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ミステリの祭典

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墓標なき墓場

作家 高城高
出版日1962年01月
平均点5.67点
書評数3人

No.3 5点
(2018/05/10 19:07登録)
10年ほど前に作家活動を再開してからの作品もどうやらすべて連作短編集らしい(新しいのは『函館水上警察』しか読んでいませんが)ので、今のところ高城高の唯一の長編ということになります。よく知っている世界しか書かない作者らしい、釧路、根室半島を舞台に新聞社の支局長が活躍するストーリーです。
巻末解説によると、乱歩は高城高をチャンドラーやスピレインだけでなくシムノンやアンブラーとも比較していたそうで、確かにスパイ小説の短編も書いている作者だし、本作の港の雰囲気はシムノンを思わせるところもあります。長さがまた、メグレものと大して変わらない200ページ強という短さです。その中で運搬船の沈没事件とその陰に隠された事件の真相を暴いてしまうのですから、後半の事件はさすがに少々説明不足かなと思います。また釧路の支局長が網走にとばされてしまう理由には、あまり説得力が感じられませんでした。

No.2 6点 まさむね
(2011/01/24 18:58登録)
 日本ハードボイルド小説の黎明期を支えた作者であり,近年,再評価の声も多く耳にします。
 ならば何か読んでみよう!ってことでチョイスしたのが,作者唯一の長編であるこの作品。
 簡潔な文章と,舞台となる道東地方との風情がマッチして,非常に雰囲気があります。
 解明っぷりまでも簡潔だったなぁ…という気がしないでもなかったですが,それでも十分に楽しませてもらいました。
 個人的には,再評価の動きも素直に頷けますね。
※実は短編にこそ良作ぞろいという噂も。文庫本で全集が出てることだし,機会があれば短編集も読んでみようかなぁ…という気にはさせられました。

No.1 6点 kanamori
(2010/06/03 20:38登録)
初期の長編ハードボイルド小説。
北海道根室沖の海難事故の謎を支局の記者が追いかけるというストーリー。
簡潔で乾いた文体は確かにハードボイルドですが、地方支局の生活状況や海霧の中の釧路・根室地方の情景描写などに文芸的な香りが漂い、読み心地がよかった。結末がやや通俗的な感じがして惜しいと思いました。

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