ナイトホークス ハリー・ボッシュシリーズ |
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作家 | マイクル・コナリー |
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出版日 | 1992年10月 |
平均点 | 6.75点 |
書評数 | 8人 |
No.8 | 6点 | レッドキング | |
(2023/11/17 07:48登録) ボッシュシリーズその一。ロサンゼルス警察の一匹狼刑事:Hieronymus Bosch・・ルネサンス期の有名なシュール怪奇コミカル画家と同姓同名・・が主役のハードボイルド(?) マーロウ直系筋なんだろが、第一人称語りでないのがよい(中高年男の、上から目線グダグダ長語りはウザく・・) 訳題「ナイトホークス」にして原題「The Black Echo=暗闇のこだま」で両方とも意味あるが、「トンネル鼠」「闇よ鼠たちの為に」てのもよく。相棒のFBI女のセリフを、「~だったわ ~なのよ」等、女言葉に訳したのは失敗・・あの女には「~だったんだ ~なんだ」と喋らせねば。ドンデン返し・・見えすいてるけど・・面白かった。愉しみなシリーズが一つできた(^o^) ので、初回サービスで点数オマケしちゃう。 |
No.7 | 7点 | あびびび | |
(2018/11/07 22:53登録) ハリーボッシュシリーズ7冊目にデビュー作を読んだ。でもまったく違和感なし、堅さなし。これが新作と言われても気が付かないかも。 ハリーボッシュを映画スターが演じるなら誰か…と問われたら、自分的にはブルース・ウィリスか?いや、ちがう。タフさは合うが、繊細な面が合わない?それなら…。 |
No.6 | 7点 | そ | |
(2018/10/28 21:19登録) 原題はThe Black Echo(ザ・ブラック・エコー)だが、邦題は絵のナイトホークス(Nighthawks)となった。 マイクル・コナリーの処女作であるが、完成度はそれを思えないほど高い。 当時は本書によりハードボイルドに興味を持ち始め、同作家の作品をいっぱい読んだ。ボッシュとエレノアの関係は実に複雑と思う。 |
No.5 | 6点 | tider-tiger | |
(2018/10/08 00:24登録) ~1992年アメリカ作品 ようやっとコナリーのデビュー作を読む。 コナリーは六冊読んだが、絶対に真似をしてはいけないと言われそうな順番で読んでいた。 夜より暗き闇→天使と罪の街→終決者たち→シティ・オブ・ボーンズ →ポエット→スケアクロウ→本作ナイトホークス 今のところ本作も含めてハズレはないが、『夜より暗き闇』『終決者たち』が特に良かったかなあ。 で、本作。 シリーズ第一作なのでボッシュの心の闇にかなり焦点が当てられるのではないかと想像していた。だが、やはり主体はストーリーであった。ボッシュをもっと刺々しく書いてもよかったのではないか。もっと暗くて嫌な奴にしてもよかったのではないかと思った。 トンネルネズミとブラックエコー。なんとも想像力を掻き立てられる。この二つを徹底的に掘り下げて欲しかった。ネタとしてうまく使ってはいても、切実さが足りない。 よくも悪くもキャラと作者の間に距離があって、変に力が入っているような場面がない。読者が読みたがることよりも自分が書きたいことを優先してしまう、そういう微笑ましい欠点がない。展開はまあまあ巧みだが、伏線の張り方がいまいちか。 デビュー作とは思えないバランス感覚、うまさがある。面白いネタをいくつか盛り込みながらもあまり深追いはせず、そつなくまとめたような印象。 Tetchyさんの以下の御意見に激しく同意。 >>徹底的に同種の小説のみならずエンタテインメントを研究しているのがこのデビュー作からも推し量れる。 ただ、これは美点なんだけど、悪い方にも作用してしまっているような気がする。 そんなわけで、もちろん退屈はしないし面白いんだけど、どうにも乗り切れないところがあった。AIに小説を書かせたらこういうものが出来上がりそうな気がする。 順番どおりに読むべき作家だろうが、本作ではまだ本来の実力は出し切れていないと感じた。それでも6点は付けられる。 邦題については この話なら『ナイトホークス』の方がいいかなあ。 ただ、私としては「これは『ブラックエコー』とすべきでしょう」と言いたくなるような話を読みたかったのです。 ※エルロイとの類似が指摘されることあるが、読みどころがまるで異なる作家だと思う。 |
No.4 | 8点 | Tetchy | |
(2017/03/24 23:08登録) 人が正しいことをしようとすることはこれほどまでに痛みを伴うことなのか。 マイクル・コナリーデビュー作にしてMWA賞の新人賞に輝いた今なお続くハリー・ボッシュシリーズ第1作の本書は読後そんな感慨が迫りくる物語だ。 一匹狼の刑事、ヴェトナム戦争のトラウマ、男と女のロマンス。このように本書を構成する要素を並べると実に典型的なハードボイルド警察小説である。しかしどことなく他の凡百の小説と一線を画するように思えるのはこのボッシュという人物に奥行きを感じるからかもしれない。 仕事の終わりに片持ち梁構造の、金持ち連中が住まう一軒家でハリウッドの景色を眺めながらジャズを流してビールを飲むことを至上の愉しみとしている。読書にも造詣が深く、自分の名前の由来が高名な画家であることがきっかけかもしれないが、絵画にもある程度の知識を持つ。ボッシュがエレノアと魅かれるのも彼女の自宅にある蔵書と彼女の家に掛かっている一幅の絵のレプリカが自分との精神的つながりを見出すからだ。こんな描写に単純なタフガイ以上の存在感を印象付けられる。 捜査が進むにつれて時に反目し合い、時に長年の相棒のように振る舞いながらボッシュとエレノアは長く2人でいる時間の中でお互いの人間性を確認し合い、そして個人的なことを徐々に話し出していく。2人での語らいのシーンは数多くあるが、その中で私は2人で強盗グループが襲撃すると目される富裕層相手の貸金庫会社に張り込んでいる時に車中で訥々と語り合うシーンが好きだ。その時の2人は長く流れる時の隙間を埋めるための会話を考えるような関係ではなくなり、沈黙が心地よくなっている関係となっている。張り込みの最中でお互いの人生の分岐点になった過去の出来事を語り、そしてその出来事で自らが思いもしなかった心情について述べられる。そして初めてその時にボッシュはエレノアを仕事上のパートナーから人生のパートナーとして意識し、その責任感に身震いする。一匹狼の敏腕刑事の男が連れ合いを意識したときに初めてそれを守っていく勇気と怖さを目の当たりにするのである。何とも味わい深いシーンだ。 元ヴェトナム兵士による銀行強盗が貸金庫に押し入ってからの攻防が実に写実的だ。それはまさにスローモーションで自ら誤った推理でボッシュを監視していたルイスが無数の弾幕に死の舞踏を踊らされ、ガラスを打ち破って落下する様、事態の急変に呆然と佇むクラークが凶弾にて同行していた会社の支配人を道連れに倒れ行く様、その銃火の中をボッシュが必死に応戦し、強盗の1人に手傷を負わせる様が描かれる。本書のクライマックスと云っていいシーンだ。 本書に登場する人々に全て共通するのはヴェトナム戦争だ。かの戦争で普通の生活が出来なくなり、犯罪に関わる生活を繰り返す者、混乱に乗じて一攫千金を得る者、またそれに一役買って社会的地位を得た者、その渦中に取り込まれて無残な死を遂げた者、愛する者を喪った者、もしくはそんな過去を振り払い、己の正義を貫く者。十人十色のそれぞれの人生が交錯し、今回の事件に収束していったことが判る。 本書の原題は“Black Echo”。これはボッシュがヴェトナム戦争時代にトンネル兵士だった頃に経験した地下に張り巡るトンネルの暗闇の中で反響する自分たちの息遣いを示している。何とも緊迫した題名だ。 翻って邦題の“ナイトホークス”とは画家エドワード・ホッパーが書いた一幅の絵のタイトル“夜ふかしする人たち”を指す。街角のとある店で女性と一緒にいる自分を一人の自分が見ているという絵だ。この絵のレプリカが捜査のパートナーとなるFBI捜査官エレノア・ウィッシュの自宅に飾られており、しかもボッシュ自身も好きな絵であった。そしてその訪問がきっかけとなって2人が急接近する。 つまり原題ではボッシュがヴェトナム戦争の暗い過去との対峙と、かつて戦友だったウィリアム・メドーズとの、忌まわしい戦争と一緒に潜り抜けた男への鎮魂が謳われているのに対し、邦題では事件を通じてパートナーとなるボッシュとエレノア・ウィッシュとの新たな絆を謳っているところに大きな違いがある。 そしてこのパートナーの名前がウィッシュ、つまり“望み”であることが象徴的だ。邦訳ではしきりに「ボッシュとウィッシュは」と評され、決して「ハリーとエレノアは」ではない。それはまだお互いがファーストネームで呼び合うほど仲が接近していないことを示しているのだろうが、一方でボッシュの捜査には、行動には常に“望み”が伴っているという風にも読み取れる。原文を当たっていないので正解ではないのかもしれないが恐らくは“Bosch and Wish ~”とか“Bosch ~ with Wish”という風に表記されているのではないだろうか。そう考えると本書は下水と呼ばれる最下層のハリウッド署に埋もれる“堕ちた英雄”の再生の物語であり、その望みとなるのがエレノアというように読める。つまりエレノア・ウィッシュこそはハリー・ボッシュの救いの女神であったのだ。だからこそ邦題はエレノアとボッシュの関係を象徴する一幅の絵のタイトルを冠した、そういう風に考えるとなかなかに深い題名だと云える。 その後に刊行される作品が『ブラック・アイス』に『ブラック・ハート』であることを考えると統一性を持たせるために『ブラック・エコー』とすべきだろうが、私は邦題の方が本書のテーマに合っていると思う。最後のエピローグがそれを裏付けている。 しかしだからこそ真相の辛さが響くのだが。 いわゆるハリウッド映画やドラマ受けしそうな典型的な展開を見せながらも、実はそのベタな展開こそが物語の仕掛けである強かさこそが数多ある刑事小説と、ハードボイルド小説と一線を画す要素なのかもしれない。とにかく作者コナリーが本書を著すに当たって徹底的に同種の小説のみならずエンタテインメントを研究しているのがこのデビュー作からも推し量れる。 さて今なお続くハリー・ボッシュサーガの幕開けだ。じっくり味わっていこう。 |
No.3 | 8点 | E-BANKER | |
(2013/04/11 23:01登録) 1992年発表。ハリウッド署ハリー・ボッシュ刑事を主人公とするシリーズ第一作。 凄腕だが一匹狼を好む“孤高のヒーロー”は、やはりハードボイルドによく似合う。 ~ブラック・エコー。地下に張り巡らされるトンネルの暗闇のなか、湿った空虚さのなかにこだまする自分の息を兵士たちはこう呼んだ・・・。パイプのなかで死体は発見された。かつての戦友メドーズ。未だヴェトナム戦争の悪夢に悩まされ、眠れる夜を過ごす刑事ボッシュにとっては、20年前の悪夢が蘇る。事故死の処理に割り切れなさを感じ、捜査を強行したボッシュ。だが、意外にもFBIが介入。メドーズは未解決の銀行強盗事件の有力容疑者だった。孤独でタフな刑事の孤立無援の捜査と、哀しく意外な真相をクールに描く長編ハードボイルド~ さすがに読み応え十分。 J.ディーヴァーのリンカーン・ライムシリーズと並び称される人気シリーズだけのことはあるだろう。 作者のM.コナリーはジャーナリズム出身者らしく、熱い男の物語を描きながらも、クール&ドライな筆致でストーリーを進めていく。 主役であるハリー・ボッシュは、ヴェトナム戦争でのつらい記憶に悩まされ、警察組織のなかで異分子的扱いを受けながらも、刑事としての己の矜持を貫こうとする・・・まさにハードボイルド・ヒーローの典型だ。 プロットとしてはそれほどのオリジナリティはなく、まぁ「よくある手」とは言える。 ある殺人事件から端を発した謎が、ヴェトナム戦争を源流に持つ「裏側の巨悪」につながっていく。ハリウッド署、ロス市警、FBIが絡み合いながら、意外な終盤そしてドンデン返しのラストになだれ込む・・・のだ。 特に、黒幕の意外性については、正直なところ予定調和というレベルかもしれない。 ただ、この予定調和はミステリー的なサプライズ感を狙ったというよりは、ある登場人物の哀しみに深みを持たせるためのプロットなのだろう。 (「こうじゃないかと思うけど、こうあって欲しくない」と思いつつ読んでいたが、「やっぱりそうだったのか・・・」という感じ) ということで、長所短所はあるが、シリーズ一作目としては十分な出来だと思う。 ハリウッドのど真ん中を舞台にした派手な銃撃戦など、よくも悪くも一昔前のハリウッド映画を想起させる展開だし、まさに“This is アメリカン・ハードボイルド”っていう奴だろう。 (たまたま組んだパートナーが美女って展開・・・現実ではなかなかないよなぁ・・・) |
No.2 | 5点 | mini | |
(2010/05/25 09:29登録) 本日発売の早川ミステリマガジン7月号の特集は”マイケル・コナリー・パーク” パークって何だよ、と思ったら最新刊「エコー・パーク」から採ったのか? コナリーは前から読みたい作家だったのだが後回しになってしまいこれが初読み どれから読むか迷って「ザ・ポエット」あたりからと思っていたが、ネット書評などを見るに、コナリー作品はそれぞれ何らかの繋がりがあったり、一見ノンシリーズっぽくても実はスピンオフ作品だったりで、出来れば順番通り読むほうがいいとあったので、シリーズ第1作のこれからいってみた 作者はチャンドラー論も著している位だから、主人公ボッシュの造形にもマーロウの影響があり、後の作品では刑事職を辞して私立探偵になっているらしい 一匹狼な刑事を描きたかったのだろうが、ボッシュが何かに付け回りに噛み付くのがちょっとウザったくはある それと多分初期作だけなのかも知れないが、抽象的な描写であっさり済ませばいい部分でも、ちょっと具体的な描写がクドくて書き込み過ぎな印象もある 例えば序盤に検死解剖シーンが出てくるが、解剖の手順を具体的に逐一描くのが読んでて疲れる 作者はジャーナリストとしてピューリッツァー賞の候補にもなったらしいから、記者魂として具体的で克明な描写をせずにはいられなかったのだろうか ただボッシュの過去にまつわる因縁話は決してクドくない この因縁話の暗さが無くて単なる爽快な刑事ものだったら逆に魅力半減だろう ところで何で採点がイマイチ高くないのかと言うと、真相はかなり意外なものなのだが、ちょっと見え透いた感もあって、この種の作としては王道的に纏めすぎた気もするんだよなぁ ところでこれは是非言っておきたいのだが、何だこの題名 どう考えても原題通りに『ブラック・エコー』とすべきだろう、内容的にも 第2作ではそのまま原題通り「ブラック・アイス」になってるのに 一方で原題にBlackの入らない第3作は「ブラック・ハート」だ さらに最新刊が「エコー・パーク」だから、第1作と”エコー”で繋がりが出来たのに 扶桑社って角川の次に題名付けの下手糞な出版社だな、もう扶桑社はミステリーから手を引いて欲しいよ、馬鹿出版社め |
No.1 | 7点 | kanamori | |
(2010/04/25 14:41登録) ロス市警の刑事・ハリー・ボッシュ、シリーズ第1作。 現代ハードボイルドの到達点とも言われ、本国では人気のシリーズですが、日本では熱狂的なファンはいても、ディーヴァーのような一般的な人気はない感じがします(このサイトの書評も全くありませんし)。 一匹狼的な孤高の刑事を描いたハードボイルド系の警察小説ですが、各作品とも常にどんでん返し的な真相を設定していて、本格ミステリ読みにも受ける要素があると思います。 初期4作目までは、ベトナム戦争の後遺症、ボッシュ出生の秘密、過去のドールメイカー事件、過去の母親殺害事件など後ろ向きのテーマで、地味な印象もありますが、以降はエンタテイメント性が益々高くなっています。しかし、ボッシュの人物造形を深く知るためには、シリーズ第1作から順に読むのが吉だと思います。 |