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ミステリの祭典

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kanamoriさんの登録情報
平均点:5.88点 書評数:2501件

プロフィール| 書評

No.181 5点 明日に別れの接吻を
笹沢左保
(2010/04/19 21:02登録)
過去の事件で執行猶予中の主人公が、旧友からアリバイ工作を頼まれる話。
情感あふれるタイトルとは裏腹な、バカミス系のアリバイトリックが規格外でした。
A地点からB地点に移動するための予想外の移動手段・・・そのシーンを想像するだけで爆笑ものです。


No.180 6点 脱サラリーマン殺人事件
藤村正太
(2010/04/19 20:52登録)
サラリーマンの出世競争の屈折をテーマにした社会派推理小説ですが、そんなテーマはどうでもよくて、奇抜なアリバイトリックを楽しむミステリです。
2番目のアリバイトリックが面白かった。こんな設定です。
北米大陸の氷河地帯での殺害事件で、被害者が持っていた写真に写った服装や景色から、被害者が冬頃まで生存していたことが確認できるが、容疑者は夏過ぎに一度渡米したきりで被害者と接蝕する機会がなかった。
冷凍死体ということで死亡時期が特定できないのがミソ。移動手段や写真の工作ではない予想外の仕掛けでした。
のちに、島荘と綾辻が同じネタを使っていますが、2冊とも同じ年に出版されて唖然としたことを覚えています。


No.179 6点 パーフェクト・マッチ
ジル・マゴーン
(2010/04/19 19:06登録)
ロイド警部&ジュディ・ヒル部長刑事シリーズ第1作。
真正面から本格ミステリに取り組む姿勢が明白で、非常に好感が持てるシリーズです。このところ邦訳がストップしているのはちょっと解せないです。
現代ミステリですから、探偵役二人のある関係のエピソードなどを挿入しなければならないのは許します。
本書は、事件は地味でトリックも使い古されたものかもしれませんが、騙されている人物の視点を多用することで、読者もミスリードする手法が巧いと思います。


No.178 7点 猿来たりなば
エリザベス・フェラーズ
(2010/04/19 18:37登録)
犯罪ジャーナリストのトビー&ジョージ・シリーズ第4作。
ホームズ&ワトソン風の探偵コンビのシステムに軽い遊びを入れていて、本書がシリーズの邦訳1作目ということで、それが効果を上げているかもしれません。
今回はトビーの一人称記述になっていて、読者は彼の思考を辿りながら猿の誘拐殺害事件を推理していく訳で、ミスディレクションの方策としてはどうかなあと思いながらも、巧妙なことは否定できません。
ユーモア風味ではありながら、殺猿事件の動機など意表を突くものがあり、本格ミステリとして充分合格点の出来だと思います。


No.177 6点 道化の死
ナイオ・マーシュ
(2010/04/19 18:01登録)
アラン警視シリーズ第19作。
作者は32作のミステリを書いていて、全てにこのシリーズ探偵が登場するようです。初登場時は警部でしたが、本書では警視となっています。一応、代表作のようです。
村の伝統ある豊穣祈念ダンス行事の真っただ中の、衆人環視状況の不可能殺人を描いていて、まずまず楽しめました。
探偵役の個性がやや乏しいのと、クリステイの様なハッタリに欠けるきらいはありますが、端正な本格ミステリと言っていいと思います。「ランプリイ家の殺人」で失望した人も、この作品にはある程度満足いく出来じゃないでしょうか。


No.176 7点 プラムアイランド
ネルソン・デミル
(2010/04/18 22:09登録)
ネルソン・デミルにエンタテイメントを求めるのなら、この作品から入るのがいいと思います。間違っても「誓約」や「将軍の娘」から入ってはいけません。これらは、シリアス系で題材もあまり日本人読者向きではないと思うから。
前半の細菌兵器がらみの話から、後半一転して財宝探しの冒険小説になって、個人的にはなかなか好みの物語でした。
主人公の造形も面白い。ウイット溢れる皮肉屋ぽいセリフがポンポン飛び出して、それだけでも楽しめました。


No.175 7点 ウォッチメイカー
ジェフリー・ディーヴァー
(2010/04/18 21:26登録)
このシリーズは、アルセーヌ・ルパンの時代から続く「怪人対名探偵」図式の古いタイプの通俗スリラーなんですが、科学捜査などの新しい装飾と過剰なほどのどんでん返しの連続が一般受けする理由だと思います。
読者が推理して楽しむような創りではないので、ロジックを重視する本格パズラー好きにとっては、あまり評価されないのではないでしょうか。
シリーズ第7作ともなるとマンネリ感は否めません。目先を変えるためライム・ファミリーに新しいキャラクターを次々と加えるため、無駄に物語が長大になっていく感じもします。「次作につづく」方式のエンディングも通俗スリラーそのものでしょう。
まあ、そうはいっても面白かったし、一級品のエンタテイメントには違いないですけど。


No.174 7点 不屈
ディック・フランシス
(2010/04/18 19:20登録)
近年の競馬シリーズでは一番好きな作品です。
伯爵家の血を継ぐ孤独感のある若い画家が主人公で、義父の会社の横領事件と財宝探しに巻き込まれる話。
競馬シリーズとする必要がないほど、殺人や派手な陰謀は出てこないし、競馬は全然本筋と関係がない。
初期作に比べるとどちらかと言うと地味な作風ですが、登場人物はいつも以上に魅力的ですし、主人公が徐々に不屈の精神を発揮してくる所は、いつものフランシス節です。
特に、おしゃれで余韻が残るエンディングがよく出来ていると思いました。


No.173 6点 風が吹く時
シリル・ヘアー
(2010/04/18 18:45登録)
ペティグルー弁護士シリーズ第3作。
前作では「法の悲劇」のマレット警部と共演していますが、今回は単独で、地元の管弦楽団コンサート中の殺人事件に関わります。事件の解決そのものより、登場人物とのユーモラスな掛け合いを楽しむ典型的な英国新本格ミステリですが、その言動の中に伏線が張られていたり、動機が法律がらみである点など、いかにもヘアーらしい佳作でした。


No.172 7点 虎よ、虎よ!
アルフレッド・ベスター
(2010/04/18 18:19登録)
テレポーテーションが発達した25世紀が舞台のSF復讐劇。
「モンテ・クリスト伯」を下敷きにしているが、力感と疾走感にあふれたノアール小説の印象があります。
哲学的な命題を提示して終えるエンディングがSFの名作と言われる所以でしょうが、謎と伏線の妙味もあり、「分解された男」ともどもミステリ読みにも魅力ある小説だと思いました。


No.171 6点 ガラス箱の蟻
ピーター・ディキンスン
(2010/04/18 14:20登録)
ロンドン警視庁のピブル警視シリーズの第1作。
「毒の神託」や「キングとジョーカー」などディキンスンの小説は、独特で異様なシチュエーションを設定しておいて、その中で本格ミステリを行うというのが定番のようです。
シリーズものの警察小説である本作も例外ではなく、20年前にニューギニアからロンドンに移ってきた部族の中で酋長が殺害された事件を扱っています。この部族はアパートの一室から出ようとせず一日中テレビの画面を見つめているなど、非現実的な生態なのに、いやにリアリテイがあって印象的に描かれています。
そういった世界だから、この殺害動機なわけで、本格ミステリとしても及第点。万人向けの小説ではないですが、ツボに嵌る人には楽しめると思います。


No.170 7点 密偵ファルコ/鋼鉄の軍神
リンゼイ・デイヴィス
(2010/04/18 13:45登録)
ローマ帝国を時代背景にした密偵ファルコ・シリーズ第4弾。
今作がシリーズで一番おもしろい。ライン河を越えてゲルマニアで冒険を繰り広げる、本格的な冒険小説に徹しています。
基本は歴史冒険ミステリではあるんだけど、巻によって恋愛もの、家族小説、本格ミステリなど色々な要素を取り入れています。
登場人物の会話は、歴史ものなのに現代口調なのが新鮮で、そういった点も受け入れやすい一因だと思います。


No.169 5点 カッコウの卵は誰のもの
東野圭吾
(2010/04/17 17:45登録)
翻訳ミステリや昭和の推理小説を読んでいると、女性の会話口調の不自然さが気になってしょうがない時がある。「~ですわ」などが出てくるとムズムズしてきて物語に集中できません。
その点、この小説に出てくるアルペンスキーの女性選手の会話口調は非常に自然体で、「父親」との会話などは、いかにも今時の19歳の女性という感じがして好感が持てました。以上感想おわり。


No.168 6点 鎌倉XYZの悲劇
梶龍雄
(2010/04/17 17:12登録)
鎌倉の旧家を舞台にした遺産相続が絡む本格ミステリ。
情けないほどベタなタイトルの真意は不明ですが、クイーン某作の趣向を取り入れているのは確か。
天国の局長が地上の私立探偵に指示して解決にあたらせるというとんでもないプロットは面白いが、前半の物語がギクシャクしていて、文章の拙さと相まって読みずらいのが欠点ですね。
前例はあるものの非常に意外な真犯人を設定していて、犯人当て小説としては満点に近い裏ベストといっていい出来だと思いますが、上に書いた点がちょっと惜しい気がします。


No.167 6点 殺人はお好き?
小泉喜美子
(2010/04/17 16:37登録)
ロスの私立探偵が日本に呼び寄せられて、中国人をボスとする麻薬密売組織と対峙するお話。まあ、軽ハードボイルド系の長編アクション小説です。
キリオン・スレイやトウキョー・サム同様に変な外国人を日本社会に放り込んで、異文化・異言語との交流の妙も狙ったと思われますが、そちらの趣向は成功しているか微妙です。カーター・ブラウンを意識した作風は肩の凝らないミステリに仕上がっていて、意外な結末につながる伏線の張り具合もまずまず。最終章のタイトル「さよなら、可愛い人」が泣かせます。
「あとがき」によると、この作品は1962年の別名義による新聞連載ということで、実質的に著者の処女長編のようです。


No.166 6点 私のすべては一人の男
ボアロー&ナルスジャック
(2010/04/17 14:44登録)
従前の心理サスペンス風の作風とはちょっと異なるボア&ナル最強の怪作だと思います。
臓器移植の大家が、重傷を負った7人の患者に一人の死刑囚のからだの部分を移植するが、手術後に患者たちに次々と異常が起こり始め、自殺が相次ぐ。
いわば、「占星術」の逆バージョン。現象はホラー小説の様相ですが、全ては合理的に説明される(かな)。
フランス・バカミスの頂点でしょうか。この驚嘆の真相に対して笑って許せるか、壁に投げつけるか、読者の度量の大きさが試されます(笑)。


No.165 7点 クラシックな殺し屋たち
ロス・トーマス
(2010/04/17 14:06登録)
パディロ&マッコークル2人組「マックの店」シリーズ第3作。
先ごろデビュー作の邦訳から30年以上たって第2作が出たので、これも再読しました。やはり、メチャメチャ面白い。善人悪人にかかわらず登場人物の造形が個性的で、会話のセンスもいい。
今回は、やり手の殺し屋を向うにまわし、アラブの石油王になる男の身辺警護をするお話。前作と比べてプロットがすっきりしていて読みやすいが、人物関係の説明が省略されているのでシリーズ第1作「冷戦交換ゲーム」から読むのが吉だと思います。


No.164 4点 幽霊の死
マージェリー・アリンガム
(2010/04/16 22:03登録)
素人探偵アルバート・キャンピオン、シリーズ第6作。
残念ながらアリンガムとの相性はあまりよくありません。本作と次の「判事への花束」も、いちおう代表作ともいわれる作品だと思いますが、訳文が古いせいもあるかもしれませんが、探偵の人物造形がいまいちよく分からないため、物語に入り込めませんでした。最近訳出された作品も読んでみましたが、本格ミステリじゃなく、古いスリラー&サスペンスの様相で、これはまったく守備範囲外。英国4大古典女流ミステリ作家の一人というのは、現在での評価では、ちょっとどうなんでしょうか。


No.163 7点 四年後の夏
パトリシア・カーロン
(2010/04/16 21:27登録)
豪州のサスペンスの女王・カーロンの邦訳第4作。
10年前には毎年のように出ていた気がしますが、バッタリ止まってしまったのは売れなかったからなのか。
4年前の殺人事件の容疑者は2人のヒッチハイクの女性・・・。なんだか「ウッドストック行最終バス」のような雰囲気の過去の事件を、被害者の妹の依頼で私立探偵が解く。
過去の事件と現在の調査書類の写しが交互に描かれていて、サスペンスの盛り上げ方が巧い。この作品を読む限りでは女王の呼称に偽りなしと思いました。


No.162 6点 ジョン・ディクスン・カーを読んだ男
ウィリアム・ブリテン
(2010/04/16 20:54登録)
有名なミステリ作家のパロデイ「~を読んだ~」シリーズ11編と単発作品3作を収録した短編集。
表題作は既読ですが、倒叙もので、密室殺人を企てた男の皮肉な結末が笑える。この密室トリックは「密室講義」でばからしいとして無視されたものではなかったか。
「エラリー・クイーンを読んだ男」は金貨の隠し場所トリックでまずまずの佳作。
「レックス・スタウトを読んだ女」はサーカス劇場の殺人事件。ウルフの雰囲気をミスディレクションに使っていて巧い。
ほか、クリステイ、ドイル、チェスタトン、ハメット、アシモフなど錚々たるメンバーを揃えているが、後ろの作品になるほど完成度が落ちている気がします。
単発ものでは、「ザレツキーの鎖」が脱出もので最もトリッキー、結末のキレが抜群にいい傑作。
著者の代表シリーズ・ストラング先生ものは本格系のようで、続いて読んでみたい。

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