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ミステリの祭典

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バーニング・ダンサー

作家 阿津川辰海
出版日2024年07月
平均点4.33点
書評数3人

No.3 5点 HORNET
(2024/12/29 19:10登録)
 2年前のある日、隕石が落下し、この世に百人の異能力者──「コトダマ遣い」が誕生した。彼らは「燃やす」「放つ」「伝える」「硬くなる」など、それぞれに異なる能力を持つ。必然、能力を悪用する犯罪者が現れ、警視庁に「公安部公安第五課 コトダマ犯罪調査課」が立ち上げられる。ある事件により相棒を失い、捜査一課を追われた、自身も「コトダマ遣い」である刑事・永嶺スバルはそのメンバーとして召集される。就任早々、全身の血液が沸騰した死体と、炭化するほど燃やされた死体という、異様な事件が勃発する―

 異能力者「コトダマ遣い」の犯罪者に、同じく「コトダマ遣い」のメンバーが対峙する…下手するとアニメのような物語設定だが、そこはさすが作者、ミステリとしての線は外さずに物語を仕組んでいる。
 特殊設定ミステリとして標準的に面白いが、設定された異能力の範囲や限界が最初にはっきりしていない感じもあって、後になって「実はこういうことも可能」と後付けされるような印象もややあった。
 ラストの真相も、はっきりそうだと分かっていたとまでは言わないが、どんでん返すならまぁ、きっとそうだろう…という意味でうっすら見えていた感じはあったかも。

No.2 5点 たかだい
(2024/11/17 00:25登録)
突然、全100種類の特殊能力に目覚める者達が世界中から現れるようになった世界観の元、その能力を悪用する者と、それを取り締まる者による攻防を描いた特殊設定のミステリー
ライトノベル的な設定の元で、一夜に二人もの人間を殺害した正体不明の能力者の謎に迫るミステリーを描くという筋書きはわりと好きです
ただ、ミステリーとして能力を根幹に据えるならもっと設定を詳細に詰めるか、いっそのこと能力バトルと言って差し支えない程度に派手にバトらせる方が面白いかった気が…
良かれ悪かれミステリーに比重がいっている分、どこかこじんまりとしている感があり、面白いんだけど物足りないという微妙な感想に至りました

No.1 3点 虫暮部
(2024/09/19 12:25登録)
 ネタバレするけれど、特殊設定が雑だと思う。
 以下のことがミステリ要素に多大なる影響を与えたかと言うと、実はさほどでもない。“設定が曖昧だから記述された事柄のみ受け入れる” と割り切れば無問題。
 でもまぁ何と言うか、気分が殺がれた。

 ①『燃える』ではなく『燃やす』、自動詞他動詞の区別(厳密だな~)、と言う話題を挙げておきながら、コトダマ百種の中には変な言い方のものが混ざっている。例えば『腐る』『化ける』がそうで、これらは『腐らせる』『化けさせる』であるべき。『腐る』だと、遣い手自身の身体が腐って自滅するだけの能力になってしまう。厳密さが一貫していない。

 ②コトダマ遣いは、どのようにして自分の能力を知るのか? 神なり悪魔なりから “汝にコトダマを授ける” と啓示があるわけではないらしい。或る日突然宿った能力を、限定条件が偶然に整うことで自覚すると考えられる。
 しかし難易度の高いものがある。それは『真似る』で、限定条件は “コトダマ遣いを殺すこと” なのだから。
 つまり “殺さないと自覚出来ないが、自覚が無いなら殺す動機が無い” と言う矛盾を孕んでいる。
 フランスと同じ偶然が日本でも再度起きたと言うのだろうか?

 以上二点から、コトダマには作中に記述されていないルールや例外事項があると考えないと辻褄が合わない。

 細かいことだが③コトダマのうち『弾く』は【はじく】とも【ひく】とも読めるが、その点について作中でフォローされていない。
 ④コトダマの意味の解釈は日本語に準拠している(『化ける』とか)のだから、世界的規模ではなく日本語圏のみの現象とした方が良かったのでは。

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