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ミステリの祭典

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ミステリー作家の休日

作家 小泉喜美子
出版日1985年03月
平均点5.00点
書評数3人

No.3 5点 まさむね
(2020/08/23 23:35登録)
 単行本未収得の2短編を加えた、光文社文庫版を読了。
 ミステリーとしては、表題作がベストか。個人的には「青い錦絵」や「パリの扇」などの妖しさが印象に残りそう。「紅い血の谷間」の切なさも悪くはない。一方で、全体的に結末が見えやすく、あくまでも雰囲気で読ませられている、といった面は否定できないかな。読みやすいし、嫌いではないけど。

No.2 5点
(2020/05/30 07:26登録)
 昭和六十(1985)年三月に刊行された、著者の第八短編集。表題作含む六編を収録。連作シリーズを含めれば作品集としてはちょうど十冊目に当たる。次作『男は夢の中で死ね』と同じく作者の急逝前に刊行されたものだが、収録作の発表期間は『ダイナマイト円舞曲(ワルツ)』で10年ぶりのカムバックを果たした前後から、事故死までの約十年と幅広い。が、洒落ているとはいえキラリと光るものは少ない。kanamoriさんが仰るとおり、ぶっちゃけ拾遺集である。
 〈都会派傑作集〉とあるように、ミステリとしてはこれまで以上に微妙な作品が多い。その中で論理性が高いのは表題作だが、この作者の持ち味はあまり出ていない。日常の中の妖しさを描いてらしいのは、「昼下がりの童貞」と「本格的にミステリー」か。
 個人的に推したいのは最も発表年代の古い「青い錦絵」。歌舞伎の弁天小僧を題材に本歌取りしたものだが、雰囲気たっぷりの怪しさと磯の香りがなかなか良い。ちょっと乱歩好みなところもある。トリの「パリの扇」は初期レビューの内輪話。ヘレン・マクロイ「燕京綺譚」を意識した語り口だが艶笑譚に近く、広義の意味まで含めてもミステリからは遠い。
 総じて口当たりは悪くないが、「青い錦絵」以外は内容が軽すぎる。こういうのも好きではあるが、本書の場合雰囲気で流した作品が多く、あまり高くは評価出来ない。

No.1 5点 kanamori
(2010/04/05 23:39登録)
エッセイ集のようなタイトルですが、れっきとした短編集。
なかでは、女流ミステリ作家にかかってきた間違い電話の内容から意外な事実を推理する表題作「ミステリー作家の休日」がケメルマンの短編を彷彿させ、編中のベストかな。
あと「本格的にミステリー」「パリの扇」が印象に残りましたが、拾遺集の感は否めません。

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