのだが、作中作において提示されている謎への解決が別の意味で面白い。
こういうアンバランスなとこも良いよな、と。
トータルで言えば、しっかりと構成されているミステリなのだが、真ん中に当たる部分が破綻している(もちろん敢えてそうなっているのだが)。
これが魅力的なアンバランスに感じられた二つ目だった。

盗作問題ですっかり有名になってしまい、更には入手困難になってしまった本作であるが、作中で試みられていること自体は評価できると思う。
盗作なんてしなくても、良い作品を書ける作家さんなのに、と今更ながら思った。

No.1 7点 いけお
(2009/05/03 00:45登録)
途中でトリックには気づいてしまったが、プロットのできが良く夢中になって楽しんだ。

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