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ミステリの祭典

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虫暮部さんの登録情報
平均点:6.22点 書評数:1848件

プロフィール| 書評

No.928 7点 はだかの太陽
アイザック・アシモフ
(2021/03/17 12:50登録)
 “ロボットもののSFミステリ”と作者自身は認識していたようだが、それよりも“地球人と宇宙人の文化的軋轢”が面白い。ベイリとグレディアの散歩は“相互理解と歩み寄り(を志向する事の重要さ)”って感じの名場面。


No.927 7点 長い廊下がある家
有栖川有栖
(2021/03/17 12:49登録)
 表題作。小川が“天然の水洗トイレ”って……建築時期が古い建物ならアリ?
 「雪と金婚式」。“証人が黙っていた理由”は味わい深い。
 「天空の眼」。ここまで間接的な誘導は“殺人”とは言い難いのでは。
 「ロジカル・デスゲーム」。元ネタの“問題”を知っていると興醒めなので、読者としての運が問われる。私はコレがミステリで使われたのを読むのは少なくとも三冊目。


No.926 7点 死との約束
アガサ・クリスティー
(2021/03/17 12:49登録)
 あのファミリーがなんとも気持悪くて良い。それだけに、最後になって“いま思うとかわいそう”とか言うのはがっかり。
 ところで私はどうも、クリスティの文章から人物は読み取れるが背景はまるで浮かばないらしい。本書がいわゆる中近東シリーズだと解説を読んで初めて気付いた。


No.925 6点 名探偵は嘘をつかない
阿津川辰海
(2021/03/17 12:48登録)
 色々面白い要素はあるが、ごちゃごちゃした作りが仇になった。特に、早苗ちゃん殺しについては、終盤になると多重推理で状況が限定されて来ちゃうでしょ、更に“どこかの時点で思いがけない形で彼女は死んだ筈(でないと面白くない)”と言うメタ的な予断の支配下で読むと、結構この真相は気付き易くない? おかげで最終章は消化試合みたいだった。
 あと、ところどころに変な言い回しが見受けられる。文法上間違いとは言い切れない、でも普通はこんな言い方しないよねぇ、かと言って意識的に敢えて使っているにしては効果が感じられない、ってな感じのアレは作者の意図なんだろうか?


No.924 5点 誰彼
法月綸太郎
(2021/03/09 12:10登録)
 初読時は“長過ぎ!”と思ったが、読み返してみると諸々の無駄があってこそ成立している作品かな~と意見が変わった。作者の持つ批評性が無遠慮に発揮されたせいで、しばしば“スタイルとしての本格ミステリ”に対するパロディに見える。
 首無し死体=『エジプト十字架の謎』、双子=『最後の一撃』、二重生活=『中途の家』、自給自足の村=『第八の日』、医師と患者=特に名を秘す某作? EQで作ったフランケンシュタインの怪物だ。
 作者が最もこだわったのは“結局、彼は誰?”だろうか。私は“身柄拘束したんだから、もう誰でもいいじゃん”と思わなくもなかったり。
 でもまぁ一番目立つのはやはり“新興宗教団体”。綾辻行人『殺人方程式』も同年。有栖川有栖はその回答として「崖の教祖」更に『女王国の城』を書いた(?)。


No.923 5点 櫻子さんの足下には死体が埋まっている 狼の時間
太田紫織
(2021/03/09 12:09登録)
 第壱骨。グループに潜入する展開に期待が高まったものの、“該当者は誰だ?”と言う謎解きにならず結局は直接行動で対処したのはがっかり。
 第弐骨。事故物件について、そんなに多額の請求がなされて、それが正当なものとされている、と言うのは事実? 幽霊より怖い。或る程度の確率で人が自室で死ぬのは当然だろうに。


No.922 6点 壁抜け男の謎
有栖川有栖
(2021/03/09 12:09登録)
 良作が並んではいるが“物凄く良い一編”は見当たらず、例えば私が有栖川有栖ベスト短編集を編むとしても本書からは採らないだろう。


No.921 5点 死角に消えた殺人者
天藤真
(2021/03/09 12:08登録)
 この事件に対してこの真相では捻り過ぎで却ってつまらない。また、各人のキャラクターが悪い方向のツボに嵌まって、読み進むにつれてどんどんイヤな感じに。
 集団自殺と言う概念が一度も出て来ないのは時代ゆえ。吉川父娘のエピソードが胸に残った。


No.920 5点 壁が囁く
佐野洋
(2021/03/09 12:06登録)
 加害者が感じた閉塞感を“説明”しちゃっている。それが読者にジワジワ迫って来るように“描写”出来たら良かったと思う。
 それはそうと、あんな探偵になら尾行されてみたい。


No.919 8点 新本格魔法少女りすか 4
西尾維新
(2021/03/03 14:10登録)
 1巻から一貫して裏表紙に掲げられて来た“なぜ、少女なの?”が、単なる雰囲気モノのフレーズではなく伏線だったとは。力業で世界を丸ごと掻き混ぜるような落とし方は、考えてみると〈刀語〉も〈伝説シリーズ〉もそうだったなぁ。ポカンと口を開けて見届けるしかなかった。
 楓のキャラクターは本気で気持悪い。折口きずなの位置付けが中途半端な気はする。最後の行のその後にまた膝を打つネタが。


No.918 7点 エゴに捧げるトリック
矢庭優日
(2021/03/03 14:08登録)
 キャラクターや物語としての吸引力は少々物足りないが、それはそれとしてよくまあこんなことを思い付いたものだ。考えていた揚げ足取りは件のトリックで全てチャラ。
 但しソレは結末でアッと驚かせるべく配置されているので、同系統の某作のように謳い文句として売りに出来ないのは苦しいね。SF設定だけど少しでも多くのミステリ読者の目に留まって欲しい。


No.917 7点 鋼鉄都市
アイザック・アシモフ
(2021/03/03 14:08登録)
 貧すれば鈍する。人は差別をする。後半、政治の話にシフトしつつ意外にも面白いが、結末はアレでいいのか?
 あまりに滑らかなロボットは、優秀なマシンと言うより金属製のホムンクルスみたい。出来過ぎで却って興を殺がれる部分も。
 腕のチェックだけでロボットと判断するのは早計だよ。ベントリイ君16歳が少々子供っぽ過ぎでは。ダニールが食べた物を取り出して処理する場面では吹き出してしまった(ボッコちゃん?)。


No.916 7点 クイーンのフルハウス
エラリイ・クイーン
(2021/03/03 14:07登録)
 「ドン・ファンの死」。ダイイング・メッセージはともかく、犯人特定の手掛かりが短編にちょうど良いサイズ感で、読んでスッキリした。
 「ライツヴィルの遺産」。結末で仕掛けた罠は無効。下心の有無を他人が観測は出来ない。
 「キャロル事件」。思惑が絡み合って事態がずれていく様が面白く、読み返して台詞の裏側を知るとまた味わい深い。


No.915 6点 火村英生に捧げる犯罪
有栖川有栖
(2021/03/03 14:07登録)
 「あるいは四風荘殺人事件」。ああいうトリックをああいう距離感で書くのは何かずるい。作中作ではない普通の形(って何て呼べばいいの?)で書いて欲しかった。作中作の欠点を火村が指摘する趣向かと期待したんだけど……。
 「殺風景な部屋」。容疑者の風貌や人となりを勝手に想像する、と言う演出は意味が無いのでは。アリスのその先入観が読者に対する目晦まし(性別誤認とか)になる趣向かと期待したんだけど……。


No.914 8点 新本格魔法少女りすか 3
西尾維新
(2021/02/27 13:52登録)
 ストーリーとしての動きは少なく前後の巻の橋渡しみたいだが、それでも尚ガンガンぶつかり合うエモーションに泣ける。ゲームの戦略の構成も巧みだと思う。水倉鍵のキャラクターは鬱陶しいけど結構アリ。


No.913 6点 炎の背景
天藤真
(2021/02/27 13:50登録)
 面白い逃走劇。
 しかし、第三章の末尾で新聞を見たおっぺは何に気付いたのか、何をどうするつもりで引き返したのか、それがどのようにつながって第四章の対決場面が成立するのか(罠に対して大物が直接動く保証など無いでしょ?)、さっぱり判らない。上手く大団円に持ち込めなかった作者がそれっぽい流れで誤魔化したような感が無きにしも非ず。


No.912 4点
フランツ・カフカ
(2021/02/27 13:49登録)
 有栖川有栖作品で紹介されていたので手に取ってみた……のだが、これは読みにくい。いや~しんどかった。
 地の文として人物の行動が描かれている部分は、そこに戯画的なおかしみを見出すことも出来る。問題は人が話している部分――これが“会話”と言うよりも交互に長台詞を述べ立てているだけで、その内容も空虚この上なく、恰も読者の忍耐力を試しているよう。これを延々と書き続けられる作者は病気だったんじゃないか。
 しかし最終章でアッと驚く真相と言って言えなくもないかもしれないような見解が語られるので(そこだけミステリだ)、うっかり読み始めてしまったなら最後まで読まないと元が取れない。読んでいるうちに自分が何をしているのか曖昧になって行く感覚があり、そうだ、円城塔に似ている。


No.911 5点 心地よく秘密めいた場所
エラリイ・クイーン
(2021/02/27 13:48登録)
 バージニアの日記の自意識過剰気味な書きっぷりは面白い。
 余計なこと考えずに動機“キューイ・ボーノ”を追及すれば、警察はすんなり犯人に辿り着けたんじゃない?


No.910 5点 涼宮ハルヒの溜息
谷川流
(2021/02/27 13:48登録)
 映画撮影と言うネタはいまひとつ。
 しかし、シリーズ化によって基本設定が“前提”になったことではっきり判ったけれど、世界に於けるハルヒのポジションはあまりにも哀しい。自覚を許されないまま箱庭に閉じ込められているのである。
 お祭り騒ぎの狂騒的展開を目で追いつつも、私は胸が締め付けられるようだった。皮肉ではない。


No.909 8点 霊長類 南へ
筒井康隆
(2021/02/22 11:14登録)
 パニック小説は非常時(コロナ禍)に読むと効くわ~。
 もし自分がこういう状況に陥ったら、生き延びることを優先して、余計な行動はせずにどこかに隠れる。他人は見捨てるだろう。
 と思いつつ読んだので、登場人物たちの或る意味で人情味豊かな言動は不思議で羨ましい。

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