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ミステリの祭典

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まさむねさんの登録情報
平均点:5.88点 書評数:1258件

プロフィール| 書評

No.138 8点 殺しの双曲線
西村京太郎
(2011/02/10 23:25登録)
 このサイトにおける隠れた高評価に刺激されて読んでみました。
 いやはや,作者に対するワタクシのこれまでの印象が,良い意味で崩れちゃいました。
 本格ミステリとして秀逸だと思いますね。ラストの数行も印象に残ります。1977年の作品であることを考慮すればさらにプラス評価。国内双生児モノの傑作と評価いたします。

 東京の連続強盗事件と宮城の雪の山荘(ホテル)における連続殺人事件が交互に語られていきます。
 それぞれの事件自体が興味深いですし,その2つが結びついたときに一体何が…という期待で,序盤から一気に読ませてくれました。
(以下ややネタバレ的な要素を含みます。)
 結果的には,前者の事件は後者の事件の「引立て役」なのであって,前者の犯人が想定どおりに犯行を行った必然性が感じられません。正直,相当な違和感を覚えました。
 しかし,前者の事件がないと,読書の楽しみが激減してしまうのもまた事実。
 読者としては何とも悩ましいところですが,作者の仕掛け具合はその違和感を補って余りあるものと判断して8点!


No.137 6点 アリアドネの弾丸
海堂尊
(2011/02/06 22:11登録)
 ほほう。本格ミステリしてますね。氏は「医療エンタメ作家」と思っていたのですが…何とも嬉しい誤算(?)です。
 いやはや,これまでのシリーズとは一線を画していて,良かった。しかも登場人物のキャラ立ちはいつものとおり。楽しかったですね。

 難を言えば,前半が結構冗長だったことでしょうか。前半のみだと,また海堂節炸裂かぁ…と何度か投げ出しそうになりましたから… 中盤以降はミステリ度が増してきて一気読みでしたけどね。前半部で投げ出さなくて良かったなぁ…と。
 ちなみに,次回作の前宣伝も,まぁアリとは思いますけど,何とも長すぎるし,中途半端なんですよねぇ。ソコを削ってもっとコンパクトに…というか,すぐにミステリ部分に突入した方が良かったと思いますね。


No.136 5点 緋い記憶
高橋克彦
(2011/02/05 22:10登録)
 第106回直木賞受賞作。
 受賞直後に読んだ記憶があるのですが,あれからほぼ20年経つのですねぇ。図書館で見かけて,懐かしいなぁ…と感じ入り,この度再読したものです。
 人間にとって時とともに曖昧になってくる「記憶」をキーワードにした短編集。
 一応の理論的な説明が可能な短編もありましたが,多くは完全にホラーとして分類すべき短編。
 巧いんだけども,2回目の読書での再発見みたいなものはなかったなぁ。


No.135 5点 浪花少年探偵団
東野圭吾
(2011/02/02 22:23登録)
 小学校教諭(しのぶセンセ)が活躍する大阪人情満点の連作短編ミステリ。
 登場人物のキャラがそれぞれ魅力的だし,恋のさや当てなんかもあって,気軽に楽しめましたね。
 トリックの印象はほとんど残らなかったですけど…きっとキャラの印象が強かったせいなのでしょう。きっとそうだ。そう信じよう。


No.134 5点 氷菓
米澤穂信
(2011/01/31 21:03登録)
 私にとって,古典部シリーズ初参戦。
 読み始めてしばらくは“緩さ”が気になったのですが,“古典部の謎”が提示された以降は悪くないですね。部員のキャラ設定も面白い。(でも採点すればこの点数くらいかなぁ。)
 氏のデビュー作であるこの作品のテイストは,「小市民シリーズ」は勿論のこと,「追想五断章」にも確実に引き継がれている印象を受けましたね。 視点は違うけれども,「儚い羊たちの祝宴」にも多少同じ香りが。
 ちなみに,年代によってはほぼ100%の方が,読み終えるまでの間に郁恵ちゃんの歌を口ずさむことになるんだろうなぁ。


No.133 5点 出雲伝説7/8の殺人
島田荘司
(2011/01/29 11:54登録)
島田氏らしい派手で猟奇的な事件と,いわゆる時刻表アリバイトリックとが,うまく融合してますね。
古事記とかの勉強にもなったし(笑),まぁ楽しめました。

(以下,未読の方は注意)
でも,精密なトリックを計画した犯人が,結構単純な2つのミス(胴体を置いた位置の件&ラストの騙されっぷり)で捕まっちゃってるところに違和感が。
特に1個目のミスは,警察なり国鉄なり,もっと早く気付こうよ…読者にも早く開示してよって思いましたね。


No.132 6点 墓標なき墓場
高城高
(2011/01/24 18:58登録)
 日本ハードボイルド小説の黎明期を支えた作者であり,近年,再評価の声も多く耳にします。
 ならば何か読んでみよう!ってことでチョイスしたのが,作者唯一の長編であるこの作品。
 簡潔な文章と,舞台となる道東地方との風情がマッチして,非常に雰囲気があります。
 解明っぷりまでも簡潔だったなぁ…という気がしないでもなかったですが,それでも十分に楽しませてもらいました。
 個人的には,再評価の動きも素直に頷けますね。
※実は短編にこそ良作ぞろいという噂も。文庫本で全集が出てることだし,機会があれば短編集も読んでみようかなぁ…という気にはさせられました。


No.131 7点 ここに死体を捨てないでください!
東川篤哉
(2011/01/22 12:08登録)
氏の作風とはかなり波長があうことを、再確認させていただきました。
ギャクと本格の融合、いいですねぇ。楽しかったですよ。
(注)ギャクの好き嫌いで評価は分かれると思いますが…

死体遺棄者(?)の鉄男と香織がかなりいい味出してます。
今後の作品での再登場を望みます…ってダメかなぁ?


No.130 6点 殺意は必ず三度ある
東川篤哉
(2011/01/18 22:56登録)
基本構成としては,完全に「本格モノ」に該当するでしょう。
トリックもなかなか面白かったですね。
で,その表現手法(ギャク満載。シリアス感ゼロ。)については,人それぞれ好き嫌いがあるでしょうが,私は大いに支持します!


No.129 6点 卒業−雪月花殺人ゲーム
東野圭吾
(2011/01/16 15:40登録)
加賀恭一郎の初登場作品。
いやはや,何とも多彩なご学友に囲まれた学生生活だったのですねぇ。
なんだか,加賀サンが可哀相になってきましたよ。

さて,作品としては,WHO,HOW,WHYすべて盛り込むあたり,理論的な説明が可能となっているあたりは,さすがという印象を受けました。
しかし,正直,膝を打って感嘆したり,しんみり考えさせられたり…ってのはなかったですねぇ。よって,採点は辛めに。
この作品に盛り込まれた(盛り込もうとした)要素が,氏のその後の各々の作品で花開いているような気がしますね。
その意味では読む価値は大きいかも。


No.128 5点 夜明けの街で
東野圭吾
(2011/01/12 23:13登録)
 いやぁー,中盤までの展開&巻末ボーナストラック(?)「番外編 新谷君の話」が怖いのなんのって。
 いやはや,下手なホラーなど足元にも及ばないくらい,コワイ。心臓に悪い。
 えっ?謎的なことはどうかって?それは東野氏の作品としては想定の範囲内だったので,正直フツウですよ。(すみません。ミステリとしての印象はそこまで。)
 そんなことより,まぁ,怖いのなんのって…。
【以上,アラフォー男子(妻帯者)の率直な感想】
 ちなみに,主人公(男性)もアラフォー。主人公(女性)は30過ぎ。いやはや,リアリティが…怖いのなんのって…。「新谷君の話」なんて,ビクビクしながら読んだんですから。夏に読むべきだったなぁ。涼しくなれそうだし。
注:冷静な書評になっていないことは自認しております。したがって,何の参考にもなさらず,気持ちだけ察していただけますればコレ幸いです。人によっては,全く怖くない作品だとは思いますが。


No.127 5点 点と線
松本清張
(2011/01/11 22:10登録)
「空白の4分間」を発掘し,活用した点については,当時としては確かに素晴らしいと思う。
ただし,やはり飛行機が普及しまくった現在においては,アリバイトリックの面白さは半減,というか皆減。
(まぁ,携帯電話の普及に伴って,20年ちょっと前の作品ですら現実味が薄れてきてる状況を考えれば,しょうがないのでしょうが…)
あまりにも有名な作品であるし,その後の社会派隆盛の発端となったという意味で「歴史上の記念碑的な作品」ってのが,初読時の私の率直な印象でした。(勿論,楽しんで読ませていただいたのですが。)
今回久しぶりに読んでみましたが,その印象から特段の変化はありませんでしたね。


No.126 7点 殺人方程式
綾辻行人
(2011/01/10 19:58登録)
まさに,教科書的な本格モノ。
トリック&死体切断理由はかなり前の段階で察しがついたが,恥ずかしながら,犯人には驚かされた。
といっても,単に「驚き」のみを追求した作品ではなく,理論的な犯人当てが可能。純粋に楽しめました。
エピローグ読んだ後に,今一度プロローグ読み返したくなる辺りも大好物。
すごく目立つ作品ではないものの,良作だと思います。


No.125 5点 嘘をもうひとつだけ
東野圭吾
(2011/01/09 22:58登録)
加賀恭一郎シリーズの連作短編集。
「これは!」と膝を打つ作品もありませんが,「これは…」と首をかしげたくなる作品もない。
つまりは全作品が水準以上ということで,素晴らしい安定感ですね。
個人的には,「狂った計算」が一番良かったかなぁ…と。

ちなみに,どの短編も「夫婦」ってのがある種キーワードになってますね。
「赤い指」や「新参者」にうまいことつながってますなぁ。


No.124 6点 片眼の猿
道尾秀介
(2011/01/08 16:39登録)
終盤にいくつかの真相が明らかになる訳ですが,いずれも氏の他作品に比べれば小粒ですね。真犯人については,完全に想定内ですし。
でも,優しさには溢れている。決して「やーい騙された」とはならない深さもある。
ハードボイルド調もうまいことハマってると思いますが。
これ以降の氏の作品の指向性を見ると,この作品がひとつの分岐点になったような気がします。


No.123 5点 特急「白鳥」十四時間
西村京太郎
(2011/01/06 23:27登録)
【東北新幹線青森延伸記念(その2)】
 これまた,20数年ぶりにナナメ読み。
 当時は大阪と青森を結ぶ昼間長距離特急だった「白鳥」も,今となっては完全に青函連絡特急の位置づけに。よって,今は14時間も走らない訳ですね。時代を感じますねぇ。
 で,この作品。サスペンスとして読めば,結構悪くないですよ。
 新幹線が函館まで延伸されると,この「白鳥」って名前もどうなることやら。その意味では,ここ数年が読みドキか(笑)?


No.122 5点 終着駅殺人事件
西村京太郎
(2011/01/06 23:23登録)
【東北新幹線青森延伸記念(その1)】
 20数年ぶりにナナメ読み。
 新幹線開業によって,青森の玄関口は「新青森駅」になっちゃうのでしょうか。
 で,この作品。日本推理作家協会賞作品だったんですね。
 ちなみに,アリバイトリックは相当にユルイです。トリックというよりも,何と言うか雰囲気(詳しくは亀井刑事にでも…)を楽しむべき作品かもしれません。
 新幹線開業によって,この“雰囲気”を理解できる方も激減するはず。むしろ今が読みドキか(笑)。


No.121 5点 ミステリー列車が消えた
西村京太郎
(2011/01/06 20:17登録)
 先日,島田氏の「消えた水晶特急」を読んだので,列車消失繋がりで20数年ぶりにこの作品をナナメ読み。
 同じ列車消失モノでも,個人的にはこっちの方が好みですね。
(以下,微妙にネタバレ)
 当時から「現実の管理体制では絶対ムリ」との批判があったと記憶しておりますが,平成23年初頭にして「ああ,もうこの駅はないんだぁ。その意味では絶対ムリになっちゃったんだぁ」ってことに気付き(今頃?),いろんな意味で哀愁を感じることができたことが収穫。


No.120 4点 消える「水晶特急」
島田荘司
(2011/01/06 20:11登録)
 列車消失トリックはバレバレでしたね。巻頭の地図にはちょっと興ざめですね。
 ちなみに,乗っ取り犯が結構かわいそう。最後まで引っ張っておいて,そっちの疑惑がノータッチでは…ねぇ。完全に当て馬(?)じゃないですか。
 女性同士の友情なんかよりも,このことの方が引っかかってしまって…。総合的にこの点数でしょうか。


No.119 5点 なぎなた
倉知淳
(2011/01/03 21:02登録)
「こめぐら」と同時刊行の短編集。
個人的には,こちらの方が出来の良い作品が多いような気がします。
「闇ニ笑フ」は,確かに道尾氏の某短編のネタと被ってますね。そうですか。こっちが先だったのですか・・・

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