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ミステリの祭典

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kanamoriさんの登録情報
平均点:5.89点 書評数:2432件

プロフィール| 書評

No.272 6点 死んだ時間
佐野洋
(2010/05/08 15:33登録)
女性タレント殺人事件の犯人として自首してきた女はれっきとしたアリバイがあった。
初期の作品で、ホワイダニットを前面にだした秀作です。著者自身も好きな作品のひとつと言っているだけに、謎の設定と意外な展開はなかなか読ませます。
謎の中心となる女性はストーリー上最後まで姿を見せず、その不可解性を高めているのも巧い構成だと思います。


No.271 5点 怒りの菩薩
陳舜臣
(2010/05/08 01:14登録)
終戦直後の台湾を舞台背景にした長編ミステリ第4作。
日本から引き揚げた新婚の台湾人青年の視点で、帰省先での連続殺人が語られていきますが、著者の父親の出身地と思われる台北郊外の田舎町の情景や風習が目に浮かぶように描かれていて興味をひかれます。
ミステリとしては、近隣の菩薩山からの人間消失にそれらしき所がありますが、トリックにあまり見るべきものがないのと、動機がいつものパターンなのでマンネリを感じました。


No.270 6点 歌うダイアモンド
ヘレン・マクロイ
(2010/05/08 00:56登録)
ミステリ&SF短編集。
バラエテイに富んだ作品が収録されています。長編のミステリでも超常現象を取り入れているので、ホラー風の作品は予想の範囲内でしたが、SFまで書いていたのは意外でした。
ミステリ作品では、清朝末期の中国を舞台にロシア女性の失踪を描いた「東洋趣味」が当時の雰囲気を醸し出していて読み心地が抜群によかった。SF作品では、人類の終末がテーマの「風のない場所」が非常に印象に残りました。


No.269 6点 ケイティ殺人事件
マイケル・ギルバート
(2010/05/08 00:37登録)
著者後期の捜査小説ですが、意外な拾いものの一冊でした。
田舎町のダンスパーティの夜、町出身の有名女性アイドルが惨殺される。物語の序盤は町の住民たちが次々登場し人物の交通整理が大変ですが、捜査陣の住民一人一人の聞き込みによって主要人物の造形が徐々に浮き彫りになってきます。
終盤、法廷場面になってダミー犯人と真犯人がおぼろげに推理できるのですが、最後の数ページでとんでもない事をやってくれてます。途中ちょっと違和感を覚えた記述があったのですが、M・ギルバートがそれをやるとは思わなかったので相当驚きました。


No.268 6点 三重露出
都筑道夫
(2010/05/06 00:12登録)
著者初期の作品全般に言えることですが、今作も捻った趣向を凝らしたメタ風ミステリです。
2つの物語が交互に進行します。ひとつは、忍者に憧れ来日したアメリカ人が奇天烈な忍術を使う女忍者たちとスパイ戦に巻き込まれるという、山風の忍法帖にジェームズ・ボンドを登場させたようなアクションもの。もうひとつの物語は、その小説の翻訳者が小説のなかに現実の記述がある謎に戸惑い調査を始めるというもの。
この二つの物語がどのように結びつくのかが肝のはずなんですが、結末はちょっと肩透かしの感じでした。狙いはよかったけど着地に失敗というところでしょうか。


No.267 6点 阿蘇・雲仙逆転の殺人
深谷忠記
(2010/05/05 20:59登録)
黒江壮&美緒コンビの本格ミステリ。
静岡と愛知の海岸に流れ着いたバラバラ死体と九州・福岡の容疑者とを結びつけるアリバイ崩しもの。
初期の逆転シリーズは比較的アリバイ・トリックに凝ったものが多く、今回も壮大なトリックが虚を突き、ていねいな伏線とか死体をバラバラにした理由とかなるほどと思わせます。「逆転」とは発想の転換の意味のようです。しかし、終盤に壮が「考える人」状態になるパターンは、毎度苦笑ものです。


No.266 6点 聖夜の越境者
多島斗志之
(2010/05/05 19:13登録)
初期の国際謀略小説。
ソ連のアフガン侵攻を絡めた米ソの謀略戦に日本人考古学者が巻き込まれるというストーリー。
なぜソ連はアフガン侵攻を企てたのか、その謎ひとつで壮大なホラ話を構築してます。「一粒の小麦」がもたらす真実に関しては、よくそんな発想が出てくるなあと感心しますが、あまり一般受けする話ではないです。


No.265 6点 死者たちの夜
結城昌治
(2010/05/05 18:47登録)
紺野弁護士ものの連作短編集第1弾。
著者の硬軟取り揃えた私立探偵を主人公にしたハードボイルドは70年代に入ってほぼ姿を消してしまいましたが、私立探偵・真木のシリーズの作風を受け継いだのが、紺野弁護士シリーズだと思います。
職業柄、題材は失踪に限りませんが、愛と欲望の人間関係をシリアスに描いていて抒情的筆致は読ませます。
この第1作品集では、「汚れた月」「風の鳴咽」が印象に残りました。


No.264 5点 柘榴館
山崎洋子
(2010/05/05 18:20登録)
風俗嬢を狙う猟奇連続殺人犯の手掛かりを求めて、風俗嬢の主人公が「柘榴館」と言われる医者一家に潜入するという話。
横浜が舞台といい、デビュー作の「花園の迷宮」を現代版にしたような設定ですが、サイコサスペンス風の味付けがより強くなっています。真相は救いようのないものですが、今読むと既読感をぬぐえません。


No.263 7点 風よ、緑よ、故郷よ
岩崎正吾
(2010/05/05 18:07登録)
父親の死の謎に向き合うため教職を辞して、故郷に帰ってきた主人公を中心に描く田園派の本格ミステリ。
田舎が舞台ですが土俗的な陰湿感はなく、登場人物も個性的で爽やかな青春ミステリのような雰囲気なので、読後感は非常によかったです。さりげない伏線の張り具合といい、作者の作品のなかでは比較的完成度の高い本格編だと思います。


No.262 6点 事件は場所を選ばない
海渡英祐
(2010/05/05 14:00登録)
ノンシリーズのミステリ短編集。
これは意外と良質の本格ミステリ集で、軽妙な物語のなかに考えられたトリックが施されています。
エレベーター内の不可能殺人「殺しもあるでよ」や、捻ったアリバイトリックもの「臭い仲」などが印象に残りました。


No.261 7点 神州日月変
栗本薫
(2010/05/05 13:41登録)
巨漢の八丁堀同心・古河雷四郎を主人公にしたスーパー伝奇時代小説。
ストーリーを簡単に言えば桃太郎の鬼退治というところでしょうか、道中物の連続活劇で一種のRPGですね。とにかく、登場人物が敵も味方も魅力的なんですが、やはり妖術使いの老人・乱月斎が一番かな。
正統派の伝奇もので終わらないところが作者の面目躍如で、最後にとんでもない結末が待っています。スーパー伝奇の「スーパー」とはそういう意味だったのかと最後に分かった次第です。


No.260 6点 北の廃坑
草野唯雄
(2010/05/05 13:15登録)
お得意の炭鉱を舞台にしたサスペンス・ミステリ。
ある鉱山の不正疑惑を解明するために、会社から潜入捜査を命じられた主人公の危難の連続をサスペンシフルに描いていて、同じ炭鉱ものの長編「影の斜抗」とは異なり、本格ミステリの趣向はあまり見られません。その分、ストレートなスリラーとしてまずまず楽しめました。


No.259 6点 大臣の殺人
梶龍雄
(2010/05/05 13:04登録)
明治初期、創設まもない警視庁の密偵を主人公にした時代ミステリ。
黒田清隆(当時、北海道開拓使長官)自身の妻殺し疑惑を中心に据えた謀略ミステリの様相で物語が進行していくところは、山風の明治ものを彷彿とさせますが、後半は本格ミステリになっています。
意外性がないことはないですが、全体的に作風が地味でリーダビリティに欠ける感じがしました。


No.258 7点 金のゆりかご
北川歩実
(2010/05/04 14:56登録)
遺伝子操作など先端科学を題材に複雑な人間関係を絡めたミステリが持ち味の著者ですが、本書は天才幼児育成センターの疑惑を中心とした騙しのテクニックがさえた秀作。
今まで読んだものは、色々な情報を詰め込み過ぎプロットも徒に複雑化するきらいがあり、読後ぐったり感がありましたが、今回は分量が多い割にすらすら読めて、その分終盤のサプライズも効果を上げていると思いました。


No.257 5点 星野君江の事件簿
小森健太朗
(2010/05/04 14:31登録)
デビュー当時からのシリーズ探偵・星野君江の連作短編集。
十代の頃の作品「チベットの密室」から秀作「疑惑の天秤」まで7作収録されていて、自然と作風が変わっているのが面白く感じました。探偵役が無個性的なのはご愛敬。
なかでは、当地の列車事情を逆手にとったアリバイもの「インド・ボンベイ殺人ツアー」、連城×折原のような騙し絵風の「疑惑の天秤」が印象に残りました。


No.256 6点 髑髏検校
横溝正史
(2010/05/04 14:08登録)
「吸血鬼ドラキュラ」を換骨奪胎した伝奇時代小説。
書き出しから伝奇ロマンの香りに満ちています。外房の海岸に打上げられた鯨の体内から発見される瓶詰めの手紙、長崎の孤島で出会う不知火検校という謎の男、やがて江戸の深夜に出没する吸血鬼・・・・。
荒唐無稽とは伝奇小説の場合むしろほめ言葉。吸血鬼の正体も序盤の長崎でのエピソードが伏線になっていて、この辺は探偵小説作家としての面目躍如の感があります。
残念なのは、終盤駆け足になってしまったところ。枚数制限でもあったのか、傑作になりかけていたのに惜しいです。


No.255 6点 スラッシャー廃園の殺人
三津田信三
(2010/05/04 00:38登録)
設定は綾辻の「殺人鬼」風のスプラッタ・ホラー、仕掛けは同じく綾辻の某短編の二番煎じで、共にあまりオリジナリティを感じませんが、刀城言耶シリーズと違って文章が読みやすいのが良。
作者のホラー・ムービィに対する思い入れが強く出すぎていて、物語の流れを悪くしているように思いました。


No.254 7点 笛吹けば人が死ぬ
角田喜久雄
(2010/05/04 00:01登録)
戦後発表されたミステリを収録した短編集。
加賀美捜査課長もの2編の中では、暗闇の中の巧妙な殺人トリックを使った端正な本格編「霊魂の足」、明石良輔ものでは、操りミステリ風で少女の造形が不気味な「笛吹けば人が死ぬ」が印象に残りました。
奇妙な味もしくは怪奇譚では、「沼垂の女」と「悪魔のような女」が古さを感じさせるどころか、新鮮な驚きを感じさせ、むしろこういった作風の方が持ち味ではと思います。


No.253 7点 枯草の根
陳舜臣
(2010/05/03 23:21登録)
集英社文庫版の桃源亭主人・陶展文推理コレクション、表題作のデビュー長編のほか短編4作収録。
「枯草の根」は文字どおり著者のミステリの原点で、中国から訪日する人物によって過去の秘密が炙りだされるという、以降の作品で何度か使われるプロットが懐かしい。トリック自体は陳腐とはいえフェアな伏線の張り具合はさすがと思わせますし、人物造形と心理描写など豊穣な物語を読んだという満足感に浸れます。
しかし、お目当ては短編の方で、単行本未収録だった「縄」シリーズ3作が読めたのが満足。陶展文が意外と稚気溢れるユーモアの持ち主だということが分かる。
集英社は、「弁護側の証人」の復刊といい、なかなか心憎い仕事をしてくれてます。

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