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ミステリの祭典

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怪奇探偵小説傑作選〈4〉城昌幸集-みすてりい
ちくま文庫

作家 城昌幸
出版日2001年05月
平均点6.00点
書評数3人

No.3 6点 クリスティ再読
(2024/03/22 19:05登録)
乱歩による評「人生の怪奇を宝石のように拾い歩く詩人」が有名なわけだが、この本が城昌幸の本領たる怪奇幻想短編のアンソロになる。自薦傑作選の「みすてりい」に編者日下三蔵がほぼ同量を選んで追加しているのがちくま文庫である。全55作、総ページ542。長い作品で15ページ超くらいのショートショート集になる。

ショートショートと言えばもちろん星新一は城のショートショートを愛読して自分の作品の形式にしたわけである。しかしストイックなミニマリスト星とはかなり肌合いが違う。それよりも以前評者がボードレールの散文詩集「巴里の憂鬱」を強引にショートショートとして読んでみた読み心地の方にずっと近い。城左門名義での詩人としての活躍もあるわけだが、やはりボードレールやポオと「新青年」を直接媒介する存在と城のショートショートを捉えるべきだろう。不要なものをそぎ落とすミニマリスト星にはない、「豪奢」なポエジーが城の真骨頂である。

内容は多岐にわたる。夢小説に近いものもあるし、「人花」なら「リトル・ショップ・オブ・ホラーズ」みたいな話だし、殺人が絡んだ話やら、ちょっとした騙しトリックの話やらあっても、トータルでは「奇妙な味」のテイスト。反転でひっくり返しても、そこに人生の哀歓みたいなものを漂わせる技がある。

であとポオの「アルンハイムの地所」に始まって、乱歩「パノラマ島」やら谷崎「金色の死」が散々模倣することになる「人工楽園」テーマを繰り返し描いているのが目立つ。最初の作品「艶隠者」はアクセス不能な都市の秘境に自分の隠遁所を作った男の話だし、一つの街を作ってそこで「ママゴト」する「ママゴト」、自分の墓苑の詳細なデザインを残して自殺した男の話の「スタイリスト」、「屋根裏の散歩者」の主人公のような高等遊民が理想の家の模型を作ってひたすら愛玩するがいざその建物が建てられると...の「模型」などなど、理想世界のイメージを架空の建築に投影した作品がけっこう目立つ。そこらへんに「詩人」っぽさを感じるなあ....

そしてあとは愛する者を破壊したいという矛盾した欲求もよくテーマになる。「白い糸杉」「殺人淫楽」、そして愛した女がすべて死ぬ運命にある男の話の「宿命」などなど、星新一の厭世観とは違うパッションの高さが特徴的。

話のバラエティ・クオリティは高いんだけど、散文詩風の緊張感が強く出ているので、なかなか読み進むのにパワーが要る。うん、でも評者「若さま侍」も好きだから、この本はやっておきたかったな。捕物帳にも通じる人生の機微みたいなものも、スタイリッシュな「若さま」にも時おり感じられるしね。

あと、乱歩が城を始めとする「幻想派」を「新青年」文化の「探偵小説」の一つとして捉えていたことも「みすてりい」に寄せた乱歩の一文から伺われる。城と並べているのはたとえばモーリス・ルヴェルやジョン・コリアであり、また渡辺温や地味井平造や稲垣足穂なんだよね。だから星新一が協会賞を取ったりするのもこういう流れの中にある、というのを体感できる面白味も感じた。

No.2 7点
(2021/07/19 15:29登録)
1963年に桃源社から出版された28編から成る『みすてりい』を第一部とし、第二部には初収録作も含む26編を加えた掌編(というには若干長めの作品もありますが)集です。ただし、『根の無い話』『幻想唐艸』『不可知論』『実在』は3つのエピソードから成るので、実際にはさらに8編が加わります。
第1部の終りに桃源社版に添えられた乱歩の解説(「跋」)も載っていて、乱歩は本作収録作品を「怪奇掌編」としていますが、明確に幻想的設定の作品は多くありません。肉食植物の『人花』や空中遊行術の『ヂャマイカ氏の実験』等もありますが、『その家』では不気味な出来事にむりやり常識的な解釈もできると主人公が自分を納得させたりして、大部分は一応現実的な作品です。『都会の神秘』(ミステリらしいオチの作品)の最初にオー・ヘンリーの言葉が置かれていますが、実際『道化役』等オー・ヘンリー風の作品もあります。

No.1 5点 kanamori
(2010/03/27 11:22登録)
ミステリ掌編小説集。
各作品が5~20ページの幻想・怪奇譚が50作以上収録されています。アンソロジーなどで読むのはいいのですが、まとめて読むとちょっとキツイ感じがします。

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