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ミステリの祭典

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眠りなき狙撃者

作家 ジャン=パトリック・マンシェット
出版日1997年03月
平均点7.75点
書評数4人

No.4 4点 メルカトル
(2022/12/08 22:42登録)
引退を決意し、新たな世界を希求する殺し屋に襲いかかるさまざまな組織の罠、そしてかつての仇敵たち―「現代フランス文学の極北」といえるほど、限界まで贅肉をそぎ落とされ張りつめた文体が描く、荒涼たる孤独と絶望のドラマ。ロマン・ノワールの旗手・マンシェットの遺作にして、最高傑作。ピエール・モレル監督により映画化。
『BOOK』データベースより。

いやー、殺伐としてますねえ。文章はやけに硬質で、無味乾燥と言っても良いでしょう。だから私には面白味が感じられませんでした。まあハードボイルドなんだから当然ですかね。これを凄いと思うのは余程のハードボイルドマニアか読書の達人でしょう。盛り上がりそうなところで盛り上がり切れない、読みどころと言えば多少の暴力シーンくらいで。そんな私はとってもダメ読者なのです。

昔本サイトで、名指しではなかったものの暗に「人は本を選べるが本は人を選べない」と個人攻撃をされた事がありました。勿論私に対してです。ですからこの本はブックオフに持って行き、読むべき人の所へ連れていかれる事を願って売りたいと思います。とても手元に置いておく気にはなれません。
因みにAmazonで☆五個を付けた人の気持ちは解りませんが、☆一つの読者の気持ちは何となく解る気がします。だから、他の評者の方の高評価ぶりは逆に流石名だたる先輩方だと感心しております。

No.3 10点 クリスティ再読
(2018/03/27 22:28登録)
人によって高得点の付け方はいろいろなのだろうが、評者の10点は大傑作・大名作というよりも、「愛の対象」であるかどうか、である。だから今までは再読作品以外は10点を付けれなかったのだが...本作は初読でもその自己ルールを破ります。評者は本作に恋している。
まあ評者マンシェットとは相性がいいのは何となく感じていたのだがね。この遺作は今まで読んだマンシェットのどの作品よりもタイトで凶悪でクールであり、ハードボイルドの鑑、と言っていい作品である。ほぼ散文詩の域に近づいているので、一語一句ゆるがせにできない読書体験を味わったよ。三人称・カメラアイな客観描写という方法論が徹底されているので、大向こうを唸らせる警句も、文学的比喩もここには存在しえない。本作と比較したら、チャンドラーだって気取った自意識の産物であり、ロスマクなんぞ比喩のかたちで主観を密輸し放題である...本作を味わずして、ハードボイルドを語るのはおこがましい、と感じるほどだ。
本作の良さを語るのならば、それは本作自身に語らせよう。

冬で夜だった。凍った風が、北極からじかにアイルランドの海へ流れ込み、リヴァプールを薙ぎ払って、チェシャ―平原を突っ走り(猫は風が暖炉のなかで唸りを上げるのを聞いて寒そうに耳を寝かせ)、風は下げたウィンドウを通して、ベドフォードの小型バンに坐った男の眼を叩きつけにやってきた。男は瞬きもしない。

一種のズームアップの映像感覚が心地よい。それにしても、何とイメージが広がる描写だろう!! これが冒頭で、最後に至るまでこの調子で文章に一切の妥協がない。でしかも、ほぼこの文章のパラフレーズで小説は終わる。そしてその微妙に違う部分に、万斛の感慨が滲み出る。
ハードボイルドの極北、とは本作のことであろう。本作に出会えて、本当によかった。

後記(2018/9/20):Amazon の☆が何か凄いことになっている...☆5が4人、☆1が4人、他はなし! 強烈に評価が割れてるね。面白い!

No.2 9点 mini
(2014/11/10 09:55登録)
先日に河出文庫からJ=P・マンシェット「眠りなき狙撃者」が刊行された、翻訳者が同一人物だから、新訳じゃなくて絶版だった学研版の単純な文庫化と思われる
昨今の河出書房のこうした取り組みは評価すべきであろう、メチャ古~い翻訳なら新訳に切り替える必要があるが、そんなに古びてなくて今でも通用する訳なら通常に入手可能な状況にすることの方が意義が有るしね
それにしても以前の版元は”学研”ですよ学研、ミステリーにも手を出すのかという意外な感がある、しかもマンシェット、
これが小学館ならばミステリー出版に意欲的だった時期があるので普通にミステリー出版社の1つというイメージなのだが、学研ねえ
こうなると河出書房さん、学研版の残った2冊「殺しの挽歌」と「殺戮の天使」の文庫化も考えてもいんじゃないでしょうか

さて仏ノワールの騎士マンシェットの最後の長編であり最高傑作と言われる「眠りなき狙撃者」である
実はこの作以後に長編が途中まで書かれていたのだが未完の遺作となってしまった為、完成された長編としてはこれが最終作となる
何しろ私はマンシェット初心者なので他の作と比較出来ないのだが、とにかく完成度が凄いの一言である
光文社文庫版の「寓者が出てくるお城が見える」も本は所持しているのでまた機会があったら読んでみたい
でも一番要望したいのは早川書房ですよ、新訳じゃなくてもいいからポケミスの「地下組織ナーダ」とあとついでにA・D・G「病める巨犬」を復刊せい、古書価格が高け~んだよ(苦笑)

No.1 8点 kanamori
(2010/04/24 17:35登録)
若くして隠退した殺し屋のその後を暗くて研ぎ澄まされた文体で冷徹に描く、マンシェットの遺作。
米国風の派手なハードボイルドやサスペンスを期待して読むと、大きく裏切られるだろう。
「殺戮の天使」の女殺し屋とはだいぶタイプの異なる、使い捨ての殺し屋の皮肉でやるせない末路が、ノワール小説の傑作と言われる所以だと感じました。

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