| 虫暮部さんの登録情報 | |
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| 平均点:6.20点 | 書評数:2174件 |
| No.1974 | 8点 | GOTH リストカット事件 乙一 |
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(2025/05/23 14:52登録) 気持悪い思想を気持悪いまま甘美な夢に置き換えてしまう、これは危険な催眠薬だ。真相はありがちだが、手掛かりの設定がとても上手い。 |
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| No.1973 | 7点 | ゾンビがいた季節 須藤古都離 |
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(2025/05/23 14:51登録) 粗筋紹介でネタバレしちゃ駄目だよ講談社。予備知識無しで読めば2章でまずサプライズがあるんだから! 3章で困惑。4章で更に困惑。笑いこらえつつ第二部。錯綜が生み出すコメディを、さて何処に着地させるのかと読み進むと結構な力技で捻じ伏せてしまった。人々が皆それなりのところに上手く片付いたとは思う。教会のバーンダウンを撮れなくて残念だったね。登場人物が多いので、プロフィールを思い出し易く書く工夫は欲しかった。 |
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| No.1972 | 7点 | COVERED M博士の島 森晶麿 |
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(2025/05/23 14:51登録) 改題版で再読。旧版でおかしいなと思った部分が修正されていた。やれば出来るじゃん。 結構強引な美の理論(人の審美眼の単純さを前提にしているような)に読者を巻き込み、外見も内面もそこまでいじれるなら何でもアリになりかねない境界線上で戯れつつ、ギリギリ箍を外さずにミステリに踏み止まったスリリングな実験は、それなりに成功した模様である。 |
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| No.1971 | 5点 | 模造人格 北川歩実 |
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(2025/05/23 14:50登録) 長い長い。しかも視点がコロコロ入れ替わるので必要以上に混乱する。人格とか記憶とか、曖昧さを内包した題材のせいもあって、真相がどうでも良くなってしまう。 そもそもこの真相は二者択一に近いし、それほどヒントが示されているわけでもない。ルーレットの玉が赤黒どっちに止まるか眺めていただけ、みたいな気分だ。 |
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| No.1970 | 7点 | 死の迷路 フィリップ・K・ディック |
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(2025/05/23 14:50登録) これはもしやSF版『そして誰もいなくなった』か? と思ったりもしたが、ミステリ的な緻密さを具えているわけもなく、反転に次ぐ反転に次いで、“そりゃないぜ” ってオチに堕ちてもディックだからなぁと言う曖昧な理由で許しちゃうけど、そのあとの理不尽な駄目押しが Oh, My God! と効いて私の心は不安定なまま本は終わってしまった。総合的に見ると纏まりは良くて読み進め易い。この設定、或る意味でクローズド・サークル? |
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| No.1969 | 7点 | アトポス 島田荘司 |
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(2025/05/16 14:58登録) “人魚” のエピソードがビミョーだなぁ。世界設定がファンタジーではなく我々のこの現実に準拠している以上、ことの真相はああいうものにならざるを得ない。そしてそれは、冷静に考えれば最もありそうで、最もつまらない仕掛けである。 動機に繫がってはいるがそこはどうとでもなりそうな部分だし、身体的特徴が殺人のトリックと無関係な点もエピソードの必然性を低めている。 プロデューサー二人の死に方についても、現場の様相はもっと違ったものになるのでは。摂取出来るものは血液だけではない。一人を犠牲にして、もう一人は生き延びられるだろう(救助が間に合うかどうかはともかく)。 |
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| No.1968 | 7点 | サイコトパス 山田正紀 |
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(2025/05/16 14:58登録) “広義な意味でのミステリー” とは作者の弁。前半は、連作長編としては変則的ながら、比較的狭義のそれの枠に嵌まっていたと思う。“「森の小人」事件” のトリックは山田正紀作品の中で最も素晴らしいかも知れない。 後半どんどんバラけて行って “広義な意味” に拡散するさまには焦った。判らなさがとても良く判った。 |
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| No.1967 | 5点 | トライロバレット 佐藤究 |
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(2025/05/16 14:58登録) こんな意味不明な題名にするとは強気だこと。でもこの作者の本はそんなんばっかだ。その意気や良し。それを手に取らせる信頼感を佐藤究は既に確立している。 さて内容。やりたかったことは判る気がするものの、“三葉虫” は、作者が期待する程には、普遍的なイメージ喚起力を具えてはいないのではなかろうか。やや硬直気味のエピソードが収斂する先、即物的な爽快感をつい感じてしまったことは認めざるを得ないが、物凄く面白いとまでは言えない。 |
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| No.1966 | 6点 | ペルソナ・ノン・グラータ 夏樹静子 |
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(2025/05/16 14:57登録) 5編中3編が佳品だからまぁOKだろう。阿漕な商売とカビ研究の二題を手際良く纏めている「カビ」。 真実の更に先を行くオチにゾクッと来た「俯く女」。 「宅配便の女」の真相は新本格みたいでびっくりだ。しかも箱の中にしっかり手掛かりが残されていたと気付いて悔しい。 しかしこの作者、文章自体にもう少し個性が感じられると良いのだが。 |
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| No.1965 | 7点 | ディプロトドンティア・マクロプス 我孫子武丸 |
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(2025/05/16 14:57登録) 世界観の変動に驚かされた。このジャンル誤認こそ、本作で作者が仕掛けた最大のトリックである(かも知れない)。あんな依頼が重なる偶然はどうかと思うが、キャラクター造形(の適度な緩さ)が良いのでまんまと乗せられてしまう。何じゃこりゃと苦笑しつつも、読んでいる時は楽しかった事実を否定してはいかんな。 |
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| No.1964 | 7点 | Wi-Fi 幽霊 乙一・山白朝子 |
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(2025/05/09 14:17登録) 乙一と山白朝子の抱き合わせによるホラー傑作選。全9編中、書き下ろし1、今までアンソロジーだけで読めたものが1。あとは二人の既刊から採られていて、熱心な読者にとってはそこまでありがたい構成ではない。まぁ私が編者でも「SEVEN ROOMS」「神の言葉」は当然セレクトするさ。 しかし何故今こんなものが編まれたのだろうか。ポップ・ミュージックの場合、新作の制作が上手く進んでいない時にツナギとしてベスト盤が出たりもするが……ちょっと心配だなぁ。 書き下ろし作は両者の共通点を増幅したような雰囲気で、作者名を伏せたらどちらが書いたか判別不能であろう。そんな気持悪いスマホはさっさと捨ててしまえ、とのツッコミは成立しない。ネットワークとの接続を切るなど思いもよらない世代の寓話なのである。 ところで、表紙は Adobe Stock だって。この本より先に、わざわざあんな写真を撮ってネットに上げた人がいるのか……。 |
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| No.1963 | 7点 | 毒入りコーヒー事件 朝永理人 |
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(2025/05/09 14:17登録) “推理の不備” を予め宣言して無駄にハードルを高めておいて、緻密な騙しでキチンと期待に応えてくれた。 綺麗に整い過ぎじゃないかと言う気もしたが、最後に気持悪いエピソードが飛び出したので良かった。 結果的に、金持ち(?)と再婚して家を乗っ取ってしまったように見えるけど、そういう話じゃないのね……。 |
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| No.1962 | 6点 | 卒業のための犯罪プラン 浅瀬明 |
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(2025/05/09 14:17登録) 良い意味で陽性な、そこそこのリアリティ。個々のキャラ立ちが良く、各々それを踏まえた屁理屈を述べていて、ちゃんと別々の人が作者の頭の中で競い合っていたんだろうと感じさせる。 概ねプラスマイナスゼロになる落としどころも、この世界観なら正解。大衆を統計的に十把一絡げで扱う会話はイヤなんだけど、経済学なら仕方が無いか。 |
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| No.1961 | 6点 | 闇に蠢く 江戸川乱歩 |
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(2025/05/09 14:16登録) 前半、御都合主義的に主要人物が集まり、かと言って特段何をするでもなく、話がどっちへ進んでいるのか判らんな~。たいしたことはない。まぁ拾った原稿だそうなので、乱歩の責任ではない。 と思っていたら、命の危険を覚えてから俄然スリリングになる。これは私も大好物だ。まぁ乱歩が偉いわけではない。 後年から振り返って見ると、乱歩はこの謎の作家の影響をかなり受けているように思われる。無事連絡は付いたのだろうか。 蠢く春の虫は蝶、と洒落たネーミングである。 |
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| No.1960 | 6点 | 詩人と狂人たち G・K・チェスタトン |
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(2025/05/09 14:16登録) 作品の核に据えられた逆説とそれを囲む物語が何かチグハグなんだな。サイズが違っていたり配置が斜めにズレていたり。正しくない在り方こそが正しいのだ、と言う逆説なのだろうか。版元が “幻想ミステリ” と銘打っているおかげで少し飲み込み易くなったかも。 |
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| No.1959 | 7点 | ロシアン・ルーレット 山田正紀 |
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(2025/05/02 12:41登録) どのエピソードも、やりきれなくて面白くはある。ただ、こういう構造の作品だと、つい全体を貫く大きな物語の方に気を取られて各短編の印象が薄くなりがち。その中では「ウォッシュマン」で描かれる心情にゾクリとした。 物語同士のリンクの仕方がまちまちで総合的に見ると不定形になっているのが良い。刺さったバスに対する災害救助の部分は殆ど展開しないせいもあって、物凄く “投げ出したまま” な読後感。 |
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| No.1958 | 7点 | ゴリラ裁判の日 須藤古都離 |
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(2025/05/02 12:40登録) 不穏な冒頭を経て、前半の回想場面でローズの見ている世界は、いずれ壊れると予告されているだけに愛らしくも切ない。敗訴後の展開は意外だったけど、ジャンプの前には一回しゃがむ、みたいなものか。“言いたいことがある小説” の強みが良い形で出ているだろう。 だからこそ思う――意思の疎通が出来なければ、暴れている者がホモ・サピエンスでも子供を守る為に殺す選択はあり得る。いわんやゴリラに於いてをや。内面は結果論から推測するしかないのだ。この判決は難しいぞ。 |
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| No.1957 | 7点 | ずうのめ人形 澤村伊智 |
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(2025/05/02 12:40登録) ミステリであればそれは出来過ぎだろうと言う偶然でも、ホラーなら人知を超えた偶然に絡め取られること自体が寧ろ必然に感じられる。巻き添えの多さに頭を抱えた。 眼球を抉り取られる怖さは、バラバラ死体とかより絶妙にイメージし易くて背筋がぞわっと来る。もともとうっかりポロッと落ちそうなパーツだからね。 |
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| No.1956 | 5点 | 新幹線殺人事件 森村誠一 |
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(2025/05/02 12:39登録) 新幹線で人を殺すのは感心せんが、トリック、と言うかトリックそのものよりもトリックを破綻に導く鉄道豆知識に驚いた。よくあんなところまで目配りが行き届いたものだ。 本作に限らず、芸能界を “欲望まみれの虚飾の世界” として描いた作品はままあるけれど、ストーリーとして面白く感じたものは思い出せない。一つには、それを薄っぺらく描くことは、“スターをありがたがる一般大衆は馬鹿だ” と言う偉そうな視点と表裏一体だからではないか。 |
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| No.1955 | 5点 | ペトロフ事件 鮎川哲也 |
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(2025/05/02 12:38登録) この最後の対決場面はおかしくない? 鬼貫が得々と語った事柄は事実と違っており、物的証拠が挙がったわけでもない(よね?)。計画は全然破綻していないと思う。 それどころか、三つの “真相候補” から一つを選ぶ決め手が欠けているのではないか。容疑者の証言を真に受けて良いのか。もし二人目三人目が一人目と同じ主張をしたら、起訴は難しい。グレー・ゾーンに留まりつつも疑わしきは罰せず、寧ろ大成功である。 注意深く鬼貫の発言をチェックしたが、“本当の真相” を仄めかしているようには読めない。一体犯人は何に絶望してギヴ・アップしたのか。察しが良過ぎと言うか諦めが早過ぎ。 とても丁寧に満洲の風土を記述していて詩情すら感じさせる。後年の加筆の賜物かも知れないが。 この作者にそういう上手さはあまり感じたことが無いので意想外、ミステリ部分より心惹かれた。 |
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