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ミステリの祭典

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kanamoriさんの登録情報
平均点:5.89点 書評数:2467件

プロフィール| 書評

No.307 6点 ダイナマイト円舞曲(ワルツ)
小泉喜美子
(2010/05/15 17:02登録)
地中海の架空の王国を舞台にした陰謀ミステリ。デビュー作から10年後に出版された長編第2作です。
国王の9番目の王妃と留学先で知り合いだった主人公女性の一人称で物語が綴られていきますが、一種メルヘンチックな雰囲気を醸し出しながら、サスペンス溢れる陰謀譚が描かれています。
王国の秘密とか不可解な出来事の真相はあまり独創的とは言えないですし、衝撃度はデビュー作ほどのものではありませんが、社会派全盛の時代に、このような洒落たミステリを書くこと自体非凡なセンスを感じました。


No.306 5点 しのびよる月
逢坂剛
(2010/05/15 16:26登録)
御茶ノ水警察署の斉木&梢田コンビのユーモア連作警察小説、シリーズ第1弾。
小学生時代の同級生でいじめっ子、いじめられっ子の関係にあった二人が、同じ警察署で上司部下の立場が逆転というシチュエーション・コメデイの設定が面白い。まあ、気軽に読めるのがなによりです。


No.305 5点 五つの標的
山田正紀
(2010/05/15 16:11登録)
「贋作ゲーム」同様に犯罪をゲーム感覚で描いたクライム・ミステリ短編集。
東京の地下鉄網を舞台に現金輸送車襲撃犯と捜査陣とのストレートで息詰まる追跡戦「地下鉄ゲーム」がベスト。
大地震の噂をコントロールする男「ひびわれた海」の予想外の結末も印象に残りました。


No.304 5点 赤い熱い海
佐野洋
(2010/05/15 15:53登録)
函館沖で墜落した航空機から消えた会社役員の謎。
複数の探偵事務所調査員の視点で、事件の真相解明の過程が描かれている点はなかなか面白く、そこに仕掛けがあるのも巧妙だと思いましたが、意外性を追求するあまり犯人の動機がどう見ても不自然になってしまったのは惜しい。


No.303 5点 帰らざる夜
三好徹
(2010/05/15 15:35登録)
犯人当て懸賞小説として新聞に連載された長編ミステリ。
失踪した新妻の行方を追う主人公という設定は、著者自身の「消えた蜜月」の男女裏返し版でもあり、いくつかの社会派ミステリで既読感のあるプロットですが、プロ野球選手の愛人殺し発生後に、妻をめぐる人間関係が錯綜してきてから本格ミステリの様相を呈します。
地名誤認トリックはともかく電話アリバイトリックはあまり感心できませんし、犯人の動機も納得いくものとは思えませんでした。


No.302 8点 山猫の夏
船戸与一
(2010/05/14 21:00登録)
<南米三部作>の第1作。
二つの旧家が対立するブラジル辺境の町を舞台にしたハード活劇小説。
突如現れた謎の日本人・山猫<オセロット>が触媒となって血と汗が迸る壮絶な戦いが勃発するという大筋のプロットは「赤い収穫」へのオマージュだと思いますが、山猫の助手を務めさせられる語り手の日本人バーテンダーの再生の物語でもあります。
山猫の隠された目的なども面白く、エンタテイメントに徹した傑作冒険小説でした。


No.301 6点 遥かなりわが愛を
笹沢左保
(2010/05/14 20:24登録)
警視庁・伊勢波警部シリーズ第1作。
作者の作風の特徴は甘くて暗めのロマンと本格トリックを合わせ持つ所だと思いますが、当シリーズは歴史ミステリの趣向が加味されています。
高野長英の曾孫と称する男からの殺人予告によって幕を開ける正統派のアリバイ崩しで、トリックは単純ながらなかなかのもの。探偵自身がアリバイの証言者という趣向も面白かった。


No.300 6点 長安日記
陳舜臣
(2010/05/14 18:50登録)
玄宗皇帝治世の長安を時代背景に、謎の日本人・賀望東が探偵役を務める連作ミステリ短編集。
エキゾチックな国際都市・長安の雰囲気がいかにも風で興味深く読めるうえに、密室殺人などの不可能トリックが満載されています。各編あっさり解決するのが物足りないですが、まずまず面白く読めました。


No.299 4点 火の路
松本清張
(2010/05/14 18:33登録)
女性考古学研究者を主人公にした、奈良・飛鳥村の巨石遺跡の謎と隠退した考古学者の過去が交錯するミステリ巨編。
大学の派閥争いや遺跡盗掘など陰謀めいた話は面白いが、核となる事件そのものがあやふやなまま、ゾロアスター教と飛鳥の関連を延々と論考するプロットには正直参りました。
結局、作者はミステリではなく、考古学論文を書きたかったのでは。


No.298 6点 鋏の記憶
今邑彩
(2010/05/14 18:06登録)
サイコメトリー(残留物感知能力)をもつ女子高生を主人公にしたミステリ連作短編集。角川ホラー文庫から出ていて設定も超常能力ものなのでホラー小説と思わせますが、本格ミステリ寄りの4編が収録されています。
どの作品もサクサク読めてよかったですが、「猫の恩返し」の真相が一番意表を突く出来でした。


No.297 7点 牡牛の柔らかな肉
連城三紀彦
(2010/05/13 19:07登録)
いわゆる悪女ものの系統に入る長編ミステリですが、物語がいったいどういう方向に向かっているのか把握できないプロットに翻弄されました。
主人公の香順尼と取巻きのダメ男たちを中心にした新興宗教もの風のクライム小説でありながら、次々と小さなどんでん返しを繰り返し、物語の様相が変化していきます。
短編のように最後の反転で驚かすタイプのミステリではありませんが、犯罪者が探偵に、逆に探偵役が犯罪者に変化したりする物語途中の構図の逆転が読みどころだと思います。


No.296 6点 赫眼
三津田信三
(2010/05/13 18:36登録)
ホラー系の短編集。
アンソロジーなどで発表済みの作品を集めた感があるラインナップですが、刀城言耶シリーズに繋がる世界のものや、三津田信三シリーズ、死相学探偵ものなどが収録されていて、氏の長編をある程度読んだ読者の方が楽しめるかと思います。
なかでは、ミステリ寄りの「灰蛾男の恐怖」がトンデモ系で印象に残りました。
実話風のショート怪談も挿入されていますが、そちらはいずれも微妙です。


No.295 5点 紅い蛾は死の予告
梶龍雄
(2010/05/12 22:47登録)
過去に一家全員が失踪した村を舞台に、その事件をテーマにした映画の撮影に来た女優が、ある事件に巻き込まれ真相究明に乗り出す話。
映画の脚本と現在の事件が交互に描かれていますが、悪い意味で読み手を混乱させています。読後にストーリーを整理して、作者が何をやりたかったか分かった次第ですが、アイデアは非常に面白いのに(のちの新本格や三津田作品に似たアイデアあり)プレゼンテーションが稚拙なため、スッキリと騙された気にならなかったです。


No.294 6点 紙の孔雀
斎藤栄
(2010/05/12 22:29登録)
作者はストーリーそのものにトリックを仕掛ける「ストリック」を提唱したとされますが、さしずめ本書とか「紅の幻影」なんかがその実践作かもしれません。
学生運動闘争中に暴行を受けた女子大生が真相を追究する話と、その父親である刑事がある殺人事件を捜査する話が並行して描かれていますが、どうも焦点が定まらない感じを受けます。
終盤近くになって、殺人事件の容疑者が台風で交通が遮断された三宅島から如何にして脱出したのかというアリバイの謎が提示され、やっと本格ミステリの様相になったと思ったとたん、予想外の展開が待っていました。
父親の捜査状況の描写など微妙でアンフェアと言われかねないのと、時代性を感じる大学紛争の話が冗長に感じましたが、意外な結末については楽しめました。


No.293 7点 あやかし砂絵
都筑道夫
(2010/05/11 21:44登録)
なめくじ長屋捕物さわぎシリーズ第4弾。
発端の不可解な謎の提示は、過去のシリーズ同様に魅力的ですが、解釈にやや捻りが不足するものが目立つように思いました。
なかでは、絵に描いた虎が人を喰い殺す「人喰い屏風」が謎の突飛な所がずば抜けています。動機の隠蔽もなかなかでホワイダニットの秀作だと思います。


No.292 8点 からくり砂絵
都筑道夫
(2010/05/11 21:33登録)
なめくじ長屋捕物さわぎシリーズ第3弾。
解説によると、「むっつり右門」シリーズが元ネタになっている話が数編含まれているそうですが、不可解性を追求するテンションは落ちていません。
ベストは、座敷で隠居が大きな庭石によって圧死する不可解な謎が魅力的な「小梅富士」。からくり人形が竹光で斬殺する「血しぶき人形」が準ベストでしょうか。


No.291 8点 くらやみ砂絵
都筑道夫
(2010/05/11 21:16登録)
なめくじ長屋捕物さわぎシリーズの第2弾。
準レギュラーである岡っ引きの下駄常への助太刀の体裁を取りながら、ダミーの解決を提示する多重解決がパターン化しています。
棺桶の中の死体の入れ替りトリック「天狗起し」と、死人が泥棒に入るという謎の「地口行灯」が不可解性で双璧の秀作だと思います。後者は江戸時代の文盲があたりまえという常識を活かしたダイイングメッセージも唸りました。


No.290 9点 血みどろ砂絵
都筑道夫
(2010/05/11 20:49登録)
砂絵のセンセーを中心に「なめくじ長屋」のアウトローたちが奇怪な事件を解決する捕物帳、シリーズ全11作中の第1弾。
軽妙洒脱な文体で江戸の風物を楽しめると共に、奇想天外な謎と論理のアクロバットが光る傑作パズラーでもあります。
渡し船からの人間消失トリック「よろいの渡し」、見立て連続殺人もの「本所七不思議」、密室の蔵からの人間消失「三番倉」、心中した女が一瞬にして老婆に変わる「心中不忍池」など、物のけや神隠しの存在が信じられていた時代だけに、それぞれの設定が効果的で動機にも説得力がある点が秀逸です。


No.289 6点 奥只見温泉郷殺人事件
中町信
(2010/05/11 20:15登録)
一人称の物語の合間に日記の抜粋が挟まれた構成で、すぐにアッチ系のミステリとわかります。
温泉宿泊客が多数登場して人物が書き別けられていないのは一種の叙述トリック(笑)と考えても、画家の絵によるある誤認トリックは推理クイズ本レベルです。
しかし、著者の作風を知らずにトラベルミステリだと思って手を出した人は、プロット上の仕掛けに驚くかもしれません。


No.288 7点 團十郎切腹事件
戸板康二
(2010/05/10 21:22登録)
歌舞伎の老俳優・中村雅楽を探偵役とした連作短編集。
当シリーズは後期の作品になると日常の謎系の軽めのミステリが主流になってしまいましたが、第1短編集の本書では、江川刑事の登場する事件ものが多く含まれていて本格度が高いと思います。
表題作以外では、「奈落殺人事件」「等々力座殺人事件」「松王丸変死事件」なんかがいいですね。

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