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ミステリの祭典

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kanamoriさんの登録情報
平均点:5.88点 書評数:2517件

プロフィール| 書評

No.217 6点 テキサスの懲りない面々
ジョー・R・ランズデール
(2010/04/25 20:55登録)
落ちこぼれ白人ハップとゲイの黒人レナードのコンビが騒動を起こすシリーズ第5作。これ以後シリーズ作品が出ていないので最終話になるかもしれません。
ランズデールは多才な作家で、「ボトムズ」などのモダン・ホラー系のサスペンスやスプラッタ・ホラーなども書いていますが、ハップ&レナードのシリーズは無条件で楽しめるユーモア風味のノアール小説という感じです。今作は過去に出てきた面々が再登場したり、既読感のあるやり取りがあったりで、シリーズの集大成の様相でした。


No.216 6点 殺人ファンタスティック
パトリシア・モイーズ
(2010/04/25 20:34登録)
スコットランド・ヤード犯罪捜査課ティベット警部シリーズ第7作。
このシリーズはティベット夫婦の観光地巡りミステリのスタイルが多いですが、今作は一応「館」ミステリ。田舎の名士一族の変人ぶりが笑えるファース風味の強い作品で、トリックも従来の作品とは趣が異なります。
本格度は高くはないですが、幻想的雰囲気が漂う佳作だと思います。


No.215 5点 陰の告発者
草野唯雄
(2010/04/25 17:58登録)
「主人公は、この物語の犯人であると同時に被害者であり探偵でもある。さらに・・・」
倒叙形式でミステリ作家の妻である主人公のある犯罪計画を描いたサスペンスミステリ。読者を煽る紹介文とは裏腹に、出来はいたって平凡なサスペンスといったところです。
むしろ、文庫解説で類似趣向作品として「シンデレラの罠」や「猫の舌に釘を打て」とか辻真先のポテト&スーパーものを取り上げているのが興味深かった。「虚無への供物」のネタバレをしているのは問題ですが。


No.214 5点 結婚って何さ
笹沢左保
(2010/04/25 17:33登録)
通俗ミステリの様なタイトルですが、キッチリ本格しています。
作者初期の本格ミステリ群は、乱歩の「類別トリック集成」の各トリック項目から順次消化しているような感じで、色々なトリックを駆使していますが、本書も密室トリックとある有名なプロット上のトリックを使用しています。
オリジナリティに欠けるかもしれませんが、本格に対する意欲は買えると思います。


No.213 4点 崖下の道
飛鳥高
(2010/04/25 17:22登録)
昭和の下町工場を舞台にした暗めのクライムミステリ。
兄の強盗殺人を疑う主人公の懊悩と、その親類で所轄の刑事の捜査を交互に描いていて文芸的な香りがします。が、本格ミステリの趣向がほとんど見られないのと、あまりにも救いようがない結末なので後味がよろしくないです。
古書的価値ほどの面白みは感じられませんでした。


No.212 5点 奇術師の密室
リチャード・マシスン
(2010/04/25 15:00登録)
半身不随で車椅子の元奇術師や息子で二代目奇術師とその妻など5人の登場人物のみで演じる舞台一幕劇。
それぞれの人物の思惑が交錯し、目が回る程のどんでん返しの繰り返しが炸裂しますが、それは本格ミステリの驚きとは異質なもの。マシスンの本領とはちょっと違うという感想を持ちました。


No.211 7点 ナイトホークス
マイクル・コナリー
(2010/04/25 14:41登録)
ロス市警の刑事・ハリー・ボッシュ、シリーズ第1作。
現代ハードボイルドの到達点とも言われ、本国では人気のシリーズですが、日本では熱狂的なファンはいても、ディーヴァーのような一般的な人気はない感じがします(このサイトの書評も全くありませんし)。
一匹狼的な孤高の刑事を描いたハードボイルド系の警察小説ですが、各作品とも常にどんでん返し的な真相を設定していて、本格ミステリ読みにも受ける要素があると思います。
初期4作目までは、ベトナム戦争の後遺症、ボッシュ出生の秘密、過去のドールメイカー事件、過去の母親殺害事件など後ろ向きのテーマで、地味な印象もありますが、以降はエンタテイメント性が益々高くなっています。しかし、ボッシュの人物造形を深く知るためには、シリーズ第1作から順に読むのが吉だと思います。


No.210 7点 闇よ、我が手を取りたまえ
デニス・ルヘイン
(2010/04/24 21:13登録)
私立探偵パトリック&アンジー、シリーズ第2弾。
前作より格段に完成度が高くなっている気がします。第1作だと、どうしても人間関係の説明が中心になる。パトリックと父親の関係、アンジーと夫の関係などが前提になっているため、今回すんなり物語に入っていけるのかもしれません。
男女の私立探偵もので、このような重厚な作品は珍しい。シリアル・キラー系統のハードボイルドですが、真相はサイコパスを超える衝撃的なものでした。
なお、角川文庫では作者名の表記は「レヘイン」になっています。


No.209 6点 死者の日
ケント・ハリントン
(2010/04/24 20:47登録)
メキシコの「死者の日」は日本の盆祭りを過激にした感じか。
その日を中心に、国境の町を舞台にした米国麻薬取締官の転落の過程を描いています。乾いた猥雑な筆致は「内なる殺人者」のジム・トンプソンを思わせ、デング熱で徐々に自分を見失っていく主人公の行動は異常な熱気を感じます。
読む者をもデング熱に罹患させた気分にさせるノワールの秀作だと思います。


No.208 5点 ハリウッド殺人事件
ジェームズ・アンダースン
(2010/04/24 18:11登録)
ジェシカおばさんの事件簿のノベライズ第2弾。
「ジェシカと疑惑の四人姉妹」と「ジェシカ、ハリウッドへ行く」の中編2作収録されています。
軽いながらも、ともに本格ミステリのツボを押さえていて、なかなか端正なフーダニットだと思いました。


No.207 7点 燃える男
A・J・クィネル
(2010/04/24 17:56登録)
元傭兵クリーシィが主人公の冒険サスペンス、シリーズ第1作。
シリーズものですが、本書に登場するクリーシィは2作目以降とだいぶ人物造形が異なる。傭兵を隠退し人生の生甲斐を喪失した男の再生の物語で、マルタの島での戦士の休息と再生のエピソードが非常に魅力的で印象に残りました。ボディガードの対象となる実業家の幼い令嬢との交流から、終盤の壮絶な復讐戦へ移行するプロットが効果的で、一級品の面白さです。


No.206 8点 眠りなき狙撃者
ジャン=パトリック・マンシェット
(2010/04/24 17:35登録)
若くして隠退した殺し屋のその後を暗くて研ぎ澄まされた文体で冷徹に描く、マンシェットの遺作。
米国風の派手なハードボイルドやサスペンスを期待して読むと、大きく裏切られるだろう。
「殺戮の天使」の女殺し屋とはだいぶタイプの異なる、使い捨ての殺し屋の皮肉でやるせない末路が、ノワール小説の傑作と言われる所以だと感じました。


No.205 7点 季節の終り
マイクル・Z・リューイン
(2010/04/24 16:10登録)
インディアナポリスの私立探偵アルバート・サムスン、シリーズ第6作。<ネオ・ハードボイルド>の代表格の一人です。
サムスンは地味な知性派の私立探偵で、物語の発端も派手さがありませんが、読み進めるうちに流れるような文体に引き込まれていき、最後はプロットの秀逸さに感心してしまいます。
シリアル・キラーを出して物語を盛り上げなくても充分面白いミステリが書けるという見本だと思います。
今作では、もう一つのシリーズの主役パウダー警部補が脇役で出ているように、二つのシリーズは世界を共有しています。


No.204 8点 シャドー81
ルシアン・ネイハム
(2010/04/24 15:39登録)
冒険ミステリ界の「一発屋」ルシアン・ネイハムの傑作航空サスペンスです。先年、30年ぶりに復刊されたので再読しました。

ベトナム戦争の翳が時代を感じさせますが、ジェット戦闘機による航空機ハイジャックと身代金奪取のサスペンスは今読んでも全く色あせていない。主人公で犯人のグラント大尉の造形が、クライムサスペンスなのに暗さを感じさせないのもいい。第1部で張られた伏線が、最後のどんでん返しにつながるプロットの巧さも再確認できました。
第1回文春ミステリベスト10の第1位は伊達じゃない傑作。


No.203 5点 塩沢地の霧
ヘンリー・ウエイド
(2010/04/24 15:18登録)
作者は英国黄金時代の代表作家の一人ですが、比較的地味な作品が多く、日本での人気はいまいちのようです。
ジョン・プール警部というシリーズ探偵を創作していますが、本書はノンシリーズで、海岸べりに住む画家夫婦と引っ越してきた人気小説家が織りなす殺人事件を描いています。
半倒叙形式で、登場人物の心情と北海沿岸の荒涼とした情景や捜査活動を丁寧に綴っている点は読めるんですが、真相の隠蔽方法が稚拙で謎解きミステリとしては成功作と言えないと思います。


No.202 6点 リヴァイアサン号殺人事件
ボリス・アクーニン
(2010/04/23 22:12登録)
ロシア外交官ファンドーリンを探偵役とする歴史ミステリ。
時代は19世紀末、舞台はインド行き豪華客船ということで、本格ミステリの美味しい雰囲気作りは満点です。
乗船しているパリの富豪一家殺人犯はだれか、日本人を含め多国籍の乗客の多視点で描写される人間模様は面白く読めます。
犯人当てとしては詰めの甘さを感じますが、ロシア人作家が書いた本格編ということで、珍品ではあります。


No.201 8点 シンプル・プラン
スコット・B・スミス
(2010/04/23 21:25登録)
新人作家がデビュー作で、とてつもない傑作をものにする場合がありますが、本書がその代表例じゃあないでしょうか。
ちょっとした偶然から大金を手にした主人公たち、それを隠蔽する「簡単な計画」のはずが、歯車が狂いはじめ、どんどん深みに嵌っていく・・・正にシンプルなクライムサスペンス。
雪中の田舎町の情景や、主人公の刻々と変わっていく心情描写が優れていて、とても新人の作品とは思えない。終盤のアクション・シーンは物語の雰囲気にそぐわない気もしますが、エンディングとして仕方のないところでしょうか。


No.200 6点 祖国なき男
ジェフリー・ハウスホールド
(2010/04/23 20:47登録)
英国冒険小説の古典名作「追われる男」から40年以上経って書かれた続編。
前作発刊時は戦時中でヒトラーが在命中だったため、暗殺対象もドイツが舞台であることも明示されない異色の冒険スリラーでしたが、今作はヒトラー暗殺失敗後の欧州横断ものの冒険譚になっています。
主人公の手記の形で、スリリングに数々のエピソードが語られていくのは前作同様で、ブランクを感じさせない。最後が尻すぼみの感がありますが、読み応えのある一冊でした。


No.199 6点 黄昏の罠
愛川晶
(2010/04/23 18:21登録)
女子大生剣士・栗村夏樹を探偵役とするシリーズ第1作。「黄昏の獲物」改題。
誘拐もの、顔のない死体トリックに加えてプロットにもある工夫を凝らすなど色々トリックが入っていて楽しめました。
作者が通俗的な本格ミステリに転換した第1歩の作品で、まずまず成功していると思うんですが、シリーズ3作で終わったのは、某作家の女子高生剣士・武藤類子とキャラがカブってしまったからでしょうか。


No.198 8点 怪奇探偵小説名作選〈8〉日影丈吉集―かむなぎうた
日影丈吉
(2010/04/23 18:04登録)
幻想ミステリ短編選集、全16作収録されている「ちくま文庫」版。
舞台背景が、田舎、フランス、台湾のものや都会の幻想譚などバランス良く配置されていて、著者の短編全体を俯瞰できるラインナップだと思います。
表題作の「かむなぎうた」と「狐の鶏」は共に既読ですが、別格の完成度で本格ミステリ趣向と怪奇幻想趣向が融合した傑作です。特に表題作は、最後に一応の真相が明示されても、別の真相があるんじゃあないかと思わせる点が秀逸です。
ほかにも、怪奇話が現実的な殺人の罠に反転する「吉備津の釜」、大蛇を巡る軽妙話が怪奇譚になる「王とのつきあい」、武田勝頼家臣の戦国残酷譚のはずが亡きバーの女給へのオマージュに変わる「饅頭軍談」など、一筋縄ではいかない秀作揃いの短編集で堪能しました。

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