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ミステリの祭典

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塩沢地の霧

作家 ヘンリー・ウエイド
出版日2003年02月
平均点5.33点
書評数3人

No.3 6点 弾十六
(2025/07/07 03:07登録)
1933年10月出版。駒月さんの翻訳は非常に素晴らしい。
私はなるべく出版社が提示しているあらすじとか帯とか一切読まずに、事前情報ゼロで読むのが楽しみ。犠牲者は誰かなあ、この話の進み方ならこういう流れになるのかなあ、とかあれこれ想像しながら読み進めるのが良い。本作は、そういう読み方にピッタリの作品。
じっくりと読ませる文章で数日かけてゆっくり読みました。
まあでも最終的な感想はうーん、これはこれで良いけど傑作とは言えないなあ… 第十四章で緊張を一旦切ってしまっているのがどうもなあ、という印象です。
月日と曜日が記されているので(七月二十八日木曜日(p252)など)作中現在は1932年なのだろう。
原文は入手困難。トリビア一か所だけ。
昔、フィルポッツ『溺死人』で書いたけど、本作にも「"溺死体発見"(p186)」という表現が出てくる。原文はfound drownedだろう。ちょっとググったらAIがわかりやすく説明してくれる時代となりました。"Found drowned" refers to the formal verdict given when a person's body is discovered in water, with no evidence of foul play.などなど。「ヴィクトリア朝やエドワード朝の検死官報告や新聞記事によく見られる表現」といたれりつくせりです。なので、この箇所は「"溺死と評決される事件"」と翻訳するのが良いでしょうね。

No.2 5点 nukkam
(2016/07/25 01:59登録)
(ネタバレなしです) 1933年に発表されたシリーズ探偵の登場しないミステリーです。本書は「半倒叙」と評価されることもあるようですがそれはいかにも犯人らしい人物を描きながら肝心の犯行場面を直接描写しないことによって犯人当て要素も残しているからのようです。もっとも有力な犯人候補が意外と少ないため犯人当て本格派推理小説としてはあまり面白くありません。物語としては良く出来ており、事件が中盤まで発生しないながら筋運びがだれることもなく結末の印象度も高いです。ところで国書刊行会版の巻末解説では結末のアイデアが某有名ミステリーを先取りしているかのように誉めていましたが、よく考えるとその某ミステリーの方が本書より先に出版されているではないですか!

No.1 5点 kanamori
(2010/04/24 15:18登録)
作者は英国黄金時代の代表作家の一人ですが、比較的地味な作品が多く、日本での人気はいまいちのようです。
ジョン・プール警部というシリーズ探偵を創作していますが、本書はノンシリーズで、海岸べりに住む画家夫婦と引っ越してきた人気小説家が織りなす殺人事件を描いています。
半倒叙形式で、登場人物の心情と北海沿岸の荒涼とした情景や捜査活動を丁寧に綴っている点は読めるんですが、真相の隠蔽方法が稚拙で謎解きミステリとしては成功作と言えないと思います。

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